上谷山☆思いがけない出遭いと周回の果てに見た悪夢
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- GPS
- 09:28
- 距離
- 22.9km
- 登り
- 1,044m
- 下り
- 1,149m
コースタイム
天候 | 快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2019年01月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
通常はこの時期は積雪のため通行不能 |
コース状況/ 危険箇所等 |
一般登山道なし、尾根上は藪漕ぎ必至 送電線巡視路から下谷川林道に下ったところで橋が崩落、渡渉は困難(詳しくは感想/記録に) |
写真
感想
まず、この上谷山と聞いてどこに位置する山かと思われる方も少なくないに違いいない。標高は1200mに近く、江越国境の最奥部で大きな山容を誇る山にも関わらず、この山が知られていないのは偏に登山の対象外だからというより他にないだろう。実際、この山に至る登山ルートはなく、猛烈な藪漕ぎを覚悟するのでなければ、登山は積雪期に限られる。しかも近江百山に数えられる山であるにも関わらず、滋賀県側からのアプローチは豪雪のために県道が冬期通行止めとなり、福井県側からアプローチする他なく、このヤマレコ上でも過去のレコはいずれも福井県側からである。今回、期せずしてこの山に登れたのは、異常ともいえる寡雪に加えて山中における偶然の出遭いの賜物であった。
この日、広範囲に好天の予報であり、こういう日こそ普段は曇天の下に江越国境の山を訪れる恰好の機会である。数日前から余呉トレイルの地図と首っ引きで山行計画を考えていたのであった。この日の山行における大きな制約は、家内と次男が出かける予定があるので車を使うことが出来ないのである。横山岳の西尾根〜東尾根の縦走、妙理山〜大黒山の縦走も候補に考えられたが、最終的に木之本始発の余呉バスで中河内へ向かい下立山から音波山を縦走し、最後は余呉国際スキー場からタクシーで帰還するという計画に落ち着いた。
残念ながら公共交通機関により京都駅からの東海道線の始発には間に合わないので、米原まで始発の新幹線でショートカットする。米原からすぐに敦賀行きの始発に乗り継ぐと、伊吹山の東の空が急速に明るくなり、間もなく朝陽が顔をだす。
中河内行きのバスに乗りこむと案の定、乗客は私一人である。バスとはいえ、その車両はMKのシャトルバスと同じ大型のバンである。車が木ノ本を出て早々、まず驚いたのは大黒山に向かうべく同じバスに乗った一週間前との車窓風景の変わりようである。前回はあたり一面の雪景色がいまやすっかり消失し、わずかに日陰に雪を散見する程度である。果たして季節が進みすぎたのか、あるいは巻き戻されたのか。
椿坂を越えて少しは雪の量が増えたものの、終着の中河内に着いても雪は少ないままである。運転手の話によるとこの一週間、雪は全く降っていないとのことだ。時間は8時過ぎ、早速にも菅並に向かう県道265号線に入り、車輪の轍の上を歩き始める。先週は到底、進入は困難と思われたこの県道の雪もかなり少なくなっており、雪の下のアスファルトが顔を出す箇所も散見する。
すぐにも県道を向こうから走ってくる車がある。轍の上を歩いているので、勿論のこと道端に避けなければならない。擦れ違う際、通りすがりに運転席の窓が開く。「お早うございます」と挨拶すると先方も同様に挨拶を返してくれる。
「どちらからいらしたんですか?」
「向こうの入り口、菅並からや」
「雪は大丈夫だったんですか?」
「雪があるのはここら辺だけや。あっちの方は楽勝、ルンルンやで」
この会話が後に重要な意味を帯びるとは全く予期しなかった。再び轍の上を歩きだすと、中河内で折り返してきたのだろう、先程の車が再び後ろから迫ってくる。下谷山の登山口のあたりまで運んで欲しいものだと思ったが、先日の大黒山のような有り難いご提案はなかった。
まもなく先週、取り付いた大黒山の北尾根のあたりに差し掛かるが、やはり雪がなくなっている。斜面には露出した地面が目立ち、先週とはまるで光景が異なる。北尾根の曲がると道路脇の駐車適地と一台の四駆が停められ、運転席では地図を見ている男性がおられる。遠目に見る限り、薄茶色の大きな地図は余呉トレイルの地図に見受けられる。
