大鏑山 鬼首最深部を歩く
- GPS
- 08:45
- 距離
- 18.3km
- 登り
- 1,050m
- 下り
- 1,056m
コースタイム
07:22 「大鏑やまびこ橋」たもとより入山
09:03 P864 秋田-宮城県境に到達
10:22 P900 宮城-山形県境の稜線に乗り上げる
11:25 P1074
11:48 大鏑山1120m 到着
昼食
12:22 出発
13:29 県境稜線から降りる
14:45 P864 休憩
15:51 大鏑やまびこ橋
16:00 駐車場所戻る
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2013年03月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
*仙秋ラインは、上の方は早朝は凍結路です。注意。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
*大鏑やまびこ橋から入山した。基本的に道路の山側は雪崩防止フェンスが張られており、入山場所は限られている。尾根にでるまではかなり複雑な地形で地形図では読み取れない小沢が何箇所かある。赤テープが少しあるがあてにはできない。 *秋田宮城県境(分水嶺)の尾根に乗り上げるには雪庇突破が必要。底雪崩の危険がある斜面で直登は厳しい。今日は古い林道跡形を利用し、左から雪庇を回り込み、864ピークの急斜面を登ることができた。 *途中で宮城山形県境尾根に乗り換えることになるが、軍沢川上流黒滝上の平坦な919ピークを南から巻くか、北から巻くかがポイント。雪で沢が埋もれているかどうかも判断基準になる。今回のコースは参考程度で。 *宮城山形県境尾根は、大雪庇帯。すでに崩壊が始まっている。時期によっても年によっても変わる。小さなアップダウンが多く、かなり足に来る道。 *今回歩いたルートは全て冬季限定。夏道はない。また歩く人はシーズン通して1人いるかどうか。行かれるときは万全の準備で。 |
写真
感想
*tooleさんとの親子コラボは4回目。去年4月の「冬虎毛」以来11カ月ぶりだ。クールで健脚で、自信に満ちた若者。地形図読みは抜群なので、私の出る幕はほとんどない。
*大鏑山をご存じの方は多分ほとんどいらっしゃらないだろう。鬼首地区、宮城山形県境の中央分水嶺上にある平頂のピーク。ここは鬼首の禿岳からそのまま稜線を北上し、禿北峰、大鏑山、そして軍沢岳に至る長大な稜線のうち、数少ない「名前のあるピーク」である。虎毛山、神室山、小又山、高松岳など全てが見渡せる大展望の尾根歩き、私はこっそりと「裏神室」と呼んでいる。ちなみに、禿岳を小鏑山と呼ぶこともある。
*鬼首の最奥なので、ルートはどこも長く、丸一日行程である。泊まり装備で縦走するのが多分ベストだろう。今回は仙秋ラインを利用し(冬でも通行可)、鬼首トンネル入り口のPから出発した。夏道はないので、すべて自分でルートを見つけ出すことになる。尾根を歩く時は好天時なら問題はないが、尾根を乗り換える際、どこで谷、沢を越えるか、じっくりと地形を読んで進む必要がある。トンネルから鬼首峠まで少し赤テープがあったが、以後はなし。
*P919を越えるとき、皆さんはどんな道を選ぶだろうか。一見して、919と稜線の889の斜度もあまりなさそうな地帯をまっすぐ進むのが合理的に思える。だが889の右(東)側は崖マーク、地形図上はなだらかでも、ここの沢はかなり深いのでは、と読める。結局かなり上流部分で雪の詰まった沢を越えて、きつい斜面を直登したりトラバースしたりして、コンタ900のラインを保ち、宮城山形境の稜線に乗り上げた。稜線部はほぼ大雪庇地帯だが、雪庇はどこかに弱点はあるもの。焦らず安全を第一に探すのがいい。なお、このルート全てがブナの純林なのだが、特にこの平坦なP919のブナ平は凄い。見渡す限り手つかずのブナ林である。キノコも一杯ありそうだが、葉があったら絶対道迷いしそう。
*さて、あとは長い長い稜線歩きである。ほぼ5割方雪庇の道。危険個所は山形側の灌木帯にはいって歩く。それでも2か所ほど「万事休すか」と思った。雪庇地帯で私とtooleさん、それぞれ一回軽く踏み抜いている。結構怖い道である。
*大鏑山は予想通り穏やかな平らな山頂だった。少し風を避けて、虎毛山を眺めながら短いお昼休憩をとった。このルート、展望はパーフェクト、神室連峰と虎毛山塊の大展望台である。なかでも大鏑手前ピークのP1074がベスト。月山、鳥海山、蔵王、船形、朝日連峰、虎毛、栗駒…ここは東北ど真ん中だ。
*不思議なことがあった。P864で最後のコーヒーブレイクをした折、お湯を入れようと思ったテルモスが見当たらない。取り出したばかりなのに。しょうがないのでtooleさんにお湯をいただいた。休憩後、尾根伝いに下りて、林道で雪庇をトラバースして進んでいたら、道の真ん中に青い物体が…なんと私のテルモスが道に突き刺さっているではないか!見上げたら、はるか頭上、大雪庇の上がさっき休んでいたピーク。テルモスは一人でシリセードして、先回りをして待っていてくれたのだ。笑いました。でも無事回収できて、思わず「可愛い奴」って。
