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Yamareco

記録ID: 1566128
全員に公開
無雪期ピークハント/縦走
槍・穂高・乗鞍

30年振りの奥穂と涸沢

2018年08月17日(金) ~ 2018年08月19日(日)
 - 拍手
GPS
56:00
距離
22.7km
登り
1,829m
下り
1,835m
天候 晴れ
過去天気図(気象庁) 2018年08月の天気図
アクセス
利用交通機関:
電車 バス
こんな所あったんだ
こんな所あったんだ
ヘリの救助活動
天狗の頭がのしかかるよう
天狗の頭がのしかかるよう
明神方面の山腹
吊り尾根が高い
岳沢槍というそう
岳沢槍というそう
岩に圧倒される
明神。不帰の嶮に似ている
明神。不帰の嶮に似ている
明神。紀美子平より上から
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明神。紀美子平より上から
槍が見えた
西穂。遠方に白山
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西穂。遠方に白山
前穂頂上から徳沢を見下ろす
前穂頂上から徳沢を見下ろす
惚れ惚れするしかない
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惚れ惚れするしかない
吊り尾根
よくこんなところに道作ったな
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よくこんなところに道作ったな
壁が立ってくる
奥穂の頂上が間近
奥穂の頂上が間近
後方は笠ヶ岳。頂上付近からはジャンダルムは低く見えてしまう
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後方は笠ヶ岳。頂上付近からはジャンダルムは低く見えてしまう
少し下からの方がよい
少し下からの方がよい
吊り尾根を反対側から
吊り尾根を反対側から
ザイテンの下りは辛抱
ザイテンの下りは辛抱
岩小舎ってまだあるのかな
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岩小舎ってまだあるのかな
涸沢小屋のテラスから
涸沢小屋のテラスから
3日目 朝焼け
陽が出たか
昔行った横尾本谷右俣(記録あり)
昔行った横尾本谷右俣(記録あり)
あそこを歩いた、と眺められるのは格別
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あそこを歩いた、と眺められるのは格別

