甲ヶ山と矢筈ヶ山の周回
- GPS
- 06:58
- 距離
- 8.2km
- 登り
- 750m
- 下り
- 751m
コースタイム
天候 | 晴れたり曇ったり |
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過去天気図(気象庁) | 2024年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
登路は涸れた小沢とルンゼの急峻なルート、稜線は岩場の登下降で滑落等に注意 |
写真
装備
個人装備 |
長袖シャツ
ズボン
靴下
グローブ
防寒着
雨具
靴
ザック
昼ご飯
飲料
レジャーシート
地図(地形図)
コンパス
笛
ヘッドランプ
GPS
ファーストエイドキット
保険証
携帯
時計
サングラス
カメラ
シュリンゲ
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感想
ここのところ、大山にはまっている。主峰群のアルペンな山容、お花畑、山麓と前衛峰のブナを主体とする落葉温帯樹林は豊かな下生えに支えられて生き生きとしている。娘と孫は少し早めのお盆休みに東京の二女一家のところに泊まりに行ったので、我々もちょっとばかり緩んだ生活を楽しむ。昨日は昼のみに出たり(フフフ)。そして土曜日。再び大山を目指す。三ノ沢から三ノ峰にもう一度登ってアルペンな空気を吸い、調子がよければ少し剣ヶ峰方向の様子見をしてみるか、というのがその動機だ。あの稜線のトップにあがれば、さすがのこの陽気でもそれなりに涼しいというものだ。2週間前、米子道の打井畑トンネルで「もらい事故」にあって警察に通報した時刻が8時5分、そして今日の通過時刻は8時3分ということで、ほぼ「定刻」の通過である。お盆で下り線はやや混んではいるが、西方向はたいていスムーズに進むものだ。やがて鳥取県に入ると、大山がにゅっとその大きな姿を現わす。期待に反して山頂部は雲に隠れている。三ノ峰の稜線にはスカッと晴れた日に立ちたいとの思いが強い。ガスっているなら行き先変更で甲ヶ山に行くか。と急遽、計画を変更。甲ヶ山と矢筈ヶ山の周回はlabor intensiveなので、涼しく日長の長いときに、と思っていたのだが、今日は意外に涼しく感じる。ガスが出ているならなおのこと、悪くないかも。香取登山口には9時半前の到着となる。登山口には2台の地元車がとまっているだけ。皆、里帰りなのか、前回と比べると入山者は少ない。
林道を少し歩いたのち、大休峠方面と分かれていい雰囲気の温帯林の下の平坦路を進む。いくつかの涸れ沢を渡って珍しく植林帯となった場所を抜けると、木々の梢の向こうに大きな山のごつごつした輪郭が見えてきた。甲ヶ山だ。平坦だった道はここから下りに転じて、V字谷の川床に向かって急降下となる。底まで降りて甲川を渡る。地形図で見ると、等高線がびっしりと詰まった急傾斜の上りで稜線に上がることになっている。現場に行ってみると、涸れた小沢をそのまま登っていくらしい。小沢を辿るとすぐに涸れた斜瀑が現れる。右岸にロープが下ろされていてそちらに道があるようだが、斜瀑も容易に上がれそうなのでそちらに取り付いてみると、すぐ古いロープがあらわれ、もともと斜瀑を登っていたことがわかる。ロープは老朽化していて重量がかかると切れるだろうが、斜瀑は傾斜のついたナメみたいなもので、20m足らず登ると、左手に「登山道」への踏み跡が現れる。斜瀑はまだまだ登れる感じだが、先が見通せないのでこの踏み跡を使って「登山道」に出る。といってもこちらも急登で、沢の巻き道を利用して登っている感じだ。少々登って道は谷をまたぎ、左岸に移る。すぐに右手のルンゼ状にロープが降りており、六甲でいうなら奥高座の滝のような階段状の岩棚を越えると、石が累積した涸れルンゼが上に向かって真っすぐにずーっと続いている。ただひたすらこれを登るが、落石を犯すと続くkinuasaに直撃は必定なので、とにかく絶対に落とさない!