未完の谷 稲荷川アカナ沢
- GPS
- 17:55
- 距離
- 24.5km
- 登り
- 6,222m
- 下り
- 5,881m
コースタイム
- 山行
- 16:25
- 休憩
- 1:46
- 合計
- 18:11
※稜線手前でGPS電池切れのため以降ジオグラフィカでログを取りました。
天候 | 曇り、時により霧雨 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2020年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
自転車
・霧降高原に下山後デポしていた自転車で稲荷川橋まで移動、その後雲竜渓谷登山口までタクシー利用。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
2020年7月5日の状況。 稲荷川アカナ沢 4級(関東周辺の沢、足尾山塊の沢)個人的観測で体感3級中 ・基本ゴルジュであるが沢床はガレとCSで覆いつくされていて淵や泳ぎは一切なし。歩くところを選べば膝より深いところはありませんでした。 気を付けるべきところは落石と土石流。 全般的にヌメリはなし。大鹿落しは土のスラブ登りのため靴はラバー推奨。ハンマーはミニバイル系が有効。 ・遡行図は大西さん作成のものを携帯。 コース状況 ・日向(ひなた)砂防堰堤を左岸高巻き〜ゴーロ歩き〜 ・最初の堰堤(小米平砂防堰堤)左岸巻き〜 ・次の堰堤を右岸巻き(残置ロープあり)〜登ると洞門分岐。 ・洞門分岐から稲荷川に下りて建設中の堰堤を通過して直ぐ左岸枝沢ガレから尾根に取りつく(この辺りは最新の氷瀑鑑賞用アプローチルートと一緒) ・一度沢床に下りて渡渉後対岸を登ると早川谷上流砂防堰堤工事道路に合流〜早川谷上流砂防堰堤広場に至る。 ・左岸雲竜瀑を通過すると胎内岩(と自分は呼んでいます) ●胎内岩右CS右(水流なし)6m 突っ張りで突破。 ●大岩滝4m 右から 次の5m滝はそのまま右を通過 ●4m滝(以前はヒョングリ)過去2回右のリッジから登りましたが今回は右岸CSから巻く(カムA0+sato6にお尻を押してもらう) ・Y字峡、左俣に七滝沢出合の黒岩滝10m、右俣からアカナ沢のゴルジュ帯が始まる。 ●3mCS滝 左から ●4mCS滝 右から ・ゴルジュを抜けて大崩壊地帯、2m位の滝を左から巻くと大鹿滝の連瀑帯。 ●大鹿滝の連瀑帯 下段2mは右、5mは右の階段状から簡単に巻ける。 中段ヒョングリ15mはロープ使用、左を登る。基本逆層だがしっかり順層もある。斜度は寝ているのと途中テラスもあり摂理ありでハーケン打ち放題(割れやすいが)落ち口手前左の側壁はガバカチ豊富だが剥がれやすい。 上段 3m滝、8m滝は斜度が寝ているので左をフリーで ●2段6mCS、下段は右から上段CSは左から ●4mCS滝は右岸から巻く。 ここの右壁を更に登ると立ち木のあるビバーク地帯。そこから対岸に懸垂過酷+ガレを下れば大鹿滝下に下りられる。 ●10m斜瀑 左から2足歩行で。位置的に鉱泉滝らしいが確証なし。 ・右岸に強烈な支沢(ゴルジュ)出合の小滝周辺の岩は水の成分で白い。 ・ここから奥ノ曲り廊下で土壁主体のゴルジュ地帯。 ・右岸に支沢出合の鉄鉱泉滝120m位あり、本流は癒しのナメ床あり。 ●アカナ滝(本沢滝)土壁2段35m直瀑は手前の2俣の右俣大鹿落しから大高巻き、ガレザレを登るのでゴルジュハンマーやミニバイルが有効。 右岸ガレのピナクル通過後大きく左に回り込むのが本来のルートらしい。 がそこまで左に回り込まず乗越せそうなところを詰めて大鹿落しを突破。 岩はほぼ浮石。最後被っていて露出していた木の根に捕まり登ろうとしたが10本以上ある木の根、木の幹は全て腐っていて抜けた(泣) クライムダウンして隣のリッジに移動(おたすけロープ伝助で確保)してを繰り返す。 ・大鹿落し右岸の結構高い位置で乗越したので尾根筋を下り斜度の増したところから懸垂下降2本でアカナ滝上流部二俣の右俣に下りた。 ・二俣に戻り左俣を遡行。 ●8m滝 土壁で岩のホールドが露出している。土が硬くホールドも剥がれない。水流右を登る。 ・二俣、本流左俣だが時間の都合上右俣を選択。一里ヶ曽根西の鞍部へ至る。もう少しで稜線なのにゴルジュ地形に驚く。雪渓のこっていましたが既に沢床の水は枯れているので緊張感なく通過できる。 ・稜線に到着後一般登山道を奥舎跡〜赤薙山〜霧降高原に下山。 jaian37 |
