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更新日:2013年09月27日 訪問者数:77767
クライミング/沢登り 技術・知識
沢登りで使える小技集
教本などでは紹介されていない、沢登りで使える実践的便利技集。ATCに流れ止めを付ける/ロープは足で踏む/ハーケンに流れ止めを付ける/ロープの束ね方、など。項目を追加中。
BOSS
1.ATCに流れ止めを付ける
ATCなどのデバイスの欠点はどうしても落としやすいこと。セットするにはラックから外さなければならず、その際に落としてしまうというというミスは誰もが経験していると思う。これを落とさないように、少し工夫をしてみる。
通常だと、ギアラックにかけられたATCを外し、ハーネスのロック環ビナにセットして、その状態でロープを通す…という手順をたどるだろうが、ここでATCを落としてしまいかねない。

ちなみにエイト環の場合はラックに下げたままロープを通すことが可能なので、このような不意の落下はまず起きないが、ATCの場合は形状の性質上、ロープをセットしている際に落としやすいので注意が要る。
工夫は簡単だ。画像のように、ATCにも「流れ止め」を付けるといいだろう。ただし作り方は簡単だが、ここにもちょっとした工夫や注意事項があるのでよく読んでほしいと思う。
まず細引きを使い、両端にループをそれぞれ作る。この時、片方はやや大きめのループにする。そして、小さい方のループにはアクセサリビナを通しておく。
基本的にはこれで出来上がりだが、全長を「ギアラックからハーネスのビレイループに届くギリギリの長さ(約25cmくらい)にしておくこと」が肝心だ。その理由については後述することにする。
流れ止めの大きなループをギアラックにガースヒッチ(プルージック)で留めることもポイントの一つ。ここがもし外れるような形式だと、不意にATCごと外れてしまいかねない。外れないガースヒッチで留めることで、ATCを落とす確率を極めて小さくできる。
ロープへのセットは、アクセサリビナがかかったままで行う。セットが完了して、ロック環ビナのゲートを閉めたら「必ずアクセサリビナを外す」ことを忘れてはならない。外したアクセサリビナはギアラックに戻しておく。
流れ止めの長さをギリギリにした理由は、万が一流れ止めを外すことを忘れて操作(懸垂下降など)が行われた際に、流れ止めを外していないことにすぐに気付くためだ。流れ止めが短いとATCが引っ張られることになり、アクセサリビナの脱着忘れを防止できる。また最悪外し忘れた場合に起きることが想定される、主ロープへの流れ止めの巻き込みも防げる。

とにかくセットが完了したら、必ずアクセサリビナを外すことを忘れてはならない。流れ止めを外せば、上記のようなアクシデントは発生しない。
2.ロープは足で踏む
クライミングのセオリーのひとつに「ロープを踏んではならない」という言葉がある。これは実はロープが痛むという意味合いより、命を預けるロープを大事に扱おうという意味が込められている。

最近のロープはなかなか強靱に作られているので、冬山でアイゼンを付けているならともかく、踏んだからといってすぐに切れてしまうようなことはまずない。また最近のドライロープの撥水性も高く、泥が染みこんでしまうことも少ない。

さて、「ロープは足で踏む」というタイトルの意味だが、懸垂下降を行う場合、ロープを滝下に落とすことでロープはかなりの引力で滝下に引っ張られる。それをたぐってATCやエイト環(下降デバイス)にロープをセットするわけだが、実際に経験した人なら解るだろうが、これがなかなか重たくて一苦労することもある。またこの際に下降デバイスが引っ張られ、デバイスを落としてしまったという経験をした人も多いのではないだろうか。

こういう場合は、まずはロープを十分に余裕ができるほどに引っ張って弛(たる)ませておき、手を放しても引力でロープが戻されないようにロープを足で踏むといい。この状態で下降デバイスにロープをセットすると楽に下降デバイスへロープを通せる。また踏むときはガツンと踏むのではなく、ジワリと踏むといいだろう。

