【はじめに】
この章では、登山界用語として良く使われる「南会津の山々」と、主に栃木県と福島県の県境を形成している「帝釈山地」(注1)の山々を、まとめて取り上げます。
1)本地域の地質概要
まずこの6−12章で扱う地域の名称を、説明の都合上、「会津/帝釈地域」と呼ぶことにします。(オーソライズされたものではありません。あくまでこの中での、仮りの呼び方です)
この「会津/帝釈地域」の地質を、産総研「シームレス地質図v2」で確認すると、この地域は大きく、東側と西側の2つの、異なった地質構成を持つゾーンに大別できるようです。
その東西両ゾーンの境界は、北端が、浅草岳の南側にある只見川に作られた、田野倉ダム(田野倉湖)あたりで、そこから南南西に地質境界が延び、帝釈山地の荒海山(1581m)付近を通り、さらに帝釈山地の関東平野側にある第四紀火山、高原山(1795m)のすそ野付近が南端となっています。
この2つの地域を、ここではそれぞれ、「会津/帝釈・西側ゾーン」、「会津/帝釈・東側ゾーン」と呼ぶことにします。
(これもまた、説明のための、この連載だけでの仮の名称であり、オーソライズされたものではありません)。
「会津/帝釈・西側ゾーン」は、主に、ジュラ紀(2.0-1.5億年前)の付加体である「足尾帯」の付加体型堆積層群と、白亜紀末(カンパニアン期〜マーストリヒチアン期;約84-66Ma)に貫入した花崗岩の、2種類の地質が大部分を占めています。
一方、「会津/帝釈・東側ゾーン」は、より若い、新第三紀(主に中新世;23-6Ma)の火山岩類でできています。なお、那須岳火山群は更に若い、第四紀火山(活火山)です。
なお両地域には、新第三紀 中新世末〜鮮新世(約8-2.6Ma)に多数形成されたカルデラ式火山の名残として、デイサイト/流紋岩質の火砕流堆積物で埋められた、円形のカルデラ火山の跡がいくつか見られます。
この地域では上記の通り、「会津/帝釈・西側ゾーン」は、比較的古い中生代の地質が大部分を占める一方で、「会津/帝釈・東側ゾーン」は、中生代の地質はない代わりに、新第三紀 中新世の地質が殆どを占める、という対照的な地質構造となっています。
このことについて詳しく触れた専門書や文献は見当たらなかったので、私の考えを述べます。
「会津/帝釈地域」より北側の、東北地方の日本海側及び奥羽山脈あたりは、中新世の火山性地質が広く分布しています。この地質は、以前はまとめて「グリーンタフ」と呼ばれていました(文献1)。
(「グリーンタフ」は、今でもしばしば使用される日本独特の学術用語ですが、最近は「 ”いわゆる” グリーンタフ」などと、表記されることが多いようです)
これらの地質はもともと、海底火山性の火山噴出物(凝灰岩、溶岩、火砕岩等)であり、噴出時あるいはその後に熱水により変質して、緑色の粘土鉱物(緑泥石など)を多く含んでいています。やや緑がかった色調のため、「グリーンタフ」(タフ:Tuff は、凝灰岩の意味)と呼ばれるようになった地質です(文献2)。
現在の解釈では、これらの中新世の火山噴出物は、約20-15Maに発生した「日本海拡大/日本列島移動イベント」の際に、伸張場(およびリフト)となった場所に地下からマグマが上昇してきて、多くの火山性噴出物が、主に海中に噴出、堆積したものと考えられています(文献3)。
「会津/帝釈・東側ゾーン」は、その南方延長部であると考えられ、「日本海拡大/日本列島移動イベント」(中新世)の際に形成された、比較的新しい地質だと言えます。
一方、「会津/帝釈・西側ゾーン」は、この第6部の他の章で説明した地域、山々と同様に、中生代の地質を含むゾーンであり、逆に「日本海拡大/日本列島移動イベント」に関わる、“いわゆる"「グリーンタフ」的な地質はほとんど分布していません。
これは、この一帯が中生代(一部は古生代)に形成されたものであり、日本海拡大/日本列島移動イベント」の際には、独立した一つの小地塊として、大陸側から現在の位置まで移動してきたのではないか? と推定します。
