鳥海山

- GPS
- 32:00
- 距離
- 13.6km
- 登り
- 1,148m
- 下り
- 1,137m
| 天候 | 15日:曇り、雲の中は小雨、強風。16日:ガスのち晴れ |
|---|---|
| 過去天気図(気象庁) | 2025年07月の天気図 |
| アクセス |
利用交通機関:
バス
|
| その他周辺情報 | 御室参篭所には今どきの山小屋を期待しないこと。別棟の大広間に雑魚寝でストーブや乾燥室はないので、濡れて着いた時はつらい。床はビニールゴザなのでマットがあった方が良い。食事は質素でおかわりもない。水道がないので洗面や歯磨きもできない。水は500佞離撻奪肇椒肇500円を購入する。酒類の販売はあり。トイレはバイオ式。 |
写真
感想
鳥海山には数十年前に山スキーに赴いたことがある。大平から登り、外輪山を伏拝岳の近くまで来た時、頭上の傘雲が下がってきたなと思う間もなく、突然猛烈な風に見舞われた。同行者の耳元で叫んでも聞こえないほど強く、しかもそれまでの常識に反して、全く息を付くことなく吹き続ける風だった。七高山を目指すどころではなく、直ちに稜線をはずれて滝の小屋へ逃げ下った。海に近い独立峰の恐ろしさを思い知らされた。それがトラウマになって、中々足が向かなかったのだが、登り残すことはできない山なので、今夏の目玉として取り組むことにした。
7月15日(火) 鉾立登山口駐車場9:20〜御浜小屋11:45/12:00〜御室参篭所15:00
天気:強い南風。中層の曇りで山には雲がかかり、中は霧から小雨
苦手な夜行バスで酒田駅に到着。やはり眠れず、あちこちが痛く腹は気持ち悪い。自分の感覚では遠く北方に来たのだが、空気は生暖かく、曇り空に雲を被った鳥海山が青黒く沈んでいる。レンタカーで真っすぐな7号線を走っていると、次第に山は大きく、緑色が鮮明になってきて気持ちも回復してくる。標高が上がると、もこもこと密生した樹林の様相が中部山岳とは違って目新しい。その樹がかなり低くなった頃にようやく鉾立口の建物が現れ、駐車場に着いた。既にここから、風車の立ち並ぶ海岸線や、そのはるか先に島のように浮かぶ男鹿半島が眺められた。
立派なコンクリ舗装の登山道を歩き始める。少し先の展望台からは、奈曽谷を挟んだ断崖と稲倉岳が大きく、海抜ゼロから立ち上がるこの山のスケールが感じられた。灌木帯の間を石畳みの道が緩やかに続き、良くこんな上まで整備したものだと感心してしまう。左側の沢状に沿って登っていくと周りが草原になり、水流を渡る。久し振りにチングルマの花を見られて嬉しい。残雪も現れて高山の雰囲気が出てくる。賽の河原の標柱を過ぎ、道は行く手の笹原を左上にと上がって行く。帰りに通るつもりの河原宿から降りてくる道の分岐が見当たらなかったので戸惑うが、仕方なく進むと沢の反対側に道らしきものが見えたので、あれだろうということにした。(正解は翌日に分かった。)
笹原が草原に変わると、ニッコウキスゲが点々と現れ、これも嬉しい。草原が風にそよいで波打つ様は実に美しかった。この辺りから雲が去来するようになる。左下には稲倉岳に続く大斜面が広がり、スキーをやる者としてはついつい目を奪われてしまう。前方に御浜小屋が間近に現れ、鳥ノ海が見えるかどうかとワクワクしながら登り着いた。
