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Yamareco

記録ID: 173178
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積雪期ピークハント/縦走
鳥海山

鳥海山 (大台野〜滝ノ小屋〜途中まで)

2012年03月03日(土) ~ 2012年03月04日(日)
 - 拍手
体力度
4
1泊以上が適当
GPS
27:54
距離
17.8km
登り
1,549m
下り
1,550m
歩くペース
速い
0.70.8
ヤマレコの計画機能「らくルート」の標準コースタイムを「1.0」としたときの倍率です。

コースタイム

1日目
9:50 大台野
14:20 滝ノ小屋
滝ノ小屋宿泊

2日目
7:40 滝ノ小屋
11:20 2023m付近
11:35 撤退
12:00 滝ノ小屋
13:20 大台野
天候 晴れ
過去天気図(気象庁) 2012年03月の天気図
アクセス
利用交通機関:
自家用車
大台野の除雪最終地点までは,タイヤチェーンがあった方が安心
コース状況/
危険箇所等
滝ノ小屋までは,スキーで数センチ沈込む程度の雪で歩きやすかった.
このところ,気温が高かったためか湿雪

滝ノ小屋から,300mほど高度を上げると,そこからは,氷の斜面が待っていた.
2000mから上は,休む場所など無さそうな氷の世界
アイゼン+ピッケルが必須.スキーを履いたままでは無理

滝ノ小屋は無人で宿泊料400円
大台野 牧場付近を出発
大台野 牧場付近を出発
日焼け止め塗っておくべきだった
日焼け止め塗っておくべきだった
道路の上を進む
鳥海山山頂が見えた 
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鳥海山山頂が見えた 
滝ノ小屋手前
滝ノ小屋
右の白いのが鳥海山(行者岳)
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右の白いのが鳥海山(行者岳)
次の日登り
休むことが困難な状況ではshotzが必須アイテム
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休むことが困難な状況ではshotzが必須アイテム
滑落してテンション下がってるの図
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滑落してテンション下がってるの図
そろそろ限界
もう登る気なしの図(2000m付近)
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もう登る気なしの図(2000m付近)
降下中に登っている2名を発見
降下中に登っている2名を発見
帰り際に滝ノ小屋を振り返る
帰り際に滝ノ小屋を振り返る
帰りは登り返しが無い
帰りは登り返しが無い
スノーシューの跡
スノーシューの跡
無事下山
2012年03月06日 01:23撮影 by  001HT, HTC
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3/6 1:23
無事下山
下山後,鳥海山荘から
2012年03月06日 01:21撮影 by  001HT, HTC
5
3/6 1:21
下山後,鳥海山荘から

感想

天気は最高によかった.
3日は多少風があったが,4日の天気は最高だった.
風も弱く,これは新山まで行けるんじゃないか?と思った(が甘かった)

9:50 大台野の除雪最終地点を出発
2人の山スキーヤー(それぞれ単独)が,
ちょうど登り始めるところだった.

トレースを追って歩くが,泊まりの装備が重く肩にのしかかる.
ペースが上がらないまま,ずるずると目標時間を過ぎ,
4時間半かかって14:20に,やっと滝ノ小屋に到着した.

食事を取り,水を確保したらあとは特にやることがない.
明るいうち(と言っても18時くらいまでは十分明るい)に夕食の準備やら
明日の出発の準備をして,あとは,ひたすらAMラジオを聞きながら過ごした.

一人だと暇すぎる.

日が沈むと,それまでビュービューと音を立て
山小屋の戸をガタガタ言わせていた風が,ピタリと止んだ.
外を偵察すると辺り一面,霧で真っ白になっていた.

明日は日が昇るとまた風が吹くのだろうか,とか
霧で視界が無くても登るのか? とかいろいろ考えたが,
考えすぎると精神が崩壊しそうなので,
「明日の朝は明るくなってから行動を開始する」
ということだけ決め,21時頃 就寝

何百メートルも続く氷の斜面で身動きが取れなくなる夢を見た
(翌日現実のものとなるのだが)

2日目の朝は6時頃起床,
外を散歩すると風は無く霧に包まれていた.