(ここまでの部分はあくまで私の私見、想像であり、学問的にオーソライズされたものではありません)。
以降、このゾーンでの主な山の地質の概要を説明します。
この「会津/帝釈地域」の地質を、産総研「シームレス地質図v2」で確認すると、この地域は大きく、東側と西側の2つの、異なった地質構成を持つゾーンに大別できるようです。
その東西両ゾーンの境界は、北端が、浅草岳の南側にある只見川に作られた、田野倉ダム(田野倉湖)あたりで、そこから南南西に地質境界が延び、帝釈山地の荒海山(1581m)付近を通り、さらに帝釈山地の関東平野側にある第四紀火山、高原山(1795m)のすそ野付近が南端となっています。
この2つの地域を、ここではそれぞれ、「会津/帝釈・西側ゾーン」、「会津/帝釈・東側ゾーン」と呼ぶことにします。
(これもまた、説明のための、この連載だけでの仮の名称であり、オーソライズされたものではありません)。
「会津/帝釈・西側ゾーン」は、主に、ジュラ紀(2.0-1.5億年前)の付加体である「足尾帯」の付加体型堆積層群と、白亜紀末(カンパニアン期〜マーストリヒチアン期;約84-66Ma)に貫入した花崗岩の、2種類の地質が大部分を占めています。
一方、「会津/帝釈・東側ゾーン」は、より若い、新第三紀(主に中新世;23-6Ma)の火山岩類でできています。なお、那須岳火山群は更に若い、第四紀火山(活火山)です。
なお両地域には、新第三紀 中新世末〜鮮新世(約8-2.6Ma)に多数形成されたカルデラ式火山の名残として、デイサイト/流紋岩質の火砕流堆積物で埋められた、円形のカルデラ火山の跡がいくつか見られます。
この地域では上記の通り、「会津/帝釈・西側ゾーン」は、比較的古い中生代の地質が大部分を占める一方で、「会津/帝釈・東側ゾーン」は、中生代の地質はない代わりに、新第三紀 中新世の地質が殆どを占める、という対照的な地質構造となっています。
このことについて詳しく触れた専門書や文献は見当たらなかったので、私の考えを述べます。
「会津/帝釈地域」より北側の、東北地方の日本海側及び奥羽山脈あたりは、中新世の火山性地質が広く分布しています。この地質は、以前はまとめて「グリーンタフ」と呼ばれていました(文献1)。
(「グリーンタフ」は、今でもしばしば使用される日本独特の学術用語ですが、最近は「 ”いわゆる” グリーンタフ」などと、表記されることが多いようです)
これらの地質はもともと、海底火山性の火山噴出物(凝灰岩、溶岩、火砕岩等)であり、噴出時あるいはその後に熱水により変質して、緑色の粘土鉱物(緑泥石など)を多く含んでいています。やや緑がかった色調のため、「グリーンタフ」(タフ:Tuff は、凝灰岩の意味)と呼ばれるようになった地質です(文献2)。
現在の解釈では、これらの中新世の火山噴出物は、約20-15Maに発生した「日本海拡大/日本列島移動イベント」の際に、伸張場(およびリフト)となった場所に地下からマグマが上昇してきて、多くの火山性噴出物が、主に海中に噴出、堆積したものと考えられています(文献3)。
「会津/帝釈・東側ゾーン」は、その南方延長部であると考えられ、「日本海拡大/日本列島移動イベント」(中新世)の際に形成された、比較的新しい地質だと言えます。
一方、「会津/帝釈・西側ゾーン」は、この第6部の他の章で説明した地域、山々と同様に、中生代の地質を含むゾーンであり、逆に「日本海拡大/日本列島移動イベント」に関わる、“いわゆる"「グリーンタフ」的な地質はほとんど分布していません。
これは、この一帯が中生代(一部は古生代)に形成されたものであり、日本海拡大/日本列島移動イベント」の際には、独立した一つの小地塊として、大陸側から現在の位置まで移動してきたのではないか? と推定します。
(ここまでの部分はあくまで私の私見、想像であり、学問的にオーソライズされたものではありません)。
