穂高平小屋で撃沈、コーヒー飲んでラーメン食べて歓談の後、撤収
- GPS
- --:--
- 距離
- 6.6km
- 登り
- 260m
- 下り
- 242m
コースタイム
天候 | 雪 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2010年01月の天気図 |
アクセス | |
コース状況/ 危険箇所等 |
新穂高登山指導センターは1月5日まで24時間態勢で対応してくれます。 穂高平小屋は3日まで営業、4日から避難小屋として一部開放しています。 トレースは雪が降るとすぐ消えます。 道路は6時頃から除雪車が出ているので、新穂高温泉登山者用無料駐車場までは入れます。ただスタッドレスタイヤだけだと駐車場で立ち往生する車が何台もありました。 温泉はいつもの平湯温泉500円 |
写真
感想
今年の正月は天気図とにらめっこ、、、どう見ても岐阜と長野の天気は悪い。
/29、/30と天気図を眺めつつ24H、48H、72H、96H、120H、の予想図を見ていると、
/2、/3に脈があり、ひょっとすると4日もいけそうに見える。少なくとも大崩は無いだろう。
なので、いそいそと元旦の昼から新穂高へ向った。
中央自動車道は豊科ICまではチェーン規制もかかっていない。
しかし松本から158号に降り、30分もしないうちに道路が白くなりチェーンをつける。
空かは天気予報のとおり弱い乾雪がしんしんと降っている。
ゆるい登りなので初め40kくらいで軽快に進むも、周りとの景色との兼ね合いから
微妙に平になったり下ったりがよく解らず、一度スリップして真横になってからは
20〜30kのビビリ走行になった。
松本から新穂高温泉まで2H30M以上かかり、車はいつもの仕様なので運転だけで
結構精神的にまいってしまった。
新穂高温泉に到着すると、まず最初に正月は24H常駐している新穂高登山指導センターへ
登山届けを出しつつ情報収集へ向う。
もう18:00を過ぎ暗くなっているが、ここの明かりが点いているのはとても心強い。
中へ入るとセンターには30代くらいの男性がデスクに座っている。
ちょうどセンターの関係者らしき方の車が2台入ってきて、3人の方たちから話をうかがうことが出来た。
最初にトレースの状態を伺うと、「トレースを当てにするようじゃあ入らない方がいい」と言われた。
ただ私が単独だと知ると、在中している30代の方と50代の方は、「私だったら今山へは入らない」と言う。
50代の方は以前に一度雪崩に流されたことがあり、もう懲りたと仰る。
他のパーティーがどのくらい入っているのか伺うと何パーティーか入っているだろうけど、
槍平にはおそらく居ないだろうと言う。
山岳ガイドが飛騨沢へ山スキーに入っていったが、槍平まで行って帰ってきたそうだ。
登山届けは、南岳とか穂高とか出ているが、おそらく皆ぜんぜん手前に居るだろうとのこと。
ここまで聞いて、もうモチベーションはほぼ0に近づいてしまった。
気持ちはおもいっきり凹みつつ、とりあえず駐車場へ車をまわす。
「これからどうしよう、、ロープウェイで上まで上がってしまおうか、、」
考えがまとまらないが、車の中を整理しつつ寝る体勢を整える。
そうこうしていると19:00過ぎくらいに3人パーティーがヘッデンで上から下りて来た。
話が聞きたい。しかし雪に埋もれた車を出すのに、かなり手間取っている。
30分くらいかけて脱出できたようだ。
今の時間にここまで下りて来たということは、かなり深くから出てきている。
ひょっとしたら槍平かもしれない。とすると少しはトレースが残っている可能性も有る。
/29、が晴れ、/30から天気は崩れ始め、/31、/1、と吹雪き。
しかし今は弱い乾雪が降ってきているだけだ。
明日、明後日もほぼ同じだろう。ここまで来るのに外の温度は-5℃〜-7℃だった。
とりあえず着込めるものは着込んで3シーズン用のシュラフに潜り込む。
ザックの厳冬期用を出すと、しまうのがめんどい、、
アラームは一応6:00出発をめどにセットする。
うとうとしていると21:00に一台車が駐車場に入ってきた。あとは時間を確認しなかったが
朝見ると3〜4台の車が新しく入ってきているようだ。
4:30に寒さで目を覚ますと21:00に入ってきた車の室内灯が点いている。
朝からロープウェイに乗っても時間が余るし、少しラッセル訓練にでも行くかと、
私も朝食をとりつつ出発準備を始めた。
とはいえ先頭に立って歩こうという気には到底なれない、どうせすぐに追いつかれるだろうし、、
変なラインをつけても申し訳ない、、
そうしている内に6:20くらいに1人、6:30くらいに1人と、2人の単独男性が出発して行った。
私もこの後を追って出発を決めた。
登山道の入り口まで来ると、雪が吹き溜まりになっている。一度深く埋まるが先に2人歩いているので
