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更新日:2018年02月03日 訪問者数:16356
山スキー/ボード 山道具・装備
BCスキーヤー・ボーダーのための携行ロープ考察
クマ
●BCスキー山行で、行く場所にもよるが、ロープを持参したほうがいい場合がある。単に万一のトラブルのときに使用するだけでなくて、確保がないと進行する気になれない局面に出くわした場合にも重宝する。しかし基本的には緊急用なので、できるだけ以下の要件を満たしたい。

・出来るだけ軽くて、カサにもならないこと。
・最低でも30メーター長ぐらいはほしいこと。
・垂直の確保ではないので、スタティックロープでもいいこと。
・エイト環やATCなどのデバイスが使えること(専用のデバイスでもいい)。
・ドライロープであること。
・デバイスを使った懸垂下降ができること。
・危険な場所での先行者の確保ができること(立木やSAB*確保によるスタカット進行など)
・滑落者を引上げるシステム(クレバスレスキュー)に使えること(3分の1引上げシステムなど)
 *スタンディングアックスビレー
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finetrackのゴージュバッグ25
●これまでボクは、BC山行でfinetrack社の沢用ロープ(ゴージュバック25)を携行していた。このロープは6.5ミリ径だが、芯材がダイニーマで破断強度が高く、25メーターもので560gと大変軽い。もともと沢用で水に浮くことを目指したもので、対岸に投げるバッグ(スローバッグ)に詰めて使うものだ。

メーカーのHPには、雪山山行での応用も謳っているのだが、上記要件と照らし合わせた場合、おおいに不満が残る。致命的なのはデバイスが使えず、懸垂下降などが出来ないことだ(メーカーHPでも禁止している)。表皮の素材および編み方が弱くて、試しに実際に使ってみたら片寄りしてしまってコア材がむき出しになってしまった。つまりこのロープはボディビレイでしか使用出来ず、持参しないよりはマシ程度の安全性しか担保されない。
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BEAL RANDO 8mm Golden Dry Rope
●出来たら8ミリ径ぐらいのクライミングロープを30メーターほど持参したいところだが、軽量なベアール・ランドでも1110gあり、おまけに結構かさ張る。これじゃあ、BCスキー山行にはちょっと重荷だ。
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Mammut Rappel Kit
●マムートから懸垂下降専用ロープというのがでている。専用デバイスやカラビナ、ロープバッグのセット(Mammut Rappel Kit)でも販売されている。ロープは6ミリ径だが、コア素材がアラミド繊維のもので破断強度は16kNと十分だ。しかしこの細さだと懸垂下降に一般的なデバイスは使わず、専用デバイスNano8(片耳付きエイト環:写真中央左)を使う仕様になっている。

セットされているロープは60メーターで1.86kg。BC山行に携行するのは30メーターで十分だと考えるので、半分に切ったら930g。それでもチト重い。ロープはEN564認証。
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Nano8使用法
●懸垂下降時の専用デバイスNano8について、海外のサイトをチェックしてみたら、評価はまちまちだった。ボクの場合、体重がある(80kg)ので、6ミリ径ロープでの懸垂下降は、制動面で少々心配だ。通常のエイト環の使い方(写真左)だとブレーキ性能に不安が残るが、”耳”を使う(写真右)ことによって安定したブレーキ性能が得られそうな感じがする。いちど実際にテストしてみたいものだ。
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Petzl Kit Rad System (Rescue And Descent)
●少々高価なセットだが、クレバスレスキュー目的のシステムとしてペツルから出荷されているロープもある(セットだけでなくロープ単体での入手も可能)。このロープも6ミリ径の30メーター、スタティックロープでコア素材はアラミド繊維、660gと上記Mammutのロープよりかなり軽い。もちろんロープはEN564認証。

