ヤマレコなら、もっと自由に冒険できる

Yamareco

記録ID: 4165651
全員に公開
山滑走
甲斐駒・北岳

北岳バットレス ヒドゥンガリー滑走

2022年04月09日(土) ~ 2022年04月10日(日)
 - 拍手
GPS
32:00
距離
10.3km
登り
1,730m
下り
1,735m

コースタイム

1日目
山行
4:10
休憩
0:10
合計
4:20
5:20
5:20
190
8:30
8:40
60
2日目
山行
7:10
休憩
1:50
合計
9:00
3:00
60
4:00
4:00
150
大樺沢二俣
6:30
7:00
40
7:40
8:20
60
北岳山頂
9:20
10:00
120
白根御池小屋の冬季小屋は素晴らしいがアプローチに難あり。
天候 両日とも快晴
過去天気図(気象庁) 2022年04月の天気図
アクセス
コース状況/
危険箇所等
標高1950mぐらいまではツボ足、それ以降はシール歩行可能。藪多く面倒。
ルート全容
photo by takechan.24(インスタ)
2022年04月11日 16:15撮影
4
4/11 16:15
ルート全容
photo by takechan.24(インスタ)
橋から輝くエントリー部
3
橋から輝くエントリー部
二俣から白根御池への道は不明瞭
3
二俣から白根御池への道は不明瞭
素晴らしい小屋
2022年04月09日 16:05撮影 by  RICOH GR III, RICOH IMAGING COMPANY, LTD.
2
4/9 16:05
素晴らしい小屋
初日はとにかくのんびりでした
1
初日はとにかくのんびりでした
3時発でいざ!
2022年04月10日 05:27撮影 by  RICOH GR III, RICOH IMAGING COMPANY, LTD.
2
4/10 5:27
3時発でいざ!
輝く富士
2022年04月10日 06:34撮影 by  RICOH GR III, RICOH IMAGING COMPANY, LTD.
2
4/10 6:34
輝く富士
エントリー部
緊張
2022年04月10日 08:11撮影 by  RICOH GR III, RICOH IMAGING COMPANY, LTD.
3
4/10 8:11
緊張
緊張を紛らわす
2022年04月10日 08:12撮影 by  RICOH GR III, RICOH IMAGING COMPANY, LTD.
1
4/10 8:12
緊張を紛らわす
序盤は40〜50の気持ち良いスロープ
3
序盤は40〜50の気持ち良いスロープ
リグループはしやすい
4
リグループはしやすい
核心f2
2022年04月10日 09:01撮影 by  RICOH GR III, RICOH IMAGING COMPANY, LTD.
5
4/10 9:01
核心f2
落石多発地帯の流心をクライムダウン。念仏を唱えるしかない
5
落石多発地帯の流心をクライムダウン。念仏を唱えるしかない
f3はデラパージュ中心
4
f3はデラパージュ中心
やりきった!!一時間の格闘
2022年04月10日 10:11撮影 by  RICOH GR III, RICOH IMAGING COMPANY, LTD.
5
4/10 10:11
やりきった!!一時間の格闘
帰りも輝くエントリーのスロープ
2022年04月10日 12:05撮影 by  RICOH GR III, RICOH IMAGING COMPANY, LTD.
1
4/10 12:05
帰りも輝くエントリーのスロープ
撮影機器:

感想

ついに北岳バットレスを滑れました。
三浦大介さんが難攻不落のバットレスに見出した唯一の合理的なライン、日本のスティープルートの金字塔。可能性を信じ、スキーと己の技術を武器に深く切れ込んだガリーに飛び込んだ事は今なお驚異的です。
絶対にトレースしたかった偉大なライン。本当に嬉しいです。

■4月9日(土)快晴
0510広河原→0840大樺沢二俣→0940白根御池小屋/1830就寝

実は2週間ほど前にも挑戦していたのだが、最高にしょうもない理由で敗退してしまった。(詳細は割愛)
この土日は高気圧にすっぽりと覆われる予報。急激な昇温を含め、この週末を逃したら今シーズン中のチャンスは無いだろう。何とか色々と調整を付けて挑戦することにした。
広河原からしばらくは夏道を歩き、残った雪を拾って1900mあたりからシール歩行を開始する。上越や北アルプスの雪は多いようだが南アの雪は少ないように感じる。沢沿いの行動は難しいので夏道を辿るが、藪が多く閉口した。二俣〜白根御池の間も藪が多い。
10時前には白根御池小屋に到着し、初夏を思わせる陽気の下で翌日の準備を進める。下から見る限りガリーの雪は繋がっているようだ。後は、雪の状態と自分の技術を信じるだけ。担いできた酒で緊張をほぐし、18時半頃に就寝。