これに集中して登る。なんだか、精神戦の様相となる。涸れルンゼの急登に辟易したころ、稜線が近づいてやっとそれから解放され、左手の急斜面につけられた道を登る。甲川を越えてから一滴の水もとっておらず、なんだかふらふらしてきたが、稜線はもうそこに迫っている。気合で登り切って明るい稜線に飛び出した。凍らせておいたレモングラス水を飲むと干上がった細胞が膨らんでくるのを感じる?のだった。落ち着いて周囲を見渡せば、2週間前に行った野田ヶ山の向こうに三鈷峰と大山主稜が雲の合間に立派な姿を見せているのだった。それにしてもワイルドな登りだった・・・。木陰で天気もくもりがちだったから何とかこなせたが、体力勝負の上りである。かといって下りには使いたくないルートでもある。登りついたこの地点で昼食をとる。
休憩の後、ゴジラの背と呼ばれている岩尾根に向かう。大岩が稜線上を甲ヶ山の山頂手前まで累々と重なるように続いている。左右に広がる急斜面の緑のスロープ。正面には大山主稜が鎮座し、右手奥には日本海のブルーが美しい。岩の上に乗ったりへりを抜けたりして進む。一か所、ロープが二本垂れ下がっているところがある。一本は埋め込みボルト、もう一本はハーケン(今のところ腐ってはおらず)を支点としているので、これらの支点をつかんでぐいっと上がって超す。ゴジラの背を過ぎると甲ヶ山の山頂にはすぐ達する。続く稜線は山頂標識の後ろ方向だが、そこは切れ落ちた岩場となっており、ペンキマークで×と記されている。ぐるりと見渡して、進行方向左にルートがあるのを見つけた。これを下るが、すぐにロープの降ろされた岩場が待っている。薄焼きせんべいを重ねたような面白い形状の岩が鞍部まで続いている。ペンキマークに従ってこの岩場を下る。大休峠への道からこの甲ヶ山を眺めると、南側斜面が白く禿げた岩場となっているのが見て取れるが、そこを今、我々は下っていることになる。足を滑らさぬよう注意を払いつつ岩場を下り、右方向に岩場のへりを回り込んで灌木帯に入る。この辺りから小矢筈の臼歯のような特異な山容と、きれいに整った形の矢筈ヶ山が双耳峰をなして間近にのぞまれる。今度はアレに登るのか、と気合を入れなおす。甲ヶ山と小矢筈の鞍部付近が、甲川以後初めての、傾斜が緩く下生えの密度の低い優しい区間である。臼歯の垂直の側壁が見るものを威圧するが、小矢筈は急ながら意外にも普通の道でそのピークに達することができる。が、ピーク上でその左右を見ると、先ほど眺めた通りの絶壁である。ここから道は稜線の左側を降りて行く。ここも岩場でロープが付いている。稜線左を巻き加減に下って再び稜線に乗る。振り返れば、垂直、いやハングしてせり出した岩の壁が目前にある。わっと思うところだ。稜線を少し進んで見返せば、木々の向こうに小矢筈の全貌を見ることができる。甲ヶ山側からの風貌とは異なり、槍ヶ岳の頂上部分のような鋭い岩峰であり、あのてっぺんから岩の重なりを下ってきたのかと思うと痛快な気分だ。ここからは矢筈ヶ山はすぐそこである。矢筈ヶ山の山頂には立派な三角点が埋設されていて、ここが一等三角点峰であることを認識する。稜線は終始ガスが流れてくるため、周囲の見晴らしは得られなかったが、一瞬顔を出した小矢筈は少し迫力を欠いた感じがした。ここからは普通の山道となって、大休峠へと導かれる。二週間前に来た大休峠からは1600年代の古い石畳の平坦な参道を川尻方向に進み、香取分岐から美しいブナ純林を抜けて出発点に戻ると、時刻は16時半であった。涸滝登りに始まり、涸ルンゼの一本登りで体力の限界を味わい、ゴジラの背の痛快な岩尾根散歩のあと、甲ヶ山の岩下り、小矢筈の岩稜越えと続くこのコース、気を抜く間もない何とディープな山行であろう。このようなバリエーションに富んだ濃厚な山旅はここ数年、なかったような気がする。普段なら眠気が襲ってくる帰路の高速道路でもエキサイト冷めやらぬasakinuなのであった。
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