ニペソツ山は北海道の東大雪エリアに位置する山で、標高は2013mです。山の形はピラミダルで、登山者に憧れを抱かせる魅力を持ちます。

また自然を十分に感じられる山で、ナキウサギやエゾツガザクラを始めとする様々な動植物を鑑賞できます。

山名はニペソツ川の源流であることに由来します。「ニペソツ」はアイヌ語で、「シナノキが多い所」を意味する説がありますが、判然としていません。

幻の百名山

ニペソツ山は日本二百名山の一座ですが、その一方で「幻の百名山」としても知られています。
深田久弥（ふかだきゅうや：1903-1971年）は日本百名山を選ぶ際、この山は未踏であったため候補にしませんでした。後に訪れてからその素晴らしさに気づき、「申し訳なかった」と後悔を述べています。

大雪山系のパノラマを満喫

山頂部は素晴らしい展望で、トムラウシ山や十勝岳、ウペペサンケ山など、大雪山系の山々をよく見晴らします。
最高地点は岩がむき出しでごつごつとしています。二等三角点「二屏卒山」が設置されていましたが、2012年に撤去されました。

眺めの良さに加えて、夏季は高山植物が咲き乱れ、楽園のような雰囲気を醸します。

往復20km越えのロングコース

ニペソツ山の入山口は幌加温泉登山口と十六の沢登山口で、専ら選ばれているのは前者です。後者の十六の沢登山口は現在、アクセスすることができないためです。そこへ至る林道は2016年に台風被害に遭い、通行不可となりました。十六の沢コースは、かつては深田久弥も歩いた定番の道でした。

一方の幌加温泉コースは、距離が長いためか往時は廃れていました。しかし十六の沢登山口の利用が困難になったことを受け、再整備を経て2018年に復活しました。

幌加温泉登山口からニペソツ山は、往復距離が20km以上あります。さらに標高差も1300mを越え、登山上級者向けです。
泊りがけで臨む場合は、テント泊をします。テントを張れるのは、前天狗の指定地です。

出発からしばらくは樹林帯です。沢を横切ったり、泥地でぬかるんでいたりと、滑りやすいため注意が必要です。
途中に立ち寄れる三条沼は、針葉樹に囲まれ静謐に水を湛えています。

所々で眺望が得られますが、標高1662m地点のピークは大きく開けており、目指す山頂部をはっきりと望みます。

主稜線に上がる直前は急登で、ロープが設置された箇所もあります。

前天狗から山頂へは、アップダウンを繰り返します。
ハイマツに囲まれた一本道で、ダイナミックな風景を楽しむことができます。