北岳敗退記、というより旅行記。またまた人の親切に触れる。


- GPS
- 15:52
- 距離
- 32.4km
- 登り
- 2,281m
- 下り
- 2,731m
コースタイム
- 山行
- 7:03
- 休憩
- 0:30
- 合計
- 7:33
過去天気図(気象庁) | 2025年01月の天気図 |
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アクセス |
写真
感想
【 奈良田撤退 】
アプローチは夜叉神ゲートからではなく、奈良田より12kmほどの林道を抜けて、あるき沢橋登山口に進むルートを選択した。奈良田第一発電所脇のトンネル入口に着くと、あらかじめ仕入れた情報どおり、ゲートは閉まっていた。かたわらには黄色いヘルメットに作業服を着たイカツイオッサンが立っていて、作業ダンプカーが来るたびにゲートを開閉していた。
モンベルの100Lザックをパンパンにした私は、にこやかにオッサンに挨拶をした。
私「こんにちは」
オ「こんにちは」
私「寒いですね」
オ「寒いね」
私「北岳に登るんです」
オ「大変だね」
私「スミマセンが開けていただけますか」
オ「駄目です」
は?どゆこと? 冬季期間は一般車両はもちろん歩行者も通行できない、を繰り返すオッサン。さらに、あろうことか、
「山登る人はこっちに行くんですよ」
と、農鳥岳への登山道を赤色灯で面倒くさそうに指し示す。。
そこで、このゲートを突破する方策を考えてみた。
.ッサンがいなくなるまで待ち、ゲートを乗り越える
河原に降りてトンネルを迂回する
トンネルの上の尾根を越える
仕切り直して夜叉神ゲートにまわる。
△鉢は、イーサン・ハントならやっちゃうかもしれないが、現実的にはで,世蹐Αしかし、首尾よく乗り越えられたとしてもこの先にどんな状況が待っているのかが不透明なので、このプランも却下した。そこで、ぁ△なりのタイムロスになるが、これしかないなと、トボトボ来た道を引き返し、バスの時刻までの時間、付近にある奈良田温泉に浸かった。
【 奈良田温泉 】
白湯館という温泉施設の男湯には露天と二種の湯温の内湯があって、どちらも肌にヌルヌルまとわりつく心地良い泉質だった。私の他にはひとりだけ先客がいただけで気兼ねなくのんびり湯浴みを楽しめた。
玄関先で靴紐を締めバス停へ移動しようと立ち上がったそのとき、先ほど湯で言葉をかわした男性が奥様とおぼしき女性と立っていて、
「これからバスですか?どちらまで行かれるのですか?」
と声をかけてきた。
「良かったら乗っていきませんか?私たちもそっちの方向なので。」
夜叉神トンネルゲートまで75kmの道のりを2時間ほどかけて送っていただいた。何かお礼をしたいと言っても、ただ笑みを浮かべるだけで、さっと帰っていった。
私の心は、あふれそうなほどの感謝の気持でポカポカと温かかったが、すでに陽も落ちた夜叉神峠は冷気に包まれていた。駐車スペースにはクルマが二台、人影はなく、工事用の赤色ランプなどがかろうじて闇に光をあてていた。
【 夜叉神峠 】
最初のトンネルは夜叉神トンネルだった。全長1140mもあるので出口は遠く、全く見えないし、当たり前だが灯りもない。さらにトンネル入り口には一面の鉄の壁がはめ込んであって、通るには通行用の鉄製のドアを開けて中に入らなければならない。後ろ手にそのドアを閉めると、その音が、漆黒のトンネル内に反響する。
これ以降、何本ものトンネルをくぐることになったのだが、真っ暗な中を、自分の足音の重いコダマを聞きながら黙々と一人で歩くのは、慣れてくるとなかなか楽しいものだ。座禅を組んだときの精神状態とでもいうのか、妙に落ち着く。
天高く輝くオリオン座に背中を押されながら、夜道を進み、鷲住山(わしのすやま)を越え、今にも落ちそうな吊り橋を渡り、ヒドイ悪路の抜け道を通って林道に合流し、あるき沢橋登山口に着いたのは夜の8:40頃だった。
【 路上ビバーク 】
この先の池山御池小屋までにビバークポイントはなさそうなので、ここにテントを張ることにした。アスファルトの上、じかにだと冷えそうだが、落ち葉が厚い絨毯のように積もっていて、その上にテントを設置すると、地面に熱を奪われることが全くない。極めて快適な野営となった。
翌朝六時に起床し七時にスタートした。出だしからカラダが重い。池山御池小屋に着く頃には息も上がりまくっていて、気力も減退していっていた。とりあえず昼メシをとろうと御池の上に積もっていた雪を集めて溶かしカップ麺を食べた。ほかにレーズンパンと玉子、ソーセージを腹に詰め込んだら、戦闘意欲が萎えてしまったので撤退することにした。
【 下山 】
帰りは、奈良田から帰ることにした。あるき沢橋登山口から奈良田第一発電所のあるゲートまで12kmほどの林道を歩く。積雪の全くない緩い下り坂を四時間弱、のんびりと歩いた。
前夜と同様に何本ものトンネルを抜けた。途中、水滴がしたたる音がする。何気なく天井を見上げると、墨を流したようなトンネルの暗闇のなかに、ヘッドライトに照らされて巨大なツララがキラキラ光っていた。それまで天井から水滴の落ちているトンネルは幾つもあったが、わざわざ見上げたことがなかった。これからは、天井にも気を付けながら歩こうと思った。
昨日門番のいた奈良田第一発電所ゲートは、土曜日だからか、遅い時間帯だからか、無人であった。鉄製の扉は鍵がかかっておらず、すんなり脱出することが出来た。辺りには夜の帳(とばり)がおり、湿っぽい空気のなかを早川のせせらぎが心地よかった。
適当にテントを張って野営とし、立ち寄り温泉『女帝の湯』を浴びに出かけた。
今回は、ピークハントこそかなわなかったけれど、地元の人の篤い好意に触れたり、多数の温泉『サンロードしもべの湯』、『奈良田温泉白根湯』、『女帝の湯』などを楽しんだり、マアマアの旅だった。厳冬期北岳は必ず再挑戦しよう。
あー、楽しかった❗
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