戸隠・蟻の塔渡り〜西岳縦走 破線ルートを行く
- GPS
- 10:39
- 距離
- 11.8km
- 登り
- 1,395m
- 下り
- 1,403m
コースタイム
天候 | 晴れのち曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2015年11月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
▼奥社〜八方睨: 奥社横から急登始まる。百間長屋から岩登り。4つの鎖を乗り越えて、蟻の塔渡り。 蟻の塔渡りは肩幅よりやや広いが、核心の剣の刃渡りは幅20cmで5m。「刃」を掴んで西側に足ががりがあるので巻くのが良い(東側にも足場がある模様)。 ▼八方睨〜本院岳: 八方睨から急な下り。この時期、西面は日が差さないため霜が溶けず、また枯葉もかなり堆積していて大変滑りやすい。本院岳近く、トラバース斜面の鎖を行く。滑落に注意。 ▼本院岳〜西岳: 北面・西面は霜と落葉が残り、大変滑る。西岳直下の西岳キレットはほぼ垂直に鎖を登る。高度感あり注意。 ▼西岳〜牧草地: 西岳からP1までは特に危険箇所なく歩きやすい。P1下からすぐ鎖のきつい下りが始まり、熊の踊場まで急な鎖の連続! ・最初の不帰の剣は、ほぼ垂直の長めの鎖下りで慎重を要す。 ・二つ目の鎖の後、蟻の塔渡りがあるが、こちらは八方睨直下よりも幅広で普通に歩ける。ただし両脇は垂直の崖。 ・三つ目の鎖はハシゴとセットになっている登る難所。ハシゴと鎖が微妙にずれている。P1への上りの場合、鎖からハシゴが位置的に見えず、通った経験がないと大変な困難が予想される。 ・何本かのロープ・鎖の後、岩壁(猿の踊場)を西側に伝って下る鎖が長めの区間。 ・続いていくつかの鎖を下りて、東に巻きまた西へトラバース気味に長めの岩場を鎖で下る。熊の踊場まで下ると核心部は通過。その後もう一か所トラバースする鎖を下ると岩場は終わる。 ・岩場の後は牧草地の手前の林まで急坂が続く。落葉が深く堆積し大変滑りやすい。 ▽P1からの岩場は百間長屋〜八方睨の岩場と比べて、岩が脆い感じがある。足場や手がかりを探す際には崩落しないか注意を要する。 ▼牧草地〜鏡池: ・ゆるやかな牧草地を下ると、左に「西岳登山道」の看板がかかっているので、左へ楠川に下ること。直進してしまうと迷う。 ・楠川の川床までの下りはやや急坂だが、至る所に水が流れていてかなりぬかるんでいる。 ・最後の渡渉を終えて、林道に出るまでは鏡池からの沢沿いに緩やかに登る。 (鏡池側から来る場合、最初の渡渉点の手前にある「西岳→」の標柱を見落とすと、楠川沿いに下ってしまうので、注意が必要。特に夜間は見落とす可能性高い。) |
その他周辺情報 | ・戸隠小舎で宿泊。食事豪華! |
写真
装備
個人装備 |
ヘッドランプ 1
予備電池 8
1/25,000地形図 1
山と高原地図 1
コンパス 1
笛&緊急身分証 1
筆記具 1
保険証 1
飲料 1.5 リットル
ティッシュ&トイレットペーパー 2+1
テーピングテープ中&細 各1
ファーストエイドキット 1
タオル&バンダナ&手拭 各1
携帯電話(スマートフォン) 1
計画書 1
レインコート上下 1
防寒着(ダウンジャケット) 1
コンロセット 1
時計 1
非常食 1
行動食 3
アイゼン6爪 1
シャツ等着替え 1
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感想
子供の時からの憧れ・夢だった西岳に、ついに登った。
2週間前に様子見を兼ねて戸隠山に登った時には、西岳は来年にしようと考えていたのだが、戻ってきて山行を振り返ったり様々な資料をみているうちに、戸隠山に登った感覚がまだ残っているうちに登った方が良いのではないかと思うようになった。
時期的には11月に入ると雪が降るだろうから、単独行で自分の力量を考えて登るとすれば、これが今年のラストチャンスのように思えた。
何せ「信州 山のグレーディング」で、槍・穂高の大キレットルートと同難度(Eランク)になっている場所だ(2014年)。
急に冷え込んで、麓の戸隠でも氷点下に達した。前日、ヘルメットを借りに寄った戸隠山岳ガイド組合事務局長の秦さんから、西岳に登る際の注意点をレクチャーしてもらった。P1から登るか、八方睨から登るか思案していたが、秦さんの意見は八方睨から逆時計回りの方が良いとのことだった。P1から登る場合は、とにかく難所の連続になって体力を消耗するからとのことであった。
当日朝も冷え込みが厳しく、出発点の鏡池では所々薄氷が張っていた。鏡池から初めて西岳&戸隠山の全景を見たが、朝日を浴びて大変美しかった。戸隠山(八方睨)から本院岳の間はかなり下っている。あんな場所を峰から峰へ歩いていくのかと考えると、大変だと思いながらもわくわくする。
麓にはまだ紅葉が残るが、山ではすでにほぼ落葉してしまったようだ。
奥社から八方睨までの道は二度目となるので、岩場の登りはすんなり進み、核心の蟻の塔渡り・剣の刃渡りも冷静に渡ることができた。前回撮影し忘れた「剣の刃渡り」も撮影。
天気は晴れ渡った。八方睨に出ると、ほぼ360°が見渡せた。四阿山・浅間山、奥秩父、さらに富士山も八ヶ岳の脇に小さく姿を確認することができた。戸隠から富士山が見えるんだ!