ただしロープは前述の通り命を預ける大事な道具。踏むときも敬意を払って踏むように。また当然だが、故意に踏むようなことはしてはならない。
3.クライミングにおける、トップとセカンドのお約束
リードするトップと、次に登るセカンド、あるいはラストのクライミング上の留意点を幾つか挙げてみたいと思う。
●(トップ)ロープをアップする場合、テンションがかかった状態になったらそれ以上アップしない。
セカンドがプロテクションの回収を行っている際に、トップが力一杯ロープを引いてしまうと思うようにプロテクションの回収ができなくなることがよくある。またあまりロープを引き上げられると、後続は動きを制限されて思うように動けないという状況に追い込まれる。トップはロープの動きが止まったと感じたら、気持ち少ロープを緩めるくらいの余裕が欲しい。くれぐれも力一杯ロープを引き上げてはならない。
●(トップ)確保中はロープを握って、ロープのテンション状況をつかむ。
当然のことだが、トップは常にセカンド側ロープをつかんで軽く屈曲させておき、ロープに伝わるテンション状態を把握しておく。ロープを軽く屈曲させておくだけで、セカンドが動いているとすぐにロープの弛み具合がわかる。またロープを使った(以下に明記)、セカンドからの何らかの合図もそれでわかる。ただ確保しているだけではロープの操作が遅れるので、常に気持ちにもテンションをかけておくことが必要。
●(トップ)無理にプロテクションを取らなくてもよい。
これはクライミング技術の話にもなるが、ものごとはいつもセオリー通りに行う必要はない。安全を期すことは重要だが、過剰な工作は時間の無駄。ここはヤバいと思うところでプロテクションを取ればよく、見た目より楽に登れるような場合なら、ランナウトしてもぜんぜん構わない。登りながら、ルートのグレードを見極めるといいだろう。
●(セカンド)ロープの引きがきつくて緩めてほしい場合の措置。
万が一トップのロープ引きがきつい場合は、ロープをつかんでじわりと引いて、強いテンションがかかったような状態を作り出す。するとトップにもそのテンションがロープを伝って届くので、このような引きを感じた場合はトップは静かにロープを気持ち緩めてやる。
●(セカンド)ロープが弛んでいる場合は登ってはならない。
ロープが弛んでいるのにトップがロープをアップしてくれないような場合は、緊急的な措置として、ロープを引くのではなく、「上下に振る」とよい。ロープを上下に振ると必ずトップにその揺れが届く。トップはそれを感じたらロープをアップする。特にスラブ系の登りではロープの摩擦によっていつもテンションがかかったような感じになって、ロープのアップが遅れることがよくある。セカンドはこの辺りのことを予測しつつ、トップにその旨を伝達する必要がある。またロープが弛んだまま登るのは非常に危険なので、トップがロープの弛みに気付き、完全にアップされるまで辛抱強く待つこと。絶対に弛んだまま登ってはならない。
●(セカンド)プロテクション回収は基本そのままで。
プロテクションを回収する場合、ハーケンなどをいちいちスリングから外す必要はない。そんなことをしていると落としてしまいかねない。なので、スリングにハーケンを付けたままでラックに回収する。また足場が悪い場合は、ビナもメインロープに付けたままでもいい。ハーケンやカムの側をラックにかけると落とすこともない。後始末は登ってから行えばよい。
●(トップ、セカンド)登攀具は分担して持ち運ぶ。
他のパーティーを見ていると、力量のあるリーダーが登攀具のすべてを携行し、他のメンバーの装備はごく限られたものだけというケースをよく見る。リーダーに力があり、重い登攀具の携行も苦にならないということもあるのだろうが、装備は軽いに越したことはない。これは際どい遡行になればなるほどそう言える。登攀装備は各自が自分の道具で揃えるのは当然のことだが、一人で多量に持つ必要はない。例えばハーケンもリーダーとメンバーで分担すればいい。3人パーティーならハーケンは一人3枚とする。すると全体では9枚になる。これだけあればビレイ点工作も含め、1ピッチの登りに有り余る。これをリーダー一人で持つとなるとかなり重くなるが、分担すれば大丈夫。その他ビナ、スリング、捨てピン、捨て縄も、パーティー人数に合わせて必要分を分担すると、一人分の重量はかなり軽くなる。そして登攀する際に、それら装備を集めて登ればよい。
4.ハーケンに流れ止めを付ける
溯行において、一人が持てるハーケンの数には限りがある。ハーケンはけっこう重いので、何枚も持参するわけにはいかず、ギリギリの枚数を持ってゆくのが普通。なのでこれを紛失するのは沢クライミングでは致命的。
リスが浅くて打ったハーケンが半分しか入らないという場合、沢ではスリングでの「タイオフ」という方法がよく取られる。落下の際の引力の重心を下方に移すことで、いわゆる「半打ち」でもハーケンの力を最大限に活かそうとする方法だ。
しかし半打ちの場合は打ち込みが浅いために、ロープの動きなどであっさり抜けてしまうことも度々だ(左画像)。

しかもハーケンにタイオフされたスリングがハーケンのビナホールを通っていないため、これが抜けるとスリングからハーケンがすっぽ抜けて落ちてしまうことになる。落ちた場所が拾えるところならいいのだが、滝壺なら回収はほぼ不可能。これによって前進用の一歩が絶たれてしまいかねない。
そこで、タイオフする場合のことを考えて、ハーケンにバックアップを取ることをおすすめする。これを行えば、半打ちすっぽ抜けでもハーケンを紛失することがなくなる。