夜に余計なことをいろいろと考えてテンションが下がっていたが,
だんだん明るくなる外の景色を見たら,「よし,登ってみよう」
という気持ちになった.

荷物をすべてパッキングしてから,
アタック用のザックで登り始める.

1日目に苦しんだヘビー級の荷物から開放されて,体が軽かった.
これはいける!と思った (結局いけなかったけど)

スキー+クライミングスキン+スキーアイゼン という装備で登る.
ストックの先に爪が付いたBDのウィペット(←これが最高に役に立った)
ザックには(一度も使ったことがない)ワンタッチ式のアイゼンが入っていた.
手元に500mlのお湯と食料はShotzエナジージェルのみ
ショベルはザックの外に組み立てた状態で括り付けてある.
ザックはDynafitのRC20 (ザックを降ろさずにスキーの脱着が可能)

完璧だった (アイゼンを一度も使ったことがないということを除いて)

氷の斜面もスキーアイゼンが斜面に対して直角に噛めば,
かなり安定して登ることができた.
斜度がきつくなり,氷の面積がどんどん増えていった.

1800m付近で一瞬バランスを崩した瞬間に,アイゼンの爪が氷を砕き,
体重を乗せていた山側の足がズルッと後に滑った.
氷の斜面でスキーが外れ,内倒

氷の上を滑り出した瞬間,「ヤバイ」と思いウィペットの爪を氷に突き刺した
ウィペットがノコギリのように,カリガリと氷を切り裂きながらスピードを増し,
10メートルほど滑り落ちた.
(後でGPSのログを確認すると滑落した距離は15m 高さ5mほどだった)

運よく斜度が緩くなる雪の吹き溜まりで停止した.
気をつけないと本当に危険だということに,ここで気が付いた.

ワンミスが命取り

気を取り直して登り始める.2000mを超えたあたりから上を見上げると,
すぐそこに行者岳のピークが見えている...が,行けそうで行けない.

登っている途中,何度も,太もも内側の筋肉が攣りそうになった.
限界が近いなと思いつつも,“まだいける”という悪魔か天使かの囁きにより,
登りを止めなかった.


下は氷の斜面,上は氷の斜面
登ることも横に移動することも困難になってきた.
「下の方で,アイゼンで氷の斜面登る練習をしておけばよかった」
と思ったが,もう無理だった.

アイゼンに履き替えて登ることを15秒ほどイメージしてみた...が

ザックに固定したスキーが横風に煽られ,
アイゼンのつま先が氷から浮き上がり滑落する場面しかイメージできない

ここで滑落したらどうなるかはイメージしなくても明らかだった.

結局,選択肢は一つしか無い

 撤収 (理由:怖い)


昨年の経験から,撤退準備ができるような足場を確認しながら登っている.
スキンとスキーアイゼンを外す必要があり,
着動きが取れなくなってからでは遅い.


滑降の体制が整った瞬間...世界が変わった.


恐怖の氷斜面は, 単なるアイスバーンに変わり,
1分前に生命の危機を感じていたすごい斜度の雪面は,
いい感じの斜面に変わっていた.




降りる方向をGPSで確認しながら帰る
20分で滝ノ小屋まで戻った


滝ノ小屋付近には,朝には無かった登山靴の足跡があり,
斜面を見上げると2人の人が,上を目指して登っているのが小さく見えた.


荷物をまとめ,あとは帰るだけ
帰りは重力が自分を運んでくれるので,重い荷物も,もはや苦ではない.
海まで見渡せる景色を眺めながら木の間をすり抜け
スピードを殺さないようにスーッと来た道を引き返していった.


---
車でぐるっと回って鳥海山荘のお風呂に入った
雲ひとつ無い鳥海山の山頂は,青空をバックに輝くような白だった.
この日は月山も雲ひとつ無く見えていた.

おわり



のぼり




下り




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