太魯閣渓谷☆大理石の渓谷でトレイル巡り
- GPS
- 08:16
- 距離
- 40.7km
- 登り
- 1,683m
- 下り
- 1,280m
コースタイム
天候 | 曇り一時雨 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2024年03月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス
|
写真
感想
太魯閣渓谷は台湾の東部、花蓮の近くにあり東西40km以上に渡り深い渓谷が続く台湾随一の景勝地として知られ、渓谷の途中にはいくつものトレイルが設けられている。問題は個々のトレイルの間が離れており、車で移動する必要がある。ツアーに申し込むか、あるいはホテルに依頼して運転手を探すという方法もあるらしい。平日はバスの本数が少ないが、休日はバスの本数が多いので安上がりなバスを利用することにする。
前日は金爪石と九份を訪れた後で、台湾頭部の街、花蓮に移動する。瑞芳の駅からは快速列車で2時間半の旅である。花蓮は午後には天気が崩れることが多いとガイドブックには書いてあったが、台湾鉄道の列車が東海岸を南下するにつれ、空には重苦しい雲が立ち込めるようになり、まもなく雨が降り始めた。日中のうちに東の洋上で温められた湿った空気が台湾の高い山にぶつかり、この地方に雨をもたらすのだろう。
有難いことに列車が花蓮に到着する頃には雨もあがってくれる。花蓮の駅はかなり近代的な作りで、金沢駅を思い出させる。台湾東部第一の都市ではあるが、駅前はひっそりとしているように思われた。トリップ・ドット・コム(海外のホテルを予約するサイト)ではHi Yes Hotelというホテルを押さえたのだが、地図を頼りにホテルを訪ねると実際には百萬達大飯店というホテルであった。さほど高級なホテルではない筈ではあるが、ホテルのロビーはほとんど大理石で覆われている。近くで大理石が豊富に採掘されるゆえだろう。
翌朝、花蓮の駅からタロコ渓谷に向かうバスの一日乗車券をバスターミナルで購入し、バスに乗り込むと乗客の多くは欧米系の外国人であった。ずは砂卡礑(シャガダン)トレイルを訪れることにするが、その手前の小錐劉トレイルから歩き始めることにする。
ビジター・センターでバスを降りると、すぐに始まる砂卡礑トンネルを進み、左手の通気口から外に出たところから小錐劉トレイルの入口となる。歩き始めるとすぐに遊歩道の山側に吊橋が架けられている。本来はこの吊橋のみだったのだろうが、後から谷側に遊歩道がつくられたのだろう。吊橋の先にもスリリングな歩道が続くことを期待したが、すぐに幅の広い林道となり、砂卡礑渓谷にかかる大きな砂卡礑橋が現れる。橋の上からは大勢の人が階段で降って来られる。この橋の下から砂卡礑トレイルが始まる。
このトレイルに入ると早速にも断崖を矩形(コの字型)にくり抜いた道が続く。背の高い人は天井に頭をぶつけることを心配する必要があるだろう。狭い遊歩道には意外なほど多くの人が歩いている。リュックにつけているリボンから台湾のツアーで訪れている人が多いことが判る。遊歩道ですれ違うのは原則として右側通行なので、気をつける必要がある。川には家ほどもある巨岩がゴロゴロとしている。谷に淵が現れると、水は染料でも溶かしたかのように青い。
五間屋と呼ばれるところに至ると小さな店が並び、ジュースや土産物が売られていた。現地民であるタロコ族による店らしい。確かに五軒の小屋が軒を並べていた。五間屋を過ぎると谷の幅は広くなり、道は狭い河岸段丘の樹林の中を進む。遊歩道の終点は簡素な立て看板がある他には特に何があるわけでもなかった。
遊歩道を引き返す。五間屋を過ぎると急に人の数が増えるのは、ここまでで引き返す人が多いのだろう。多くの人がツアーで訪れており、遊歩道の入口の駐車場にバスが待機している。
谷の上空には急速に雲が広がり、砂卡礑橋に登ると小雨が降り始めた。砂卡礑橋を渡ったところには大きな駐車場があり、ツアーのバスはここで待機しているようだ。橋は一方通行であり、橋の先にあるトンネル内の左側車線にも多くの車が停められている。
渓谷の先に進むバスは30分近く遅れてバス停に到着するが、なんと満席で乗れないという。次のバスは1時間後だ。タロコ渓谷には近くの新城駅と天祥との間を往復するローカル・バス(306系統)も運行しており30分ほど待つとバスがやってくる。バスに乗ろうとすると一日券はこのバスは使えないらしい。幸い、台北で使ったメトロとバスのカードが使えるようなので、このバスで次の燕子口まで移動する。
燕子口では目の前に吊り橋がかかっているが、これは錐麓古道に入るためのものだが、この古道は事前に申請をしないと通行することが出来ない。申請を試みようとしたのだが、中国語のサイトのみであり、しかも1ヶ月前までの申請が必要であった。
背後を振り返るとかなり高いところにもう一つの吊橋が架けられている。渓谷の上にある布洛灣台地から対岸の山に渡るためのものであり、高さは150m以上あるらしい。後から知るのだが、この橋を渡るためにも事前にインターネットから予約をする必要があるらしい。
