念願。南アルプス南部縦走記〜三伏峠から茶臼岳縦走〜

- GPS
- 41:57
- 距離
- 63.0km
- 登り
- 6,035m
- 下り
- 6,740m
コースタイム
- 山行
- 7:39
- 休憩
- 1:12
- 合計
- 8:51
- 山行
- 10:07
- 休憩
- 2:06
- 合計
- 12:13
- 山行
- 11:05
- 休憩
- 1:49
- 合計
- 12:54
| 天候 | 4日間晴れっぱなし。 |
|---|---|
| 過去天気図(気象庁) | 2023年08月の天気図 |
| アクセス |
利用交通機関:
バス
復路:畑薙ダム(毎日あるぺん号)-東京駅北口 |
| コース状況/ 危険箇所等 |
【危険個所】 ●高山裏避難小屋から前岳 稜線直下から崩壊箇所あり。(一部登山道崩壊。ハイマツを踏んで歩く)滑落に注意してください。 ●兎岳から聖岳 聖兎のコルから聖岳直下まで岩場が続きます。他登山者とのすれ違いに注意してください。 【道迷い注意】百間洞山の家から百間洞下降点までのトラバース道に注意。詳細は写真で説明します。 ※今回同行者に滑落事故がありました。場所は百間洞山の家から百間洞下降点方向へ上る上部急斜面ですが、どこでも誰でも自分にも起こりえる事故だと思います。事故は初心者に熟練者に対しても突然に降りかかるものだと改めて思いました。 |
| その他周辺情報 | 白樺荘 https://ikawa-shinko.wixsite.com/shirakabasou 宿泊もできるようです。もう充分な温泉です。 |
写真
装備
| 個人装備 |
長袖シャツ
Tシャツ
タイツ
ズボン
靴下
グローブ
防寒着
雨具
日よけ帽子
着替え
靴
ザック
ザックカバー
昼ご飯
行動食
非常食
調理用食材
調味料
飲料
ガスカートリッジ
コンロ
コッヘル
食器
調理器具
ライター
地図(地形図)
コンパス
計画書
ヘッドランプ
予備電池
GPS
ファーストエイドキット
常備薬
日焼け止め
ロールペーパー
保険証
携帯
時計
サングラス
タオル
ストック
ナイフ
カメラ
ポール
テント
テントマット
シェラフ
|
|---|
感想
事故は突然に起こった。
初日、三伏峠から南アルプスへ入り、荒川岳、赤石岳を越えた。疲れたが、予定通りに歩けている。ずっと晴れっぱなしだった。3日目。今日は聖岳、上河内岳を越え、茶臼岳まで歩く予定だ。
百間洞山の家から大沢岳をトラバースする道に上がり、すれ違うことのできない程の狭い道を単独の男性と登っていた。男性とは前日、赤石岳を降りた砂礫のコル下で出会った。聞くと男性の干支は兎。今年の干支も兎。記念にテントを担いで椹島から赤石岳を登り、途中の兎岳で記念の写真を撮り、その後聖岳まで縦走するという。歳を聞くと72歳というが、見た目は60歳くらいにしか見えない。ザックの重さは18キロという。大丈夫か、と思ったが、その後先に馬の背へ出発した男性になかなか追いつけなかった。
百間洞山の家を出発したのは午前4時前、男性が10分ほど先に出発したが、自分のザックのほうが軽いため、すぐに追いついた。山の花が好きだという共通点を知り、その花の話をしていた時だった。男性が突然バランスを崩し、左足を斜面側へ滑らせ、そのまま真っ暗な谷底へ転落していった。ヘッドライトは途中の斜面で帽子とともに外れ、いったいどこまで落ちていったのかわからない。沢まで落ちず停止したようだが数十メートルは転落したようだった。
もう最悪のことが頭に浮かんでいた。
意識があるかもしれない。
「大丈夫ですかー!!」と声をかける。
「だいじょうぶー!」
間髪を入れず元気な声が返ってきた。ほっとした。
しかも奇跡的に骨折などの怪我はないようだった。
草付きの斜面は途中途中にダケカンバの灌木が点々と生えている。それを伝い、トラバースすれば登ってこれるかもしれない。自分が降りて助けに行けば同じように転落するだろう。上からしばらく様子を見ることにした。
男性は予備のヘッドライトをザックから探し出し、明かりをつけることができた。自分も登山道からヘッドライトで男性を照らし続け、トラバースの方向を指示していった。