車に近づくと丁度、男性も車から降りてこられた。一見、私と世代が近いように思われる。「おはようとございます」と挨拶をすると、早速、笑顔で挨拶を返して下さる。爽やかな笑顔の人の良さそうな方に見受けられる。運動靴に普段着という出で立ちではあったが、直感が質問を発した。
「これから登山でしょうか」
「ええ、これから大黒山に登ろうと思って」
(大黒山に登るのにわざわざこの北尾根を選ぶとはマニアックな方もいるもんだ)
「実は丁度、一週間前に私もこの北尾根から大黒山に登ったばかりでして・・・」
云い終わらないうちに相手の笑顔がひときわ輝いたかと思うと、
「もしかして、山猫さんでしょうか?」
これには絶句である。二言目でいきなり個人を特定されるとは!目の前の人物は少なくとも超能力者や霊能者には見えない。
「某ネットで先週の山猫さんの大黒山のレポをみて、北尾根いいな〜と思ってここに来たところです。まさか当のご本人とは!」
先方も相当に驚いたご様子。鈴鹿の雨乞岳のような山は別として、普段の山行では滅多に人と出遭わないので、人と出遭うこと自体が驚きである。
Wさんは前日の森山岳の山行の後で北小松のあたりで車中泊して、今朝こちらに移動して来られたとのこと。登山前だというのに時間の経つのを忘れて話し込む。話に花が咲くなんてものではない。ガスコンロにライターを近づけたようなものである。Wさんはこの山域の山行経験が非常に豊富で驚くばかりだ。
袖触れ合うも他生の縁とはこのような出遭いだろう。折角なのでご一緒しましょうという有り難いご提案を頂く。当初、私のコース取りにお付き合いして下さることも考えられただが、先程の車の運転手の情報をお伝えする。
「それなら県道を奥に入って別の山に登るということも考えられますね」と提案すると
「そうですね。1人だとさすがにこの道を入ろうという気にはならないのですが、二人だと万が一、車がスタックしてもなんとかなるでしょう」
「そうなれば、喜んで車を押しますよ」
田戸から左千方という選択も候補にあがったが、針川からこの江越国境の盟主、上谷山のピストン往復は如何でしょうかと提案させて頂くと、「草川啓三さんからこの尾根上には素晴らしい山毛欅の樹があると聞いて、気になっていたのです」と同意を頂く。地図上には途中の尾根上のピーク1041峰までは黒い破線がついているが、その先は線も何もない。この時期、滋賀県側から上谷山に登るなどという機会、この県道の尋常ならざる寡雪に好天という条件があってのことだ。
二人して余呉トレイルの地図を広げてみると、お互いの表紙のカラーが違うことに気がつく。鷲鷹さんのそれは高島トレイルと同じ深緑色なのだが、私のものは水色だ。地図をよく見比べるとほとんど同じであるのだが、一箇所だけ、滝の谷から送電線の鉄塔尾根を下るルートが鷲鷹さんの地図では赤い実線で記されていたのが、私の版では赤線が消えて、上谷山への尾根と同じ、黒の破線に格下げされていることに気がつく。
山行先が決まったところで、Wさんが準備を整えられるのを待っていざ出発である。県道を奥へと進むと、確かに情報のとおり、さらに雪の量が減る。車の轍の上には大きめの石が転がっているので、早速にも私が降りて石を除去する。先程の車が通過してから落ちてきたものだろうか。
登山口のある針川に辿り着いたのは9時20分頃。下谷川に沿った林道の入り口に車を停めるが、どうやら近い過去に車を停めた形跡がある。そこから林道の奥には、往還する一対の踏み跡があった。
まずは鹿の足跡を追って尾根に取り付く。最初は地面が露出している箇所も少なくないが、登るにつれて雪がつながるようになり、スノーシューを装着。尾根上には意外と倒木が多い。余程の深雪でない限りラッセルが苦になることは少ないので、先頭を行かせて頂く。最後の雪から時間が経っているためだろう。湿ってはいるが締まった雪にスノーシューの沈み込みは少ない。
尾根が緩やかになると、山毛欅の美林がはじまる。尾根を振り返ると、山毛欅の樹間から大黒山が大きく見える。稜線を視線で辿ると左手の妙理山へと連なってゆく。
ふと後ろをみるとWんは高級そうなSwalowsky社製の双眼鏡を取り出して、こちらの方をみている。勿論、私を見ている訳ではない。
「今、鳥が飛んだので・・・」(私は全く気が付かなかったが)
「あの鳴き声はゴジュウガラだ」そういえば一瞬、鳥の声が聞こえた。