以降、このゾーンでの主な山の地質の概要を説明します。
2)帝釈山、田代山
帝釈山地(たいしゃくさんち)は、栃木/福島の県境をなす山地ですが、登山対象としてはあまり目立つ山はないようです。
ここでは、主峰といえる帝釈山(2060m)と、その東隣りにある田代山(1927m)付近の地質と地形について説明します。
まず地質ですが、この一帯は「会津/帝釈・西ゾーン」に属し、ジュラ紀付加体である足尾帯の堆積岩と、白亜紀末に形成された花崗岩の2つがせめぎあったような地質となっています。(文献4)においても、この付近の堆積岩は、ジュラ紀付加体である足尾帯に属する、と結論付けられています。
ただし、産総研「シームレス地質図v2」でよく見ると、帝釈山と田代山の山頂部だけはぼつんと、デイサイト/流紋岩質の火砕流噴出物でできています。形としては白亜紀花崗岩の上に、火砕流が流れてきて堆積し、その後、帝釈山、田代山山頂部以外の部分は浸食によって失われたように見えます。
この火砕流の元がどこからきたか、明確ではありませんが、「シームレス地質図v2」で確認すると、帝釈山山頂から北北東 約10kmあたりに中心をもつ、半径約5kmの、火砕流堆積物で形成されたカルデラ火山の痕跡が残っています。
このカルデラ火山は、(文献5)によると、「木賊(とくさ)カルデラ」という名前が付けられており、活動時期は7.7-6.6Maとされているので、中新世末になります。距離的にも近いので、このカルデラ火山からの大規模火砕流の残存物が、帝釈山、田代山の山頂部を形成したと、私は推定します。
続いて、地形的な面を説明します。帝釈山はそうでもありませんが、田代山はその名で解るように、山頂部には池塘を持つ小さい湿原が広がっており、「田代湿原」として知られています。
田代山の山頂部も前節の会津駒ケ岳と同様に、小起伏面を持っており、それと積雪とが相まって、湿原が形成されたものと推定されます。
この小起伏面は、氷河期に「周氷河作用」によって形成された面と考えられていますが、具体的な研究はあまり行われていないようです(文献6)
※ ”Ma”は、百万年前を意味する単位
ここでは、主峰といえる帝釈山(2060m)と、その東隣りにある田代山(1927m)付近の地質と地形について説明します。
まず地質ですが、この一帯は「会津/帝釈・西ゾーン」に属し、ジュラ紀付加体である足尾帯の堆積岩と、白亜紀末に形成された花崗岩の2つがせめぎあったような地質となっています。(文献4)においても、この付近の堆積岩は、ジュラ紀付加体である足尾帯に属する、と結論付けられています。
ただし、産総研「シームレス地質図v2」でよく見ると、帝釈山と田代山の山頂部だけはぼつんと、デイサイト/流紋岩質の火砕流噴出物でできています。形としては白亜紀花崗岩の上に、火砕流が流れてきて堆積し、その後、帝釈山、田代山山頂部以外の部分は浸食によって失われたように見えます。
この火砕流の元がどこからきたか、明確ではありませんが、「シームレス地質図v2」で確認すると、帝釈山山頂から北北東 約10kmあたりに中心をもつ、半径約5kmの、火砕流堆積物で形成されたカルデラ火山の痕跡が残っています。
このカルデラ火山は、(文献5)によると、「木賊(とくさ)カルデラ」という名前が付けられており、活動時期は7.7-6.6Maとされているので、中新世末になります。距離的にも近いので、このカルデラ火山からの大規模火砕流の残存物が、帝釈山、田代山の山頂部を形成したと、私は推定します。
続いて、地形的な面を説明します。帝釈山はそうでもありませんが、田代山はその名で解るように、山頂部には池塘を持つ小さい湿原が広がっており、「田代湿原」として知られています。
田代山の山頂部も前節の会津駒ケ岳と同様に、小起伏面を持っており、それと積雪とが相まって、湿原が形成されたものと推定されます。
この小起伏面は、氷河期に「周氷河作用」によって形成された面と考えられていますが、具体的な研究はあまり行われていないようです(文献6)