*分水嶺の旅、難場ばかりが残っている。残りはいつ歩けるのか見当もつかない。
*この山の記録はネット上では、一件だけある。2010年2月28日のSONEさんの記録である。山スキーで踏破された。これにインスパイアされた。これを読まなければ諦めていた道。SONEさんに、心から感謝申し上げます。
周囲を見渡してもすぐにはわからないほど地味で目立たない山である。大鏑山のことだ。神室や虎毛が険阻な山城(やまじろ)だとすれば、大鏑は誰にも気づかれない、ひっそりとした平城(ひらじろ)である。
標高が低いからと言って、侮ってはいけない。宮城側からこの山のピークを踏むには黒滝から始まる軍沢川を遠巻きに迂回しなければならない。一見すると易しそうな地形だが、よくよく精査すると、ややこしく入り組んだコンターが小沢をつくっていて行く手を阻んでいるのだ。それに雪庇の発達箇所が多いのも、この山のルートファインディングを難しくしている要素の一つである。大鏑山はまさに難攻不落の平城だった。
それでも決して正解の無い山ではない。急登や滑落して命を落とすような危険な箇所こそ無いものの、少し意地悪なパズルでも解くような楽しさがあった。挑戦する人それぞれに答えがあると思う。最後のP1074から山頂にかけて眺める神室や虎毛の絶景は言葉にならないご褒美だった。
分水嶺の山旅につき合って頂いたkiyoshiさんに感謝申し上げます。
コメント
この記録に関連する登山ルート
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大鏑山びこ橋あたりは、秋にウロウロします。
この前も黒滝を撮ったのがその辺りでした。
あの辺りが大鏑山なのかぁと、そのときの写真を眺めていましたが、なるほど尾根はなだらかな感じですね。
ガードレールを乗り越えるkiyoshiさん、素敵です
小心者の私にはできませんよ
先回りしていたテルモス事件もおもしろいです
世の中上手くできているものですね!
お天気も良く絶好のお出かけ日和だった昨日は、友達の家で子守していましたよ〜
の〜んびり過ごした休日でした。
今年の冬一番の好天を狙って登れましたね。
私の時は一日中クラストバーンに悩まされました。
帰りも忠実に往路を戻ったのですね。
アップダウンが多く、結構疲れたでしょうね。
このレコ、映像でドキュメンタリータッチで観てみたいです。
殆ど未踏に近いルート、(SONEさんと言う方も凄い )
沢と雪庇、灌木帯、雪山ならではのルートづくりにもはや、素人を逸脱して更なる深い世界に入られていますね
東北のど真ん中で見る眺めは最高だったでしょう
行方不明になったテルモスを引き寄せるkiyoshiさん、パズル解きの楽しさと仰る読図の異彩tooleさん
最強のコンビですね
只者ではないお二人
ルート探して踏破されている。
私はビビってしまいます雪庇帯。。。
いやいや私はこういうルートは歩けません(>_<)
とにかく素晴らしい、そして、誰もいない雪山
拍手は1回で足りないです(^O^)/
山びこ橋で遊んでたんですか クマでるよ
橋からは手前の山が邪魔して大鏑は見えないんです。ちょっと上がると見えるので、ちょっとだけご案内しますか テルモス事件は、始めビックリあとで感心
私も孫が来ると子守をメインに それはそれで楽しいね。イカ飯…
コメントありがとうございます。何とか無事に生還しました。標高差に比してこの疲れ具合…アップダウンとトラバースの多さでしょうね。スキーならエッジ利かせて行けるところもスノーシューは苦戦でした。本当に素晴らしい大観でした。
ちょっと怖い場面もありましたが、概ね快適な道だったんですよ。距離が長いのと、雪庇の崩壊が始まっているので苦戦しました。あと帰りの腐れ雪ね tooleさんがいるので、楽隠居状態でしたよ 雪山初年度のmeikenさんも来年にはこのあたりを駆け回っていたりして 結構ありそうな予感
コメントありがとうございます。
雪庇は根が張っていれば、これほど快適な道はないくらいですが崩壊が始まったらとにかく近寄らないのがベスト。
昨日は崖際で行かざるをえないという局面もありました。
でもなかなか冒険心を満たしてくれるルートでしたよ。
tooleさん、kiyoshiさん。
こんばんは。
息の合ったお二人の楽しさが伝わるレコ、UPして下さってありがとうございます。
コメントのそこかしこに一緒に歩けて嬉しい!楽しい♪がちりばめられていて読んでいる私も嬉しくなってきちゃいました。
拍手ボタンって1ポチしかできないのがいつもとても残念に思っていました。
お二人の素晴らしい写真には大喝采ボタンが必要だなぁと。
青空!大展望!歩こう、あの頂まで!