南アルプス、中央アルプスも確認できる。北アルプスを望むと、前回見通せなかった山まで見ることができたが、何と言っても、遠くに槍ヶ岳・穂高岳が見えたのは感激だった。やはり槍ヶ岳のあの特徴ある姿は目につきやすいし、また山のシンボルのようなものに思える。昨夏、槍・穂高に登った際に戸隠連峰が確認できたのだから、天気が良ければ見えるのは当然のことなのだろうが。
残念なのは今回カメラを忘れたことで(!)、携帯電話のカメラで撮影するはめになったため、解像度や色はいまいちでアップも撮りきれなかった。
八方睨から先は完全に単独行となった。(4人パーティーが先行していたのは本院岳に着いた時に西岳にその姿を認めてわかったのだが。)こんな高所でもカラスが一羽いて、餌がほしいのか途中まで着いてきた。
八方睨からの稜線道は西に面していて、日が当たらないため霜がかなり溜まっていた。その上登山道整備で刈った草や枝、さらに落ち葉もかなり積もっていて、この道はあまり人が通らないためか、それらがそのまま残っていて大変滑りやすく、なかなかスピードに乗って歩けなかったため予想以上に時間がかかってしまった。霜と落葉には、この先P1弁慶岳に至るまで悩まされた。
本院岳まで一度ぐっと下り、登り返す。ただし晴天の下、眺望が素晴らしく誰もいない道を進むのは大変気持ち良かった。本院岳手前のトラバースの鎖を慎重に進んで、頂上に到着。ここの眺望も素晴らしかったが、一点だけ、目の前の西岳が北アルプスに部分的にかぶってしまうのが玉に傷。だから早く西岳に進むことにした。
本院岳から西岳は近いが、西岳直下に西岳キレットと呼ばれる、ほぼ垂直に鎖を登る難所がある。霜が溝に積もっていてやや苦労した。
念願の西岳に登頂。眺望は北〜東〜南に開けていて申し分ない。西岳連峰の続き、一夜山へ至る稜線も見渡せる(一夜山は見えないが)。ただここは西に灌木が茂って、肝心の北アルプス側は見通し切れないのだ。その点は残念である。見える眺望を楽しみながら昼食を摂った。
西岳からP1弁慶岳までは快適な道で、ついつい写真を撮りながら時間を喰ってしまう。北アルプスが望めるのは、P1が近くなった登りあたり。
P1では風が吹き出して雲も出てきて、おそらく0℃近くまで下がっていただろう。
P1から先、一夜山までの長い稜線が西岳の核心部分だと思うのだが、そちらには道がない。P1から見える光景だけを楽しむ。
P1からの下りは難所の連続だった。いきなり垂直に近い長めの下りに始まり、鎖とハシゴが微妙にずれている登り、その後も鎖場の連続となる。八方睨まで登る岩場に比べて、こちらの方が岩がやや脆い感じがあり、慎重になる。熊の踊場まで下りると核心部分は通過するが、何本鎖を下ったか。確かにこの道の登りを初めて使うとなると、かなり精神的に消耗する気がする。
最後の鎖場を過ぎると林間の急坂を下るが、この道がまた曲者だった。
歩いてきた道の中でこの辺りが一番落ち葉が積もり、足を踏み出すと一緒に落ち葉も動くので足元がよく見えない。場所によって滑りやすい所も多々あり、慎重に下りざるを得なかった。
1,350m付近まで下ると、道は緩やかになり林間の気持ち良い場所を通り、やがて牧草地と呼ばれる平地に出る。振り返れば、歩いてきた本院岳・西岳・P1の全景が見通せる。
楠川への下降点からは道がやや急で、水が方々で流れてぬかるみとなっている。
3か所の渡渉(小さい流れを入れると4か所)を済ませると、そこからゆるゆると200m登り返して林道に出る。林道に出る途中で日が暮れた。
霜と落葉のため予想以上に時間がかかったが、鎖の難所は問題なく通過できて無事下山できた。
翌日、今は無くなった鬼無里の親戚の家の跡へ行った。子供の頃、訪れるたびにその庭先から西岳を仰いで心に深く印象を刻んだ場所だ。遠縁の祖父は、あの山は神様が住んでいる険しい場所だと話していた。家跡の裏の小高い場所に、この祖父の眠る墓所がある。墓参して、無事に西岳に登ってきたことを報告した。
コメント
この記録に関連する登山ルート
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お疲れ様でした!
私は戸隠方面の山はほとんど知らないので
今回ichi11さんが歩かれたルートの中で
どの部分が破線ルートなんでしょうか?(^_^;)
望岳台から見る西岳の稜線は険しくて凄いですね!
子供の時に何度も見ていて訪れてみたかったという
ichi11さんの気持ちが伝わってくる記録でした
コメントありがとうございます。
破線ルートは、八方睨〜本院岳〜西岳〜P1〜鏡池近くの西岳登山道入口の区間で、
地図の大体左半分です。
実際には、熊の遊場という場所から西岳登山道入口までは、普通の登山道と変わらないと思いますが、あまり人が歩いていないので、登山道整備で下草などを刈っていないと、道を進むのが大変なのかもしれません。
八方睨〜本院岳のトラバース鎖、西岳直下の垂直鎖、P1〜熊の遊場の鎖連続区間が危険個所でした。
鏡池から眺めている分には、迫力があって見応えある、絵になる山です
天気が良ければ日がな一日、
蝶ヶ岳から槍・穂高を眺めた時のように、ぼうとして眺めていてもいいかな
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