※ ”Ma”は、百万年前を意味する単位
3)会津駒ケ岳
会津駒ケ岳(2133m)は、南会津地域の最も南にある山で、日本百名山でもあります。古くから秘境と言われる桧枝岐村(ひのえまたむら)にほど近く、また尾瀬にも近い場所に位置しています。
会津駒ケ岳とその周辺の地質を、産総研「シームレス地質図v2」で確認すると、桧枝岐村中心部から会津駒ケ岳山頂付近までは、(1)節でも説明した、ジュラ紀付加体(メランジュ相、足尾帯)で構成されています。部分的には、海洋プレート起源の玄武岩が小岩体として分布しています。
なお山頂部と、その北の稜線沿いにある中門岳(2060m)は、白亜紀に形成された花崗岩で構成されています。この花崗岩はこの一帯には広く分布しており、ジュラ紀付加体と交錯したような分布をしています。
推定ですが、元々はこの一帯の表層部はジュラ紀付加体である足尾帯の堆積岩類で覆われていたのが、数Ma前からこの一帯を含む関東北部ゾーンが隆起して、表層にあった付加体型地質の浸食が進み、そのために地下深くで形成された花崗岩が現在、地表のあちらこちらに分布しているのではないか、と推定します。
続いて、会津駒ケ岳とその周辺の地形的特徴を述べます。
桧枝岐村からの稜線部への登山道はかなり急な登りが続きますが、稜線の一角にある「肩の小屋」付近から、会津駒ケ岳山頂部付近、さらに稜線の続きにある中門岳付近までは、なだらかな稜線となっており、一部には池塘も見られます。
(文献2)では、この比較的平坦な部分は、氷河期における「周氷河作用」によって形成された小起伏面、と推定しています。
私はその影響だけではなく、前述のこの一帯の急激な隆起により、各河川の源流域にあたるこの会津駒ケ岳付近は、まだ河川浸食が十分進んでおらず、隆起前の小起伏面が残っているという解釈も可能ではないか?と考えます。
近くにある奥只見の平ヶ岳が、花崗岩でできているのに、まるで溶岩台地のように平坦な山頂部を持つ点も、同様の地形形成メカニズムではないだろうか? と、平が岳の章で述べました。
(この段落はあくまで私の私見です。学術的にオーソライズされたものではありません)
※ “Ma”は、百万年前を意味する単位
会津駒ケ岳とその周辺の地質を、産総研「シームレス地質図v2」で確認すると、桧枝岐村中心部から会津駒ケ岳山頂付近までは、(1)節でも説明した、ジュラ紀付加体(メランジュ相、足尾帯)で構成されています。部分的には、海洋プレート起源の玄武岩が小岩体として分布しています。
なお山頂部と、その北の稜線沿いにある中門岳(2060m)は、白亜紀に形成された花崗岩で構成されています。この花崗岩はこの一帯には広く分布しており、ジュラ紀付加体と交錯したような分布をしています。
推定ですが、元々はこの一帯の表層部はジュラ紀付加体である足尾帯の堆積岩類で覆われていたのが、数Ma前からこの一帯を含む関東北部ゾーンが隆起して、表層にあった付加体型地質の浸食が進み、そのために地下深くで形成された花崗岩が現在、地表のあちらこちらに分布しているのではないか、と推定します。
続いて、会津駒ケ岳とその周辺の地形的特徴を述べます。
桧枝岐村からの稜線部への登山道はかなり急な登りが続きますが、稜線の一角にある「肩の小屋」付近から、会津駒ケ岳山頂部付近、さらに稜線の続きにある中門岳付近までは、なだらかな稜線となっており、一部には池塘も見られます。
(文献2)では、この比較的平坦な部分は、氷河期における「周氷河作用」によって形成された小起伏面、と推定しています。
私はその影響だけではなく、前述のこの一帯の急激な隆起により、各河川の源流域にあたるこの会津駒ケ岳付近は、まだ河川浸食が十分進んでおらず、隆起前の小起伏面が残っているという解釈も可能ではないか?と考えます。
近くにある奥只見の平ヶ岳が、花崗岩でできているのに、まるで溶岩台地のように平坦な山頂部を持つ点も、同様の地形形成メカニズムではないだろうか? と、平が岳の章で述べました。
