厳冬期あれこれ
厳冬の山での生活技術、ちょっとした工夫を書いています。全て自分の経験から書いていますので、その時たまたまうまくいっただけで、他の状況では使えないかもしれません。ご意見頂けましたら幸いです。
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厳冬期について
■概要
初心者向けに書いていますので。分かってるよという人には、すみません。
厳しい状況ではポケットから物を取り出すことさえ困難な場合があります。靴紐を結び直すのに10分もかかる事もあります。
新しく買った道具やウェアは必ず家や、他の余裕のある山行で試して、使いこなせるようにしましょう。
■練習をする。
山に行く前にイメージをして練習をしてみてください。
手袋をしたまま、アイゼンを着けたり、ツェルトを立てたり、フードを被ったり、ゴーグルが曇るか試したり、シュラフに入ったり出たり。山でやること、起きることを想像して、いろいろとリハーサルをしてみてください。不便な事に気が付いて、細引きを付けたり、何か時間を短縮する工夫が思いつくかも知れません。ザックやウェアに使ったことのない機能や、調整機能、ジッパーはありませんか?この機会に自分の道具を良く見直してみてください。一分一秒の遅れが命取りになる状況があります。
■パーティー行動
自分の為に必要な行動と、全体の為に必要な行動の優先順位を常に考えましょう。
写真を撮るのを少し我慢して、ペグダウンを手伝えば、他の皆が1分早くテントに入れるかも知れません。
先にさっと バーナーを出してから、服を着替えれば、5分早くあったかいスープが飲めるかも知れません。
以下、あくまでも個人的な経験(←失敗)からのやり方メモです。もっと良い方法もあるはずです。自分なりのやり方を作って頂けたらと思います。それはきっと自分らしい登山を作ることにも繋がる筈です。
また状況によっては正解で無いこともあるので、現場の判断を優先でお願いします。
■テント
・テント適地に着いたらすぐに防寒着を着る。身体が冷えるまでにテントを建てる。
・テントポールは凍ってる所では滑って行くので突き刺す。
・袋は飛ばされないよう、本体の中にすぐ入れる。
・テントのサイズをきちんと把握し、無駄に整地しない。
・強風時、風上のペグ(仮にピッケルを打つのが良いと思う)を打ってからテントを張る。ペグを打たずにテントを形にしたら、人ごと飛ばされる。
・棒を横向きにして足で踏んでいくと良い。上からなるべく硬い雪を追加してどんどん踏んでいく。
・ペグが全然効かない時は水をかけて雪を凍らせる。←奥の手。
・テントマットは四隅に名前を書くと角をめくるだけで誰のか判る。
・畳む時、ポールを刺したまま持ち上げてゴミを出すのは、風が吹いたら危ないし、テントが痛む。ペグを残したままポールを抜く。
生地を表裏にした方が安全かつ、ゴミもきちんと出せる。
■水作り
・テント整地の時に、きれいな雪を入り口の近くに集めておくと手間が省ける。
は
・雪を入れるタイミングを遅くして、水をあまり冷やさないようにすると、鍋に付く水滴を拭かずに済む。
・油こしシートが、水の濾過によい。虫や葉が入るので。
・テントの上から鍋を吊ると、抑える必要が無い。倒れない。
■調理
・コンロ台はバルサ材が軽い。
・ガスバーナーは気化せず、使えない事がある。
・火種は三種類、オイルライター、マッチ、ガスライターフリント式(火花が飛ぶタイプ)を持つ。火が着かなければ水が作れない=即下山。
・長期山行ではテイッシュで拭くより、シリコンのヘラで拭く方が軽量化出来る。
・食器はジップ付きのごはんの袋を再利用。軽いし、掃除しなくてもジップを閉じれば漏れない。
■行動中
・指が寒い時は手袋の中で手をグーにする。拍手をする。
・ピッケルの金属は手を冷やすので、何か巻いておく。
・足の指は靴の中でグーパーして暖める。雪を蹴る、足踏みする、など。
・頬が風に当たると凍傷になり易い。
・−10度でも全く自覚症状が無く凍傷になった人がいる。常に指先などの感覚に意識を向ける。違和感がないか、動かして確かめる。可能なら手袋を外して確認することも。
■寝る時
・シュラフにジッパーが二つついていれば足を出して、外を歩ける。
・シュラフをダウンパンツの代わりに使う。