写真
装備
個人装備 |
ゴルジュハンマー
捨て縄
スリング
行動食
ヘッデン
遡行図
地形図
カメラ
確保器
ヘルメット
沢靴
ワイヤブラシ
レインウェア
Tシャツ
長袖インナー
ソフトシェル
ズボン
靴下
グローブ
雨具
着替え
靴
ザック
昼ご飯
地図(地形図)
トポ
コンパス
計画書
ヘッドランプ
GPS
ファーストエイドキット
常備薬
保険証
携帯
時計
タオル
ナイフ
ハーネス
カラビナ
|
---|---|
共同装備 |
8.5mm60mダイナミックロープ
7mm10mスタティックロープ
ハーケン
ボールナッツ
カム0.3〜0.75
ツェルト
|
備考 | 成瀬陽一氏、青島靖氏:2003年08月22日 https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-29368.html 山登魂:2005年8月14日 https://yama-to-damashii.outdoor.cc/20050814%20akana/20050814%20akana001.htm 山登魂は他にも2007年6月遡行を確認。 きのぽん、角幡唯介氏:2008年06月17日 http://selfbelay.seesaa.net/article/100875287.html 大西良治氏:2009年10月16日 渓谷登攀発売後soloistは現在閲覧不可 Fumiya2012氏:2018年07月23日 https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-1571926.html 参考書籍 渓谷登攀:大西良治氏2020年3月 日光四十八滝を歩く:奥村隆志氏2000年3月 足尾山塊の沢:岡田敏夫氏昭和63年7月 関東周辺の沢:アカナ沢のページ執筆・遡行図は岡田氏(足尾山塊の沢と同じ内容) |
感想
稲荷川
日光一の暴れ川といわれる稲荷川は女峰山東斜面を源とする七滝沢と一里ヶ曽根から流れるアカナ沢を合わせ、急峻な渓谷を形成している。
その上流部は特に雲竜渓谷とよばれ、岳人たちをひきつけてやまない。
この雲竜渓谷は大雨のたびに流れを変え、岩なだれを起こす未完の谷で、年々、その渓相を変えている。
『日光四十八滝を歩く』より抜粋。
私のバリエーション登山の原点は雲竜渓谷から始まりました。
内ノ外山
黒岩旧道
七滝尾根からの前女峰山
今は大鹿落し崩落拡大のため消失してしまった赤薙バットレス・トナカイルート。
そしてアカナ沢
アカナ沢を代表する大鹿滝。
1度目は眺めるだけ。
2度目は高巻き失敗。
3度目は登攀のため訪れたものの滝に土砂が乗っていたため諦めて高巻く。
今回4度目にして登攀することが叶いました。
そして良くはない条件でありましたがアカナ滝上流部まで無事遡行することができました。
決行していなかったら今週末も歯軋りしながら自宅待機していたと思います。
恐怖と寒さに耐えながら付いて来てくれたsato6に感謝。
稲荷川 アカナ沢 完全遡行
去年胎内滝て敗退して以来(この時は、なにも知らない沢登感覚)、この日がいつか来るなと頭にはありました。
調べてみるとアカナ沢の記録の少ないこと‥どの記録を見ても恐怖‥もろく支点のとれない登攀、高巻きの落石の一斉放射の的場(渓谷登攀 大西良治さんの記録より・今までの記録では完全遡行は有名なところでは大西良治さん・成瀬陽一さん・青島靖さんペア、アカナ沢は稀に詰められる)脆い土壁と剥がれ落ちる岩‥常に地形を変える滝、たまたま運よく全て好条件であっても油断はできない場所(現状は行ってみないと分からない)