ハーケンのビナホールに、細引きでループを作ってあらかじめかけておく。ただしループの長さはできるだけ小さくしておくこと。
タイオフしたスリングに、アクセサリビナで結束する。これでOK。ちなみにこの細引きには一切テンションはかからない。

またハーケンとは別に細引きループを作っておき、ハーケンのビナホールにガースヒッチ(プルージック)で留める方法もあるが、工作中のセットが面倒なことや、細引きループを紛失しやすいので私はこのやり方に切り替えた。
こうすることで、タイオフされたスリングからハーケンが抜けても、バックアップのおかげで紛失を免れる。また、ハーケンを抜く際にもここに指を掛けて抜けば落下防止にもなり一石二鳥だ。ただしハンマーが当たると簡単に切断してしまうのでそこは注意する。
なお、アクセサリビナを携行する場合は、ハーケンとは別々にしておくといい。

アクセサリビナには細引きで作った小さなループにまとめておき、登攀する際に胸元近くに掛け替えしておくと使いやすい。
5.ロープの束ね方
ロープのまとめ方は大方誰もが同じように行っていると思うが、ロープ末端の施し方については、人それぞれいろいろあるようだ。

そこで機動性重視の沢登りで使える、まとめるも解くもすぐにできるロープ末端の始末について説明してみたい。慣れればとっても素早くまとめあげられるので、紹介する方法はおすすめだ。
クライミングの教本ではロープの両末端を結び目に持っていき、互いに縛って結ぶように指導しているが、それでは機動性に欠けるばかりか、連続する懸垂下降などでは面倒で仕方ない。

しっかり巻いて、末端をループに通し、ループを締めればそれでいい。左の画像のように、末端が結ばれていなくてもまったく問題はないし、緩むこともない。
問題はどの程度の長さの末端を用意したらちょうどよい長さになるか、だ。ここが長くても短くても都合がよくない。毎回末端の長さが変わってしまう原因は、このロープ末端の長さを曖昧にしているからだろう。そこでこれをきちんと測っておくといい。
左画像の通り、片方の腕を伸ばし、もう片方の手は胸を超えた辺りで止める。ここからまとめ始めると、ちょうどよい長さに仕上がる。
左の画像はその巻始めの時だ。左側ロープ末端の長さを見てほしいが、捲き上げるロープより若干長めになっているが、まとめあげるためにはこの長さが適当ということだ。
巻くときは束ねたロープに「3回しっかり巻き付け」、4回目で作ったループに通すといい。末端の長さがちょうどよいと、巻き付ける作業も楽である。この巻き付け方はしっかりと習熟するといいだろう。

なお最初の画像の通り、末端はそのままでいい。何度も言うが縛り上げる必要はまったくない。ちなみに解く際は末端を軽く引っ張ることで、締めたループ(画像A)が飛び出してくる。
なお。ループ(上画像のA)の大きさは画像の様に極めて小さくでいい。ここが大きいと巻き付け回数が減るばかりか、ループを締めた時に束から1本だけ飛び出して不格好な状態になってしまう。こうなると次項で説明する首にかけて運ぶ際に、邪魔になってしまうので注意が必要だ。
6.ロープは半分ずつに分ける
タイトルの通り、ロープは一つにまとめるのではなく、半分ずつにして束ねておく方が何かと効率がいい。

例えばクライミングの場合、(※ビレイに必要な部分は考えないものとした場合、)30mのロープを使って15m登るとなれば、当然15mの余りが出てくる。するとトップは確保終了後、15m分のロープをアップしなければならなくなる。
しかしロープが半々になっていれば、アップする必要はなくなる。もちろんこの場合は残り半分の側のロープは結束したままでいい。結束された側のロープは解かずに、ザックの雨蓋に挟むなどして、コンティニュアスクライミングのようにセットして登ればいい。これによってロープの始末に係る時間を大幅に節約できる。
例では30mロープだが、これが40mロープだと全部解いた場合はトップが引き上げるロープ長はさらに長くなり、それだけ時間もかかる。また長ければ長いほどロープが「サラダ化」しやすく、しかも再び結束する時間も長い分だけかかってしまう。
滝の高さを見て解くかどうかを登る前に判断し、解く必要が無ければそのままで使うといいだろう。あるいはすべてのロープを繰り出しておかず、ビレイが終了した後に余ったロープを結束してしまうというやり方でもいいだろう。これによって驚くほどクライミング時間が短縮できるはずだ。
懸垂下降の際にもなかなか都合が良い。ロープを折返しダブルで使う場合、捨て縄をセットしたあとに「結束したままのロープ」の片方を捨て縄に通すだけでセットは完了する。あとはそれぞれの結び目を解いて、滝下にダウンするだけ。

