中央構造線と吊橋
- GPS
- 00:57
- 距離
- 3.3km
- 登り
- 92m
- 下り
- 92m
コースタイム
- 山行
- 1:46
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 1:46
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2021年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
大鹿村中央構造博物館で学んでから、断層が見える程野露頭をその日に訪ね、翌日は塩見岳に登り、実際に地質を見ながらフィールドワークで復習した。 地蔵峠は当面通行止めで大鹿村から程野露頭には一度伊那谷まで出る必要がある。大鹿村から青崩峠方面へは喬木村役場から南信のトンネルを使うのがよい。 |
写真
感想
赤色立体地図であまりにも見事な一直線、中央構造線に惹かれて中央構造線博物館で勉強して、翌日、南アルプス塩見岳で成果を試す計画を立てた。
今年あちこちの山で得た断片的な経験と知識を、短時間の詰め込みながら、整理することができて、今年3回目の南アルプスを締めくくるにふさわしい充実した伊那谷、中央構造線初訪問になった。
中央構造線博物館での勉強メモ(未編集)
筑波山(深成岩)、富士山(新しい溶岩)、北岳、間ノ岳、茶臼岳(付加体、海洋性の変成岩)に登って石の種類が異なることに興味を持った。
中央構造線博物館のサイトの解説資料が非常に丁寧で、中央構造線とフォッサマグナが別物ということも実はこのサイトで最近知りました。
博物館の元学芸員でいらした河本様に博物館のサイトで、有料解説をお願いできると拝見して、3時間の解説を予約依頼しました。時間を取っていただけることに感謝するとともに、実際に中央構造線を理解する基本から知るにはこのくらいの時間が必要でした。それでも全然頭の中が整理できていませんが。
河本様は退官されて予約依頼があるときだけ博物館に来られるそうです。
地質の研究は技術の進化とともに新しい解釈が生まれるそうで、40年前には放散虫革命といって、放散虫を石から取りだして年代が推定できるようになって日本の地質の認識が変わった。
最近ではラジオアイソトープで新たな認識が出ようとしている。三波川帯の年代は四万十帯の年代と同じで、中間に挟まっている秩父帯を下からくぐるように挟んでしまった、秩父帯は三波川と四万十のUの字の間に乗っかっているようなイメージ、という考え方が出ているとのこと。
地質研究の世界は、案外当たり前と思っていたことが新しい研究で覆ることがあるようで、私には、この案外分かっていないということが面白い発見。
Q.中央構造線を境に地質がズレるのはわかるが、数十キロくらいなら別の場所にあった同じ成り立ちの石が接してもいいように思う。
なぜ、花崗岩と付加体がぴったり接するような状態になのかよくわからない。
Q.中央構造線(露頭で見るような)を境にきれいに地質が左右で異なるということは、中央構造線は幅を持っていない2次元の面なのか。
A.中央構造線の西側、領家変成帯側の花崗岩はマグマ由来なので高熱の場所、東側の三波川変成帯は低温高圧条件で、出来た状態がまったく異なる。
この2つが接していることが中央構造線の特異な点。
中央構造線=昔の大断層は、水平に500km動いただけではなく、垂直にも数10km動いた。
このため、違う深さにあった花崗岩(浅い)と付加体の変成岩(沈んだプレート境:深い)が接することになった。
Q.中央構造線を境に西側(北中央アルプス)に溶岩性、東側(南アルプス)に海洋性の付加体が主となるので、北中央アルプスは岩のとがった山が多く、
南アルプスは緩やかまたは侵食で削られたとがり方の山が多いというとらえ方で合っているか。
A.そうとはいえない。中央北アルプスも含め、日本全体が付加体。領家変成帯の花崗岩は、付加体にマグマが貫入した。北アルプスがとがっているのは氷河の浸食が要因の一つ。
Q.三波川変成帯の名前をよく聞く。地質の帯の中で特殊なのか。
A.三波川変成帯も付加体のある時期の帯で、変性が強い。付加体の元は、三波川変成帯の私のイメージした緑の縞の石だけではなく、あらゆる種類(泥岩、チャート、石灰岩、緑色岩)が変性したもの全てが三波川変成帯の変成岩である。
Q.中央構造線の秋葉街道の谷は断層がアクティブなころに形成されたもので、今は活動がないのでこれ以上谷が進行することはなく埋まっていく一方?
A.地面の活動としては
Q.北岳から茶臼岳周辺の石は、みな付加体で、海洋性の石なのか。見た目や色が異なる石がたくさん集まっているのが特徴に見える。層状のものもあれば塊の岩もある。
A.付加体の中には、プレートを作った玄武岩もあれば、移動してくる間に積み重なった泥岩、石灰岩、チャートもある。
Q.石に10cm以下の層がある石は海洋性の積み重なって出来た層と判断していいか。細かい膜状の重なりの場合は結晶片岩で溶岩由来?
