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更新日:2015年08月02日 訪問者数:10646
ジャンル共通 技術・知識
単独 誰も来ない沢で滑落骨折 📶 無しからの 脱出方法
jyunntarou
氷ノ山(1510m)の八木川源流左俣 からの脱出
40m2段滝 八木沢左俣 上流部
この滝を超えると 後は 小滝群と根曲がり竹のブッシュを漕いだら稜線に出ます。
しかし、右足首に力が入りません。
???
急に痛みも加わり どうしたものかと・・・・

取りあえず中段の25m付近まで登攀できそうです。上部の立った左のガリーを登れないか?と 思案中。
取りあえず取りつく
セルフタイマーをセットして 10秒間に走って 登攀中の自撮写真を撮ろうと、いつも通りにカメラのシャッターを切って、そこから猛ダッシュのは・ず・が・・・
走れません。
右足首が ビンビンに響いて 力が入りません。

カメラまで足を引きずって 降りてきました。
・・・あのときの 墜落・・・か。。。
今になって ココに来たかぁ・・・
「どうする?自分・・・」
取りあえず この滝を超えたら 大滝はもうない。
稜線まで行く方が 早い・・・かぁ?
水しぶきで上部が良く見えない
この滝は スタンスもしっかりしています。ただ黒い苔が付いているのが気になります。
右足をかばいながらも ズルズルとシャワークライミングをします。
幸い 体の冷えは 感じられませんでした。ゴーグルが要るなぁ・・・
限界
やはり 右足が痛いです。
しかも 力が入らないのが不思議に感じました。
これ以上登れば クライムダウンもできないかもしれない
限界を悟り ゆっくりクライムダウンを始めました。
レインボー
滑らないように 右足をかばいながらの クライムダウンは緊張しましたが、下に虹がかかっているのが見えました。まだ、大丈夫。
「降りれる 降りれる。」
自分に言い聞かせるように落ち着かせます。
ゆっくりとクライムダウン
とにかく右足が 踏ん張れませんので 左足でスタンスを確保し、右足はニーパッドと膝パッドを多用して、そのフリクションを利用して降りて来れました。まぁ、難易度が高くない滝の下部ですから、なんとか降りて来られましたが・・・やたらと喉が渇きました。
お昼過ぎ・・・さて、どうするか? 登攀したり巻いてきたりした大滝郡(10m,30m,30m,40m,45m)を下降できるのか?判断力
標高丁度1000mでの 判断
この40m滝はこの足では登られませんし、左岸を巻けそうですが、巻くのもズルズルですから 返って危ないです。
しかし、この谷を降りるのは無理。携帯も電波無し。

最悪なパターンです(/ω\) 落ち着くことがまず大切です。

しかし、エスケープルートが ありました!。
この左俣から燈籠岩尾根に取りつく地点に、昨年は2回来たことがあります。道はないのですが、そこから一般道に出られるルートは迷いながら、たどり着きましたので地形などは感覚で覚えています。
2m 背面から滑落。
2段40m大滝から、こうして堕ちた場所まで なんとか降りてきました。 バカな事をしなければ・・・と 何度も繰り返し思いました。 この小さなハング滝は、直ぐ横から簡単に巻いて登れます。それを ナッツを使って強引に直登しようとして 堕ちたのです。
バックドロップかジャーマンスープレックスか?
3本持ってきた内の一本がぴったりと岩の間に挟まり、ロープスリングをアブミとして足に引っかけて、この2mチョイのハング小滝を登る作戦に出ました。

この上に挟まっている岩(石)を掴んで少し体重をかけたら、しっかりしていましたので、いっせぇーのぉでぇーっと体を起こして、「登れたっ!!!」と思った瞬間に掴んでいた岩(石)がすっぽーんと飛びぬけて、私はそのまんま空中落下しました。ハング滝でしたから、ズルッではなく、プロレス技のジャーマンスープレックス・・・的な・・・