・頭と首から9割の体熱が失われる。ネックウォーマーや、帽子で保温する。
・シュラフの中で丸まると少し暖かい。
・シュラフの中で体を暖められる運動を考える。
・ダウンジャケットの袖だけを表裏にして内側に入れると、シュラフのようになる。寒い時、シュラフの内側で使うと良い。
・寒くてどうしても眠れない時は、バーナーを焚く。2-3分焚いて、十分に暖まったら眠る。これを繰り返す。
・最悪、人が居れば1つのシュラフに2人で入る。眠れないが暖かい。
■パッキング
・いつも同じところに同じものを入れる。←すぐ取り出せる。
・ポケットも同じく、入れる場所を決めておく。
・脱いだ靴にはスパッツで蓋をする。←テント内でも結露の霜が入るので。
■ウェア
・肌着はウールが濡れても冷えないので良い。化繊は冷える。臭くなる。
・ウールよりアンゴラ、カシミア、アルパカなど保温力に優れた繊維がある。肌触りとお財布と相談。
・ビニールの手袋や靴下の下にビニール袋を履くことで、湿気を閉じ込める。ぬるぬるして少し不快。でも装備を汗で濡らさないし、暖かさが増す。極地、マルチデイで非常に有効。靴の中で足が動き(滑り)易くなるので、爪先を痛めやすい。
■歩き方
・膝くらいまでのラッセルの時、出した足は蹴り込んで少し雪を固めるようにする。それから体重を移動すると歩きやすい。
体重を移動する時に沈み込むと、疲れる。
・枝が跳ねて後ろの人に当たる事がある。声をかけるか、下に押し下げて通過すると後ろに跳ねずに親切。後ろの人も枝のあるところでは近づき過ぎないようにする。
■道迷い
・霧の時、ヘッデンを手に持って下から照らすと少し視界が開ける。地表付近は霧が少ない事がある。
・周囲の山の地形を大まかに頭に入れる。「最悪、南に行けば必ず道路に当たる、」など確実に脱出出来る方法を残しておく。
■その他
・ヘッデン、蓄光テープで電池の方向を分かるようにしておく。←暗闇でも電池交換出来る。
・ストックの紐は冬期グローブが入るように長くする。
・女性は男性と比べて体感温度が8度ほど低い。
・凍傷では死なないが低体温症では死ぬ。
・周囲の人にどんな山に行くか、またどうして行くのか理解してもらうように努める。←事故を起こした時の周囲の対応が変わります。自分と仲間を守るために。
初心者向けに書いていますので。分かってるよという人には、すみません。
厳しい状況ではポケットから物を取り出すことさえ困難な場合があります。靴紐を結び直すのに10分もかかる事もあります。
新しく買った道具やウェアは必ず家や、他の余裕のある山行で試して、使いこなせるようにしましょう。
■練習をする。
山に行く前にイメージをして練習をしてみてください。
手袋をしたまま、アイゼンを着けたり、ツェルトを立てたり、フードを被ったり、ゴーグルが曇るか試したり、シュラフに入ったり出たり。山でやること、起きることを想像して、いろいろとリハーサルをしてみてください。不便な事に気が付いて、細引きを付けたり、何か時間を短縮する工夫が思いつくかも知れません。ザックやウェアに使ったことのない機能や、調整機能、ジッパーはありませんか?この機会に自分の道具を良く見直してみてください。一分一秒の遅れが命取りになる状況があります。
■パーティー行動
自分の為に必要な行動と、全体の為に必要な行動の優先順位を常に考えましょう。
写真を撮るのを少し我慢して、ペグダウンを手伝えば、他の皆が1分早くテントに入れるかも知れません。
先にさっと バーナーを出してから、服を着替えれば、5分早くあったかいスープが飲めるかも知れません。
以下、あくまでも個人的な経験(←失敗)からのやり方メモです。もっと良い方法もあるはずです。自分なりのやり方を作って頂けたらと思います。それはきっと自分らしい登山を作ることにも繋がる筈です。
また状況によっては正解で無いこともあるので、現場の判断を優先でお願いします。
■テント
・テント適地に着いたらすぐに防寒着を着る。身体が冷えるまでにテントを建てる。
・テントポールは凍ってる所では滑って行くので突き刺す。
・袋は飛ばされないよう、本体の中にすぐ入れる。
・テントのサイズをきちんと把握し、無駄に整地しない。
・強風時、風上のペグ(仮にピッケルを打つのが良いと思う)を打ってからテントを張る。ペグを打たずにテントを形にしたら、人ごと飛ばされる。
