身延山・七面山 (山と道を繋ぐ旅 2nd-)

- GPS
- 40:09
- 距離
- 55.3km
- 登り
- 4,837m
- 下り
- 4,424m
コースタイム
身延山バス停6:55〜久遠寺7:00〜本堂〜三光堂8:05/8:15〜法明坊8:55〜身延山奥ノ院9:15/9:45〜感井坊10:05/10:25〜十萬部寺10:40〜分岐11:15 (〜林道終点12:00/13:10〜分岐13:50)〜本分岐14:00〜七面山登山口14:40〜駐車場14:50 (ビバーク)
【7月25日(土)】2日目・行動14時間 (通算11日目・97時間半)
駐車場4:20〜登山口4:30/4:45〜六丁目5:10/5:25〜肝心坊5:45/5:55〜晴雲坊7:55〜敬慎院9:00/9:15〜七面山10:10〜希望峰10:30〜1964ピーク11:20〜インクラ跡12:05〜八紘嶺13:00/13:10〜五色ノ頭14:00/14:05〜大谷嶺14:55〜新窪乗越15:45/15:55〜大平沢ノ頭16:20〜山伏17:50〜分岐18:00〜山伏小屋18:10 (避難小屋泊)
【7月26日(日)】3日目・行動4時間 (通算12日目・101時間半)
山伏小屋6:10〜百畳平6:20〜猪ノ段分岐6:40〜牛首峠7:00〜笹山7:35/7
:40〜笹山登山口7:50〜井川峠入口8:15〜コマドリの道入口8:40〜井川峠入口9:20〜井川湖9:40〜井川大橋バス停9:50〜大島バス停10:05〜田代10:25
| 天候 | 全日・晴れ |
|---|---|
| 過去天気図(気象庁) | 2015年07月の天気図 |
| アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
相原21:53〜甲府23:58(電車1,663円) 甲府5:20〜身延6:34(電車840円) 身延駅6:40〜身延山バス停6:52(バス290円) 【帰り】 田代温泉15:19〜横沢17:00(バス700円) 横沢17:25〜静岡駅18:50(バス1,150円) 静岡〜相原 (電車2,590円) |
写真
感想
【前回、久遠寺の記録】
http://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-681641.html
(敬語は省略しています)
【身延山】(1日目)
前回、体調を崩してリタイアした久遠寺からスタートする。
甲府に前泊して、身延方面の始発電車で出発すると、身延駅で身延山行きのバスと接続する。そのバスに乗り込めば、丁度7時に久遠寺へ到着。
早速、地獄の登り階段だ。
ゆっくり一歩一歩足を進めて行くと、やがて本堂の前に出る。
大丈夫。今日は行けそうだ。
ロープウェイ乗り場前には、相変わらず白装束の参拝者が列を成している。後で分かった事だが、どうやらバスツアーで来ている様だ。
私は、ロープウェイ乗り場の手前を右に入り、歩いて山頂を目指す。
参道は途中で幾重にも分かれ、コースに慣れるまで何度か迷った。要は九十九折に進めば良い所を、いらぬ寄り道をしてしまった。
東の峰のピークだろうか、三光堂まで上がると、広い休憩スペースがいくつもあった。テーブルにはお茶が用意してある。なるほど誰のための物かは、すぐに分かった。向かいからリズムカルに題目が聞こえてきたのだ。先導が10号車はあちら、9号車はあちらと、休憩場所を指定して行く。その数200人以上。200人をやり過ごすまで、私は呆然と立ち尽くしていた。
空の向こうにはナナイタガレが見えていた。
三光堂から先は、ジャリ道になり、若干、山らしい様相になった。
法明坊を経て、奥の院に着いたのが9時15分。ここが身延山の山頂だ。
ロープウェイ乗り場には、売店があり営業していた。乗り場の見晴らしに身延山山頂の道標があるが、実際のピークは奥の院の真裏辺りだろうか。辺りをぶらぶらしていたら、30分ほど費やしてしまった。
ここから七面山方面に下山する。