それ程苦も無く進むことが出来る。後に穂高平小屋で話した50才位の男性は、
ここでいきなり胸までもぐったそうだ。
3人が50mくらいの距離を保ったまま歩いているが、なかなか先へ進まない。
50才位の男性は先を見ながらどうするか悩んでいるようだ。
そうしている内いつの間にか後ろに30才代の2人パーティーが急接近していた。
この2人はかなりタフであっという間に3人を抜いて先へと消えていった。
しばらくして私も単独男性2人を抜いて先へと進む。
最初に先頭を歩いていた方は、なんと60才後半はいってそうな方で、
今思うに先を歩かせて申し訳なかったが、追いつこうにも結構早くてなかなか追いつかなかった。
ここでまた悶々と考える。先に進んでいった2人パーティーはかなりタフだ。
この後ろに引っ付いて行ったら意外と進めるかもしれない。
気温は-5℃位のようだ。全く寒くない。
と言うよりは、久しぶりに20kg以上有るザックを担いでいるので暑い。
かといってアウターの前チャックを開けすぎると、しんしんと降っている雪が
入ってきて、中を濡らしてしまう。
ここで3人の登山者が下りて来た。1人は女性のよう。
穂高平小屋へ泊まっていたそうで、そこから上はトレース無しだそう、、
穂高平小屋の手前で後ろを歩いている男性が(後の会話で福岡から来ていると仰っていた)
迫ってきていたので、飴を口に入れている間に抜いてもらい、ボチボチと穂高平小屋へ到着した。
それにしても時間がかかった。2人パーティーは小屋の辺りにはもういない。
すでに先へと進んでいったのだろう。
2時間は十分かかっているだろうと思っていた。余りにも遅すぎて時計を見るのが怖かったが、
福岡からの男性は、ここまで3時間弱かかったと、時計を見ながら仰る。
「まじすか、、、」
ここから更に雪が深くなっていく。小屋の前でテルモスを開け紅茶を飲んで一息つくが、
いっこうに思案がまとまらない。
そうこうしていると単独のお爺さんと、また別の2人パーティーが上がってきた。
自分はかなり汗をかいてしまってし、ここに立っていても休まらないうえ、何も名案が浮んでこないので
とりあえず小屋の中に入ってしまうことにした。
スパッツを脱ぎ、靴を脱ぎ。この時点で今回の山行はもう気持ち的に半分以上終了。
コーヒーを注文すると薪ストーブの一番暖かい所へと案内される。
ここで今までに汗で濡れた衣類を乾かすことにする。ミドルウェアが予想以上に濡れている。
もうこれは自力では乾かすことが出来ない位までになっていた。
そうしているうちに福岡からの男性も部屋へ入ってきた。終了だな。
初めの若い2人パーティーは西穂高岳方面へ「行ける所まで行って見ます」と向かったそうだ。
後から来た2人パーティーは白出方面へ向かってラッセルを始めたが、かなり大変そうだ。
単独のお爺さんも果敢に前進を始めた。これには頭が下がる思いだ。
小屋に居る方達に話を伺うと、29日はかなりの好天だったが、逆に槍平へテント泊していた方たちは
暑すぎることに危険を感じて撤収してきたそうだ。その後、悪天に急変し大量の降雪。
ここに弱層のできている可能性は高い。
槍平までのトレースも無く、パーティーもおそらく居ない。
山岳ガイドが飛騨沢へ山スキーに向かったが引き返してきた。
当然積雪の状態を見ての判断だろう。
これだけ材料がそろったら、この先奥へ向かっていく要素はもう無い。
方向転換して近くを少し登ってみるか。山小屋の中の方たちにも伺いつつ思案する。
福岡からの男性は、もうかれこれ10年、正月には毎年ここを訪れているそうだが、
小屋に入るのは初めてだそう。やはり今までにとんでもないラッセルを何回も経験している。
今日これからもどってロープウェイに乗るにはもう少し遅い。
タフな2人パーティーの後を追って西穂高岳方面へ少し登ってみるか、、
白出から蒲田富士を目指すというのもあるそうだが、視界は無い、、
白出から先へは、いくらも進まないラッセルを雪崩に脅えながらしてもしょうがないし、、
小屋の前をまた別の2人パーティー、3人パーティーと2パーティーが先へと進み、
3人パーティーが下山してきた。白出でビバークしていたそうだ。
小屋の方達の話では、昨日の19:00に下山した3人パーティーは昨日、白出方面へ進んだらしい。
そのままどこかで引き返したようだ。
ここでちょっと立とうとすると腰が痛い、、、
しばらく暖めたり、ストレッチをしたりするが、いっこうに良くならない。
しかも結構な痛みだ。このところ日帰りばかりで、重いザックを背負ったことが無く、
始めにザックを背負ったときには、それほど重いといった感覚は無かったが、
脚力や上腕、腹筋ばかり鍛えていたから、背筋とのバランスが崩れたか。
小屋泊まりやテント泊も進められるが、朝までまだ18時間以上も有る。
せめて読みかけの本でも持ってきていればよいのだが、車の中だ。
もう既にこの部屋へ4時間以上居るが、閉め切った部屋の中で小屋の主のふかすタバコの煙にも