通常ならロープの末端を捨て縄に通し、スルスル引いて中間に来たら再びロープを束ねてダウンの準備をする、という手順でセット作業を行うが、これでは時間がかかるし前述の通りサラダ化も起きやすい。
この方法を確実に行うためには、ロープには「センターマーキング」を必ずマーキングしておくことが肝心だ。また束ねる際には「(自分のロープにおいて)何回の束ね返しでセンターが手元に来るか」を覚えておくといい。ちなみに30mで約8回、40mで約12回と、私の場合はこうして覚えている。

またロープをザックに収納しないで運ぶ際だが、首に回して、ザックのチェストストラップで留めておくとロープがばらつかず、しかも落ちることも少ない。ただし長時間の歩行には向かないので注意。
ちなみにマーキングの付け方だが、油性ペンや工作塗料の類は「絶対に」使ってはならない。専用のマーカーが販売されているのでそれを使うこと。
7.デジカメレンズの水滴落とし
最近は防水型デジカメがほとんどなので、沢の記録にはもってこいの時代となった。が、それでも沢での撮影はなかなか難しい。

下の画像を見てほしい。こんな画像を持ち帰った沢屋もきっと少なくないだろう。
せっかくの滝の画像が「水滴ボケ」してしまっている。これでは画像の価値はおろか、使いものにもならない。また水滴の飛んだレンズを指で拭いてもなかなか綺麗にはならない。

レンズカバーの付いたデジカメなら水滴ボケもかなり防げるのだが、そうでないモデルでは知らぬうちに水滴が飛んでいて、しかも小さなディスプレイではボケが確認できないことも多く、帰宅してからしまった!ということにもなりかねない。

そこでレンズが濡れた際に使えるちょっとした小物を紹介したい。
私が使っているのは車を洗うときに使われる「セーム皮」だ。

セーム皮というくらいなので皮がいちばんいいのだが、手入れが悪いとひび割れたり、カビが生えるので保管が難しい。そこでこのセーム皮そっくりに人工的に作られた「人工セーム」というものがある。こちらは化学繊維なので扱いは楽。
さて、この繊維が何故いいのかというと、洗車専用と言われるくらいで、吸水率がとてもいいのだ。一拭きでほぼ完全に水分を吸い取ってくれる。
カーショップやホームセンターのカー用品コーナーには必ずあるので探してみてほしい。くれぐれも買うのは「人工(化学繊維)」のセームである。ただ、売っているものは洗車用なので寸法が大きい。なので5cm×5cmほどに切り上げ、端にハサミなどで穴を開け、デジカメのストラップに通しておくといい。ちなみに人工セームは引き裂き強度がかなり強く、端の穴から引きちぎれることはほとんどないほど強靱だ
またセームが濡れている時はぎゅっと絞れば吸水性が復活する。とにかく一発で濡れた部分の水を吸い上げるので、水滴取りには最適な道具だと思う。

残った人工セームは洗車用に使うか、お友だちにお裾分けするといいだろう。
8.ビレイデバイスは2種類持つ
確保・下降デバイスは、沢屋なら必ず持ってゆくと思うが、二つ(2種類)持ってゆく人はどれだけいるだろうか?

万が一紛失した場合、二つあればどちらかは生きることになるので命拾いすることになるのと同時に、「二つ持つ」ことの意味は大きい。
持つのは「エイト環」と「ATC系のデバイス」がいい。私はこの二つをいつも持っている。その理由の一つは紛失時のバックアップと、もう一つはどちらの操作にも日頃から慣れておくという意味からだ。

多くの沢屋は初心者になるほど「エイト環」のみの操作しか行えず、ATC系のデバイスは使ったことがないという人も多い。エイト環は使うが、ATC系のデバイスは一度も使ったことがないという沢屋では、やはり一人前とは呼べないだろう。
エイト環もATC系のデバイスも、どちらも使えるようにしておくことは重要なこと。それぞれに使い勝手が違うので、場面に合わせて使い分けることでもいい。例えば空中懸垂になりそうならATC系のデバイスの方が好適だ。これも実際に使って初めてわかること。二つ持っていれば、その時の気分で使い分けてもぜんぜん構わない。器具の良いところ、悪いところを身を以て知ることによって、いざという時に慌てないで済む。
携行する際はデバイスごとにビナをかけ、別々に下げることも使い勝手向上のコツ。

それぞれにロック環ビナを使って振り分けておくと、ロープへの装着も取り外しも簡単である。
こんな話になったのでちょっと書いておくが、溯行者が下げるエイト環を見ると、その人、あるいはそのパーティーの力量が見えてくる。「小さなリングにビナをかけて下げている」場合は、クライミング技量に乏しいと見て間違いない。
9.確保では、ロック環ビナを二つ使う
クライミングの教本では、左画像のようにセルフビレイを行う場合はハーネスビレイループにかけられら「1個」のロック環ビナを使って行われると説明がある。