下山を始めて最初の目標点である感井坊では、入口に麦茶が用意してあり「どなたでもどうぞ」と貼紙がしてあった。感心して写真を撮っていると、中から人が出て来て「麦茶もいいですけど、中でお茶でもいかがですか」と誘われた。
中にはハイカーの先客がいて、坊の方と4人で、山の話で盛り上がった。どうやらこの先で道が崩落しているらしい事も分かった。
七面山を越えて井川大橋まで行くと言う私を、とても心配する感井坊の方に見送られ出発した。
【道間違え、そして熊に遭遇】
十萬部寺を過ぎ1時間ほど下ると、分岐に出る。その分岐を左に折れて40分ほどで、七面山登山口に到達するはずだ。
ところが1時間ほど掛かるはずの分岐まで35分ほどで着いてしまった。ずいぶん巻けたものだと思ったが、全く疑わなかった。
道は、左に折れてから大きく迂回するようにコの字に進む。地図の通りだ。
だいぶ進んでから、一本前の林道を曲がってしまった事に気付いた。
林道と本来行くはずだった道は、ほぼ平行に走っている。
その距離、約400m。
林道の終点から尾根筋に下れば、下の道に出れるかも知れない。
淡い期待を抱いて、林道の終点まで行く事にした。
途中、動物が横切った。
猿だ。沢山の猿が逃げて行く。
その後、ニホンシカも逃げて行くのが見えた。
林道の終点からは、予想通り、尾根筋の道にマーキングが伸びていた。
これなら下れそうだ。
マーキングを頼りに下って行く。
途中、尾根から左にそれて、沢に下ろうとしている事に気付いた。
沢に下ってはマズイ。そう思って尾根の取付きを探していると、沢の向こうからゴソッと音がした。
黒い丸い塊。
熊だ!!
相手も私に気付き、一瞬固まったが、唸り声を上げて突進してきた。
沢を挟んでいるとは言え、約2mの距離だ。
私は可能な限りの声を張り上げ「うぉ〜」と叫びながら2本のストックを振り回した。
熊は、沢筋を下って逃げて行った。
いつか熊に遭遇したら、絶対に写真に収めてやろうと思っていたが、そんな余裕は全くなかった。
震えが止まらない。
動揺したまま、尾根に戻ろうとしたのも失敗だった。足元の岩が崩れ、沢まで岩ごと3mほど滑落した。大きなケガはなかったが、頭から泥を被った。
沢は、棚になっていて、かなり開けていた。その後、少し下り、また棚になっているようだ。これなら下れそうな気になってしまうが、これは罠だ。
頑張って尾根まで登り返す事にする。
何とか尾根に取り付くと、やはりマーキングが下に向かって、伸びている。下の道までは後300m位。上の林道へは約100m。地図を見ると尾根の下はだいぶ緩やかになっている。行けるはずだ。
……その時、目の前をアゲハ蝶が横切った。
バタフライエフェクト。
小さな一つの選択が、大きく結果を分ける事になると言う。
私は「迷ったら戻る」と言う山の鉄則に立ち返り、尾根を登って林道へ戻る事にした。
林道に戻り、途中の水場で泥を洗い流した。
右腕のすり傷がしみる。
あの時、致命傷を負っていたら、誰にも見つけられる事はなかっただろう。
運が良かっただけだ。
猛烈に反省する。
予定の道に戻り、伝統的な街並みを残す赤沢宿を抜けると、七面山登山口だ。
先ほどの尾根道を下から見上げると、道が確認出来た。あのまま下れたのか、今の私には知る由もなかった。
まだ15時前だが、これからの登頂は難しい。登山口の駐車場にテントを張らせてもらい、ここで朝まで過ごす事にする。
【七面山】(2日目)
七面山への参道は、かなり急な上り坂がひたすら続く。
六丁目で早くも根を上げ休んでいると、ハイカーの格好をした参拝者の方が上がって来た。60歳になったと言うその方と、山の話で盛り上がった。結局、敬慎院まで四時間近い道程を、その方とご一緒させてもらう事になった。
色々な話をしながら、登って行く。
途中に見えた山々の名前を教えてもらった。
富士山が、見えた。ちょうど今日、息子さんが登っているらしい。
敬慎院で「私はご開帳していきますので」と言う、その方と分かれた。何でも月に一度は登っているらしい。
