(はじめに)
「足尾山地」(あしおさんち)という山地は、地図帳には大きく書かれていますが、登山対象の著名な山が少ないので、馴染みが少ない方も多いかも知れません。
ただ、地質的には多少特徴があるので、この章で説明します。
また、日本百名山である皇海山(すかいさん:2144m)なども説明します。
ただ、地質的には多少特徴があるので、この章で説明します。
また、日本百名山である皇海山(すかいさん:2144m)なども説明します。
(1)足尾山地の概要
足尾山地は、群馬県と栃木県の県境となる形で、東西 約30km、南北 約30kmほどの広さを持つ山地です。
山地の中央部を渡良瀬川(わたらせがわ)が流れ、その谷によって、東部と西部に分けることができます。説明の都合上、この章では渡良瀬川の東側を「東部山塊」、西側を「西部山塊」と称することにします。
東部山塊は、最高峰が地蔵岳(1244m)と全体的に低く、東へとなだらかな山麓部が広がり、東武日光線のラインあたりまで緩やかに下っています。
西部山塊は、皇海山(2144m)や庚申山(こうしんさん:1892m)などの2000m級の山があり、皇海山は日本百名山でもあるため、登山者が比較的多い地域です。
渡良瀬川の源流域には、以前は足尾銅山があり、四国の別子銅山と並ぶ、日本有数の銅鉱山でした。一方で、煙害で周辺の山がはげ山になったり、明治時代には鉱毒問題でもめた歴史があります。1973年に閉山となっています(文献3)。
足尾山地の北側は日光地域と連結していますが、両地域を結んだ登山はほとんどされていないと思います。
(文献1)によると足尾山地は、全体に西側が高く、東側へと低くなって関東平野へと埋没するような地形的特徴を持っていることや、特に東部山塊はなだらかな斜面を持っていることから、約300万年前頃にはほとんど山地となっていない小起伏面であり、その後、足尾山地と関東平野の境目を支点として、西側が隆起、東側が沈降傾向の運動をして形成された傾動山地と推定されています。
山地の中央部を渡良瀬川(わたらせがわ)が流れ、その谷によって、東部と西部に分けることができます。説明の都合上、この章では渡良瀬川の東側を「東部山塊」、西側を「西部山塊」と称することにします。
東部山塊は、最高峰が地蔵岳(1244m)と全体的に低く、東へとなだらかな山麓部が広がり、東武日光線のラインあたりまで緩やかに下っています。
西部山塊は、皇海山(2144m)や庚申山(こうしんさん:1892m)などの2000m級の山があり、皇海山は日本百名山でもあるため、登山者が比較的多い地域です。
渡良瀬川の源流域には、以前は足尾銅山があり、四国の別子銅山と並ぶ、日本有数の銅鉱山でした。一方で、煙害で周辺の山がはげ山になったり、明治時代には鉱毒問題でもめた歴史があります。1973年に閉山となっています(文献3)。
足尾山地の北側は日光地域と連結していますが、両地域を結んだ登山はほとんどされていないと思います。
(文献1)によると足尾山地は、全体に西側が高く、東側へと低くなって関東平野へと埋没するような地形的特徴を持っていることや、特に東部山塊はなだらかな斜面を持っていることから、約300万年前頃にはほとんど山地となっていない小起伏面であり、その後、足尾山地と関東平野の境目を支点として、西側が隆起、東側が沈降傾向の運動をして形成された傾動山地と推定されています。
(2)足尾山地主要部の地質
産総研 「シームレス地質図v2」を見ると、足尾山地のほとんどが、ジュラ紀の付加体型地質で形成されています(皇海山、庚申山付近は除く)。
この地質帯は、日本列島の基盤の地体構造区分上、足尾山地の名を取って、「足尾帯」と呼ばれています(文献2)。
足尾山地における「足尾帯」を構成している地質は、砂岩、泥岩といった陸源性のものと、チャート、石灰岩、玄武岩といった、海洋プレート起源のものが混じっていて、典型的な付加体型の地質を示しています。
この「足尾帯」は、現在、周囲と孤立したゾーンとなっていますが、日本海拡大/日本列島移動イベント(約20-15Ma)以前には、西南日本内帯に広く広がる、ジュラ紀付加体である「丹波―美濃帯」と、一連であったと推定されています。
つまりジュラ紀(約2.0-1.5億年前)から日本海拡大イベント(約20-15Ma)までの長期間、関東北部から新潟付近まで、中国地方、関西北部、中部地方北部と一つながりの地域だったということを証明する、重要な地帯と言えます。
なお「足尾帯」に属するジュラ紀付加体地質は、足尾山地だけでなく、さらに東北地方側へと点在しており、南会津、越後山地北部、さらに飯豊山地付近にも存在し、最北端は朝日連峰の西側の麓に分布しています。ここまでを、地質学での地体構造区部上、「足尾帯」と呼ばれています。
※ ”Ma”は百万年前を意味する単位
この地質帯は、日本列島の基盤の地体構造区分上、足尾山地の名を取って、「足尾帯」と呼ばれています(文献2)。