「シジュウカラでなく、ゴジュウガラっているんですね」
「街中にはいませんが、こういう山の中にくると時折みかける鳥です」
さすがは野鳥観察会の支部リーダーを務めておられるWさんである。
やがて平らで広い台地に出ると山毛欅の林は一層、壮麗さを増す。樹高の高い山毛欅の中にはひときわ大きく枝を広げる巨樹が散見する。広い尾根は倒木も少なく、二人で並んで歓談しながらスノーシューを進めるのに不自由しない。山毛欅の林は延々と続くように思われるが、尾根は徐々に狭くなり、細尾根となる。いつしか石留山を過ぎることをWさんが教えてくれる。
標高点848mを越えたあたりで休憩していると、Wさん曰く、昨日のスノー衆は二ヶ月ぶりの山行であり、急登になるとスピードが出ないとのこと。自分のペースで行くと、上谷山までの到達を諦めざるを得ない可能性があるので、どうぞ先に行って下さいと、親切なご提案を頂く。もしも登ってこられない場合には自分のトレースを辿って降りてくるので、確実に再び出遭えるだろう。申し訳ないが、お言葉に甘えて一人で先行させて頂く。
1041m峰にかけて山毛欅林の斜面を登る。いつしか雪は柔らかく、スノーシューの沈み込みも深くなる。西隣の大黒山のあたりとは標高はわずかしか違わないが、そのわずかな違いは雪質に如実に顕れるのだろう。
広くなだらかな台地状の山頂部にさしかかると山毛欅林は終わり、正面には上谷山がその大きな姿を顕す。しかし、まもなくあたりは一面、ヒメシャラの藪となる。ところどころにテープがつけられてはいるが、夏道の形跡はない。ヒメシャラの藪の中に入るとこれから進むべき尾根の方向すらおぼつかない。私が間違った方向に進むと後から来られるWさんもこのトレースを辿ってこられる可能性が高いので、ここは責任重大だ。
藪の中にはところどころに野兎の足跡がついているが、野兎の足跡はヒメシャラの藪の中の歩きやすいところを選んで通っていることが多い。足跡の方向を見定めながら藪をうまく切り抜けられそうな場所を探してゆく。ピークの東の端では雪が大きく盛り上がっている場所がある。どうやら大きな岩の上らしい。雪の上に登ってみるとヒメシャラの藪の上から上谷山に至る尾根が目に入る。
ヒメシャラの藪の斜面を抜けるとようやく広い雪原の鞍部に出る。雪の下は笹薮なのであろう。笹薮をすっかり覆い尽くした雪原にはシュカブラが刻み込まれている。
上谷山の斜面から振り返ると、Wさんが1041m峰のピークを越えて、ヒメシャラの斜面を下ってこられるのが目に入る。Wさんからもこちらが目に入ったようだ。ここまで20分ほどだろうか。このあたりからは急に電波が入るようになる。教えていただいた携帯の番号に「ヒメシャラの藪を越えるとパラダイスが待っています」と送信する。届くとよいのだが。
上谷山の山頂にかけて尾根は左手に大きく方向を変える。再び尾根上にはヒメシャラの樹が出現するも、先程の1041m峰の山頂部のような密生とはならず、樹を避けながら歩くのにさほど難儀はしない。好展望の中を緩やかに登り、山頂に達する。
山頂でのんびりと待つうちにWさんが到着される。まだ14時である。「この時間なら鉄塔尾根を周回出来るかもしれませんね」と云うと、「やぶこぎの流儀で長いランチ休憩を愉しむつもりですので、山猫さんはどうぞ鉄塔尾根行かれて結構ですよ。車のところで待っていますから。」。Wさんも自分のペースで愉しまれる方のようなので、私のペースを気にせず下山される方が気楽かもしれない。滝が谷を周回しても登山口の針川には遅くとも3時間半、暗くなる前には帰り着けるだろうと踏んで、再びご厚意に甘えさせて頂くことに。
上谷山を後に斜面を下り初めると間もなく、先程の1041m峰のようなヒメシャラの藪が始まった。しかし先程のような短い距離ではない。延々と藪は続く。しかも緩やかではあるが、アップダウンを繰り返しながら。登りはよいのだが、下りに差し掛かると広くなだらかな尾根は次の鞍部へと進むべき方向がしばしわかり難い。ヒメシャラの樹が傾いている方向も頼りにしながら、進路を探る。幸いにも好天に恵まれているからよいものの、雲の中であればルート・ファインディングに苦慮することだろう。
