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更新日:2015年04月28日 訪問者数:13279
ジャンル共通 山道具・装備
山道具今昔物語(ピッケル・アイゼン)
jyunntarou
アイゼンとピッケルの今・昔を 比較考察してみました。
山を始めて数十年。その間にも随分と道具に対して変化が見られました。今回はピッケルとアイゼンについて歴史を振り返りました。
エックス刃アイゼン
先ずは、初代軽アイゼンのX(エックス)4本爪です。コレ持ってよく大峰に通いました。一度冬季通行止めの大台ケ原ドライブウェイを徒歩で上がりましたが、雨の後気温が下がってツルツルアイスバーンになりましたので、コレでは本当に心もとなかったです。
軽量アルミ土踏まずアイゼン。
二代目の軽アイゼンです。軽量ですがほとんど役に立たない?シロモノでした。無いよりはマシですが紐を締めるのが2ヶ所なので、しっかりと靴に固定ができずによく外れました。
軽量アイゼン(改良型)土踏まず6本刃
改良点はアンチスノープレートが付いたのと、縦方向に食い込む2本の刃が新たに加わった点です。それと靴から外れないようにサイドの高さをしっかりと底上げしたのもグッドです。
グリップ力は増しましたが、やはり登山中に外れるのと、土踏まずに付けるという自体が、安定した歩きにつながりません。低山の斜度の緩い圧雪路では、これでも無いよりはかなりマシになります。
初代 一本締め12本刃
初代12本爪アイゼンです。コレで北穂のバリエーションや5.6のコルから奥穂に先輩に連れられて登っていたんですねー。ただ一本締めのバンドですから、装着が面倒でミトンを外さないと無理でした。それが 手がかじかんで・・・
アイゼンの刃先が台形なのが 少々不安でした。
京都の好日山荘で買ったものです。
made in west Germany と刻印されています。西独製と言うことは、まだベルリンの壁があった時代なのですねー。アンチスノープレートが装着できずに、雪団子をピッケルで何回も叩き落して…、その作業が面倒でした。しかし、それを怠ると、雪団子がどんどん膨らんで、アイゼンを付けない方がマシ?状態に陥りました。
カジタックスが元気な頃
二代目12本爪アイゼンです。made in Japan です。門田のアルパインも使用可の鋭い爪のモノです。コレで年始の八ヶ岳や2月の甲斐駒・中ア宝剣などかなり楽になりましたが、やはりプレートがありませんので雪団子はできてしまいました。二本締めですので装着も随分楽になりました。
この頃は カジタって 結構ブランド商品でしたよ。今ではやっとモンベルに買い取ってもらって復活?しましたが。現在のカジタ(モンベル?)のアイゼンの爪は丸みを帯びて 縦走用にしか使えないと思います。
汎用10本刃アイゼン
どんな靴に出も装着できる ブラックダイヤモンド社(BD)の10本爪のアイゼンです。関西の雪山では、ハイキングシューズとコレを履いたら極端なバリエーションルート以外は大丈夫です。
最近は、無雪期の急斜面下降や沢登りの高巻きやトラバースにも重宝しています。2000円の差で12本を購入できますので、微妙な10本刃ですね。でも、6本や8本とは全く違ってきます。出刃があるのとないのでは雲泥の差です。
返し
BD社のアイゼンの特徴は縦走用でも、爪に返しが付いていることです。ただ出刃が短いですから急斜面の登攀は危ないです。縦走用として使っています。また、アルミでできていますので軽いです。反面消耗が早いです。比較的お手頃な値段で大手ネット販売会社でも手に入りやすいです。
ワンタッチ式12本 アルパイン可能 ペツル
ペツルのアルパインワンタッチ12本爪アイゼンです。ワンタッチは厳冬期用の靴のコバにフックをひっかけるのですが、コレ…このコバに雪が張り付いて凍りますので、それを除去して装着せねばなりません。厳冬期の標高2100mの富士山の夜明け前の暴風時にコレを装着するのに30分以上かかってしまい…凍死するかと思いました。