現に2016 jaiさんのソロの記録と胎内滝、大鹿滝も2016は下部は土砂に埋もれ中段あたりは逆層の岩に土砂がのっていたと‥その他いくつかの滝が姿を変えていました。去年とも違う‥今ある遡行記録も参考には出来ません。完全遡行も出来るか確信はない。それ以上に安全に遡行できるかも‥正直な気持ち想像しただけて行く気になりませんでた。 jaiさんの数年前からのアカナ完全遡行の夢。一緒に行きたい。成し遂げたいという気持ちと、一緒に行くにあたっての計画の深さを知り(一緒にいくパートナーに対しての安全やエスケープルートなど様々な状況を想定し考えてあった)。何度か断るも行こうと決意‥(内心まだ怖いです)
当日、目をキラキラさせるjaiさん‥あなたの頭の中を見てみたいと思いながらも。遡行開始。美しく深いゴルジュに囲まれ緊張感が増す、いくつもの滝は形をかえ、前はフリーで登れた場所も登れない。全てにおいて落石はつきもの‥登攀中の支点もカムもハーケンも決まらない(師匠談)それだけ脆い岩‥確認しながら足や手を置く岩も信用できない剥がれ落ちる‥ザイルを引くたびに落石、小さいものは当たり大きな岩は何とか退け‥遡行‥シャワーの水圧も凄まじく足のスパッツが取れる‥登れる気がしない‥(師匠のお助けロープにて登る)寒さから全身ガクブルになる‥場所によりシャワーと一緒に岩が飛んでくる‥一番恐ろしい高巻きも今回は静かに見えたが‥巻きながら脆さを実感ゴルジュハンマーをピッケルの様に使う、足場を踏み固めるも固まらない‥ずざざざーと岩とともに崩れ落ちる‥jaiさんの後を追いたいが追えない‥別方向から登らないと落石の嵐で命の保証はない(まるで蟻の巣地獄の様)‥ときよりjaiさんの驚いた声が響く‥登りつめ二人で安堵したのもつかの間、(私はこれで終わった感)時間を確認し‥師匠『ヘッテン下山かな‥まだだよ、これでは完全遡行にならない』と‥心で泣きました。藪こぎ後‥懸垂下降‥その後滝をいくつか登り女峰山手前の稜線までつめ(途中雪渓あり)登山道でキスゲ平まで下山‥その後デポしておいた自転車で11キロほど雲竜渓谷登山口まで‥体力落ちたのに良く帰れたとフラフラしながら思い無事に帰宅。
今回の遡行は自分自身‥今までにない経験となったのは間違いありません(フリー以外全てセカンドだけども)、最後の1445段の階段終了間近 jaiさんが私の手をとり、一緒に手を繋ぎゴール。jaiさんからの感謝の気持ち✨忘れられません、私もだよと思うのでした。反応鈍くてごめんねw‥jaiさんの情熱と超人級の体力、強いメンタル 今まで一緒にいて理解しているつもりでしたが思った以上でした‥もはや同じ人間に思えない。着いて行けた私にも今回は頑張ったと言いたいw
そして同じ景色を一緒に見続ける為にもっと努力が必要だなと思うのでした。全ては、大きな怪我なく生きて帰れたから
私自身、今回の様な遡行は今後ないと思います(アカナ沢)、決して簡単にお薦め出来る沢ではありません(ゴルジュの雰囲気も滝もカッコいいのですが)。
どんな場所も日常も完璧な安全の保証はない、いかなる場合もできる限りの対策は必要で、いつ何により自分の命が尽きるのかもわからない。だからこそ、今を精一杯生きたい命の尊さを感じるのであります。
翌日、二人とも筋肉痛(゜∀。)珍しくjaiさんも
コメント
この記録に関連する登山ルート
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まずは、目標の完全遡行、おめでとうございます!
久しぶりに読みごたえのあるレコで、ワクワクとドキドキが伝播しました。
予期できない地形の変化とロシアンルーレットのような群発落石、アカナ沢に関して、ここまで詳細の記事はお初でした。
satoさん、本当に女性では初かも(?)しれませんね。スゴいよ!!
前回の敗退から心折らずに、よくぞ…(拍手)
不利な天候にもかかわらず、無事故での踏破に安堵致しました。
jaiさんの執念とsatoさんのガッツに拍手×10したいっ!
