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更新日:2022年07月27日 訪問者数:2333
ジャンル共通 山道具・装備
登山でのパックラフトの活用
中澤慧
はじめに
パックラフトは空気を入れて膨らます、持ち運び可能な舟だ。
せっかく背負えるというメリットが有るのに、「持ち運びやすいカヤック」のような使い方だけではもったいないと思う。
パックラフトはダム湖に閉ざされた秘境へのアクセスを可能にし、渡船という手段を用いなくても移動できる。
下山時や山行途中に使用すれば渡船と違い予約の時間を気にしなくても良い。
そしてなにより登山を自己完結できる。

前述のように川下りで使用する人は多くいるけれど、日本では登山に使用している人はほぼ居ない。
そのため情報が殆どなく、自分が何を買えばいいのか、どんなものがいいのか全くわからず手探りだった。
そこで、同じような趣向の人の少しでも助けになればと思い、使用している装備について書くことにした。
登山での使用を目的としていて、基本的に静水を主としていることに注意して読んでいただきたい。
また筆者自身は登山の経験はあるが、川下りの技量は殆どない。
会越横断
春に行った会越横断では2度田子倉湖を渡っている。
パックラフトはこういった、「山行途中での舟の利用」を可能にする。
パックラフトについて
購入して、実際に使用したパックラフトについての雑感を書く。
所有装備リスト
メインで使用しているのは以下
パックラフト : Alpacka Raft / Scout / 1600g
パドル : Supai Adventure Gear / Packraft Paddle / 373g
● Klymit / LiteWater Dinghy (LWD) / 1250g
安価で購入することができる。かなり軽く、インフレーター込みで1250g。
大西良治はこの舟で瀬のある川を攻めているが、信じられない。静水での使用が一般的だと思うが、ペラペラすぎて推進力が得られない。
軽いため、浅い場所などでポーテージと搭乗の繰り返しなどがスムーズ。
日本の山岳地帯は急峻なのでこの舟ではポーテージが増える。
早出川本流では浅い場所でも遊びすぎてパートナーの舟に穴が空いた。
生地の表面が特殊で、ダクトテープでは補修できなかったので注意。
軽いため、沢登りで淵の突破に普通に使えるが、その場合もっと軽量な舟もある(後述)
記録:https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-3253196.html
『岳人』2021年9月号 No.891 掲載
岳人:https://webshop.montbell.jp/goods/disp.php?product_id=0002109
購入:https://www.amazon.co.jp/dp/B07YP7X1QP
● Alpacka Raft / Alpaca (Classic) / 2345g
普通のパックラフト。川下りを想定してある。
そのため推進力、安定性は他に比べて抜群。
登山での使用を目的としたために、少しでも軽量にしたく、オープンデッキにしたが、それでも重い。
担げないほどの重さでは無いが、沢での登攀やスキーでの滑降などのパフォーマンスは落ちる。
川下りをするのであればセルフベイラータイプにすると良いがさらに重くなる。
何をしたいか、どんな山をやりたいかによって注文時にカスタムするとよい。
泊まり装備でホワイトウォーターを攻める場合はカーゴフライオプションをつけた方がいい。
日本には輸入販売店が無いため、海外通販になる。
手作りのため、注文してから発送まで時間がかかる。

記録(奥利根徘徊):https://bigislandyamaguide.com/2021/09/03/maki-hira/
記録(黒又川本流):https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-3359331.html
購入:https://www.alpackaraft.com/products/classic
● Alpacka Raft / Scout / 1600g
2艇所有。軽量性と推進力のバランスがとてもよく、現在のメイン使用。
生地は薄いがそこそこ丈夫。静水での使用なら全く問題なく、推進力も前述のLWDよりもよく、Alpackaと遜色ない。
オープンデッキタイプしかないが、川下りもできる。生地が薄いため注意は必要。
グラブループが1つしかついていないため、追加したい場合は自分で取り付ける必要がある。
取り付けはLoctiteのビニール用接着剤が良い。
Alpaca (Classic) 同様にCustom Labで仕様変更が可能だが、オプションは少ない。
最近新色(青)が出た。

記録(会越横断):https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-4141320.html
『岳人』2022年8月号 No.902 掲載
岳人:https://webshop.montbell.jp/goods/disp.php?product_id=0002208
購入:https://www.alpackaraft.com/products/scout
パドルについて
パドル各種 重量は実測値
左から
Aqua-Bound / Manta Ray Carbon / 827g
Anfibio / Fly / 465g
Alpacka Raft / Ninja Paddle / 487g
Supai Adventure Gear / Packraft Paddle / 373g