■4月10日(日)快晴
0305白根御池小屋→0400二俣→0630肩の小屋→0740北岳/0820滑走開始→0920二股/1000→1200広河原/1220

二俣に荷物をデポして大樺沢右俣を詰める。気温が高く、夜明け前から雪が緩み始めている。できるだけ急ぎたいところだが山頂に着いたのは8時前だった。
ドロップポイントからガリーを覗くと眼下にはまっさらなオープンバーンが広がっている。斜度は平均して45°、遥か下方にはガリーの屈曲点。転倒すれば下まで止まらないだろう。落石や雪崩が集まることも容易に想像できる。絶対に転ばずスピーディーに降りられるのか?地形的なリスクが非常に高いのでプレッシャーは凄まじい。今シーズン、ここまで積み上げたものを信じてガリーに飛び込んだ。
まずは雪面の状況を判断するため慎重にジャンプターン。エッジから伝わる雪の感触は良い。これなら大丈夫そうだ。次は思い切って連続ターンを決める。急斜面に吸い込まれるような感覚さえ感じるが恐怖は感じない。自分の身体の延長としてスキーを捉えられ、一種のゾーンに入ったような感覚だ。
いっしーとトップを交代しながら順調に高度を落としていくと屈曲点が近づいてくる。ここが核心となる「Hidden」部だろう。
第一関門となるF3は55°ほど。ここは横滑り〜斜滑降で無難にいなす。
少し幅広になったと思うのもつかの間、次の核心のF2が登場。ここは過去記録の通り氷瀑が露出しており板を脱ぐしかなさそうだ。アイゼンに履き替え、ダブルアックスでクライムダウンしていく。気温はグングンと上昇して小規模な落石や落氷が起き始めた。慎重に、しかし極力無駄を排除した動きで板を履ける場所まで移動する。
そして、最後のノド部のF1(50°)をデラパージュからの斜滑降で脱出すると眼下には大樺沢の大スロープが広がっていた…。ついにバットレスを滑ったのだ。

山岳スキーを志すものとして、三浦さんのラインを再トレースしたいと思っていた。緊張から開放されて自然と雄叫びが出る。
自分の山スキー人生の中でも忘れられない1本になった。

記録を読んでもイメージのできない、別世界なルートがある。鹿島槍北壁やbum's life、、、そしてこのヒドゥンガリーも自分とは無関係な、触れてはならないルートの一つだと思っていました。
今シーズン、不帰2峰や前沢奥壁など色んなスティープを滑る中で、ある程度の可能性を感じ取ることができました。先人たちの記録もあり選択肢の一つとして上がるまでになってきました。

SNS等を見るに今年の雪付きは上々。そしてやってきた週末は快晴高温!!
さあ行くぞ。何が出ても下りてこられる装備を詰め込んで北岳へと向かいました。

初日は白根御池まで。下部は藪やぐさぐさな雪に苦戦して何とか泊。

2日目は三時発で山頂へ。
凍り切っていないモナカラッセルをハッチさんにしてもらい、何とか目標の8時前ドロップポイントへ。

見下ろした感覚、斜面の雪を確かめた感触は完ぺき。
程よく柔らかいザラメだったので、安心して飛び込んでいくことができました。
意外と少ないスラフや程よく緩んだ雪のおかげか安心してターンをつなげていくことが出来ました。問題は落石。両脇にいくつも連なる岩塔からひっきりなしに落ちる落石。滑りやリグループポイントはリスクを減らしていくことが可能でしたが、核心部のF2では完全に落石や雪崩の通り道の中をクライムダウンする必要があります。
ここは日ごろの行いを信じて念仏を唱えながら下るしかありませんでした。

今回F3はしっかりつながっていたので思い切って岩を踏まないように滑れば残りは安全圏。
雄たけびを上げながら大樺の斜面を楽しみました。

実際に滑り降りてみて、初滑走者である三浦氏の凄みを感じ取ることが出来ました。
何とも合理的で美しく、どこからも見ることのできない冒険性までをも兼ね備えたこのライン。
かつて自分の中では神話でしかなかったこの記録を追体験することができ、あらゆるものが満ち足りた、そんな週末になりました。

お気に入りした人
拍手で応援
拍手した人
拍手
訪問者数:2199人

コメント

凄い❗️凄い‼️凄い❣️ 以上
2022/6/18 7:09
プロフィール画像
ニッ にっこり シュン エッ!? ん? フフッ げらげら むぅ べー はー しくしく カーッ ふんふん ウィンク これだっ! 車 カメラ 鉛筆 消しゴム ビール 若葉マーク 音符 ハートマーク 電球/アイデア 星 パソコン メール 電話 晴れ 曇り時々晴れ 曇り 雨 雪 温泉 木 花 山 おにぎり 汗 電車 お酒 急ぐ 富士山 ピース/チョキ パンチ happy01 angry despair sad wobbly think confident coldsweats01 coldsweats02 pout gawk lovely bleah wink happy02 bearing catface crying weep delicious smile shock up down shine flair annoy sleepy sign01 sweat01 sweat02 dash note notes spa kissmark heart01 heart02 heart03 heart04 bomb punch good rock scissors paper ear eye sun cloud rain snow thunder typhoon sprinkle wave night dog cat chick penguin fish horse pig aries taurus gemini cancer leo virgo libra scorpius sagittarius capricornus aquarius pisces heart spade diamond club pc mobilephone mail phoneto mailto faxto telephone loveletter memo xmas clover tulip apple bud maple cherryblossom id key sharp one two three four five six seven eight nine zero copyright tm r-mark dollar yen free search new ok secret danger upwardright downwardleft downwardright upwardleft signaler toilet restaurant wheelchair house building postoffice hospital bank atm hotel school fuji 24hours gasstation parking empty full smoking nosmoking run baseball golf tennis soccer ski basketball motorsports cafe bar beer fastfood boutique hairsalon karaoke movie music art drama ticket camera bag book ribbon present birthday cake wine bread riceball japanesetea bottle noodle tv cd foot shoe t-shirt rouge ring crown bell slate clock newmoon moon1 moon2 moon3 train subway bullettrain car rvcar bus ship airplane bicycle yacht

コメントを書く

ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。
ヤマレコにユーザ登録する

この記録に関連する登山ルート

無雪期ピークハント/縦走 甲斐駒・北岳 [2日]
北岳
利用交通機関: 電車・バス
技術レベル
2/5
体力レベル
4/5
ハイキング 甲信越 [2日]
北岳
利用交通機関:
技術レベル
1/5
体力レベル
2/5

この記録で登った山/行った場所

関連する山の用語

この記録は登山者向けのシステム ヤマレコ の記録です。
どなたでも、記録を簡単に残して整理できます。ぜひご利用ください!
詳しくはこちら