すなわちロック環ビナからセルフビレイが伸び、そしてそこからトップ(あるいはセカンド)のビレイも行われるという具合だ(左画像)。
しかし沢登りでビレイを行っていると、セルフビレイに延ばされたロープ方向とトップのビレイに延ばされたロープの方向がどうも悪く、ハーネスのビレイループにかけられたロック環ビナがあってはならない方向で互いに引っ張られてしまっていて焦るという場面に出くわすことがある。これは沢登りではビレイ点を好適な位置に作ることができないために起きると思っている。
画像のように、セルフビレイの方向とセカンドのビレイの方向が直線上でない場合、テンションがかかった場合にどこに引っ張られるかを常に頭に入れておかねばならないのだが、これを1個のロック環ビナで行っていると、画像の様にテンションの勢いでビナが反転、もしくは横転しかねない。

滅多なことではビナじたいが破損することはないが、ロック環ビナのロッスクリューが不意に回ってゲートが開いてしまうことにもなりかねない。
2個のロック環ビナにそれぞれの仕事を振り分けることで、互いに別方向にロープが引かれたとしても、それぞれのビナは正常な動きで引かれるために、反転したりすることは少なくなる。

装着動作としては、ハーネスのビレイループのロック環ビナでセルフビレイを取った後、ATCなどのデバイスをかけた、もう1個のロック環ビナをハーネスのビレイループに着けるという順がいいだろう。
10.一段アブミ
素手では登れないような滝は人工登攀によって登ることはできる。が、例え5〜6mの高さでも、そこに係る時間はかなりのものだ。ましてやボルトなどのドリリングなどが行われれば、たぶん時間切れとなって溯行は途中で中断せざる得なくなる。なので、通常はこのような滝は捲いてやり過ごすのが普通だ。
しかしそこまでの手間がかからない、「あと一手」でなんとかなりそうな場面はよく出てくる。途中まで登ったものの、その先一手が遠く、ホールドもスタンスも乏しいとなればなんとかしてこそこを切り抜けたいと思うのはクライマーの性。こういう時に役に立つのが「一段アブミ」だ。

見た目は通常のアブミ的作りなのだが、段数が一段しかない。なので携行性がとてもいい。通常のアブミだと登攀前に準備をしていないと途中で取り出すことは困難だが、これなら腰に下げられるサイズなのですぐに取り出せる。
作り方だが、肝心なのは長さ。アブミプレートに足を乗せて、自分の膝がスリングの中を通るくらいがちょうどいい。これより長いとプロテクションから遠くなるし、また短いと乗ったときに不安定になる。

また、テープスリングはアブミプレートの穴に入らないので、使うのは当然ロープとなる。
全体的な作りは各自にお任せするが、携行しやすくするための工夫もしておくといいだろう。

プレートの下に小さなビナが通るループを作っておくといい。携行する時はこのループを先端のビナにかけると腰にも下げられるようになる。
ついでなので書いておくが、今どきボルト連打で人工登攀なんてことはほとんど行われていないか行わないのが普通だ。なので沢登りにおいてはドリリングという行為はいわば最後の手段であり、通常は行われない。私も長い間沢登りを行っているが、ボルトを打ったのは過去数回だけ。しかもほとんどが懸垂時の支点工作で、やむなく打ったものばかりだ。
11.チェスト側ギアラックには、カムやナッツは下げない
ギアはハーネスのギアラックにかけるより、チェスト(胸)側にかけたギアラックにあった方が取り出しが楽だ。これはたぶんザックがあるため、腰側には手が回しにくいからだろう。

しかし取り出しが楽だからと、カムやナッツなどを溯行中に胸のギアラックに下げておくと、思わぬハプニングに見舞われることがあるので注意が要る。
カムやナッツは振り子状に反転するので、胸のギアラックにかけたこれらカムやナッツが、歩行中に跳ね返ってきて顔面に飛んでくることがある。

一度試してみるといい。胸のギアラックにカムやナッツを下げ、それが跳ね返った際に先端がどこに届くかを。私はこれでかなり痛い目に遭っている。登攀するとき以外は、カムやナッツは腰に下げるか、あるいはザックの雨蓋にでもしまっておいた方が無難である。
12.最低限の合図をあらかじめ決めておく
沢クライミングでは、互いの声が届かないということがよく起きる。轟々と流れる滝が横にあれば、その音にかき消されて声はほとんど届かない。

私たちはかなり前から無線機を使っているが、機械モノはいつ壊れるかもしれず、そればかりに頼ってしまうと痛い目に遭うことから、最低限の「合図動作」「笛による合図」を決めている。
基本的にクライミングが出来る者であれば、次にどのような操作が必要かすぐにわかるので、難しい動作や合図は必要無い。動作や合図はたったの二つ。「OK」と「NO」があればよい。