私は教えてもらった方角へ、歩いて行く。ここからが、本当の山道だ。
ナナイタガレを覗き込み、ナナイタガレに沿って山頂へ。
七面山の山頂は大崩れからは少し中に入った場所にあった。山頂とは思えない雰囲気の場所だ。キャンプでもすれば、気持ちが良さそうだ。実際、たき火の跡が幾つかあった。
ここからはひたすら南下して行く。
登り下りが多く、ハードなコースだ。
希望峰では、南アルプスが一望できた。
インクラ跡には、四ノ池とあるが、池は確認出来なかった。まさか道標下の埋まったドラム缶が、池って事はあるまい。残念ながらインクラインを思わせる跡もなかった。
無残に崩れた鳥居だけが、ここにあった人の軌跡を思わせた。
八紘嶺からは、西に方向を変えて、大谷嶺を目指す。
大谷嶺はちょうど2000mの山で、行田山と呼ばれ事が多いようだ。眺望も素晴らしい。
新窪乗越を越え、大平沢ノ頭まで上がれば、後は山伏まで、なだらかな道が続く。
山伏山頂に至るまで、それほどの上り坂はないが、かなり足が重い。どうやら体の限界のようだ。時間を掛けて登り、何とか山頂に到着した。
夕暮れの迫る山伏山頂。
夕陽に照らされた笹穂がとても美しかった。
山伏小屋までは、山頂から20分位。
小屋では、男性が夕食を取っていた。実はこの方、七面山の手前で会い、後で会いましょうと言って分かれた方だ。
お互い「結構きついコースでしたね」と言って話が盛り上がった。
明日は3時半に出発し「ザサ」へ行くらしい。実はザサがどこなのか私には分からなかったが、かなりハードな山行になる事だけは、感じ取れた。
私と言えば、明日は下るだけなので気楽なものだ。
【井川湖へ】(3日目)
朝、男性が挨拶をして出発した。時計を見ると3時28分だ。何と時間に正確なのだろう。
私はそのまま寝てしまい、次に気付いたのは5時45分だった。6時に出発しようと準備したが、出発出来たのは6時10分。15分じゃ、やっぱり無理か。
私の計画はプラン通りに行かず……
百畳平、猪ノ段と開けた場所を歩き、とても気持ちが良い。ハイキングに丁度良さそうな感じだ。
一度、林道に下りて、牛首峠から再び山道に入る。ここから笹山までは道が不明瞭だった。
笹山からは、目的地の井川湖が見えた。ゴールまで後少しだ。
再び林道に下りて井川峠入口を目指す。
林道から井川湖への道は、荒廃しているとの情報だったが、井川峠入口から下へ向かって、井川湖60分との道標があった。嘘くさい道標だ。
案の定、道はかなり荒廃していた。
コマドリの道入口までは、県民の森のハイキングコースになっているらしく、しっかり道があったが、その下は酷かった。広い尾根を歩くが、一部の場所は道が全く分からない。マーキングだけが頼りだが、そのマーキングも落ちてしまっている事が多かった。シイタケの栽培地に着いた時には「合ってた」と一安心する始末だった。で、その後も迷う。
一度、林道に出た後、さらに荒廃した道を下って行くと、茶畑に出た。
私有地かと思ったが、井川峠入口と道標があった。本当にこれが道なのか??
何にしろ、井川湖に着いた。
後は、井川大橋を渡り、県道を田代地区まで歩くだけだ。
田代までは、集落はあるものの、お店はなかった。はじめて売店が見えた場所が、田代だった。向かいにはゴールである田代温泉バス停とキャンプ場。
次回の大無間山登山口を確認した後、売店で、おでんとトウモロコシとアイスを食べた。640円。どう言う計算だとこんなに安くなるのだろうか。
これから帰ると店の方に話すと、静岡行きのバスの時間をバス会社の知り合いに電話して確認してくれた。
田代温泉からのバスは横沢までで、そこから静岡行きに乗り換える必要があるのだ。また大井川鐵道は、通行止のため井川駅から千頭駅まで行けないらしい。復旧の見通しは立っていない。
次のバスは、……15時19分。
バスの時間はさて置き、親切な店の方に感謝。帰りには道中でどうぞとアメまでくれた。感謝感謝。
キャンプ場の温泉が12時から利用出来ると言うので行ってみた。
なんと入浴料300円。しかも全風呂個室、石けんシャンプー付!!