心沸き立つレコ、ありがとうございました。
久しぶりのtooleさんのクマ文字見れて嬉し〜
お疲れ様でした。
すばらしいですね〜!
こんな深くて分かり辛くて長いルート、お二人しか歩かないし、歩けません
特に軍沢川源流部、宮城県の最深部はめったに人の入らないところではないでしょうか P919、どこだろう・・と、老眼鏡を取り出して探しましたよ 私ならこんな難しそうなところは立ち入らず、軍沢岳からの主稜線まで行っちゃいます。そんな体力があれば あえて立ち入るなら、P889の崖の南側の尾根にとりつくとか・・ここは杉林でしょうか・・でも沢からの登りがきつそうです。いやはや、謎解きパズル好きなtooleさんの笑みが浮かびますね
東側からの小又山、本当にすばらしい姿です。私へのプレゼントだと勝手に思って、味わわせていただきます
どこまでも延びる雪稜、そして最深部ならではの大展望、すばらしい〜
tooleさん、ご無沙汰です
そしてkiyoshiさん、はじめまして
言葉を発しなくても通じ合うお二人の信頼関係、素晴らしいです
そして正しく"達人"しか足を踏み入れることのできないエリアを楽しまれるお二人、お羨ましい限りです
同じ山域にいましたね 花渕を快足飛ばして駆け上がってましたね、さすがです
土曜の予定が悪天予想で一日のぼしましたよ。それでも午前は神室や小又は雲の中でしたが、だんだん晴れてきて、午後は素晴らしい青空でしたね。
神室を愛するwaqueさん、今度は是非ご一緒に
正直に言うと割と気楽に出発したんですが、そもそも鬼首峠にたどり着く前に3番のような状況になって、気を引き締めました。6番は秋田県境の雪庇を林道使って巻いているところ。このトラバースも朝は緊張ものでしたよ あとは34番とか37番とか、とにかく飽きませんでしたね スノーシューと重い冬靴で18キロはやはり私にはきつかった…小又の写真、kamadamさんへのお土産ね
今年はどこも雪庇の崩壊早いかもしれないよ
初めまして
>言葉を発しなくても通じ合うお二人の信頼関係
どっちかというと主従関係かも 若い下士官が老兵をしごいてみたいな場面想像すると分かりやすいです
timothyさんも意欲的な山行されていますね。ぜひ東北でtooleさんとの同年輩コラボ実現させてくださいね
気づきませんでしたが、黒滝見えましたか
今度行くときはじっくり探してみたいと思います。
テルモス(サーモス)発見したときはびっくりしましたね。
往路では見た記憶が無かったので、とにかく怪しの一言。
僕は隕石かミサイルの破片かとも思った程です
それが爆笑に変わったんです
滑落して無事救助されたテルモス(サーモス)くんは今後も活躍することでしょう
Springさんもいよいよスキー板しまって、山あるき再開ですね。
ネットで検索しても大鏑山の情報が少ないので、SONEさんの記録は何度も何度も読ませて頂いておりました。
この山行から帰ってきてからもSONEさんのトレースと見比べては、その違いに改めて驚かされました。
僕たちは帰りも往路を忠実に辿りましたが、クラストした朝の雪質とうってかわってズブズブ埋まりながらの行程になりました
やっぱり今時期は出来るだけ朝早く、そして午後いちまでにケリをつけるくらいのスピードが欲しいですね。
ドキュメンタリータッチですか〜
動画は苦手ですね〜
写真ならいくらでもごまかしがききますからね
東北のド真ん中、大展望の中、meikenさんならきっと踊っただろうなと思いました。
kiyoshiさんも仰っておりますが、meikenさん今シーズン冬山通い過ぎですよ
来年はどうなっちゃうのでしょう?