解除なら「OK」。トップによりロープが上がったらセカンドは「NO」で済む。これらを手動作、あるいは笛の回数であらかじめ決めておくといいだろう。
ただしここに「ロープアップ」とか、「ダウン」とか、「待ってもらう時」の合図等を加えてしまうとたいがい混乱して危険なことになるので注意。なので合図は「OK」と「NO」で十分だ。
互いに見えているが声が聞こえないなら手動作、姿が見えないなら笛回数という具合だ。また複数人いる場合は、ビレイを行っていない者がトップが見える位置まで移動し、ビレイヤーにトップからの指示を伝達するということもできるので、この辺りは臨機応変に対応しよう。

それと、声の届かない場合は何があってもやたら打ち合わせに無い大声や合図を出さないことも肝心。例え緊急の事でも、決められた合図内で伝達することが重要だ。予期しない合図は互いの混乱を招くので注意が必要だ。この辺りは事前に打ち合わせを行い、互いにしっかりと確認しておこう。
13.ナッツのセットのしかた
クライミング用具にはナッツと呼ばれる道具がある。今ではセット幅が可変できる「カム」という道具を使うのが主流だが、このナッツもプロテクションとしては効果のある道具だ。

しかしセットの方法をよく知っていないと、せっかくの道具も役に立たない。

ナッツは岩と岩の間にクサビのように挟み込むことでその効果を発揮する。しかし登攀中に簡単に外れてしまった経験はないだろうか。
まず、ナッツが岩の間に入ったらしっかり"利かせる"ことが必要だ。セットした後はナッツの上部から軽く衝撃を加えてがっちり岩に押さえ込む。これにはハンマーを使うといいだろう。もしハンマーが入らないような隙間なら、ハーケンなどを利用してナッツの頭を軽く叩いてやるといい。この時、ナッツのワイヤー部分の打撃は必ず避けること。ここが重要。またスリングをかけてそこに足を乗せて、体重で利かせてやることでもいいだろう。こうすることでロープの動きによるナッツ外れがかなり起きにくくなる。ちなみにナッツは柔らかい金属なので、あまり強く叩くと変形するので注意が必要だ。
そしてもう一点。ナッツのワイアーにそのままビナをかけるのもNGだ。長めのスリングをダブルで通し、そこにビナをかけてロープを通す。ナッツのワイアーは無論、短いスリングだとロープに振られてナッツが外れてしまうことが多い。これはカムでも同じことだ。

※各画像のメインロープは撮影のためのものであり、適切な通し方ではありません。
しかし、ただスリングをかければよいというものでもない。

左画像はよくあるセットの方法だが、細いワイアーに直スリングをかける場合は、ガースヒッチにするとテンションがかかった際に大きな負荷が結び目にかかってしまう。

この場合は画像のやり方ではなく、やはりビナをかけて、ヌンチャク状にした方が賢明だ。
ビナを介さない場合は、スリングをダブル折りにしてかけるといいだろう。

これにより結び目が無くなるのと、ダブルにすることで理論的には強度も上がるので覚えておくといいだろう。

ガースヒッチにするよりはセット手順も簡単なので、例えばハーケンに直スリングする場合もガースヒッチでセットするより、ダブル折りの方がよい。ただし、やはりそれでも接点部に力がかかるので、本来はビナを介した方がよいことに代わりはない(下画像)。
フリーのクラックルートの場合はルートが直線上なのでヌンチャクでも問題ないが、沢登りの場合は右へ左へと移動することがあり、スリングを長めにしておかないとロープがナッツのワイヤーを振ってしまうので注意したい。

これは私の経験上での話として聞いて欲しいのだが、カムの方が利便性も高く、岩に対してもがっちり利いているように思えてしまうのだが、カムよりナッツの方が外れにくいと思っている。
カムは岩との接点が点のためか、ロープの動きによって簡単に動き出すようだ。これが起きるとだんだんとカム位置が外側(広い側)へと動き出し、結果外れてしまうことになるのだろう。その点ナッツは一度利くとこのようなこと起こらず、安心面から見ればナッツに軍配があると思っている。
14.複数人での時短クライミング
沢でロープを出した場合、ペアならさほど時間もかからないが、パーティー人数が3人あるいは4人ともなれば、当然ロープの取り回し作業に時間がかかってしまうことのなる。2人なら30分ほどで登り終わるところも、4〜5人だと1時間以上もかかってしまいかねない。そこでこれを短時間で終了させるテクニックを紹介したい。ただし使える場面には時と場合があるので、最後までよく読んでほしい。

