万太郎谷本谷
- GPS
- 32:00
- 距離
- 15.8km
- 登り
- 1,330m
- 下り
- 1,277m
コースタイム
天候 | 猛暑 沢につかっても震えがこない。 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2013年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
東京起点沢登りルート120というガイドブックを参考にして遡行しました。とてもみやすいいい本ですが、今回は1の滝と3の滝上段の高巻きと稜線への詰めのルート取りの表記がどうにも理解しづらく迷わされました。 |
写真
感想
真夏の沢登り一泊行程を計画。
ガイドブックでみてずっとあこがれていた、人気の沢、万太郎谷本谷にいってきた。
レンタカーで下山地点の土合駅に行き、駅前に駐車して沢の装備を身につける。そこから土合の長い階段をくだって電車でひと駅移動して土樽駅へ。駅前からは超猛暑の中入渓点まで1時間少々歩く。この間に飲み会明けのもりちゃんがダウン。入渓点まえでしばし休憩した。
でも万太郎は泳がざるをえないゴルジュなども多いみたいなので今日のような猛暑は大歓迎だ。これまでの沢登りのなかでも一番暑い一日だったのではないだろうか。
入渓からゴーロをしばらく歩くとそこからは白くみがかれたツルツルのナメがつづく。自然が生み出した奇跡的な曲線美をとことん堪能させてもらった。すげー、きれーと単純な感嘆がとまらなかった。
そして初日のメインのオキドキョウのトロ。写真の数倍感動的、エメラルドグリーンのハーフパイプが一直線に切れ続いている。もう泳いで写真とりまくり。
今思いだしてもうっとりするな。
…今回、手放しでたのしめたのはここまでだったか。
オキドキョウ後も大小のほどよい滝をたのしみながら進むと初日の核心、一の滝が現れた。
でかい、ともかく立派な滝。巻く気できているがとりあえず直登ラインをさぐってみる。なんとなく逆層ぎみに見えるし、加えて残置のハーケンが見当たらない。今回は手持ちのハーケンが二枚しかないし、やはり直登は問題外だろう。(なにより今回持参の30mロープだと滝を抜けてさらに奥のビレイ適所までいくのは無理だろう。)
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・今回の遡行は山と渓谷社の東京起点沢登りルート120を参考にしてます。
・全員この沢は初めてでした。
予定どおり一の滝を高巻きすることにする。手持ちのガイドには狆し戻って左岸のルンゼから巻く爐筏載がある。そうかルンゼ(凹角、樋状、コーナー、クーロワール、オープンブック)ならそこのアレだな、と全員なんの迷いもなく15mほどもどったところの草付の泥壁状を登る。すぐに歩きではすすめないほどの傾斜になりロープをだす。しかもここにいたるまでこの内容で残置が一本もない。(この時点でなにかおかしいことはうすうす感ずいてはいた。なんといってもこの沢は初級のコースなのだから。)
ロープでビレイし、濡れた泥壁を絶妙な立ちこみでいく。たった二本しかないハーケンも核心前でつかいきる。でも後すこしで灌木のあるテラスにでられる。そのうえには踏み跡らしきものも見える。なんども逡巡しながらぬれたミズゴケをまとったスタンスに立ちこむ、取りに行くホールドは一叢の草だ。一瞬家族の顔が横切るほどのムーブだった。今冷静になって思えばやはり初級の沢の高巻であんなムーブがでてくるはずがない。でもそのときはもう目の前の灌木テラスしか目に入らなかったのだ。おかげさまでスタンスも滑らず、草ホールドもがっしりと塊でホールドできたので無事テラスまでぬけられた。
とりあえず灌木にビレイ点作ってフォロー2人をゴボウ気味にテラスにあげる。
そしてテラスから先の踏み跡らしきものを進むと…、ヤブ。
どう考えてもひとがとおったことのないヤブ。それでもあそこまでがんばったのだからなんとかヤブを漕いで滝の上にでれないものかと思って進むがまったく滝にとどかず。あえなく登ったルートを懸垂で降りることにする。
このあたりからもりちゃんの疲労が濃くなってきた、一度ヤブの深みにはまり、ちょっとしたパニックになってしまい、少々パーティーがやばくなってきたことを自覚する。