僕は大雪のかまくらの中から見守っていますよ
雪庇は確かに恐いですね
上を通過するときは木が生えている所を歩くことになりますよ。
少しでも雪庇側に出ると、クラックが走っていてすっぽりハマってしまいそうでした。
そういう状況を想像すると、今日はkiyoshiさんがいっしょだから安心だなと思ったりしましたよ
雪庇はなるべく近寄らないのがベストですが、よりベターな場所を選んで通過する場面もいくつかありましたよ
* ̄(エ) ̄)ノしばらく長い眠りについてたからね
kiyoshiさんが「waqueさん、今頃講習会でいろいろ習っているはずだよ」としきりに仰っておりました。
たぶんよっぽど一緒に歩きたかったのかなと思いましたよ僕は。
それにしても花渕山でしたか。
近い所歩いておられましたね
沢の渡渉、雪庇の通過とイベント盛りだくさんでしたよ
中でもやっぱりP919の広大なブナ林をどう突破するのかを考えるのがワクワクしましたね。
稜線上に乗ってからも雪庇の切れ目を探したり、とにかく飽きませんでした。
kamadamさん、そろそろ和賀山塊や神室が気になる季節がまたやってきましたね
こんばんは。
昨年のお二人の軍沢のレコと併せて、楽しく読ませて頂きました。
自宅の近くにもこんなに面白そうな場所があるのだなぁといつも感心してしまいますよ。
面白いコースを見つける嗅覚が凄いです。
次はどんなレコがアップされるやら
ご無沙汰しておりました
>言葉を発しなくても通じ合うお二人の信頼関係
何方かと言えばmokkedanoさんやyamaya7さんの方がkiyoshiさんとこういう関係に近いような気がしないでもないですが‥
ヤマレコをご覧の皆さんもきっとそちらを期待しているでしょう。
僕はあんまり遠慮が無いので、一匹オオカミが性に合っているのかもしれません
あ、でもtimothyさん、東北にいらっしゃる際は是非ご一報ください。
微力ながらガイドを務めさせて頂きます
軍沢のレコまで見てくださったのですね。
コメントありがとうございます。
面白そうなルート、まだまだありますよ〜
全部歩くにはどれだけの時間を要するのかわかりませんけどね。
春のこの季節になると、"春よ止まれ"と念じてしまいます
syasyuさんも近場ですから、鬼首の最深部是非歩いてみてください。
どこかでお会いできるかもしれませんね
コメントありがとうございます。冬の栗駒のご恩は忘れませんよ
なので、私などに期待しないでくださいね
日本山岳会が中央分水嶺はすべて踏破しているので、宮城秋田山形県境は一応全部歩けますよ。私には無理だけどsyasyuさんの快足をもってすれば。
ただ歩くのは冬と残雪期だけです
きっとまたどこかでお会いしましょう。デザートでもごちそういたします
*どこかお怪我されていたのかな。もう大丈夫そうですね。
今さらのコメントで失礼します
何やら私の名前もちらほら出ていますが、無理にお気遣いなさらなくとも大丈夫ですよ
こんな青空の県境稜線はお二人やkamadamさんのためにあるようなものですから
地形図「鬼首峠」と見比べながら拝見しましたが、結構難しい地形もありますね。見るからに雪庇が発達しそうだったり、やせた尾根が続いたり…。
多分、私ならば鬼首峠辺りで足が攣ってリタイヤでしょうけど
この残雪期、お二人であと何回行けますかね。たくさん面白いレコを残してくださいね
おはようございます 最近 何してたんですか?
鬼首峠までで足が攣る…まさにそれでしたよ
何度も雪庇ふみぬきそうになったり、トラバースしながら滑落したらただですまないなあとビビったり。忙しくて攣ってる暇がなかったよ〜
では、今から仕事です
勝手にmokkedanoさんのお名前を出してしまいました
>こんな青空の県境稜線はお二人やkamadamさんのためにあるようなものですから
そう言わず、ご一緒できる日を楽しみにしております
お天気良ければ月曜日はお休みになります
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