燕子口には多くの人がツアーのガイドの説明を聞いていた。トレイルはトンネルが通じる前のかつての旧道に沿って設けられた歩道であり、旧道には次々とツアーの観光バスが訪れる。トレイルを歩くと、早速にも岩壁の中のトンネルに入ってゆく。トンネルの穴からは狭隘な渓谷の遥か下に流れる碧い水流と対岸の岩壁に穿たれた無数の穴が見える。これが燕の巣のように見えることから燕子口と名付けられたそうだが、実際には渓流によって形成された甌穴(ポットホール)であり、その後の隆起と渓流の浸食により谷が深くなったためにこのような姿になったようだ。
断崖を進むと谷が湾曲するところで大きな駐車場にトイレやカフェがある。ここから先のトレイルは人影が少ないのは、多くの人は先ほど燕子口トレイルの入口までを往復するからのようだ。しかしトレイルの先にも深い峡谷に面した断崖の中をくり抜いたトンネルが続いているのが見えるので、躊躇なく先に進む。
トレイルが新道と合流するポイントにもバス停があるものと期待したが、どうやら見込みが甘かったようだ。バス停の類は何も見当たらない。ということは次のバスに乗るためには先ほどの燕子口トレイルの入口まで歩いて戻る必要がある。トンネルの中を歩いて戻るが、残念なことに燕子口の入口まであともう少しというところで次のバスとすれ違う。
バス停で延々と次のバスを待ち、バスの終点の天祥に移動する。白楊トレイルの入口まで700mほど道路を歩く。渓谷を眺めながら、上流に向かうと谷の右岸に200mほどはあろうかと思われる断崖とその中をくり抜いた道路が見える。白楊トレイルは途中からこの断崖の下を潜るトンネルを歩いて、尾根の反対側に出るのだ。上流にある駐車場から多くの人がトンネルの入口に向かって歩いているのが見えるが、いずれもツアーで訪れている客だ。
長い一直線のトンネルは450mほどあるらしい。照明のないトンネルは別世界への入口のような趣がある。長いトンネルを抜けると橋があり、別の谷が広がっている。白楊トレイルも断崖の上を歩いてゆく。ここもよくこんなところに道を作ったものだと驚くが、本来はこの上流のダムを建設するために資材を運番するために作られたものだったらしい。トレイルの終盤でいくつかのトンネルを抜けると景観が大きく変わり、深い谷の彼方の岩壁から滝が落ちているのが見える。壮麗な絵画のような景色だ。
トレイルはさらにトンネルで先へと続く。岩壁の中から水が湧き出す地点がトレイルの終点となっており、靴を脱いで洞窟の中を歩く必要があるらしいが、天祥からのバスがあるので諦めてここで引き返す。天祥に戻るとバスの出発時刻より前に到着しているにもかかわらず、なぜかバスの姿が見当たらない。既に出発してしまったのだろうか。
次のトレイルのある緑水までは歩けない距離ではないだが、その前にバス停の前の店でビールと小籠包を注文し小休憩をとることにする。瓶ビールの栓を開けた途端、魔法のように突如として乗る予定であったバスが現れる。どうやら天祥への到着が大幅に遅れていたようだ。小籠包はまだ調理していなかったようなのでキャンセルすると、一気にビールを飲み干しバスに飛び乗る。
緑水のバス停まではバスでわずかに2〜3分の距離だ。緑水トレイルはバス停の山側にある地質資料館の裏手から始まる。トレイルに入るとトレイルの中ほどが一時的に閉鎖との案内があるが、とりあえず行けるところまで行ってみることにする。小さな吊橋を渡るとトレイルにロープが渡してあるが、簡単に潜れるので先に進んでみる。
小さなトンネルが現れるが、中は曲がっているせいですぐに完全な暗闇となる。ヘッデンの明かりをつけて先に進むと断崖の上に出る。どうやらトレイルが崩落している訳ではなく、欄干が落ちているだけのようだ。しかもわずか2mほどの距離だ。
先に進むと断崖の下には大きくU字に湾曲する渓谷を見下ろす。祖谷渓谷のU字谷を想起させる。
トレイルは2kmほどであり、すぐに先の「合流」にたどり着く。バス停の先にも吊橋があるので対岸に渡ってみる。丁度、一組のカップルが吊橋から戻ってくるところであった。二人からはすれ違うだけで熱気が伝わってきそうな雰囲気だ。まさに吊橋の効果だろうか。
吊橋を渡ると渓谷の上流の左岸には歩いてきたばかりの緑水トレイルの断崖が見える。吊橋から先にトレイルがあるようだが、吊橋から先は非公開らしく、吊橋で引き返す。次のバスを待ち、本日最後のトレイル、九曲洞に移動する。狭い断崖の道が続き、距離的にも歩いて移動するのは難しそうだが、バスではわずかに4~5分ほどで到着する。
このトレイルも燕子口と同様、トンネルが開通する前の旧国道を歩くだけなので、白楊や緑水トレイルのようなネイチャー・トレッキングの魅力はない。しかし、トレイルの大部分は断崖をくり抜いて作られた道であり、周囲の峡谷の険阻さとその迫力は燕子口を上回るように思われた。それにしても大理石の断崖をくり抜いて、よくぞこんなところに道を作ったものだと誰しもが思うところだろう。
バス停に戻り、花蓮の駅に戻る最終のバスを待つ。さすがに夕方で交通量が少なくなったせいだろうか、バスは今度はほぼ時間通りに到着する。渓谷を下流に向かったバスが出発すると再び空には暗雲が広がり、すぐにも雨が降り始める。
バスの車窓からは流れ落ちる滝の上に設けられた長春祠が見える。台湾を東西に横断するこの中央横断公路の建設中に殉職した212人の霊を弔うために作られたものらしい。日本における黒部第4ダムの殉職者数171名を遥かに上回る数だが、この峡谷の険阻な景色を見た後ではその数にさほどの違和感を憶えないのだった。
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