(この段落はあくまで私の私見です。学術的にオーソライズされたものではありません)
※ “Ma”は、百万年前を意味する単位
4)会津朝日岳
南会津山域は魅力的な山々が多いと言われていますが、残念ながら私は、会津駒ケ岳以外に登った山がありません。そこで、南会津地域の山々のもう一つの代表として、比較的名前が知られている会津朝日岳(1624m)の地質について、説明します。
産総研「シームレス地質図v2」で確認すると、この山も、これまでの山々と同様に、ジュラ紀付加体である足尾帯の堆積岩で構成されています。なお山腹の一部はこれも前にでてきた、白亜紀末に形成された花崗岩でできています。
なお、会津朝日岳の西方 約10kmには、前に越後山地の山として紹介した未丈ヶ岳(1553m)がありますが、この2つの山の間に大きな地質境界(一部は断層)があるようです。
その境界の東側の会津朝日岳側は、ジュラ紀付加体(足尾帯)に属していますが、境界の西側には古生代末・ペルム紀の火山岩(デイサイト/流紋岩質)や、非付加体型の堆積岩であるペルム紀の泥岩が分布しています。これらペルム紀の地質は奥只見付近にも分布しており、「上越帯」を構成する要素ではないかと考えられますが、詳しいことは解っていないようです。
産総研「シームレス地質図v2」で確認すると、この山も、これまでの山々と同様に、ジュラ紀付加体である足尾帯の堆積岩で構成されています。なお山腹の一部はこれも前にでてきた、白亜紀末に形成された花崗岩でできています。
なお、会津朝日岳の西方 約10kmには、前に越後山地の山として紹介した未丈ヶ岳(1553m)がありますが、この2つの山の間に大きな地質境界(一部は断層)があるようです。
その境界の東側の会津朝日岳側は、ジュラ紀付加体(足尾帯)に属していますが、境界の西側には古生代末・ペルム紀の火山岩(デイサイト/流紋岩質)や、非付加体型の堆積岩であるペルム紀の泥岩が分布しています。これらペルム紀の地質は奥只見付近にも分布しており、「上越帯」を構成する要素ではないかと考えられますが、詳しいことは解っていないようです。
5)博士山
南会津の山々は全体に、南ほど高くて2000mを超える山々もいくつかありますが、北にいくほど山の標高は低くなり、会津盆地に近いところでは標高1000〜1400m程度の山並みとなります。
その中で(私は登ったことがありませんが)、「博士山」(はかせやま:1482m)の地質を取り上げたいと思います。
会津盆地に近いこの辺りのゾーンは、この章の最初で定義した「会津/帝釈・東ゾーン」に属し、地質的には、新第三紀 中新世(約23-5Ma)の地質がほとんどとなり、中生代、古生代の地質は認められません。
博士山付近は、以下のように、各時代の火山岩が複雑に分布しています。
a)中新世中期(バーディガリアン期〜ランギアン期:約20-14Ma)の
デイサイト/流紋岩質火山岩
b)中新世末〜鮮新世(約8―5.3Ma)の大規模火砕流噴出物
(カルデラ式火山由来:入山沢カルデラ)(文献7)。
c)中新世末〜鮮新世(約8―5.3Ma)の、安山岩/玄武岩質火山岩
なお、博士山の山体は、上記c)の火山岩で出来ており、(文献8)によると、活動時期は約280万〜250万年前とされている、古い成層火山の残りです。
いずれにしろ博士山を含む、この章で言う「会津/帝釈・東ゾーン」一帯は、約20−15Ma(中新世)に起きた「日本海拡大/日本列島移動イベント」の影響を大きく受けたのち、その後の鮮新世(約5-2.6Ma)や第四紀(約260万年以降)も活動した、活発な火山活動によって、その地質が構成されているようです。
※ ”Ma”は、百万年前を意味する単位
その中で(私は登ったことがありませんが)、「博士山」(はかせやま:1482m)の地質を取り上げたいと思います。
