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更新日:2014年02月24日 訪問者数:94963
クライミング/沢登り 山道具・装備
非常用シュリンゲ(スリング)の作り方
宙吊りからの脱出は出来なかったのか?
先日、jRO(日本山岳救助機構)の「2013年の事後分担金の通知とご報告」の遭難概要を見ていたら、次の記事が目にとまりました。

『・飯能市 日和田山
 ・単独登攀の練習中、ビレイデバイスがフィックスロープにロックしてしまう。外そうとしたが外せず、ハーネスそのものも外すことができず宙づりとなる。翌朝登ってきた別パーティーに意識をほぼ失った状態で発見され、救助。ヘリで病院に搬送された。
 ・滑落
 ・病院収容』

この文章だけから正確に状況を判断することは難しいですが、「単独で練習していて、ロープを上から垂らしてフィックスロープにしてアッセンダー(この場合ビレイディバイス?)で登攀していて、何かの拍子に滑落してフィックスロープにぶら下がった。ディバイスがロックしているので、そのロックを外そうとしても外せなかった。ハーネスを脱ごうとしても脱げずに宙吊りの状態で意識を失い翌朝救助された。」ということでしょうか?

ともあれ、きびしい言い方ですが宙吊りからの脱出が出来なかったという技術不足準備不足であることは間違いないと思われます。
←推測の図
・宙吊りからの脱出で有効なシュリンゲ(スリング)
宙吊りからの自己脱出は何度も練習を積んで訓練をしておれば必ずしも難しい技術ではありません。しかしながら、一度も訓練していないと非常に厳しい状況となります。場合によっては宙吊りのまま死亡することもあります。

宙吊りからの脱出で有効な物はシュリンゲ(スリング)です。

登攀に必要なシュリンゲ(スリング)を何本ももってクライミングをしているのは普通のことだと思いますが、万一、宙吊りになったことを想定して必ず非常用のシュリンゲ(スリング)はすぐに出せるようにしておかなければなりません。
プルージックは自己脱出に有効
色々なフリクションノットがありますが、プルージックは片手で作ることができるので自己脱出に有効な結びです。

メインロープとの相性もありますが、三重プルージックが基本です。必要に応じて二重プルージックとか四重プルージックにして使います。左の写真は三重プルージックです。
・片手プルージック - YouTube
プルージックは片手でもできるので慣れれば使い勝手の良いフリクションノットである。
・自己脱出の方法は省略するが…
宙吊りからの自己脱出の方法は省略しますが、プルージックなどのフリクションノットを利用した方法は絶対に覚えておかねばなりません。簡単に説明すると、シュリンゲ(スリング)を使ってプルージックなどのフリクションノットで足用とハーネス用を作り、そこに交互に体重を移動させて脱出します。つまり、最低でも2本あるいは3本のシュリンゲ(スリング)が必要です。足を乗せるにはテープスリングをカラビナかタイオフでつなげるといいですね。
■非常用のシュリンゲ(スリング)
宙吊りからの自己脱出のシュリンゲ(スリング)は、5ミリか6ミリの補助ロープで作ればいいと思いますが、他にも「非常時」には様々なことが想定されます。
そのために、私は昔から6ミリ、5ミリ、4ミリ、3ミリの非常時用のシュリンゲ(スリング)を何本か持参して岩登りや氷の壁を登っていました。
■5ミリのシュリンゲ(スリング)
5ミリのシュリンゲ(スリング)
宙吊りからの自己脱出はテープスリングでも問題ありません。オートブロック(マッシャー)やクレイムハイスト(フレンチノット、ヘッドオン)など。しかしながら、片手プルージックを作るためには昔ながらの補助ロープの方が問題が少ないように思います。

ちなみに、こういうシュリンゲ(スリング)は残置させて懸垂下降にも使います。その場合は「捨て縄」と呼んだりします。

5ミリの110センチの補助ロープを使いダブルフィッシャーマンで結ぶと約35センチの使い勝手のよいシュリンゲ(スリング)を作ることができます。
プルージックを5ミリのシュリンゲ(スリング)で作ると制動が効きやすい。
■4ミリのシュリンゲ(スリング)
4ミリのシュリンゲ(スリング)
4ミリは、残置ハーケンに通したり、あるいは5ミリや6ミリのシュリンゲが不足している場合にプルージックとしても使います。他にも様々な非常時に使うことができる非常に重宝するシュリンゲ(スリング)です。
4ミリの補助ロープ60センチをダブルフィッシャーマンで結ぶと約17センチのシュリンゲ(スリング)を作ることができます。
結びは正しくダブルフィッシャーマンで結んだ方が無難です。私は個人的には強固に力を加えておけばシングルのフィッシャーマンでもOKだと思っておりますが、偉そうな人が見て何とかかんとか言われるといけませんので素直にダブルフィッシャーマンで結んだ方が無難です。
ちなみに、ダブルフィッシャーマンは間違いが多いので私のノート”案外間違いが多いダブルフィッシャーマン”を参考にしてみてください。
ダブルフィッシャーマンを固めるには全体重をかけて、その上でジャンプして結びを固めます。
このことが非常に重要です。
これが曖昧だと結びが解けて死亡事故につながる危険性を持ちます。
端をペンチではさんでぶら下がります。
こういう具合にゴマカシなしでキチンと固めて作ります。

