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「強力伝」の大町アイゼンとは?
質問2017年07月22日 23:42 (2017年07月31日 18:27更新)
新田次郎の小説「強力伝」(1965年 古い!)の中に記載のある「大町アイゼン」なる物は実際にあったのでしょうか?
小説の中では8本爪のアイゼンも登場しますが、それに対し大町アイゼンは4本爪で爪がかなり長い物の様に描かれています。
「強力伝」は小説でありフィクションですが、史実を元に書かれたものですので、実際にあったのか、あったとすればどのような物だったのか?読んだのは何十年も前ですが、近年山に登るようになってからずっと疑問に思っていました。
新田次郎作品は事実と誤認してしまうような嘘が多いので気になっています、存知の方よろしくお願いします。
回答2017年07月29日 15:21 (2017年07月31日 18:27更新)
私も強力伝を読んだ時に気になっていました。
調べてみましたが、そのものはネット上では見つからないですね。

大町アイゼンでは無いのですが、当時は、歯の長いアイゼンも作られていたようです。(下のページの3枚目の図面のもの)
http://www.geocities.jp/sakaimachi_yamanokai/Tool2.html

情報が伝わらない時代なので、こういうものを大町の強力が使っていると「大町アイゼン」と通称していた可能性はあると思います。
使っている地域は狭く、強力もそれほど多い職業で無いとすると、アイゼンの進歩と普及で駆逐されてしまったのかもしれません。

また、アイゼンと言うよりカナカンジキであるようにも思われますが、新田次郎が一般読者に分かりやすいように、「大町アイゼン」と勝手に名付けた可能性も捨てきれません。
カナカンジキの場合であれば、登山用具というよりは古民具で、地域の野鍛治が強力に注文されて作る、数個単位でしか存在しないものなので、記憶も記録も無くなっていると思います。
どこかの年寄りの家の納屋に転がっていたりするかも知れませんが。。。

おまけ)加藤文太郎のアイゼンも、今のものから見ると長いようです。
http://jinflipjin.blog.fc2.com/img/CIMG3995.jpg/
お礼 
borogorgさん 回答ありがとうございます。

小説の中の描写が細かく、実際にあった物と思えてしましますが、やはり新田次郎氏による脚色かと思うようになってきました。
おまけのアイゼンの画像、初めて拝見しました。すごく重そう、勉強になりました。
回答2017年07月25日 23:35 (2017年07月26日 21:39更新)
私は全く知らないのですが、ネットでちょっと調べてみました。

アイゼンーWikipediaには、次ぎのように記載されていました。
「アイゼンが外国から輸入される前から日本にも雪国の生活用品として、樵や猟師や奥山回りの役人、行者や山伏等が深雪用の輪カンジキと並行して爪数の少ない鉄カンジキを使用していた。・・・・・
大町の対山館主人であった百瀬慎太郎は、鉄カンジキを改良して三本爪アイゼンを考案、地元の猟師や登山者に愛用されていたが、これを槇有恒が1914年(大正3年)に針ノ木峠を越えて剱岳長次郎谷雪渓の登高に使用した記録がある。」
 
で、「鉄カンジキ」でググッてみると次ぎのHPが見つかり、
これが参考になるのではと思います。
http://zukudase1.blog11.fc2.com/blog-entry-208.html
お礼 
hirakaringoさん 回答ありがとうございます。

「鉄カンジキ」、「カナカンジキ」は映画「剱岳点の記」(時代は明治39 1906年)でも描かれており爪は短い物のようです。
田部重治 著の「日本アルプスと秩父巡礼」(大正8年出版)にも記載があったような記憶があります。当時はワラジにカナカンジキだったみたいです。
「強力伝」は時代がもっと新しく、モデルとなった小宮山正氏が白馬山頂に風景指示盤を担ぎ上げたのが昭和15年(1940年)で小説の描写からもすでにアイゼンはは一般的な物になっていたと想像します。

<以下、小説の一節>
「足場はかたい。だが、この歯の短い八本歯のアイゼンでは・・・・」
鹿野はもっともなことだと思った。雪は固いが、重い荷を背負ったまま滑ったら、それで総てが終わってしまう。滑らないためには、常にがっちり雪に食い込む長い歯をした軽い特別なアイゼンが必要だ。それには、この地方で使っている四本歯の大町アイゼンこそ適当なものである。

ネット上で調べても全く見つからないので、やはり小説を面白くするために考え出した空想の産物ですかね。
「強力伝」は新田次郎の処女作で直木賞受賞作です。古いですが今読んでも面白いと思います。短編ですので一度読んでみてはいかがでしょうか。