会津盆地に近いこの辺りのゾーンは、この章の最初で定義した「会津/帝釈・東ゾーン」に属し、地質的には、新第三紀 中新世(約23-5Ma)の地質がほとんどとなり、中生代、古生代の地質は認められません。
博士山付近は、以下のように、各時代の火山岩が複雑に分布しています。
a)中新世中期(バーディガリアン期〜ランギアン期:約20-14Ma)の
デイサイト/流紋岩質火山岩
b)中新世末〜鮮新世(約8―5.3Ma)の大規模火砕流噴出物
(カルデラ式火山由来:入山沢カルデラ)(文献7)。
c)中新世末〜鮮新世(約8―5.3Ma)の、安山岩/玄武岩質火山岩
なお、博士山の山体は、上記c)の火山岩で出来ており、(文献8)によると、活動時期は約280万〜250万年前とされている、古い成層火山の残りです。
いずれにしろ博士山を含む、この章で言う「会津/帝釈・東ゾーン」一帯は、約20−15Ma(中新世)に起きた「日本海拡大/日本列島移動イベント」の影響を大きく受けたのち、その後の鮮新世(約5-2.6Ma)や第四紀(約260万年以降)も活動した、活発な火山活動によって、その地質が構成されているようです。
※ ”Ma”は、百万年前を意味する単位
(注釈の項)
注1)「帝釈山地」の定義と範囲について
「帝釈山地(たいしゃくさんち)」は、文献によって、定義、範囲、さらに名称すら統一されておらず、地名的にはややこしい名称です。
いくつかの定義、範囲例を以下に示します。
a)「日本の地形 第4巻 関東・小笠原」での定義と範囲
・名称は、「帝釈山地(下野山地)」
・範囲は、おおよそ、栃木と福島の県境とその周辺で、図示されている。
・さらに小区分としての「帝釈山地」は、那須火山、高原火山などを除いている。
b)「日本地方地質誌 第3巻 関東」での定義と範囲
・名称は「帝釈山脈」(たいしゃくさんみゃく)。
・範囲は「栃木県、福島県の県境をなす山列」とされているが図示は
されていない。
c)「ウイキペディア・帝釈山脈」の項での定義と範囲
・名称は「帝釈山脈」(たいしゃくさんみゃく)。
・範囲は「福島県南西部と栃木県北西部の境にあり、一部が群馬県にかかる山地」
としているが図示はされていない。
また、「広義の越後山脈に含まれる」との記載あり。
※ ウイキペディアのこの項は、2021年3月 閲覧。
「帝釈山地(たいしゃくさんち)」は、文献によって、定義、範囲、さらに名称すら統一されておらず、地名的にはややこしい名称です。
いくつかの定義、範囲例を以下に示します。
a)「日本の地形 第4巻 関東・小笠原」での定義と範囲
・名称は、「帝釈山地(下野山地)」
・範囲は、おおよそ、栃木と福島の県境とその周辺で、図示されている。
・さらに小区分としての「帝釈山地」は、那須火山、高原火山などを除いている。
b)「日本地方地質誌 第3巻 関東」での定義と範囲
・名称は「帝釈山脈」(たいしゃくさんみゃく)。
・範囲は「栃木県、福島県の県境をなす山列」とされているが図示は
されていない。
c)「ウイキペディア・帝釈山脈」の項での定義と範囲
・名称は「帝釈山脈」(たいしゃくさんみゃく)。
・範囲は「福島県南西部と栃木県北西部の境にあり、一部が群馬県にかかる山地」
としているが図示はされていない。
また、「広義の越後山脈に含まれる」との記載あり。
※ ウイキペディアのこの項は、2021年3月 閲覧。
(参考文献)
(文献1)地質団体研究会 編 (監修 湊)
新地学教育講座 第8巻 「日本列島の歴史」東海大学出版会 刊 (1976)
のうち、第4章「グリーンタフ造山運動」の項
(文献2)ウイキペディア 「グリーンタフ」の項
2021年3月 閲覧
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%95
(文献3)日本地質学会 編
「日本地方地質誌 第2巻 東北地方」朝倉書店 刊 (2017)
のうち、第3部「(東北地方の)地質構造発達史、
第3.2.2節 「後期新生代の構造発達史と火成活動史」の項。
(文献4)日本地質学会 編