見てわかる通り、右3つはブレードの大きさに差は殆ど無い
静水での使用に限ればパドルは軽いものがよい。
Aqua-BoundのManta Ray Carbonは推進力はあったが、800gを超えていて静水では漕ぎ続けると疲れる。
800gというのは川下りのパドルとしては軽量な方だが、登山では重い。
そのためSupai Adventure Gearのものをメインで使用している。
推進力の差はManta Ray Carbonと比べ、そこまで気にならず、疲れないメリットの方が大きい。
他のNinja PaddleやFlyと比較しても推進力の差はわからないため、最軽量のものを使用している。
ブレードが薄っぺらく、沢で雑にザックに入れていたら破損したがダクトテープで固定して未だに使っている。

現在はデザインが新調されている。
購入:https://www.supaiadventuregear.com/products/packraft-paddle
スキーとパックラフトを用いた登山
手に持っているのがSupai Adventure Gear / Packraft Paddle

使用装備
パックラフト : Alpacka Raft / Scout / 1600g
パドル : Supai Adventure Gear / Packraft Paddle / 373g

スキー:Summit / GroovN / 106cm / 1175g (1/2)
ビンディング: G3 / ZED9 / 341g (1/2)
ブーツ:Dynafit / TLT6 MOUNTAIN CR / 1065g (1/2)
その他 購入していないパックラフトについて
購入していないため、カタログスペックの印象での記述。

川下りを想定して設計されているものは、どれも沢やスキーで使用するには重い。
重さだけが全てではないので目的に合わせて購入すると良い。
登山+バイクラフティングなどがやりたい場合は軽量モデルでは当然対応できない。
● Supai Adventure Gear / CANYON FLATWATER BOAT / 680g
680gの驚異的な軽さを誇る。
パックラフト融合登山のパイオニアである藤巻浩が数々の山行で使用している。
藤巻はこのパックラフトの底を予めダクトテープで補強して使用している。
さすがに推進力は低そうだが、最軽量。
藤巻は残雪期もこれを用いているが、自分はそこまでストイックになれない。

飛び道具的に沢(急流の淵の突破)でも普通に期待できると思う。
成瀬陽一パーティがレユニオン島で沢登りをした際、日本人の反対を押し切りグレッグ・ソブザックがパックラフトを持っていき、活躍した。その際のパックラフトはおそらくAlpacka Raftの二人乗りの重いものだったが、これくらいの軽さなら、より実用的だろう。

このパックラフトを使用した日本横断山行がFielder vol.32に掲載されている
Fielder vol.32:https://www.amazon.co.jp/dp/B071F518ZZ/

購入:https://www.supaiadventuregear.com/products/canyon-flatwater-boat
● Alpacka Raft / Ghost / 1000g
Alpacka Raft最軽量の最新作。
Scoutより短いがCANYON FLATWATER BOATよりは乗りやすそうで、相当軽い。
CANYON FLATWATER BOATとScoutの中間といったところか。
川、ホワイトウォーター、浅い岩での使用は想定していない設計であり、公式でも長期的な耐久性の面でScoutを勧めている。
レビューもあまり無いため、どの程度耐久性があるかは不明。
Scout同様にグラブループが1つしかついていないため、追加したい場合は自分で取り付ける必要がある。

購入:https://www.alpackaraft.com/products/ghost
● KOKOPELLI / ローグライト / 2700g
入手性が高いが、重い。
mont-bellなのでアフターサポートも安心だと思う。
ココペリ最軽量モデルだが、川下りするならセルフベイラーの方が良いと思う。
購入:https://webshop.montbell.jp/goods/disp.php?product_id=1843038
● 元気商會 / GRIFFON RAFT ストレウス / 2800g
入手性は高いが、重い
元気商會のものなのでアフターサポートなどは良いと思う
2気室タイプなのは安心。
早出川本流でのパートナーが川下り用に購入していたが良さそう。

購入:http://www.genkishokai.shop/shopdetail/000000000069/
コンセプト
パックラフトの登山はパックラフトである必然性、差別化が大事だと考えている。
例えば、利根川本谷にパックラフトでアプローチをすればもちろん立派な自力登山だが、丹後山から下山してしまえば、舟の出番はアプローチのみであり、この登山は「お金を払って渡船」という手段でも出来てしまい、十分に活かしきれているとは言えない。
(ここでいう自力とは文明品でもエネルギー源が自分で、操作する必要があれば自力と考える。自転車やスキーも同様に文明品だが自力と考えている)
他にも、沢までパックラフトでアプローチしてデポした場合も「カヤックで代用」できる登山になってしまわないかと一度考える。パックラフトだからこそできることをなるべく心がけている。

パックラフトを使う際は自力以外のコンセプトを登山の中に取り入れ、活かすように試行錯誤することで創造性が生まれると思う。
おわりに
もし同じような趣向の人に、この記事が役に立ったら幸いです。
自由な山をやって、記録をあげてくれることを願っています。
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