奥久慈男体山 ぶなの木ルンゼ(筆者勝手に命名)の前衛峰 途中撤退(バリエーションルート)
- GPS
- 07:35
- 距離
- 10.1km
- 登り
- 300m
- 下り
- 291m
コースタイム
- 山行
- 7:15
- 休憩
- 0:20
- 合計
- 7:35
天候 | 晴れ時々曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2024年03月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
登はん要素の強いバリエーションルートです。健脚・一般コース分岐点を健脚コースに進むと尖塔のように見える前衛峰です。 ちなみに筆者が勝手に「ぶなの木ルンゼ」と呼んでいるのは、この岩塔の左横の谷をつめ(完全に詰めようとすると死ぬので、巻くのですが途中省略。筆者の別の山行記録に詳しく記載しています。)、一般コースの頂上稜線に口を開けている岩溝に飛び出すルートです。こちらもバリエーションルートです。 参考(前回の山行記録) 奥久慈男体山 ぶなの木ルンゼの前衛峰 (筆者勝手に命名、途中撤退、バリエーションルート) https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-6450609.html |
写真
装備
備考 | ヘルメット、ザイル50mおよび30m各1本、ハーネス、エイト環、安全環付きカラビナ3枚、ワイヤーゲートカラビナ4枚、スリング(120cm2本、60cm2本、ロープで作った3m程度のものを1本)、アプローチシューズ、ピッケル、ピッケルリーシュ、防寒手袋(商品名「防寒テムレス」)、ゴム引き軍手(商品名「タフレッド」。タフレッドでピッケルを握ると、低温下では凍傷の危険があるので用心します)、雨具(藪こぎ用)、ゴーグル(日曜大工用、藪こぎに使用)、スマホGPS、タオル、目だし帽、靴下ミトン(筆者の山ノート参照)、行動食、水 ところどころホールドのない土の急斜面を攀じるので、季節に関係なくピッケル必須です。行き詰ったときの懸垂下降による撤退や、自分自身や荷物の確保に必要なので登攀具も必須です。つま先の蹴りこみ、狭いホールドへの立ちこみが必要なのでつま先のそりあがって、靴底のしなりやすいハイキングシューズでは進めません。クライミングゾーン(固いつま先)のついた靴底の硬い登山用の靴を使用します。 前回、お守りとして50mザイルの必要性を感じて用意しましたが、出番が来る場所の手前で撤退を決断しました。 若干薮をこぐので、目を守るゴーグルの携行が安全です。ゴーグルは休憩時間などにブユから目を守るのにも役立ちました。 かなり暖かくなり、ブユが増えてきました。そろそろ虫除けも必要なようです。 |
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感想
1年越しで1.5m前進したが、その先はまだまだ遠かった。
なかなか暖かくならず、いつまでも冬のつもりでいたら、山の林道はオオイヌノフグリに敷き詰められ、奥久慈岩稜は菜の花越しに楽しめた。ブナの木ルンゼ(筆者勝手に命名)への沢は、繁殖期のカエル(カジカガエル?)がギャーギャーとにぎやかだった。余りうれしくないスギ花粉のかすみと沢のブユも含めてすっかり春の気配だった。
ーーー以下は自分のためのメモーーー
最大の敵は朝布団から抜け出すこと。ザックに荷物を詰めること。
暗いうちの行動ができなくなった。そりゃ地味だし陰気だし当然かもしれないが10年位前は夜通しハイキングとか深夜の藪こぎとかの試練にも耐えていたものだ。
いつも目覚めたときにはもう登山はやめたと思うのだが、どうせご機嫌な晴天を見たら動きたくなるに決まっている。それならば頑張って早出しようと思うのだが、大概はこうして、ある程度朝日に刺激されてエンジンがかかることになる。
朝の日差しに後押しされるように出発した。林道はもう春の気配が感じられる。
ブナの木ルンゼの前衛峰の取り付きの茶畑には見事な白梅があることに、今回の山行で初めて気が付いた。真っ白な花で少しおしゃれをした前衛峰を見てニコッとしながら取り付いた。
沢でかもの声ががーがー気負えて不思議だなと思っていたら勘違いでかえるだった。この時期はかわず合戦だよな。冬眠中の目覚めて繁殖行動する。昔大学の構内でこのかわず合戦に出くわしたときはキャンパス内をウシガエルがぞろぞろ歩いていて驚いたものだ。ただし今回のがーがーはウシガエルではない。たぶんカジカガエルだろう。
筆者がテーブルと呼んでいる第2のチョックストーン(かつては第1のと読んでいたのだが手前にひとつ増えたのだ)が目に入ると、右手に秘密のゴルジュが切り込み、目指す撤退地点につながる。前回のアイデアであるところに、潅木に長めのスリングをかけて、それを使って稼動域を稼ぐという作戦は成功するのだろうか。
潅木にスリングを掛けるところから苦労した。そもそも最初に挑戦したときは撤退地点までザックを背負ってこれなかったではないか。いつも撤退の懸垂下降で支点に使っいる潅木で準備すべきだったが、この潅木はは自己確保しないと作業できない急斜面で面倒くさがったことがあとあとの禍根を招いた。下山後の今考えてみれば、懸垂下降の準備として自己確保用のスリングを残置しても困らない程度の装備を用意してきたのだから、どんどん前線基地を作っていけばよかったのだ。
何とか撤退地点まで到着し、細い潅木にスリングを巻いてハーネスと接続し、自己確保した。これで取り合えず手を離しても最悪の事態は避けられる。とはいっても1mくらいは滑落して怪我するかもしれないのであるが、、、。