補助ロープの端は結びを作る前に前もってライターやガスコンロの火でほつれ防止をしておきます。
4ミリのシュリンゲ(スリング)はハーケンにタイオフして使う場合に便利。
4ミリでも十分にプルージックが使えます。
左の写真は二重プルージック。
■3ミリのシュリンゲ(スリング)
3ミリのシュリンゲ(スリング)
3ミリの補助ロープ55センチをダブルフィッシャーマンで結ぶと約19センチのシュリンゲ(スリング)を作ることができます。
3ミリのシュリンゲ(スリング)を使えば、左の写真のようなボルトの金具が取れてなくなっている穴に入れることができます。(左の写真はリングがついておりますが)
3ミリだとボルトの根本にタイオフもできる場合が多い。
3ミリでも強度を考えれば墜落を止めるプルージックとして有効に使える。
ハーネスに非常用シュリンゲをつけておくとよい
4ミリ数本と3ミリ数本ハーネスに付けておくといい(私の場合)。
ザックの中には予備を入れて本番(本チャン)にのぞむ。
まとめ
 5ミリ補助ロープ:110センチで作る。35センチのシュリンゲになる。
 4ミリ補助ロープ: 60センチで作る。17センチのシュリンゲになる。
 3ミリ補助ロープ: 55センチで作る。19センチのシュリンゲになる。
最後に
シュリンゲとスリングは同じです。ドイツ語読みと英語読みの違いです。
昔は登山用語はドイツ語が日本ではよく使われていましたが、最近では英語が多くなっているようですね。

尚、プルージック用に太い補助ロープ(7ミリとか)の芯を縮める方法もありますが、強度は見た目よりも極端に落ちますので注意してください。

何はともかく、非常時のためには常日頃の訓練が非常に有効です。練習しなければ変な所で命を落とすハメにもなりかねません。練習は命を守るためにとても大切です。
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コメント

ゲスト
山には「シュリンゲ」と「カラナビ」の持参を・・
ロッククライミングによる場合が、最も多いのではないでしょうか。有名なのは、もうずいぶん昔ですが、谷川岳での事件がありましたね。
当時は今とは違い、ロ−プを切断するには銃弾しかなかったのかな。
滅多にありませんが、今でもそれが対象の救助要請はありますね。(ソロの場合で、携帯で要請される人もいます)

そうですね、私も経験しましたがその時は「コマ−ル」で回復しましたが、murrenさんのやり方も良いですね。
講習会でも、時々カラナビやシュリンゲの使用方法について、講師の方が説明していますが、直ぐに練習しないと忘れますので、ヤマノ−トで何回も繰り返して、身につける方法もありますね。
2014/2/24 15:53
日和田の事故
murrenさん、初めまして。
日和田の事故の朝、ちょうど、岩場に向かうところでした。
事故は、男岩のバルジというルートだと思います。
日和田は、クライミングの入門者がたくさんきています。
中には、「大丈夫かな〜?」と思うパーティもいますし、リーダーも、昔とった何とかで、かなり怪しい感じもします。
また、ソロクライミングの方もかなり見かけます。
そんな中に起きた事故だったのかもしれません。
from marcy
2014/2/24 22:54
ゲスト
nonkibouさん、こんばんは。
ユマールのようなアッセンダーがあれば楽に自己脱出できると思いますが、それでも慣れておかないとダメですね。しかしながら重いとう点がありますね。タイブロックやマイクロアッセンダーのような軽量なものもありますが、それを設置するにもプルージックなどの技術が必要ですね。
谷川岳の宙吊りのザイルを銃撃により切断したのは昭和35年だそうですね。そんな大昔だったんですね。今だったら長いザイルで懸垂下降できたと思いますが当時は無理だったんでしょうかね?よく分かりませんね。
2014/2/24 23:22
ゲスト
marcyさん、こんばんは。
昨年のその事故のときをご存じなんですね。
実は私も学生の頃に1度だけ登ったことがあるゲレンデです。どこをどう登ったのか完璧に忘れていますが、駅のホームが秋っぽかったのをなぜか覚えています。すでに38年ぐらいが過ぎようとしております。
昔やれた人もやっぱり基本に戻って一から始める必要がありますね。今の私がまさにそれです。そのためにコーチと選手が自分の中で同居している感じがしています。
コメントありがとうございました。
2014/2/24 23:26
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