今日泊まる御室参篭所は神社の施設なのでアルコールがあるか不安を抱いていたので、御浜小屋のビールの看板を横目に見てホッとした。尾根の北側から見下ろすと、吹き上げる強風の下に鳥ノ海が意外に遠く黒っぽい。池に落ちる斜面にはニッコウキスゲ、シオガマ、ハクサンフウロなどがびっしりと咲き乱れ、風に揺れている様はけなげでもあり見事だった。ここからは花のプロムナードのような稜線歩きとなり、残雪がある場所でもないのにこれほど花が多いのが不思議なくらいだ。一方で風当たりが強くなり、歩く労力も大きい。扇子森を越えると足元にハクサンイチゲが現れ、七五三掛に登る途中の沢状の中にもびっしりと咲いていた。七五三掛は標柱があるだけの小平地で、完全にガスの中となった。いよいよ外輪山の雲の中に突入することになるので不安はあったが、千蛇谷に降りれば風は収まるだろうと考えた。千蛇谷分岐まで0.2kmの標識があったが、どう見てもそれより長く登った末にようやく分岐に着いた。
木枠で囲ったジグザグ道を下ると、ガスの中に白く雪渓が浮かび上がる。周囲は崖に残雪がへばりついて威圧感がある。雪渓の傾斜は緩く雪も柔らかいので問題なく渡れた。対岸は少しの間小尾根の上となるので谷底らしからぬ雰囲気だが、すぐに右側の雪渓の際をからんでいく道になる。再度ロープを渡してある雪渓を渡り、雪融け跡を歩く頃から雨粒が落ち始めた。標高が上がるにつれ再び風に吹かれるようになり、時刻はさほど遅くないのにガスの中は薄暗く気分も下がってしまう。変化のない登りが続き、だいぶ来たかと思ってヤマレコアプリを起動してみると先は長くガッカリする。幸い久しぶりの山にしては脚が良く動いてくれたが、もう小屋に辿り着くしかないという状況の中に置かれているのはプレッシャーだ。ガスの中に浮かぶ岩の影を小屋かと思うことを数回繰り返すが、中々着かず、焦りが出てくる。3か所目の雪渓をロープに従って登り気味に渡る所はやや傾斜があり慎重に歩いた。(翌日下った際、雪渓の上を回る夏道が既に出ていることに気付いた。)間もなく道の傾斜が緩み、紛れもない小屋が出現して心底ホッとした。
小屋は昔風の大広間でストーブはないので、ビールで体を内から温め?、シュラフに潜り込んで湿った服を乾かすしかなかった。この日はさすがにキャンセルが多かったとかで、後から2組6人が到着しただけだった。夜間も強風が吹き続けており、翌日の予定縮小はほぼ決まりだった。
7月16日(水) 御室参篭所7:30〜新山〜御室参篭所8:30/8:50〜鳥ノ海11:35/12:05〜鉾立登山口駐車場14:18 天気:風弱くガスのち晴れ
早朝時点で雨は止んでいたが相変わらずガスと風が吹き付けていた。天気予報ではこの日は回復する予想だったので、新山から外輪山経由で降りるのを諦め、新山往復のみとしてギリギリまで天候待ちをすることにした。風が弱まった感じがした7時半に軽荷で小屋を出発。道はすぐに岩の積み重なりに変わり、ペンキマークを追って楽しく登る。標高差の割には上がったり下りたりで長く感じ、心配になった頃に頂上のペイントが目に入った。周囲はガスのベールを透かしていくつもの岩塔が立ち並ぶ不思議な光景だった。最高点に立ったことで今回は良しとして下りにかかる。マークに従って時計回りに下り、胎内くぐりなるトンネルを抜けて間もなく、眼下におぼろに雪田が現れ、踏み跡はその下に消えてしまった。周囲の岩塁を見回してもマークは見当たらず、雪田は傾斜を増しながら下に続いている様子だ。アイゼンとストックを小屋に置いてきてしまったので、この雪の上に乗る気にはなれず、迷わず来たルートを引き返すことにした。下っている途中、ふいにガスが切れ、真下に赤い屋根の小屋が見えた。その背後に水平の壁のような外輪の尾根も浮かび上がり、幻想的な眺めだ。
小屋で荷物をまとめて下り始める頃にはすっかりガスも消えて、緑と残雪の白との谷が広がっていた。前日のプレッシャーとは裏腹の明るい気分で歩き出せる。すぐの雪渓(前日の3か所目)は右縁を夏道で回り込み、草叢をジグザグに下っていく。下の方には緑の中に大岩をばらまいたような面白い光景が眺められ、カール底の羊群岩を思わせる。晴天に登ってくる人とのすれ違いも多く、心細かった前日とは随分趣きが違う。外輪山の壮絶な火口壁や、新山側の広々とした斜面、背後のうねるような草原を振り返りながら楽しいハイキングのひと時だ。最後の雪渓を横断し、しばしの頑張りで外輪尾根に復帰する。今回も七高山には届かなかったが、ぜひ再挑戦したいと思った。