先ずは尾てい骨、そして後頭部がキーンと痛んでしばらくは息ができませんでした。その時は右足首に痛みは感じなかったのです。

所詮2mと 油断していました。しかし下は滝壺はなく岩だらけの場所でした。
直瀑の10m滝をどうするか?
垂直に近い10m滝を登攀してきた写真です。水量が少なければクライムダウンもイケそうですが、この日は水量が多くて登るのも大変でした。
コレを どう降りるか・・・?です。
懸垂下降 (ラペリング)
単独なのに 何故 ロープとか下降器(エイト環)やハーネスが要るのかと言えば、高巻きしたけれど谷に降りれない場合や、滝に登ってしまって詰まった場合に 降りるために必要なアイテムなのです。
本日は、こういう状態(右足首骨折)なので、谷を降りる場合もコレが役に立ちます。
懸垂下降は、左足一本でも降りれますので楽ちんでした。

チームで行く場合は、トップがコレをつけて登り、ランニングビレイしながらセカンド・サードが下でビレイすることが有ります。
落差45m 覗き滝+直ぐ上は斜瀑40mの連瀑帯
コレに加えて3段30m滝に30m不動滝は、懸垂下降で降りれません。
私が持ってきたロープは20mと30mの2本です。
繋ぎ合わせても50mです。
しかし、懸垂下降で降りれるのはその半分の25mしか降りられないのです。ロープが下まで届きません。

特にこの写真の45m滝は、周りが全て岩になっていますので、小分けしてアンカーを取って降りても、次のアンカーになるような立木が見つからなければ再度アッセンダーを付けて登り返さなければなりません。所謂ゴボウ抜きです。しかし、本日の足ではとても無理です。
ハーケン2枚 アイスハンマーが有れば 重たいですが、いざの時には有効かとは思います。
エスケープルートは必ず作っておくものです。
一般道に負担なく 出ます
くの字形の5m滝の左岸から、一般道に逃げられるコースを(テープ指標類や道はありません)燈籠岩尾根チャレンジの時に迷いながらも作っておいたので、それが功を奏しました。しかし、うろ覚えです。

こういう時こそGPSが欲しいのですが・・・スマホも持ってないので 読図とコンパスと「勘」で行きます。
加藤文太郎氏が雪中ビバークした地蔵堂です。
ここまで来たら 誰かが要るハズ・・・
なのですが、この時間帯は氷ノ山ぶん回しの逆ルートを行う人しか来ないです。しばらくお堂の中で苦しんでいましたが、単独で沢に来たらのだから他人に迷惑をかけてはダメ。
人を頼ったらダメ。
そう、思うと 何とかこれから標高差300m下の車まで行けると思いました。
 
お地蔵様
道中 お守りください・・・
そう お願いして
地蔵堂を出ました。
もう一つ 大切な アイテム
ダブルストック
念のためにダブルストックをザックの横に付けていました。
沢の藪漕ぎや高巻く時に収納しても長くなる3段ストックは引っかかって邪魔になりますので、コンパクトに収納できる4段ストックを使っています。
コレが松葉づえの代わりになりました。
結局誰にも会うこともなかったです。
車に帰って来て、足を見ました。
沢足袋と靴下を脱ぐのが 死ぬ位痛かったです。
くるぶしに裂傷がありますが、
それ以上に驚いたのが 変色してゾウの足みたいに腫れ上がったくるぶしです。
これほど腫れているのは内出血の為でしょう。折れている可能性が高いです。
レントゲン
次の日は、更に足がパンパンに腫れ上がり 歩行も困難になってしまい・・・病院へ行きました。
 

ああ、今まで何回ココで 放射線を浴びたことか・・・
肋骨骨折 左指 左肩 大腿部損傷・・・
果ては、右足指凍傷の時も・・・
右足首くるぶし 骨折 全治1ヶ月の診断
医師「折れてます」
私 「えっ?」
医師「先が割れて、その上に亀裂が走ってます」
私 「ヒビですか?」
医師「骨折です!!!」
私 「いつから歩けますか?」
医師「腫れと痛みが取れるのは3週間、それからゆっくりとリハビリし歩けます。まぁ1ヶ月はダメでしょう・・・」
私 「…夏の登山計画…大破産…」←コレは心でつぶやきました。
皆様も決して油断せず、気をつけて この夏、お山を楽しんでくださいね(^^)/。
氷ノ山八木川左俣 10m直瀑登攀 - YouTube
10mほぼ垂直ですが、ホールド、スタンス共に多くあり 水圧がきつかったですが、何とか直登できました。
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