スリングをつかんで立ち上がればいけると思ったがまだ昨シーズンに目標にしていたホールドに右足がかからない。その代わり右足の届く範囲は広がっているから、スリングを引きながら反対の岩壁を右足で突っ張ることができる。半歩前進といったところだが、この力の掛け方だとそのあとの動きが取れない。左腕は岩壁かホールドを押すように力を入れないと、左腕と右足の突っ張りが効果的に働いてくれない。
まず左の壁のホールドを使ってと何度か試しているうちに、そのホールがばりっと剥がれ落ちてしまった。突起でもないこんな浅いホールドまで剥がれ落ちるのかよ。
立ち上がることは何度も練習しないと。ビレイとっているからリスクを多少はとらなければ進めないことはわかっているがどうしても潅木をつかむことに頼ってしまう。そして左手が疲労困憊するので、安全地帯に両足で立って左手を休ませる。
立ち上がり方自体を学習してくると、そこまではスリングをつかんで立ち上がる。ここまでの動きは何とか自信を持てるようになったが、左腕で潅木のスリングを強く引いて立ち上がるものだから、立ち上がったところで腕が限界近い。そもそもずっと試行錯誤していて疲労がたまっている。この先へ進む知恵がなければ、今日も撤退だ。
もうここからは手を放さないと先へ進めない。幸い左肩が壁を押して、左肩と右手右足で突っ張っている(三点支持だなこれは)。手を離さないと進めないということで今まで2時間つかんでいた潅木から手を離した。左肩のツッパリから左手のツッパリに体を入れ替えた。下半身の稼動範囲が一気に広がった。両手で岩溝を突っ張るようにすれば、両足の自由度が増す。左足で最初に取ったホールドと、昨シーズン、ここに乗れればと思いつつも足が届かず断念したホールドに左足をおくことができた。
ここでビレイを解いたら、絶対に落ちるわけには行かないし、撤退するにはあの少し先の太い潅木まで登りきらなければならない。薮がちのところまでは行ってしまえば薮が支えてくれるから何とかなるかもしれないのだが、足元はコケの生えた濡れた岩だ。緩斜面だと思っていたが甘かった。なるほど登はんというほどの急斜面ではないが、斜度は思っていた以上に高かった。そしてほとんど靴底の摩擦頼りの登りを強いられる。それなのに岩はコケと水で濡れている。ビレイ無しで進むにはリスクが高すぎる。一番最初のアイデアどおり、ロープスリングで長めのビレイを取り、ブルージグで少しずつビレイラインを伸ばすことによって、落ちたときの滑落距離を短くするという作戦を取るべきだろう。これでは危険が多すぎるので、今回はここで撤退する。
撤退すると言っても、それができないからあの先の太い潅木まで行こうと思っていたのだし、そのために今回50mのザイルを持ってきていたのだ。これからクライムダウンで撤退できるのか?登った順番を逆にたどることは難しい。ビレイを取っている細い潅木を離したことでやっと通過してきたのだ。潅木を離した状態で取り付きの岩棚に戻るのは手探りならぬ足探りだからだ。途中やや取りやすい土付きのホールドがあるからそこを使うことにした。
足を掛ける。ザーッと音がして足元が崩れて行った。
あわてて右手、左肩で突っ張る、体が岩から引き離されそうになる。ビレイしているからあきらめようかという悪魔のささやき。しかしビレイはあくまで死なないためのものであって負傷のリスクはある。ここまで降りてもまだ1m落ちるし、落ちたときに潅木がちぎれるということだってないとは言えない。いやそんな理屈は関係なしに落ちるわけには行かないのだ。すでに100%の力を出しているが、そこでさらにもう10%力を出して何とか突っ張りきる。右足の利きを強める。体が引き離されてずり落ちるような、気が遠くなるような気持ちの悪い感覚からは、何とか抜け出すことができた。右足と左肩で突っ張りながら左手でビレイのスリングを探る。スリングをつかんで手繰り寄せきれば、事実上支点の細い潅木を掴んだことになるからだ。同時に岩影で見えなくなっている岩棚を探す。たぶんこの方向だろう。そしてそこまでは落ちても20cmほどであることが感じ取れた。そちら側に体が向かうように右手と右足のツッパリをひときわ強く取り、ずるっと岩棚の上に落ち立った。
とりあえず今回は死なないだろう。太い潅木を使って懸垂下降15m2ピッチで、「テーブル」が目に入るところまで降りてきた。前回は途中で振り子になったために痛い目をみたが、今回は慎重に突っ張りながら下降し無事に安全地帯まで(と言ってもここから取り付きまでも悪いが)
こんかいもブナの木ルンゼには抜けずに枯れ沢を下降した。前回は早めに薮に入って人生2番目に悪い藪こぎを体験しているので、倒木にさいなまれながらも根気よく沢を下った。ここでいいだろうと思ったら、前衛峰をおめかししていた白梅のそばに出た。いい香り。挑戦に対するご褒美だろうか。暫く上品な香りを楽しんだ後、健脚・一般分岐点まで戻って装備を解いた。
ハーネスなど解いている最中にブユにたかられた。グルが、藪こぎゴーグルがブユから目を守るために活躍した。奴は目に飛び込んでくる。目は守ったものの、額を刺された。こめかみがかゆい。3週間たった今でも少しかゆい。
今回も肉体的にはかなりダメージを受けた。
左腕、一の腕筋肉痛、右腕、左ひざ、右ひざ筋肉痛、股関節筋肉痛
両手のひら手首筋肉痛 帰宅途中のドライブでは、手の指がつって難儀した。
それでも寝返りが打てないほどの打撲のダメージを受けた前回と比較すると楽なほうだろう。
翌日から散歩とスローーーーなジョギングを組み合わせた積極的な休養を開始した。というか自分にはもはやそれは休養ではないのだが、そんなところにも頑丈さの低下が出ている。
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