「日本地方地質誌 第3巻 関東地方」朝倉書店 刊 (2008)
のうち、第2.4.1節 「帝釈山脈の足尾帯」の項。
(文献5)ネット情報 (一般社団法人)「東北地質調査業協会」のサイト
のうち、「東北の地質」>「福島県の地質」のうち、
第8図 「福島県会津―奥羽脊梁山脈地域のカルデラ分布図」
(2021年3月 閲覧)
https://tohoku-geo.ne.jp/information/daichi/img/53/03.pdf
(文献6)貝塚、小池、遠藤、山崎、鈴木 編
「日本の地形 第4巻 関東・伊豆小笠原」東京大学出版会 刊(2000)
のうち、2−1章 「越後山脈と帝釈山地」の項。
(文献7)
(現)産総研 地質ニュース 1992年11月号 p67
「5万分の一地質図 若松 刊行される」のページ
(2021年3月 閲覧)
https://www.gsj.jp/data/chishitsunews/92_11_14.pdf
(文献8)「産総研 地質調査総合センター」のネットデータ
「第四紀火山岩体・貫入岩体 データベース」
のうち、「博士山」の項 (2021年3月 閲覧)
https://unit.aist.go.jp/ievg/dger/db/QVDB/v/204/020.html
新地学教育講座 第8巻 「日本列島の歴史」東海大学出版会 刊 (1976)
のうち、第4章「グリーンタフ造山運動」の項
(文献2)ウイキペディア 「グリーンタフ」の項
2021年3月 閲覧
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%95
(文献3)日本地質学会 編
「日本地方地質誌 第2巻 東北地方」朝倉書店 刊 (2017)
のうち、第3部「(東北地方の)地質構造発達史、
第3.2.2節 「後期新生代の構造発達史と火成活動史」の項。
(文献4)日本地質学会 編
「日本地方地質誌 第3巻 関東地方」朝倉書店 刊 (2008)
のうち、第2.4.1節 「帝釈山脈の足尾帯」の項。
(文献5)ネット情報 (一般社団法人)「東北地質調査業協会」のサイト
のうち、「東北の地質」>「福島県の地質」のうち、
第8図 「福島県会津―奥羽脊梁山脈地域のカルデラ分布図」
(2021年3月 閲覧)
https://tohoku-geo.ne.jp/information/daichi/img/53/03.pdf
(文献6)貝塚、小池、遠藤、山崎、鈴木 編
「日本の地形 第4巻 関東・伊豆小笠原」東京大学出版会 刊(2000)
のうち、2−1章 「越後山脈と帝釈山地」の項。
(文献7)
(現)産総研 地質ニュース 1992年11月号 p67
「5万分の一地質図 若松 刊行される」のページ
(2021年3月 閲覧)
https://www.gsj.jp/data/chishitsunews/92_11_14.pdf
(文献8)「産総研 地質調査総合センター」のネットデータ
「第四紀火山岩体・貫入岩体 データベース」
のうち、「博士山」の項 (2021年3月 閲覧)
https://unit.aist.go.jp/ievg/dger/db/QVDB/v/204/020.html
(一般社団法人)「東北地質調査業協会」のサイトより、東北の地質>福島県の地質のサイト
このリンク先の、6−1章の文末には、第6部「関東北部の山々の地質」の各章へのリンク、及び、序章(本連載の各部へのリンクあり)を付けています。
第6部の他の章や、他の部をご覧になりたい方は、どうぞご利用ください。
第6部の他の章や、他の部をご覧になりたい方は、どうぞご利用ください。
【書記事項】
初版リリース;2021年3月22日
△改訂1;文章見直し、一部修正。6−1章へのリンク追加。書記事項追加。
△最新改訂年月日;2022年1月4日
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