でもまずはこの泥壁をおりなければ。こういうときほど努めて落ち着いて、動作をなんども確認しながら懸垂工作をする。われわれのロープは30m、しかもハーケンは3本しかない。このあとの滝の登攀のことを考えると残置するわけにはいかない。なので2人を懸垂でおろし、途中のワンピッチは自分がハーケンを回収して気合いのクライムダウン。濡れたいやらしいところを全力でつま先をのばしており切った。
なんとか3回の懸垂でクライムダウンできるところまでおりた。捨てハーケンもなんとか一本ですんだ。今回の前半きもちのいいトロのなかで「ハンマー邪魔だなー、別にもってこなくていいかなー。」なんて考えていたが今回の遡行はハンマーもってなかったら終わっていたな。
もう一度一の滝にもどる。やはり直登は30mロープとハーケン二枚ではきびしいか、ふと近くをさがすとすぐそこのリッジ状(島状、凸角)に踏み跡があった。すこしつめるとあきらかにこれが正解。自分の知るかぎりではこれを”ルンゼ”とはいわないと思う。もちろんこれは言い訳、あんなきびしい泥壁を前にしたら、早い段階で懸垂でおりる判断ができてもよかったかもしれない。
一の滝の高巻をこなし、夕暮れせまるなかなんとか二の滝も越えてビバークポイントをみつけた。18時頃の到着、ぎりぎりだ。もりちゃんはお初の(しかも厳しめの)懸垂下降をなんどもこなし、かつ飲み会あけだったこともあり、疲労困憊のようだった。
いそいでタープをはり、夕飯をつくって、薪をあつめる。
たらふくめしを食ったらもう酒飲む元気もなく、すくない薪によるたき火もあっという間に終わってしまった。それでもひさびさのじゅんちゃんとの山の会話を楽しんだ。
夜はシェラフカバーとwool1で十分、というか少々暑いくらいであった。
煮込みラーメンwithシャウ、キムチで朝食をすませて出発。やはりもりちゃんは前日の疲労があるようだ。今日はルートミスはゆるされない、最速、最短で登山道までぬけるつもりで出発した。そしてその決意はあっというまに三の滝でくだかれた。
三の滝。下段と上段にわかれる。まずは下段をさくっと、といきたいところだったが朝イチなのでそれなりに緊張した。そしてテラスにて上段を見上げて感想は、「ありえねー」いやー水流横切って滝の左側を登るの?すごい高さだし、下段の落ち口が足下でプレッシャーがただごとではないんだけど。これが初級?沢登りをなめてました。速攻で巻道をさがす。ガイドによると右の細い水流をつめてブッシュをぬける、とある。
とりあえず細い水流をめざすがいきなり悪い。ヌルヌル系だし、残置がない。なんとか左からバンド状をあるいて水流まで到達した。けっして簡単ではなかった。
一度ピッチを切って2人を迎える。がその後上部をめざしてもなかなか踏み跡がでてこない。また迷ったかとあせる。しばらくするとピッチを切ったすぐ上あたりにじゅんちゃんが微妙な踏みあとをみつける。結局それが正解。
結局結構な時間をかけて3の滝をクリアした。すでにもりちゃんが疲れ気味だ。それはそうだろう、昨日の途中からどうも緊張感の絶えない沢登りが続いている。
もう稜線まで一気に行こうと気合いをいれる。しかしここからが本当の地獄だった。
じゅんちゃんとふたり地図をみながらコンパスをあわせ慎重に源頭部をつめていく、そしてガイドブックの遡行図の1:1の二股を超える、しかししばらくすると再び1:1の二股がでてきた!これでわれわれは完全に判断に迷う。
左股をしばらくつめる、流れは続いている。正解っぽい。
右股をかなり先までつめる、あっという間に流れは消える。その後はずっと岩場がつづく。ガスだらけのなか先を見通すと稜線まで続いているようにみえる。だが
ガイドの“本流を忠実につめる”という描写とは微妙に異なる。ここで大雨となったこのルートをあきらめ残した2人のもとへもどる。やはり本流と思われる左を詰めようという意見に一致して左股にはいっていった。
(正解は右だった。後日、手持ちの別のガイドブックを見るととてもわかりやすく、奥の二股は右をいき、低いささやぶをかきわける登山道にでると明確にかいてあった。)