耐えられなくなってきていたので、久ぶりの雪の中でのテント泊もそそるが帰ることにした。
小屋泊まりの方たちが下山準備を始め、福岡からの方も撤退を決断したようなので、
これに便乗して穂高平小屋を後にした。
駐車場までは思ったほど痛みも出ることなく下りることができたが、雪に埋まった車を
スコップで掘り出していると、また痛みだし、少し変な姿勢でザックを後ろの座席へ入れたときに、
完全に腰にとどめの一撃を刺してしまった。まっすぐに立つこともできない。
とりあえず車の運転席に座っていると、痛みが出ないので、平湯温泉へ向かうことにした。
温泉と水風呂へ交互に浸かりつつ、この2日間を思い起こす。
冬の北アルプスの厳しさ、美しさやそれに憧れ集まる人たち。
その片鱗をちょこっとだけ見せてもらった感じだ。
風呂から上がると腹も減ったことだし平湯温泉でガッツリと飯をいただきつつ、
弱冠の未練を残し帰路に着いた。
コメント
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右又林道は雪崩の頻発地域ですので、初心者が単独で近づくべき場所ではありません。
私も初心者なのであまり偉そうなことは言えませんが、あまりに無謀な山行なので、マネをする人がいないかと、ちょっと気になりました。
お気を悪くされましたらご勘弁下さい。
レスを頂き有難うございます。以前にもありましたが、
私の文章力や表現方法、また読み手の読解力などによって、
書こうと思っていることが全く違った形で伝わることがあり、考えさせられました。
私も当然完全なソロでいけるとは毛頭考えていません。
当然トレースを当てにしていますし、他のパーティーの動向も注意しています。
山に行くには皆それぞれの目的があり、以前にも全く同じような話が持ち上がり
ましたので、こちらを参照いただけましたら、私の考え方が少しでも伝わるかと思います。
http://www.yamareco.com/modules/diary/1823-detail-1181
最後の返信コメントです。当時と今では、まだ進歩してないようです。
ちなみに右俣林道ですが雪崩が起きるには当然理由があります。
斜面の傾斜角度、積雪量、アンカー(樹林や岩)、気温、何日間かの天気の状態、
弱層の状態など、そして殆どの雪崩事故の原因は人間による誘発です。
もし雪崩に興味が有るようでしたら
「雪崩リスクマネジメント」がお勧めで
「決定版雪崩学」は日本での情報が豊富です。
「雪崩遭難」はその名のとおり雪崩による遭難です。
右俣林道、特に穂高平小屋まで雪が降ったら危険と思われるようでしたら、
雪が降ったら山へ行くのは控えた方が良いと思います。
白出沢からは全く違ってきますが。
これからも精進していきたいと思っています。
またコメントがありましたら、よろしくお願いします。
いつも以上にシビアに考えることが出来ました。
12/29日に入山した3人パーティーが1人蒲田富士の辺りで
遺体で収容されたようです。
/31、/1、は完全な悪天が予想された。/30日に予想以上に天気が崩れたのだろう。
ご冥福をお祈りします。
レス有り難うございます。
私も穂高平小屋まででしたら手軽な「雪山ハイキング」で良いと思います。
穂高平小屋で「撃沈」されたとのこと。
jazzyさんがどちらまで行くご予定だったかは存じ上げませんが、穂高平小屋から先が雪崩多発地帯であることをご存じの上での山行の様ですので、あとはjazzyさんのおっしゃるとおり個人の考え方ですね。
私はいくら雪崩の知識があっても、雪崩多発地帯に単独で入山できる程の度胸の無い臆病者ですが、ルートの危険性が皆様に伝わればそれで良いと思っています。
決してjazzyさんのお考えを批判するつもりはありませんのでお許し下さい。
許すとか許さないの感情は全く有りませんので、
また気楽にコメントしてください。
より向上していくことが出来たら幸いです。
雪崩について少し触れますと、完全に埋まり生き残るのは28%で
15分以内に掘り出すと92%、35分で27%。
脳障害は死亡よりもかなり早い段階で平均10分前位。
パートナーによって救助されるのは10人に1人。
単独だと当然ほぼ100%アウト。助かるのは奇跡中の奇跡。
もし複数でビーコン、ゾンデ、スコップを持っていたとしても
それは生存への神器にはなりません。
スイスの研究では25%が35%に増え、カナダでは13%が32%です。
当然訓練を受けてのことと思います。
完全に埋まった人間をビーコンで有る程度の場所を特定し、
ゾンデで位置を確定し、掘り出すのに15分は短かすぎます。
単独、複数に関係なく雪山は大変危険です。
冬山は最大の注意と意識、覚悟をもって望むところですね。
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