・棒を横向きにして足で踏んでいくと良い。上からなるべく硬い雪を追加してどんどん踏んでいく。
・ペグが全然効かない時は水をかけて雪を凍らせる。←奥の手。
・テントマットは四隅に名前を書くと角をめくるだけで誰のか判る。
・畳む時、ポールを刺したまま持ち上げてゴミを出すのは、風が吹いたら危ないし、テントが痛む。ペグを残したままポールを抜く。
生地を表裏にした方が安全かつ、ゴミもきちんと出せる。
■水作り
・テント整地の時に、きれいな雪を入り口の近くに集めておくと手間が省ける。
は
・雪を入れるタイミングを遅くして、水をあまり冷やさないようにすると、鍋に付く水滴を拭かずに済む。
・油こしシートが、水の濾過によい。虫や葉が入るので。
・テントの上から鍋を吊ると、抑える必要が無い。倒れない。
■調理
・コンロ台はバルサ材が軽い。
・ガスバーナーは気化せず、使えない事がある。
・火種は三種類、オイルライター、マッチ、ガスライターフリント式(火花が飛ぶタイプ)を持つ。火が着かなければ水が作れない=即下山。
・長期山行ではテイッシュで拭くより、シリコンのヘラで拭く方が軽量化出来る。
・食器はジップ付きのごはんの袋を再利用。軽いし、掃除しなくてもジップを閉じれば漏れない。
■行動中
・指が寒い時は手袋の中で手をグーにする。拍手をする。
・ピッケルの金属は手を冷やすので、何か巻いておく。
・足の指は靴の中でグーパーして暖める。雪を蹴る、足踏みする、など。
・頬が風に当たると凍傷になり易い。
・−10度でも全く自覚症状が無く凍傷になった人がいる。常に指先などの感覚に意識を向ける。違和感がないか、動かして確かめる。可能なら手袋を外して確認することも。
■寝る時
・シュラフにジッパーが二つついていれば足を出して、外を歩ける。
・シュラフをダウンパンツの代わりに使う。
・頭と首から9割の体熱が失われる。ネックウォーマーや、帽子で保温する。
・シュラフの中で丸まると少し暖かい。
・シュラフの中で体を暖められる運動を考える。
・ダウンジャケットの袖だけを表裏にして内側に入れると、シュラフのようになる。寒い時、シュラフの内側で使うと良い。
・寒くてどうしても眠れない時は、バーナーを焚く。2-3分焚いて、十分に暖まったら眠る。これを繰り返す。
・最悪、人が居れば1つのシュラフに2人で入る。眠れないが暖かい。
■パッキング
・いつも同じところに同じものを入れる。←すぐ取り出せる。
・ポケットも同じく、入れる場所を決めておく。
・脱いだ靴にはスパッツで蓋をする。←テント内でも結露の霜が入るので。
■ウェア
・肌着はウールが濡れても冷えないので良い。化繊は冷える。臭くなる。
・ウールよりアンゴラ、カシミア、アルパカなど保温力に優れた繊維がある。肌触りとお財布と相談。
・ビニールの手袋や靴下の下にビニール袋を履くことで、湿気を閉じ込める。ぬるぬるして少し不快。でも装備を汗で濡らさないし、暖かさが増す。極地、マルチデイで非常に有効。靴の中で足が動き(滑り)易くなるので、爪先を痛めやすい。
■歩き方
・膝くらいまでのラッセルの時、出した足は蹴り込んで少し雪を固めるようにする。それから体重を移動すると歩きやすい。
体重を移動する時に沈み込むと、疲れる。
・枝が跳ねて後ろの人に当たる事がある。声をかけるか、下に押し下げて通過すると後ろに跳ねずに親切。後ろの人も枝のあるところでは近づき過ぎないようにする。
■道迷い
・霧の時、ヘッデンを手に持って下から照らすと少し視界が開ける。地表付近は霧が少ない事がある。
・周囲の山の地形を大まかに頭に入れる。「最悪、南に行けば必ず道路に当たる、」など確実に脱出出来る方法を残しておく。
■その他
・ヘッデン、蓄光テープで電池の方向を分かるようにしておく。←暗闇でも電池交換出来る。
・ストックの紐は冬期グローブが入るように長くする。
・女性は男性と比べて体感温度が8度ほど低い。
・凍傷では死なないが低体温症では死ぬ。
・周囲の人にどんな山に行くか、またどうして行くのか理解してもらうように努める。←事故を起こした時の周囲の対応が変わります。自分と仲間を守るために。
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