セット内容は、このロープ以外に、ペツル自慢のマイクロプーリー(MICRO TRAXION)、環付きカラビナ3枚、タイブロック、ダイニーマスリング120cm、専用ロープバッグ・・・の充実した装備(1045g)で高価になるのも理解できる。このセットを左の写真のようにして、3分の1引上げシステムを構築する訳だ。3分の1引上げシステムで可動支点の部分はふつう細引きでクレイムハイストするのだが、これをタイブロック1発で解決している点などが唸らせられる。システム構築の際の大幅な時短になるだろう。
Petzl Kit Rad Systemの使用法と疑問点・不安点
●この充実した装備を専用のロープバッグに詰め込んで、腰のハーネスにぶら下げ、緊急時にいつでも使用できるようにと意図されている。紹介サイトはこちら: https://www.petzl.com/US/en/Sport/Ropes/RAD-SYSTEM

製品セットで疑問なのは、MICRO TRAXIONやTiBlockの対応ロープ径がメーカー側で8mm以上になっているにもかかわらず、このシステムでは6mm径ロープで使っている点だ。
それと避けたいのは、マニュアルで紹介されている懸垂下降方法だ。カラビナへムンターヒッチして、5mm径の小スリングを追加してオートブロック(マッシャー)によるバックアップしている方法が図示により紹介されているが、この方法だとロープがとても痛むので本当の緊急時以外には使いたくない。また、6mmという小径メインロープ2本に対して、はたしてどれだけ安定したブレーキ性能を得られるかどうか?疑問だ。メーカーによる説明サイトはこちら: https://www.petzl.com/US/en/Sport/Rappelling-on-the-RAD-LINE-cord
●以上をまとめると、以下のようになる。
・finetrack フローティングロープ 6.5mm径×25m 22.4g/m 560g ダイニーマ
・BEAL RANDO Golden Dry Rope 8mm径×30m  37.0g/m 1110g ナイロン
・Mammut Rappel Rope      6mm径×30m  31.0g/m 930g アラミド
・Petzl RAD line Rope       6mm径×30m  22.0g/m 660g アラミド
(※ BEAL RANDOのみダイナミックロープで、ほかはすべてスタティックロープ。)

アルパインクライミングではふつう8mm径以上の(ダブル)ロープを使うので、 ここに紹介したロープの6mmという径は不安が残る。しかしマムートやペツルなどの信頼のあるメーカーが、懸垂下降用あるいはクレバスレスキュー用として開発した製品なので、かなりの不安が払拭できる。メーカー側の出荷検査も十分されているだろう。レスキューがらみの製品は、助けられる側だけでなく、助ける側の命も託すものなので、無名メーカーのロープやデバイスは使う気になれないのだ。
●”Mammut Rappel Kit”の入手は、Trekkinnからは出来なかった(在庫なし)。"Petzl Kit Rad System"の入手もTrekkinnからが便利だが、セットは高価だし構成パーツはすでに持っているので、結局このRad Lineロープだけを入手した。いずれも国内ショップ(インターネット)でも入手できると思うが、扱い店を探すのに多少苦労するかもしれない。

<Mammut Rappel Kit>
(予想)本体セット14,000+送料3,000+関税など2,000?=19,000円?
<Petzl Kit Rad System>
(予想)本体セット40,000?+送料?+関税など?=50,000円?
<Petzl Rad Line 30 m>
(実績)ロープ21,369+送料1328+関税など0=22,697円

Trekkinnの場合、インターネットによる個人輸入になるが、注文して受け取るだけで、特別の仲介などは不要だ。ただ、現在はユーロが強いので、対ユーロで円高のときに注文したほうが安くなる。
●以降、Petzl Rad Line のテストと評価 ――――――――――
写真は、上からBEAL RANDO Golden Dry Rope8mm径、Petzl RAD line Rope公称6mm径、finetrackフローティングロープ6.5mm径
●取得したPetzl Rad Line 30mに関して、このロープはメーカーが6mm径だと言っているにもかかわらず、ファイントラックのロープ6.5mm径より明らかに太い。また、660gではなく実測で720gあった。じゅうぶん乾燥している。Petzl ともあろう会社がどういった訳なのだろう。