足尾山地における「足尾帯」を構成している地質は、砂岩、泥岩といった陸源性のものと、チャート、石灰岩、玄武岩といった、海洋プレート起源のものが混じっていて、典型的な付加体型の地質を示しています。
この「足尾帯」は、現在、周囲と孤立したゾーンとなっていますが、日本海拡大/日本列島移動イベント(約20-15Ma)以前には、西南日本内帯に広く広がる、ジュラ紀付加体である「丹波―美濃帯」と、一連であったと推定されています。
つまりジュラ紀(約2.0-1.5億年前)から日本海拡大イベント(約20-15Ma)までの長期間、関東北部から新潟付近まで、中国地方、関西北部、中部地方北部と一つながりの地域だったということを証明する、重要な地帯と言えます。
なお「足尾帯」に属するジュラ紀付加体地質は、足尾山地だけでなく、さらに東北地方側へと点在しており、南会津、越後山地北部、さらに飯豊山地付近にも存在し、最北端は朝日連峰の西側の麓に分布しています。ここまでを、地質学での地体構造区部上、「足尾帯」と呼ばれています。
※ ”Ma”は百万年前を意味する単位
(2)皇海山、庚申山付近の地質
全体に標高が低めの足尾山地のうち、西部山塊の皇海山(すかいさん)、庚申山(こうしんざん)、袈裟丸山(けさまるやま)は、標高=1800m~2000m台と、飛びぬけて高くそびえています。
これらの山は、実は第四紀中期(約160〜90万年前)(文献2)に形成された火山です。形成から長い間経っているため、火山らしい形状はほとんどとどめていませんが、岩がごつごつした庚申山、そこから西へと続く険しい鋸尾根、さらに鋸山の鋭い山頂部は、堆積岩ではなく、火山岩特有の特徴を示しています。
この一帯の地質は、「シームレス地質図v2」によると玄武岩質の溶岩で出来ています。
(なお、足尾山地の西側にそびえる赤城山、および北西側にそびえる上州武尊山は、いずれも第四紀火山ですが、地質は安山岩質となっています)
なおこれらの火山は、「足尾帯」の基盤が標高 約1000mに達している部分の上にそびえているので、いわば上げ底になっており、山体自体は、比高が800-1000m程度の比較的小型の火山といえます。
これらの山は、実は第四紀中期(約160〜90万年前)(文献2)に形成された火山です。形成から長い間経っているため、火山らしい形状はほとんどとどめていませんが、岩がごつごつした庚申山、そこから西へと続く険しい鋸尾根、さらに鋸山の鋭い山頂部は、堆積岩ではなく、火山岩特有の特徴を示しています。
この一帯の地質は、「シームレス地質図v2」によると玄武岩質の溶岩で出来ています。
(なお、足尾山地の西側にそびえる赤城山、および北西側にそびえる上州武尊山は、いずれも第四紀火山ですが、地質は安山岩質となっています)
なおこれらの火山は、「足尾帯」の基盤が標高 約1000mに達している部分の上にそびえているので、いわば上げ底になっており、山体自体は、比高が800-1000m程度の比較的小型の火山といえます。
(参考文献)
文献1)貝塚、小池、遠藤、山崎、鈴木 編
「日本の地形 第4巻 関東・伊豆小笠原」 東京大学出版会 刊(2000)
のうち、2−4章 「足尾山地と渡良瀬川」の項3
文献2)日本地質学会 編
「日本地方地質誌 第3巻 関東地方」朝倉書店 刊 (2008)
のうち、2.3章「足尾山地」の項
および、7−3章 表7.3.1 「関東地方の第四紀火山」の項
文献3)ウイキペディア 「足尾銅山」の項
2021年2月 閲覧
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B6%B3%E5%B0%BE%E9%8A%85%E5%B1%B1
「日本の地形 第4巻 関東・伊豆小笠原」 東京大学出版会 刊(2000)
のうち、2−4章 「足尾山地と渡良瀬川」の項3
文献2)日本地質学会 編
「日本地方地質誌 第3巻 関東地方」朝倉書店 刊 (2008)
のうち、2.3章「足尾山地」の項
および、7−3章 表7.3.1 「関東地方の第四紀火山」の項
文献3)ウイキペディア 「足尾銅山」の項
2021年2月 閲覧
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B6%B3%E5%B0%BE%E9%8A%85%E5%B1%B1
このリンク先の、6−1章の文末には、第6部「関東北部の山々の地質」の各章へのリンク、及び、序章(本連載の各部へのリンクあり)を付けています。
第6部の他の章や、他の部をご覧になりたい方は、どうぞご利用ください。
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【書記事項】
初版リリース;2021年2月7日
△改訂1;文章見直し。6−1章へのリンク追加。書記事項追加。
△最新改訂年月日;2022年1月3日
△改訂1;文章見直し。6−1章へのリンク追加。書記事項追加。
△最新改訂年月日;2022年1月3日
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