広い台地状のピーク1082m峰は尾根芯はヒメシャラの群生がきついと踏んで、南側の斜面をトラバースすることになる。ピークを過ぎたあたりで尾根に戻ると、その先は山毛欅の樹林が目に入る。山毛欅林に入れば少しはこのヒメシャラの藪はマシになるかと期待したが、その期待はすぐに裏切られることになる。山毛欅の林の中でもヒメシャラは容赦なく追ってくる上に、山毛欅の林も長くは続かない。やがて右手の斜面から杉の植林地が這い上がり、尾根芯を避けて北斜面の植林地との境界を歩くことが出来るようになるとしばし藪漕ぎからは開放される。丁度、余呉トレイルの尾根の北側に植林地と書き込まれたあたりだ。しかし、今度はラッセルの深さがゲイターの上を越えるようになると歩きやすいとは到底云い難い。
植林地も長く続くわけではない。植林地の境界を辿るうち主尾根を外れて、北向きの支尾根に入りかけるところであった。再びヒメシャラの藪の生える主尾根を追いかける。急速に傾きつつある西陽がヒメシャラの雪に垂れ下がる多数の氷柱に光があたり、クリスタルのペンダントのようにプリズムを放つ。呑気に氷柱に感心している場合ではない。ようやく尾根上の送電線鉄塔が見えてくるとあともう少しと自分を励ます。
結局、尾根上の最初の鉄塔広場に辿り着いたのは山頂を出発してから1時間半ほどを要したのだが、自分としては想定の範囲内の時間で来れたのは上出来だったのではないかと思う。この送電線鉄塔からは期待したものに巡り合うことが出来た。雪に埋もれた送電線巡視路である。余呉トレイルの地図においても、ここから鉄塔尾根の分岐に至るまで、尾根上にここだけ赤の実線が引かれているが、送電線巡視路で道が切り開かれているためと読んでいた。
いままでの迷路のような藪ルートが嘘のような快適な道となり、高速道路のように思われる。この日の好天の暖かさのせいだろう、陽当りの良い斜面になると緩んだ雪のせいで多少の踏み抜きはあるものの、直線的に進むことが出来る道の快適さに比べたら、多少の踏み抜きは最早、苦にならない。
主尾根から分岐する鉄塔尾根に入ると、尾根上は切り開かれており、ここも期待に違わぬ好展望の尾根である。尾根に落ちる樹々の青いシルエットと樹間から洩れる西陽の黄金色が雪の上で縞模様を織りなす。その波打つ綾の上を快速に進んで行くのは勿体無いくらいだ。
尾根上の南端の鉄塔にたどり着くと、ここからは送電線に沿って右手の急斜面を下ることになる。正面の林の中にピンクのテープが見えたので、つられて尾根を行き過ぎるが斜面をトラバースして次の鉄塔に向かうと、鉄塔の左から尾根を下ってゆく巡視路を見出すことが出来た。ほぼ平行に走る二本の尾根のうち左側の尾根の上を巡視路は下っていくようだ。
雪に埋もれた巡視路を辿らなければ、下降は簡単ではないだろう。頻繁についているテープにも助けられて尾根を下ってゆくが、突然、テープが見当たらなくなった。右手の尾根にむかってトラバースしてゆくのは果たして本来の巡視路か単なる鹿道か?直感的にますます斜度を増してゆくこの尾根を下ってはいけないという気がして、尾根を乗り換えることにした。隣の尾根に移ると尾根上は雪に埋もれた道が続いている。
やがて尾根の下に下谷川が見えてくると、再び左手の斜面へとトラバースする道を見出し、小さな沢を渡って斜面を辿るとついに林道に降り立った。ほっと一安心。時刻は17時を少し周ったところだ。これでWさんの車のところまでは明るいうちに帰り着けるだろう・・・と思ったのは大間違い。しかし、まさかその先に悪夢のような難関が待ち受けているとはどうして予想が出来ただろうか。
林道を歩くと忽然と林道が崩落しており、下には下谷川が流れている。渡渉出来そうなところは全く見当たらない。それでも左の足をわずかに水に浸した程度でなんとか渡り終える。問題はそこから先だった。林道そのものが流されている上に、辺りには間伐材などが散乱しており、わずかな距離でも途端に進みにくくなる。すぐにも次なる渡渉が現れるが、なんと対岸の林道跡までの間に大きな杉の倒木が川の上に横たわっている。苦労して少し上流に戻り、両足を水に浸すのを覚悟して入水する。しかし、勢いの早い川とヌルヌルと滑りやすい川底に足を掬われ、前のめりに上体までを水に浸すことになった。濡れたのは私だけではない。なんと私の一眼レフとズボンのポケットに入れていたコンデジ、二台のカメラを同時に水没させる羽目になった。このオリンパスの一眼レフは昨年の6月に京都は北山の足尾谷で水没させた挙げ句、修理不能となり、二台目なのである。いずれも保証期間内であるが、残念ながら水没による故障は保証もきかない。