お疲れさまでした(^_^)
Bicycle さん
こんにちは! ありがとうございます‼️
ご存知の通りかなり渋っていたアカナ沢‥無事に遡行してまいりました(;゚∇゚)
何せ巻きの落石が怖くて怖くて、避けきれなければアウトですし‥滝の登攀も大鹿滝に関しては途中何度かハーケンを打っては剥がれている様で‥恐ろしいと思いました💦
ハイパーv で遡行するjai さんの気がしれません(゜∀。)
現段階の記録では女性が完全遡行したの見たことないかも?とjai さんから聞いたので、もしかして初?と思いましたが、何処かで誰かがもう達成しているのでは?とも思ってます。
前回の敗退の時は、滝行に終わり‥岩の脆さも分かり撤退でホッとしてましたがw
今回は、jai 師匠の完全遡行なる夢を叶える為に気持ちの切り替えに二週間ほどかかりましたw
無事に達成できてホッとしてますよ(*´-`)
30年前に作成された遡行図まんまの変わらぬ利根川本谷に対して
いくら何でも変わり過ぎのアカナ沢。
未完の谷を満喫しました。
sato6は今回勇気を試される遡行になりました。
1週間前の赤岩滝登攀の経験が活かされたと思います。
jaiさんの執念⁉念願のアカナ沢、おめでとうございます!
ここについていったsatoさんもすごい〜!
写真からでもガレガレが伝わってきます。級だけじゃない難易度を感じます。怖
下山の時刻!ひー!すごいです。
貴重な記録なのは間違いないんだけど、
jaiさんからは静かな闘志が、satoさんの文からは臨場感とドキドキが伝わってきました。
それぞれの想いとか、絆を感じる素敵な記録✨
完全燃焼ですね!
改めておめでとうございます。
Power of love♥
FEEL さん こんばんは★
ありがとうございます(*ov.v)o
jai さんに何度もアカナ沢だよ❗と言われても今までの記録を見ては‥なかなか首を縦に振れなくて‥💦感想にも書きましたがjai さんのアカナ沢に対する熱い思いと、思いの詰まった計画を見て‥自分が行こうと思えたときは、行ける日だと勝手に思いw今回無事に遡行できました。
でも、大鹿落とし越えるまでだと、勝手に思っていたので、まだまだぁーーヽ(`ω´)ノと言われた時には‥『えええ、終わりじゃないの〜』と独り言いいながら藪こぎしてましたw
jai さんの夢を叶える為に‥バテバテでしたが実現出来て良かったです。
私は下山中、足はつるし‥ヘロヘロゴールでしたが、jai さんは、同じ滝を2-3回は登ったり降りたり引き上げたりしているのに普通に歩いてましたw超人ですわ(ヽ゚д゚)
自分とsato6二人のパーティとしての力を出し切った遡行になりました。
大鹿落しを乗越し終えた時間、常識的にそのまま奥舎跡に撤退なんですけど
sato6には
『アカナ沢に来ることはもう2度と無いからお願い!』
アカナ滝上流部へ下りました。
あの時はそう思いました(笑)
心 気持ちも強い
貴方が記しているように 30年変わらない・利根本谷 毎年変わり過ぎる危険な岩質の・アカナ沢
利根本谷は私も難しくない!と感じましたが アカナ沢は20年前に私は手早く・敗退しました。
特別な執念も無いとゴールできないアカナ沢 貴方は、強い
iroiroさん こんにちは👋😃
地形がこんなに変わる沢‥他にあるんでしょうかね?
そしてjai さん本当に凄い執念ですよね‥その執念と押しに負け、気持ちを整えアカナ沢を共に遡行しましたが‥大鹿落としだけは恐ろしかったです( ´д`)
今回で。最初で最後‥無事に完全遡行をと思いながら挑みました。
やはり思いの強さには敵いませんね。
今行けて良かったと思えるのは、命があったからです。
大鹿滝下段と胎内滝、この2つは訪れる度に大きく姿を変えていてその度に緊張を強いられました。
地元日光の方が毎年の様に雲竜渓谷写真集を作成、日光市図書館に寄贈されています。
先人から受け継いだ昭和初期から今にかけて雲竜渓谷の変化がうがえました。
下流堰堤の効果もあり土砂の堆積で渓谷は昭和30年代よりも10m浅く・・・
今後雲竜瀑F1や胎内滝が消えて無くなる日も来るかもしれません。
今ある姿で遡行出来て良かったと思います。
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