個室温泉は、本当に極楽だった。
バスの時間まで、許可を得て風呂の休憩所で休んだ。
なぜか少女マンガに読みふけった。
携帯の機内モードを解除すると、感井坊の方からメールが入っていた。
五十丁目(敬慎院)で泊まれる事、心配しているとの内容のメールだった。
無事下山できた事を報告する。
バスは15時19分丁度に来た。10人乗りのハイエースだ。乗客は私一人だったが、途中で親子が乗って来た。井川地区には10人しか小学生がいないらしい。その1人だそうだ。明日、学校で流しそうめんをするので来て欲しいと言う。そりゃ無理ってもんだ。
小学生が降りた後も運転手さんと世話話で盛り上がった。
何でも、お祭りで射的をやるらしく、射的のあれやこれやで笑いが絶えなかった。
途中、食堂を通り掛かった際、あそこでパン売ってますよ、買って行きますか?と言われた。そんなバス聞いた事がない。以前コンビニがないかと言う登山者のために、知り合いに連絡しておにぎりを作って持たせた事があるらしい。都会では考えられない事だ。
横沢で乗り換えのバスを待つ際、運転手さんと案内図を見ながら話をしていると、一台の車がやって来た。
「畑薙ダムはまだ先ですか」と言うその方は、悪沢岳、赤石岳、聖岳、光岳を五日間位かけて縦走するのだそうだ。ホームレスハイカーと自称するその方は、先週は北海道羅臼岳、次回は槍を目指すと言う。仕事を引退されて山を楽しんでいると言った感じだ。
ホームレスハイカーを見送り、丁度やって来た静岡行きのバスに乗り込んだ。
運転手さんが手を振り見送ってくれた。
それにしても、こんなにも人との触れ合いの多い山行も珍しい。
感井坊、七面山登山、山伏小屋、田代の売店、井川地区バス。
信仰の山ゆえだろうか。
学ぶ事のとても多い山行になった。
【南アルプスの記録】
http://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-699544.html
宮寺光生
















すごい体験しましたね
気を付けてくださいよ〜
うかつな行動(地図にない道に入る)、反省しています。
ご心配お掛けします m(_ _)m
私も 7/19に七面山 8/1に身延山に行ってきました。
身延山は東コースから登り 赤沢宿へ下る途中 感井坊の方がお茶やお茶菓子、鈴を下さいました。とても親切に説明して下さって 途中迷うところは全くないとのことでしたが 写真のところで悩みました。
事前にTELAさんのレコを見ていなかったら 私も赤沢林道の赤沢という文字につられて そちらに行ってしまったと思います。
TELAさんのような事にならないで助かりました。
赤沢宿でかき氷を食べ 又身延山に引き返す時 工事現場の方に「暑い中、大変ですね〜」と言ったら 「おひとつどうぞ」と缶入の緑茶を下さいました。TELAさんが言ったとおり この辺の人は皆親切なんだなあと実感しました。又 涼しい時に行ってみようと思っています。
sachi1114さん、コメントありがとうございます。
本当に今回は印象に残る旅になりました。
人との出会いって大切ですよね。
感井坊には、私もいつかまた訪れたいと思います。
初めまして。
山で人に優しくされると、本当に嬉しいですよね。
少しのふれあいでも、なんだか貴重に感じます。
でも、熊には出会いたくないですね。
よくぞ、ご無事で。
私は、初の南アルプスの計画が先日頓挫しましたが、
やっぱり懲りずにまたチャレンジしたいですね。
colorfulさん、はじめまして
コメントありがとうございます。
身延・七面での体験は、色々な意味で、記憶に残るものになりました。
心配してくれる方がいると言うことは、本当にありがたい事です。
いつかまた訪れてみたいと思っています。
ところで、南アルプスも良いけれど、岩殿山も悪くないですよね。
自分は、次回、百蔵山を計画しています!!
お互い安全に山と山での出会いを楽しみましょう( ´ ▽ ` )ノ
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