これで終わりかと思いきや、まだまだである。今度は上谷山から流れてくる沢の上で、やはり林道の橋は崩落。三度目の渡渉。そして、二つの川が合流した直後、針川を渡り返す。流石に水量が多く、腰まで水に浸かることになるが、もう既に濡れた身体である。どうやらこの橋の崩落地点、わずかに100m程の距離を進むのに20分近くを要したようである。
この鉄塔尾根と送電線巡視路を辿るルートが余呉トレイルの地図上で赤の実線から黒の破線へと格下げになった理由が、ここまで全く理解出来ながったのだが、ここに来て身をもって理解するのであった。そういえば、ヤマレコ上で余呉トレイルの関係者が「上谷山〜下谷山を整備するのは林道が再開するのを待って・・・」との書きこまれた記事を読んだことがあったのだが、この林道の橋の崩落地点が再び通れるようになるのを待って、という意味だったのだろう。
そろそろヘッデンをつける頃合いなのかもしれないが、林道を正面から上弦の月が照らし始めた。すっかり塞いだ気分になって林道を辿る。林道上には往還する一組の足跡がある。先程、車を停めた場所から続いてきたものだろう。あの林道の崩落地点を目にして引き返されたのではないだろうか。やがて、林道の向こうでヘッデンの明かりが車の影から出て来たかと思うと、車の後ろでパンパンとスノーシューを重ねあわせて、雪を払っているWさんの姿が目に入る。
山頂でゆっくりされた後、山毛欅の巨樹を堪能しながらゆっくりと下山されたところとのこと。どうやら長時間、お待たせすることにならずに済んでよかった。
「どうでした?」と興味を示して下さる。あの素晴らしいSwalowsky社製の双眼鏡で上谷山からの尾根から私が鉄塔尾根を下ってゆくのが見えていたとのことであった。「山猫さんのトレースを辿って、来週にでももういちど行ってみようかな」と仰るので、「残念ながら、到底それはお薦めできません」まず、私がびしょ濡れになった状況をご説明する。
早速、車に乗り込むと車内の暖房が車とカメラを乾かしてくれる。もしも徒歩で、長い道のりを中河内まで戻るような計画を立てていたらと思うと、考えるだけでもそら恐ろしい。県道を車で戻ると午前中よりも明らかに雪の量が減っている。轍の上にはところどころに新たな石が出現しており、どうやら落石も頻繁に生じる道のようだ。
Wさんに木ノ本駅まで送って頂き、次の新快速に乗り込んむが、残念ながら車内は暖かいと云い難い。米原ではすぐに新幹線に乗り継ぐことがわかったので、京都まで新幹線に乗る。車内のトイレで靴下を絞ると大量の水が滴り落ちるのだった。たまたま若い女性の客室乗務員が通りがかり、どうぞと大量のペーパータオルを下さる。京都までの短時間でもびしょ濡れの靴の水を吸わせると、ようやく足元の不快感は和らいだ。
どうやらこの無謀な山行の代償は非常に高くつくことになったが、思いがけぬ人との貴重な出合い、そしてそう簡単には実現しないであろう上谷山への光景を目にすることが出来た日であった。下谷川林道が再び整備されることを切に願うが、崩落した複数の橋を復旧するのは容易なことではなさそうだ。
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上谷山? 余呉? 三国岳? ヤマレコの地図を見ての私の頭の中です。
えっ?余呉の中河内〜 ここって建築構造設計に於ける積雪量が600僉屋根に1屬△燭1800圓眄兩祺拿鼎架かる地域じゃない〜 ってな具合で、どんな山行きだったのかレコの先に進むのがワクワクしてきました。
R365って冬季通行止めの道路かと思っておりましたが、バスが運行されているんですね。
小説を読んでいるかのようなレコを楽しませていただきました。
残念な出逢い、感動の出逢い、苦難のルート等々。山の綺麗な写真よりそちらの方に目が行ってしまいました。
レベルが違い過ぎて今回のルート、カシミール3Dに登山道追記はやめときます(笑い)
E-M5はどうでしたか? 私もお気に入りの25弌600丱此璽爛灰鵐妊犬鮑2鵑汎韻犬茲Δ柄宛けドボンで、ザックのショルダーベルトに取り付けていたポーチの中で水没しました。
取り出すとカメラから水が出てきて… バッテリーとSDカードを取り出してマイクロファイバータオルにくるんで帰宅後、カメラ防湿庫の中に入れておきましたなら、奇跡的に復活してくれました。
一眼は、無理かな〜 米の中に入れておくといいとか??