感想

 穂高に登ったのはもう30年以上も前の大学生の時で、涸沢から奥穂高のポピュラーコースだったのだが、高山病になったらしく非常に体調が悪く、宿泊した穂高岳山荘から上高地に下りきれず、横尾山荘に転がり込んだ苦い思い出がある。そのせいか再訪の敷居が高く、こんなに間が開いてしまったが、いつか年老いて上高地から穂高を見上げた時に、あの吊り尾根を登り残したと後悔しないように、今年こそはと計画した。完登最優先で、朝発ち、2泊小屋泊まりのぜいたく山行である。
(17日)
上高地バスターミナル12:55〜岳沢小屋15:55
 初めてバスタ新宿から高速バスに乗る。松本郊外で少しノロノロしたが、わずかな遅れで上高地に到着した。珍しく前年秋から1年置かずに来ているので、馴染み感がある。目指す吊り尾根は雲の中だ。ようやく梓川の北側に渡るのが嬉しい。湿原を過ぎ、山道に入ると途端に人が少なくなる。針葉樹の香りを味わいながら、森の中をしみじみと登れば、あまり穂高にいる気がしない。右に風穴を見る。想像していたよりずっと小さい穴(というか岩の隙間)だったが、確かに冷風が吹き出しており、中に残雪のような物が見えて面白い。
 やがて、上高地から顕著に見えるガレが左に現れる。ただのガレだが、永年気になっていたものなので感慨がある。地形上の谷底を通っていないのが、また面白い。しばらく脇の樹林を登り、「西穂高展望所」でガレの上に出る。西穂高の山腹が壁のように立ちはだかり、明神側の岩峰との間にぽっかり開いた広大な空間のスケールに圧倒される気がする。遠目に、どんなお花畑なのだろうかと想像していた崖錐の斜面は地味な高茎草原のようだった。残雪期にスキーで遊んでみたいものだ。
 いよいよ木の丈が低くなり、石の階段状の道を登っていくと、頭上をヘリコプターが旋回して去って行った。ついに小屋の赤い屋根が見え、沢の最奥へと立ち上がっていく岩壁が威圧的に現れた。安堵とともに小屋に向かっていくと、再びヘリコプターが低空飛行で迫ってくる。テラスで缶ビール片手(失礼)に見物していると、重太郎新道の取り付き辺りで人を吊り上げて頭上を飛び去って行った。缶を後ろ手に隠して敬礼。自分がお世話にならないように改めて気を引き締める。
 夕方になると雲が切れ始め、傾いてのしかかってくるような天狗の頭や、明神の尖峰、遥かに高い吊り尾根の眺めに心を奪われる思いだった。つくづく素晴らしい山だ。日が没する頃の乗鞍の優美な曲線もまた美しかった。
(18日)
岳沢小屋5:38〜前穂高岳9:02/9:30〜奥穂高岳12:15/12:50〜穂高岳山荘13:30/13:50〜涸沢小屋15:45
 雲一つない快晴。しかも秋の空気が入り、これまでの異常な暑さから一転して清々しい朝だ。最高のコンディションが嬉しい。登り始めは、トリカブトやアザミの混じるお花畑にしばし癒される。ジグザグを切るうちにみるみる小屋が低くなっていく。岳樺の林に入ると岩が出てくるが、その一つに前日のものか明らかな血痕が滴り落ちていてぎょっとする。しかし、難しいと感じる箇所はなく、ただひたすら急登なので一定のペースで登ることを心がける。
 視界が開けると、西穂の山腹というよりバットレスといった方がよい大斜面が印象的だ。吊り尾根側も岩ばかりの壁となって立ちはだかり、迫力に圧倒される。劔岳もすごかったが、さすがに甲乙つけがたい岩の殿堂だ。登山道の左側は絶壁なのだが、それと気づかないようにうまく付けられている。少しザレの上を歩くほっとできる場所があるが、表面に霜柱が立っているのには驚いた。右手の明神が近づいてくる。三つのピークを連ねた姿が、以前行った不帰の嶮の曲あたりに似ている。その明神の稜線に踏み跡が見えてくると、突然周りに人が大勢現れ、紀美子平に着いたと分かった。
 荷物を置いて前穂頂上に向かう。少し登ると北穂から槍にかけての稜線が連なり気持ちが高まる。乾いていれば怖いほどのことはないが、ルートは分かりにくい箇所もある。k国人らしきパーティが騒々しい。なんであんなに大きな声でしゃべるのかと思ってしまう。一息にとはいかない時間を経て、再び人が集まり、頂上に着いた。北ア全山から、南アルプス、富士山も望める好条件だ。前年に歩いた、徳本峠から大滝山へ延々と続く尾根が一望できるのも嬉しい。やはり、両翼に岩峰の連なりを従えた奥穂が最も格好良い。
 ゆっくりしたいが、先が長いので腰を上げる。下りは石を落とさないよう気を使う。一か所ルートを見誤り、脇道に引き込まれたのが痛恨のミス。紀美子平に戻り、念願の吊り尾根縦走に出発する。岳沢側をトラバースしていくが、見た目ほどの高度感はなく、普通の縦走路の感覚で歩ける。下からは岩ばかりの世界のように見えるが、実際は高山植物の草叢がたくさんへばりついていて、緑の斜面なのが意外だった。それとわかる河童橋からは多くの人がここを見上げているだろう。振り返れば北尾根から明神の、牙のような稜線がここならではの景観だ。空気は涼しいとはいえ、ずっと遮るもののない強烈な陽射しに照らされるので体力を削られる。2、3カ所、涸沢がはるか下に見渡せる場所があり、吹き上げてくる風にホッとする。傾斜が増してくると鎖場もあり、疲れも出て息を整えながら登る。南稜の頭を越えると、人だかりのしている奥穂の頂上がぐっと近くなる。フィナーレは広くなった尾根を左にジャンダルムを見ながら進み、賑やかな広場にゴールイン。まずは余裕で小屋に着けそうな時間であることに安心し、雲の去来する槍を眺めながらゆっくり休む。30年前の記憶は全く戻らず、特段の感慨はない。西穂の方から結構年配の方々が到着して嬉しそうにしているのを見ると、やはりやってみたくなる。
 あとは下るだけ。満足感を胸に山頂を後にする。未踏の区間が終われば、普通の山歩きの気分になる。ジャンダルムは、少し下った所からの方がボリューム感があり見栄えがする。岐阜県側の垂直に切れ落ちている壁が凄い。穂高岳山荘でトイレに立ち寄り一息。ここで泊まれば朝焼けを見るには良いのだが、前回の例があり安全策で涸沢まで高度を落とす計画にした。しかし目指す小屋ははるか下に小さく、それはそれで辛い。ザイテングラートも決して気は抜けないので、一歩一歩をおろそかにしないことを心がけてゆっくりと下る。方角が変わると、また吊り尾根が高く、前穂も形良く眺められる。涸沢ヒュッテでイベントをやっているらしく、音楽が聞こえてくる。アルペンホルンならまだしも流行歌のようだ。場にふさわしくないことは止めてほしいものだ。ようやく取付きに下り着いた後も、長いトラバースと、灌木帯をくぐる道を経て、膝が痛くなる直前に涸沢小屋の屋根が見えた。
 テント村を羨ましく眺めながらテラスでゆっくりビールを飲み、夕食後も星が出てくるまで山を見ながら過ごした。
(19日)
涸沢小屋6:15〜上高地バスターミナル13:13
 最終日も快晴、本当に幸運だ。テント場の真ん中の大岩の上から連峰を見渡し、再訪を期して下山開始。振り返りながら灌木帯を降りていくと、Sガレの先でなぜか大渋滞となる。登ってくる人によると、先頭の集団がネックになっているらしい。行列になってしまったので、10年前に登った横尾本谷をじっくり眺めたいのだが立ち止まることもできない。結局30分くらいダラダラ歩いて、何やら怪しげな集団が除けているのを追い越してやっと普通の歩きになった。
 本谷橋の流れの脇でゆっくり休憩し、後はハイキングだ。横尾で缶ビール1本目、小梨の湯で汗を流した後に梓川のほとりで2本目を空け、すっかり堕落したオヤジとなって河童橋に辿り着いた。吊り尾根が、前日にそこを歩いたと思えないくらい相変わらず高く遠かった。
〔全体に〕
 最高の気象条件に恵まれ、計画どおりに歩くことができた。周囲から眺めてもそうだが、懐に入り込んでみると本当にこの山は岩の殿堂だ。圧倒的な山容と大きさに、言葉が出ない思いをすることしばしばだった。
 久し振りの3000メートル超えの稜線歩きは、体力的には一杯だったが充実感もひと際だった。これを日常の不摂生を改めるきっかけとして、次は涸沢での幕営、槍穂の縦走などにつなげたい。

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