行く手には笙ヶ岳へと続く優美な稜線や、鳥ノ海に向かって山腹を横切っていく道が魅力的だ。再び花を愛でながら尾根道を漫歩し、御田ヶ原から今回の目玉である鳥ノ海への道に分かれる。ハクサンイチゲの中を行く木道歩きは楽で良い。背後には外輪尾根の山腹が大きなボリュームで盛り上がり、四周の大空間の中に人の姿が見えないので実に気持ち良い。左下には千畳ヶ原の魅力的な緑の草原が望まれ、そこに向かっていく木道らしい一筋の道が行ってみたい気持ちをそそる。鳥ノ海の縁を乗り越し池を見下ろした。藍色の池は近くからはかなり大きい。池の上に本峰が見える位置まで進んで、待望のコーヒータイムとする。他に人がいないのが有難いが、晴れ過ぎて陽射しが暑い。御浜小屋の下の斜面の、おそらく草原らしい緑色のもこもこが気になる。
十分展望を楽しんで腰を上げる。心配していた御浜・鳥海湖分岐へのトラバースの雪渓は完全に消えており、アイゼンは無用の重物だった。遠ざかる鳥ノ海を名残り惜しみながら、ニッコウキスゲや池塘が点在する草原を登っていけば、ゆったりとした稜線に出る。楽園のような散歩道だ。もう花も見飽きてきた感じだ。分岐からこれもゆったりした沢状を緩やかに河原宿へと下る。右に湿原が最後の見どころだ。さて、問題の河原宿から賽の河原への下りだ(山と高原地図では点線)。河原宿の標柱の手前から右に下りて行く踏み跡は明瞭だった。昨日、道と見えたものが一直線に光を反射しており、水路のようだった。踏み跡は雪渓の右の縁をたどり、最後は雪の下に消えた。雪渓の末端に目印らしい石積みが見えたので、それを目標に少しだけ雪の上を歩いた。傾斜は緩く問題はない。石積みからまた踏み跡を進むと、枝分かれする水流にまぎれて分かりにくくなるが、もう賽の河原の標柱が目の前だ。晴れていれば全く迷うことはないだろう。(下から来た場合は分岐が分かりにくい。写真87を参照。)この雪渓から流れ出る水は明らかに人工的な水路で左上へと引かれている。奥志賀や北八ツで見かける堰(せんぎ)なのだろうが、こんな高い所に作られているのは驚きだ。
先が見えたのでゆっくり最後の休憩を取り、御浜の斜面を見上げる。後は石畳みの道を正面に見える鉾立に下るだけだ。登りでは全く気付かなかったが、左右の灌木にはこの標高でもハイマツが交じっていた。昨日は雲の中だった本峰は遠くなったが、新山の岩塔が林立する様が良く見えた。トンボが舞い飛ぶ暑苦しい道を淡々と辿り、陽射しの溢れる駐車場に帰り着いた。
(感想)
鳥海山は、雄大なスケール、高山的な景観、面白い火山地形、豊富な花、青い日本海の海原の眺めと何拍子も揃った素晴らしい山だった。今回またも行けなかった七高山のほか、別のルートからも再訪してみたい。台風の通過直後なので山に雲が掛かることは予想していたが、初日の風は厳しく、小屋に着く前はかなりギリギリだった。久し振りに「これはちょっとヤバいかも」と思うほどだった。車で1000mまで上がれてしまうが、アルプス並みの山岳と思って臨んだ方が良い。












鳥海山、私も行きたくなりました♪
いやー、日帰りの方がほとんどですから、のんびりですよ。でも泊まりにして鳥ノ海に寄ったのは良かったです。鳥海山は本当にオススメのいい山です。
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