クライミングに時間がかかると予想される場合は、二人を同時に登らせる「同時クライミング」というのも一つの手だ。
例えば3人パーティーの1ピッチクライミングの場合、トップはダブルロープ、あるいはもう1本のロープを引き上げながら登り、そしてフォローの2人を同時に確保して登らせるのだ(ダブルロープの場合は残った二人がそれぞれでトップを確保すると効率がいい)。こうすることで一人ずつ登らせるよりもかなりの時間短縮になる。
まず、パーティーに1本しかロープが無い場合は当然この方法は使えない。3人なら2本、4人なら3本、5人なら4本、同じ長さのロープが必要になる。話は逸れるが、1パーティーに1本のロープでは極めて効率が悪い。あらかじめ登ることがわかってる場合や、そうした場面が予想される溯行の場合は、安全の面からも各メンバーが1本ずつロープを携行するのが好ましい。しかも同じ長さで揃えることもポイントだ。
話を戻そう。

まずトップはリードした後、そのルートが同時に登っても問題がないかどうかを見極めることが大切だ。そして、確実な終了点が工作できるかどうかという点にも注意を払いたい。この二つの条件が整えば、トップは合図で同時クライミングをフォローに指示するといいだろう。そうでない場合は通常通り、一人ずつ登らせればいい。

話をまとめるが、クライミングルートがいわゆる「厳しい」登りの場合は同時クライミングは危険だ。また確実な(二人を支えきれる)終了点を工作できない場合も同じである。同時クライミングは比較的傾斜が緩く、スタンスが適度にあるような登りで使える技。なのでフォローにトップ相応の力量があるクライマーなら、一人ずつ登らせても無駄な時間は消費しないはず。すべてはトップの判断だが、同時クライミングが適当かどうかをよく見極めることが肝心だ。
同時クライミングの登り方だが、2人同時に岩に取り付くことはできないので、「間隔を開けて」登るようにする。そしてこの場合、「最初に登るのは慣れない者にする(図の「1」)」といい。慣れたものが最後に登ることで、慣れない者の動きを見ながら(邪魔しないで)登ることができるからだ。また慣れた者が最後の方が、起こりうるいろいろな場面(例えばロープの交差など)にも対応できる。
パーティーが4人もしくは5人になった場合は、最初に登る2人それぞれに新規のロープを引かせて登らせる。この場合、ロープの結束方法も単純なものでいい(エイトノットにロック環ビナを付け、それをハーネスのギアラック、あるいはビレイループにセットなど)。そして2人が登った時点で、「トップはフォロー2人とビレイを交代する」ところがポイント。図で言うところの「1」「2」が、「3」「4」をそれぞれ確保する。ここでは細かな点は省略しているが、もちろんのこと、「1」「2」はそれぞれ終了点に自己ビレイをセットすることは言うまでもない。その間にトップは「#1」「#2」のロープを回収する。
4、5人になると終了点でのトップとの交代などやや難しい面もあるが、基本的には「1」「2」は自分がリードしたと想定して終了点を工作すればいいので、交代時のイメージもできるだろう。ともかく3人の場合はかなり時短できるので、使える場面では利用するといいいだろう。
15.タイブロックの使い方
ロープの中間にクライマーが入る場合、これまではいわゆるプルージックか、クレイムハイスト、あるいはバッチマンノットがよく使われていたのだが、アッセンダーとして最近はペツル社の「タイブロック」がセットが簡単ということもあって使われることが多い。

たしかにロック環ビナがあれば簡単にロープにセットできる手軽さはあるが、使い方によってはうまく制動がきかない場合もあるので注意が必要だ。
こうした器具は使い慣れることがいちばん重要で、初めて使う場合は十分に器具の性能や使用法を習熟しておくことが必要だ。
さて、タイブロックをロープにセットする場合、多くのクライマーは画像の様にセットしている。たしかにこういう使い方もあるにはあるのだが、中間にクライマーが入って登るよくあるパターンの場合は、この方法だとうまく制動がきかなくなる場合があるので注意しよう。
比較的安全なセット方法は、ロック環ビナにロープを通してセットする左画像の方法だ。
このセット方法を行うとわかると思うが、ビナにロープが通っているため、スライドさせた際にビナが浮いてしまうということが起こりにくい。ビナが浮くと当然制動がかからず、タイブロックが流れてしまう可能性がある。また、ビナの引かれる方向にタイブロック内部のスパイクがあり、常にロープにスパイクが食い込みやすい。

ビナにロープを通さない方法は、いわゆる登攀におけるユマーリング時やハングに落ちた際の登り返しなどで使うことが多く、中間にクライマーが入る場合はビナにロープを通した方がいいだろう。