山小屋へ戻り、助けを呼ぼうとしていた自分には、それが本当の光景とは思えなかった。信じられないことに男性は折れたストックを持ち、重さ18キロのザックを背負って落ちた斜面をトラバースしながら登ってくる。
後で聞いた話だが、男性は日本百名山をそれぞれ3回以上登頂、関東百名山登頂、相模原で山の会の代表をしていることを知った。
転落してからどれくらい時間が経ったのだろう。ついに男性はザックを背負ったまま登山道まで登り切った。この間、他の登山者は誰も来なかった。
よかった。ほんとうによかった。
このまま登山を続けるという男性を自分は止めるべきか迷ったが、男性の今回の旅の目的である兎岳まで同行し、歩行に支障があれば自分の縦走を中止して一緒に椹島へ下山しようと思った。登山再開後すぐ、一度ルートミスがあったが、男性は全く何事もなかったかのように兎岳まで歩いてくる。とにかく元気だった。
男性はスマホを転落中に紛失してしまい、兎岳の記念の写真を撮ることができなかった。そのため、自分のミラーレスで写真を撮り、後日メールで送ることを約束した。
「機会があればどこかの山を一緒に登りましょう。」「またどこかで」
その言葉とともに男性から名刺を頂き、先を行かせてもらった。
その後、決して簡単ではなかったが、聖岳、上河内岳を越え、予定通り茶臼小屋へ到着した。翌朝、上河内岳で出会った単独の男性とご来光を見た。聞くと帰りの東京行きのバスが同じだったことがわかった。(事実、隣の列の席だった)
茶臼岳下山後テントに戻ったが、バスの時間まで時間があったので、少し休んでからもう一度、茶臼岳へ登った。
あの男性は無事に聖平へ到着しただろうか。今日、無事に椹島へ降りられるだろうか。自分は下山するまで同行するべきだったのでは。
畑薙第一ダムへと下山し、沼平で東京行きのバスへ乗った。そのとき、ご来光を一緒に見た男性に、前日の事故の話をした。
バスはすぐに途中の温泉宿に立ち寄った。1時間の温泉休憩だった。
4日間の縦走を終えたさみしさと縦走を貫徹できた達成感が胸に押し寄せた。
脱衣場で服を脱ごとうしたときだった。隣で肩をトントンと小さく叩かれたような気がした。一度は気のせいかと思って無視した。するともう一度同じようにトントンとやっぱり肩を叩く人がいる。
まさか。振り返った。忘れようとしても忘れられない。よく見覚えのある男性がにっこりとほほ笑んでいた。
おしまい。

















兎にも角にも、結果的に最高な山行、おめでとうございます😊。
蛇足ですが、私も兎年です。兎岳での「記念写真」一緒に写りたかったナァ‼️冗談ですよ〜〜〜。(^^)v
このことをどこまで書いて良いかと思いましたが、全て記憶に留めておきたいと思い、書きました。長文、ご拝読ありがとうございます。山はいろんなことがありますが、それでも辞められない魅力があります。男性とは今も交流しています。
コメントありがとうございます。滑落された男性ですが、とても元気で、今も山の話などし、交流しています。
感動を共有して頂きありがとうございました。
書いてる途中、恥ずかしながら涙が出てきました。ほんとうに助かって良かったです。
今後は体力に応じた山行を心掛けたいと思います。
コメントありがとうございます😊
私にとって初めての南アルプス南部縦走は忘れることのできない思い出になりました。あの時は無傷で助かったのは、ほんとうに奇跡かと思いましたが、それはsyusanの経験と実力の成せる業。
下山後すぐに私のテントについて聞かれ、すぐに購入されたということも驚きました。😆
どうかテント登山も続けてください。4度目の百名山踏破も期待しております。私も70過ぎてもテント背負って長期縦走できる体力を維持するという新たな目標が出来ました。是非、機会があれば山をご一緒しましょう。花の話もしましょう。
こんばんは!覚えています。三度もお会いするなんて珍しいですね。
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