A.(分離しやすい結晶の再編が少ないから、)変成が少ないと言えるかもしれないが、泥岩の場合もメランジュの場合もありうる。
Q.塩見岳の登山道で特徴的な石はありますか。
A.鳥倉登山口は三波川帯は過ぎて、すでに秩父帯。途中で仏像構造線を過ぎると四万十帯。秩父帯は石灰岩が多い。塩見岳の頂上付近は白チャート、赤チャート、緑色片岩などメランジュ。
塩見小屋付近に白チャート、烏帽子岩付近に赤色チャートがある。
Q.北岳と間ノ岳の間の石と、常念岳と天井岳の間の石が同じだった。泥岩のように見える。そんなことあるのか。
A.地質図naviで見ると、北アルプスでも場所によっては泥岩砂岩があるし、そもそも北アルプスも付加体なので同じ種類の石があっても不思議はない。
プレートの成り立ちと石の種類
・マントルは溶けてどろどろはしていない。高圧なので融点が高いためじわじわ動ける個体。ガラス的な性状。
・マントル、プレートは溶けていないが、マグマは溶けている。溶けている要因は石の中に閉じ込められた水がプレートで高圧の地中に引きずりこまれるのが原因。水など不純物を含む物体は融点が下がる。はんだも融点を下げる不純物合金の例。
・マントルの表面は冷やされて個体になる。比重は流紋岩、安山岩、玄武岩の順で重い。融点は流紋岩は低く、玄武岩が高い。
・マグマは海溝から100kmくらいのある帯にしか発生しない。ここが環太平洋火山帯や、日本列島の火山帯。
・プレート境界から100kmの火山列は圧力が低く温度も低いため花崗岩(流紋岩)が多い。
・フィリピン海プレートは安山岩が主体で太平洋プレートより軽い。火山は安山岩。後で調べたら、富士山は玄武岩を噴出しつづける珍しい火山。
・海嶺でわき上がってプレートになるのは玄武岩。固体の玄武岩は液体のマントルより重いので、そのうち沈んでいく。この沈み込みがプレートの移動を生み出す力で、沈む場所が海溝。
・プレートの移動は、このプレートが地中に落ちていく活動が原動力で、海嶺からわき上がるのは引っぱられたから補充するようにわき上がる付随する運動と考えられる。その証拠に昔日本の近くにあった海嶺は海溝にのみこまれてしまったものがある。
・マントルはかんらん石だが地表にはほとんど出ない。
・伊那谷断層は1万年に数mの移動をする活断層。
・中央構造線は1万年に数cmの活動の低くなった断層。仏像構造線(秩父帯と四万十帯の境目)は活断層とは見なされていない。
・中央構造線付近の地塊のうごきは、南アルプスの山塊がまるごと持ち上がるような動き。回転中心が伊那谷。伊那谷は南アルプスと高度差が出来ていくが、中央構造線の谷は地面の大きな動きとしては持ち上がっていく。
・変成岩は元の石がなんであるかに関わらず、高温または高圧で結晶化が進んだり、結晶の配列が変わった石のこと。玄武岩、砂岩泥岩、チャート、石灰なんでもあり。
・深成岩はゆっくり冷えたので結晶が大きい。火山岩は結晶になるひまがなかった石。
・メランジュは付加体がプレート境界に引きずり込まれるときに高圧にさらされて変成するときに、一種類の石ではなく、砂岩泥岩に石灰の塊が入り込んだり、多種の石が一緒に巻き込まれた石。海洋プレートの上の堆積物がはるばる海溝まで運ばれてきて、ぐちゃっと圧力が掛けられるのでメランジュも褶曲も付加体の変成岩には普通に出てくる。
・模型の塩見岳山頂はしましまでメランジュ。
Q.筑波山は同じ山に密度、組成の違う花崗岩と斑れい岩があるのはなぜか。違う場所で出来た?
A.マグマの成分はあまり広くない範囲数キロでも変わるし、同じ場所でも年代で組成が変わる。違った成分が同じ場所で出るのは普通。
・花崗岩は墓石で使うように丈夫に見えるが風化しやすい。
・筑波山、加波山のような山の頂上でも、結晶の隙間に水が浸透し、割れを作り風化するので、転がらなくても丸くなる。
火山岩と深成岩の組合せ。火山岩は急速に冷えた。深成岩はゆっくり冷えるので大きな結晶化が進んだ石。
・花崗岩(深成岩)と流紋岩(火山岩)は同じ成分。シリカ:二酸化ケイ素が多い。白くて軽い。
・閃緑岩(深成岩)と安山岩(火山岩)は同じ成分。中間
・斑れい岩(深成岩)と玄武岩(火山岩)は同じ成分。シリカが少ない。重くて黒い。プレート、緑色岩の成分。
・カンラン岩はマントル
実際にはっきり区別があるわけではなく、安山岩に近い成分の玄武岩など見た目で判定できるものではない。
地質図navi(産総研)のサイトで、地理院図に重ねて地質を見ることができる。
https://gbank.gsj.jp/geonavi/geonavi.php#11,35.69338,138.13699
筑波山、加波山、宝篋山で地質が異なることもわかる。
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