それと 富士山で2回 北アで1回…このワンタッチアイゼン…外れました。

ヤバい所ではなかったので命拾いはしましたが…今ではこのフックが外れないようにする金具が販売されています。(。。。と言うことは・・・皆さんも外れたのでしょうね・・・)
同等品のセミワンタッチ購入 ペツル
厳冬期の富士に北ア…大峰のバリルート・・・六甲の氷瀑…もう、3年使いました。
流石に今年の2月、厳冬期大峰の石門の凍てついた氷瀑では「不安定」さがモロに出てしまい、氷に刺さらなくなってきました。
ペツルのアイゼンは高いです。ブラックダイヤモンドのアイゼンは安いです。
両方持っていますが、正直にペツルの方がお値段通りの価値はあります。
アイゼンは消耗品です。
3シーズンでこの差です。同等品なので爪の長さや形が全く違ってきているのがよく判ります。厳冬期富士に通う度にヤスリでピンピンに尖らせていましたので、限界ですね。でも、残雪期とか関西の山ではまだまだ使えます。
ワンタッチは、本当に靴のコバの氷を落とすのに苦労しましたし、靴から外れるのは本当に危ないです。(ちゃんと石井スポーツで靴との相性も確認して購入したんです)
廃盤 カジタックスピッケル エキスパート
カジタのピッケルのピック部分の先です。コレもヤスリで削って削って・・・で元の形からかなり変形してしまっています。1センチ以上は短くなっています。これもそろそろ打ち込んでも入りにくくなってきました。
10代の頃に使っていた、なんとシャフトがウッド(木製)なのです。しかし、先の返し部分はしっかりと角度が付いており、引っかかりの力が大きく、その上にピックの上部にもその返し部分があります! 現在のピッケルには考えられない程、打ち込んだ後の引っかかりを重要視していたと思います。
made inJapan
KOJITU SANSO と打ち込まれていますね。どこかのOME商品ですかねぇ?それとも自社製品?
シャフト部分のウッドにアマニ油を塗る毎、渋い光沢が出ていたのが懐かしいです。
石突きの変遷
新しくなる毎に、石付が太く短くなってきています。軽量化の為に穴も大きくなってますね。ピッケルはもはや登攀の為のモノで、ストックのように雪面を突いて登る道具ではないと考えられているからでしょうか?
ピックの変遷
手前の最新のペツルのピッケルは、打ち込みは効きますが返しの部分は、数こそ多いのですが丸みを帯びていて、抜けやすいですね。その点古いピッケルは、スパッと刺さりにくいですが、一度食い込んだら離さないという、「強さ」があります。
ペツルのみ替刃が可能です。
軽量化変遷
古いウッドシャフトのピッケルの重さは810gでした。重いですが、その分遠心力が効いて打ち込みやすいです。特に固い氷では。
カジタックスは、730gで、ペツルはなんと、570gでした。ダブルで持ちますとその重みと軽さの違いが歴然と判ります。

勿論それぞれ短くはなってきてますし、素材も違います。しかしあんまり軽いと、本当にアイスになると打ち込みにくいです。
氷瀑で実験
左のペツル君は、流石にサクッと一発で刺さります。右のカジタックス君は、私が長年に渡って変な削り方をしているので、刺さりがイマイチですが、返しが鋭く一旦刺さると、抜けませんねぇー。しかし、重さがあるカジタックスの方が、振り下ろしやすいです。軽さを取るか、手応えを取るか・・・
シャフトのカーブ
ペツルはシャフトがカーブしていますが、その他のピッケルはストレートです。カーブしているよい点は、このような急斜面では、ピック部分と石付の部分の2点支持ができるということです。
ストレートだとピック部分でしか支持はできません。このカーブは本当に登攀的要素が高い雪山で重宝します。クライムダウンの場合も安心感が高まります。
アイゼンの出刃
コレも新しくなる度に、前の出刃の角度が180°に近づいて来ました。昔のは、どちらかというとフラットな雪面に対して垂直気味で雪面をグリップしていましので、出刃の先が下向き加減でした。現在は急斜面に対して水平に蹴り込んで登攀する要素が高いので、出刃は堂々と顔を前に上げています。
正直申しまして厳冬期富士は出刃はあまり必要性がありません。しかし、北アや関西のバリルートでは出刃は必要です。(角度の違いからです)
厳冬期富士は出刃を除いた10本の爪であの強烈なアイスバーンを進みます。北アのバリルートでは、出刃の2本を頼りに登り上げます。ピッケルも富士山は長い方が有効で、北アや関西バリルートでは短くカーブした方が有効です。
山によっても 行くルートによっても違ってきますね。
出刃以外の刃を打ちつける厳冬期富士
ガチガチの年末富士でした。写真のように出刃は空中に浮いて使われていませんが、残りの10本は1mmくらい刺さって、それがフリクションになってくれています。
なので、厳冬期富士は足裏全体でけり込ん登降しなければなりません。
北アや関西のバリルートでは、出刃をぶち込みます。
こういう氷の角度のある斜面等は、前の出刃2本とピッケルで登降します。
その違いが アイゼンやピッケルに表れているのです。
皆様が登られる山行に応じて、ピッケルやアイゼンの仕様も変わるかと思います。
間もなくGWです。残雪が多い山には、くれぐれも滑落に気を付けてくださいね。お天気が良すぎますと3000m級の山岳地帯でも朝は、雪が締まっていても、お昼は緩んで性能の良いアイゼンも、ピッケルも効きにくくなります。ピーカンでのお昼からのトラバースやクライムダウンには細心の注意が必要です。
では、楽しいGW登山を(^^)/
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