まあ、BEALやfinetrackのロープは使いまくっていて、多少細くなってきているが、Petzl Rad Lineロープは、まだ数えるほどしかテンションかけていない。使い込むまでは公称径より太くしているのかも知れない。
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●現在、取得したPetzl Rad Line 30mでいろいろテスト中だが、最初に書いた要件はほとんど満たされそうだ。上に記述した疑問点、つまりMICRO TRAXIONやTiBlockの対応ロープ径については、確かにその対応範囲にはいっていないものの、MICRO TRAXIONで5kNをペツルが保証していた。TiBlockについては記述がなかったが、3分の1引上げシステムでは負荷が半分になっている部分だし、実際のロープ径は7mm前後あるので問題なかろうと考える。また、心配なことのひとつにドライ性があったが、ロープの密度が高いようで、いまのところカチカチにはなったことはない。
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Edelrid Micro JUL
●懸垂下降について、カラビナへムンターヒッチするメーカー推奨方式ではロープが大変痛むのでやりたくなかった。そこでBDのATCガイドをエクステンションさせ、5mmのナイロン製細引きでバックアップとってテストしてみたところ、やはりブレーキ性能に不安を感じた。ぜんぜん無理という感じではないが、単身でも結構すべった。同様にルベルソ4でもテストしたが、ATCガイドのほうがましだった。いまさらエイト環などを使いたくなかったので、下降デバイスをエーデルリッドのマイクロジュル(写真)に変更して実施したら安定的なブレーキ性能が得られた。さすが小径ロープ対応のビレイデバイスだ。(懸垂下降でのこれらの利用方法は、あくまでも個人責任で!)

●クレバスレスキューの3分の1引上げシステムについては、まだテストしていないが、上記の懸垂下降方法と違って、メーカー推奨方式とまったく同じ方法でやってみようと考えているので問題なかろう。しかし、適切な雪壁で実際にテストしてみたいと考えている。
★ 結論的には、現在販売されているロープの中で、BC山行の安全担保目的に使うのであれば、Petzl Rad Line ロープ(+Edelrid Micro JULの組合せ)が最も優秀だと思う。みなさんのBC山行の安全担保に、是非こういったロープなどのセルフレスキュー装備を検討してみてほしい。決して、余分な装備ではないと思う。
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コメント

Nano8
Nano8使っています。耳使えば6mmダブルで体重70kgいい感じのフリクションです。
2018/2/3 22:43
Re: Nano8
hutchさん、想像通りでした。しかし、実績が聞けて、ありがとうございます。このマムートのセット、メーカー側で在庫がなくなっていて、どこかのショップ在庫だけになっているみたいですね。

このマムートのセットの6ミリロープは少々重いので、Petzl Rad Line ロープとNano8の組合せで、いい線いきそうです!
クマ
2018/2/3 23:15
参考になります。
 kuma-sanお久しぶりです。記事について興味深く読ませて頂きました。
 細くても懸垂下降やビレイ器が使用できるロープを携行することが望ましいことは分かっているのですがBCの場合、不慣れな人も多いので僕は最近細引き6mmで作ったロープラダー5mを持参しています。沢、ツリーホールへの転落、林道法面の下降などはこれでことたりるかと。6mm×20mを個人装備にしているのでラダーの回収や延長は現地でできると思っています。
 積極的にロープを使う場面が想定される時は8mm×20mのダイナミックロープの方を持っていくつもりでしたが、6mmダブルでフリクションがとれるロープがあるのですね。勉強になります。
 いずれにしてもレスキューするほうにもされるほうにもなりうる可能性があるため、装備は定期的に使うことを想定して練習が必要だと思います。
2018/2/9 12:47
Re: 参考になります。
マメタさん、ごぶさたです。
細引き6mmで作った自作のロープラダー5mと、6mm×20mを個人装備にされているのですね。さすがです。特に林道に降りる場所が、崖や人工壁になっていて、左右の逃げ場所もないとき、立木を支点にした懸垂下降が重宝されます。でもメンバー全員が慣れていないと難しいですね。

山スキーの場合、ロープに動的荷重かかるケースはまずないので、静的荷重で耐えてくれれば、6ミリロープを積極的に使っていこうと考えています。
クマ
2018/2/9 14:53
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