最近、車掌さんは女性の方が増えましたね。親切な方だったようで。ザックの中にジップロックに入れた替靴下をいつも入れているのは正解だなと感じました。
ののさん
毎度、濃厚なコメント有難うございます。
>余呉の中河内〜
さすが、ののさんの世界では中河内に関してそんなデータがあるんですね。そういえば、確かに家々のつくりも屋根が急峻で、豪雪に備えた形状のように思われますが、今季、少なくとももう一度は中河内を再訪したいと思いますので、その目で見てみたいと思います。コアな情報、どうも有難うございました。
>R365って冬季通行止め?
福井県側は冬季通行止めになるのですが、滋賀県側には余呉国際スキー場があるので、そこまで除雪されます。バスは中河内までは運行していますので、ののさんも宜しければ如何でしょうか・・・そういえば、ひとつだけ注意すべき点、余呉バスの時刻表には17:55分発というのがあるのですが、これに乗る場合には前日の15時までに予約が必要です。
>レベルが違い過ぎて・・
そんなことはないと思います。稜線上もこの季節は本来はもう2m近く積雪するところだと思います。そうなれば、今回のように延々と藪漕ぎすることなく、快適に歩くことが出来るのだろうと思います。しかし、通常はこの県道に入ることが出来ない筈なので、それが問題ですね。
>E-M5はどうでしたか?
私も二つのカメラに関して、ののさんと同じようにバッテリーとSDカードをすぐに抜いて、乾かしたのでしたが、CanonのPS-SX70hsはモニターが完全に死んでしまいました。水没カメラなので果たして修理してくれるかです。ご存知だと思いますが、これはモニターがバリアングルタイプなのですが、愚かなことにモニターと本体の間の水を拭くのを失念していたのがよくなかったのではないかと思います。
E-M5は翌日に電源を入れたところ、電源も入らず、やはり・・・とうなだれてしまったのですが、念のため・・と思ってもう一つのバッテリーを入れたところ、なんと普通に動いてくれたのでした。ただ、初代のE-M5は修理不能で帰ってきたところ、何の遜色もなく動いていたのでした。喜んで使っていたところ、夏の池口岳〜聖岳の縦走で雨に濡れた後、電源が切れないという現象が生じて、再び修理にだしたところ、水没したカメラの修理は不能ということになってしまった経緯があり、予断は許さないかなと思います。
ということで、OM-Dユーザーとして、いろいろとののさんに教えて頂けるのを楽しみにしております。
それにしても、ののさんはカメラ防湿庫をお持ちなんですね。恐れ入ります。
>ザックの中にジップロック
私も見習いたいと思います。どうも有難うございました。
yamanekoさん こんばんは
ひとまず、お風邪などひかれずにお元気そうで安心しました。
私にとっては、極めつけの山が上谷山でして、
さくさくと歩かれたところに敬意を表します。
積雪期に何とかチャレンジしてみたいのですが、足に自信が持てません。
しかしながら、前半の登りの尾根の往復を基本に考えると、少し希望が持てそうです。足を鍛えて、残雪期にチャンスを伺います。
コメント有難うございます。
後半は水没を覚悟しないと無理なので。
今年は雪が少ないので、残雪期の雪の深さが気になるところですね。
でも、この上谷山の南西尾根は山毛欅の樹林も魅力的でした。
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