基本自分が先行し、危ないところをしらせながら進む。もうこの時点でもりちゃんが限界に近い、この道がたやすく登山道にでる道であること祈る。
ある程度のところでヤブが深くなる。なんてことだ間違いだろうか?とりあえず自分が先行して道の正否を確かめようとヤブを進む、すぐにヤブはかつて経験したことのないほどの密度で行く手をはばむ、斜面もどんどん急になってきた。それでもどうかんがえても方向はあっているのだからと前へ進む。そして気づく。自分は他2人のために先行して様子見をしているつもりだったがこんなヤブの斜面をすすんでしまったらもうもどれない。もう行ききるしかない。
しょうしょうパニックになるこのまま進んで抜けられるのか?もりちゃんはこのルートをぬけられるのか?不安をたちきるため大声で吠えながらすすむ。
長い長いヤブ漕ぎの時間がつづく。笹はいい。つかみやすいし、痛くないし、かき分けやすい。ただなんども棘だらけ草や、固い密集した灌木に行く手をはばまれる。
そして突如登山道を歩くハイカーが目にはいる。やったすくなくとも直進すればヤブ抜けはできる。そこからもしばらく必死にすすむ。ようやくヤブ抜けができたそこはなんと谷川の肩の小屋のすぐ近く。なんとほとんどルートはまちがっていなかったのだ。
すぐに荷物を置いて小屋番さんにルートを確認する。なんとこのルートを詰めてくる沢登りのひとも例年いるらしい。あとはひたすらふたりの到着をまつ。谷川の頂上にいったりきたりしながら2人がヤブのなかに見えないかさがす。とくにもりちゃんの体力が心配だった。まつこと数時間でようやく呼びかけの笛にじゅんちゃんが答えてくれた。そしてその姿を目視することができた。本当にうれしかった。
そこから2人のヤブ抜けはさらに長い時間がかかった。なんとか2人が小屋に到着したのは18時で、それと同時に大雨がふってきた。
もりはとても体力的に無理なので小屋に泊まってもらい、明日仕事のわれわれ2人は
雷雨のなかヘッデンで下山。こういうとき本当にトレランを鍛えておいてよかったと思う。じゅんちゃんは途中でひざが終わってしまったが、思い沢道具を背負ってよくあのスピードに途中までついてきたとおもう。結局肩から1時間40分ほどで下山。やっと車までたどりついた。
今回の遡行は本当にあやういところまでいったと思う。無事におわってよかったですまさず判断の分岐となった場面を反芻し、今後の経験としていかしたい。
……でもこのガイドブックの表記はちょっとどうだろう?
コメント
この記録に関連する登山ルート
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はじめまして、CAPPさん。
読んでいて、ハラハラしました 。
みなさん、無事でなにより。
万太郎谷、一人じゃムリそうですね。
万太郎谷に関して、お勧めのガイド本やネットの記録はありますか?
コメントありがとうございます。
今回の記録は少々大げさに書いてしまったかもしれませんが自分の登山史上なかなかのピンチではありました。
でもすべてはわれわれの判断ミスが招いた結果であります。
参考までにいうと当パーティーは全員この沢は初めて、当方はフリークライミング歴は10年ほどで年に一回ほど、近場の沢登りを楽しんでいる程度のキャリアです。Neuronさんの記録を拝見しましたが、これだけの経験がある方であれば遡行はまったく問題ないかとおもいます。
ちなみに一の滝の直登と3の滝の上段の直登は50mロープが必要だと思います。ただ思い出しても直登はわれわれにはちょっとシビアでした。(涙)
一の滝の巻きは本文を参考にしていただければと思います。
稜線への詰めですがこれは家に帰り、
「関東周辺沢登りベスト50コース:敷島悦郎氏著」を確認したら明確でした。3の滝を超えて1:1の二股を右に行き、最後に出てくるガイドのいう「奥の二股」も右にとるのが正解のようです。われわれはひだりの本流をつめてしまい、強烈なヤブ漕ぎになってしまいました。
おおげさな本文になってしまいましたが沢自体は自分の少ない経験のなかで最高の内容で、思い出に残る一本でした。Neuronさんの遡行が安全で楽しいものになるよう願っています。
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