とにかくタイブロックはスリップするような危ない地点でのスライドさせるのは禁物である。タイブロックの制動をしっかりかけた上で動き出すのが基本であり、動きながらスライドさせるものではないことは覚えておこう。
また使われるビナにも注意したい。流行の軽量ビナの場合は制動が弱く、これも危険材料となることがある。ビナの断面が円に近く、そして「オーバル」か「D環」が必ず必要だ。すなわちタイブロックには専用のビナを用意するというのが基本である。
また操作方法も理解されていない場合が多いので、ここでじっくり学んで欲しい。
セットは誰でもできると思うが、上部へのスライド方法には基本形がある。よく行われているのは、画像のようにタイブロックをつかんでスライドさせるやり方である。が、これでスリップするとビナが緩んだまま握ってしまうことがあり、大きなスリップを起こすことがある。
タイブロックには親指を乗せる定位置と、そのためのグリップポジションが刻まれているのをご存じだろうか。

左画像を見てほしいが、二つの縦スリットが入っている部分だ。
基本的にはビナをつかみ、親指をグリップポジションに乗せて、押し上げるようにスライドさせるように作られている。基本的にはこうした動作でタイブロックを動かしたい。
16.お助け紐の作り方
沢登りでは必携の装備の一つが「お助け紐(スリング)」だ。

ちょっとした岩の乗越や荷揚げ、セルフビレイのスリング用にとその用途は沢登りの行程の中でもいちばん多いだろう。

お助け紐は一人1本持っていると、ロープを出すまでもない登りなどでは連結して使うこともできるので機動性は高い。ここで紹介するお助け紐では、1本約2mあるので3本つなげば6mとなり、用途は幅広い。
お助け紐には長さの定義はないのでそれぞれが自由に作ればいい。また簡単に市販ソースリングを購入しても構わないが、長さがからだに合っていないと携行時、使用時に面倒なことになる。お助け紐はほぼ一生ものなので、基本的には自分のからだの大きさに合わせて作ることをおすすめする。

お助け紐にはロープよりもテープの方が握った時に手が滑りにくい。なので切り売りのテープスリングを「5m分」購入する。それをからだに合わせてカットすればいい。
作り方だが、上の画像のように、最初はからだに4巻「たすきがけ」にして調整してみる。この時巻きをあまりきつくすると取り出しにくいし、ウェアを着込んだ時に苦しくなるので余裕を持たせること。画像の様にカラビナを縦にして余裕で1個入るほどの大きさがちょうどよい。

なお、すぐには切り上げず、一度実際に沢中で使ってちょうどよい長さに調整する(解き直しする)とよい。それまでは余分を残したままにしておくこと。ここ大事。
お助け紐の携行の仕方だが、ただそのままたすきがけにしたのでは取り出した時にサラダ化してしまうし、だいいち腕を大きく振って外さねばならず、これでは機動性に欠ける。

まず2重の輪を作り、それを半分に折って肩からかける。その末端をビナで連結する。こうすることで、ビナにかかったお助け紐の片側を外して引くだけで、お助け紐がからだから引き出せる。またサラダ化もしにくい。
ただしこの際に一つだけポイントがある。

どのスリングでも構わないが、1本だけ捻っておくことが重要だ。これは実際にやってみるとわかるが、ただ単に二つ折りにしてビナをかけておくと、そのままお助け紐をからだから外すとビナがすっぽ抜けて落ちてしまう。休憩時など、輪のまま外した際には要注意だ。ここで一回に捻っておくだけで、ビナはお助け紐のスリングから落下しなくなる。
17.沢靴は濡らしてから履く
タイトルを見るとだれもが「?」となるだろうが、これがけっこう「沢靴」にとっては重要なポイントだと、私は思っている。
生地や布製品は、濡らすことで強度が上がる。その理由は「摩擦に強くなる」からだ。

沢靴は沢水に浸かれば当然濡れるわけだが、ここで紹介するのはその前に濡らしておくという方法だ。

出発日前日にしっとりと濡れるくらいに水をかけておき、その状態で履くといい。こうすることで、紐が緩んで締め直しをする必要もほとんど無くなる。
とくに入渓前に林道を歩くなどのアプローチがある場合は、乾いたままだと紐穴や靴じたいに相当の負荷がかかってしまう。しかし濡らすことで全体的に摩擦に強くなり、生地もしなやかに動くことになるので靴へのダメージは少なくなる。靴を長く使いたいのであれば、こんなところにも気配りをしておきたい。ただしくれぐれも滴るほど水をかける必要はない。またグローブを使う人は、これも早めに濡らしておいた方が賢明だ。
ついでなので、紐の締め方についてもちょっとだけアドバイスする。下の動画のように「ツイストノット」で結ぶと、靴紐が勝手にほどけることも少なくなる、というか、かなり解けなくなる。

この結び方を行うと、ループを引いても靴紐は解けなくなるため、藪などにひっかかっても、靴紐はびくともしない。しかし、末端を引けば普通に解けるという便利結びだ。
18.メンバーはパーティーの動向をよく観察する
私が他のパーティーを見たり、あるいは観察していると、これでいいのだろうかと思うことがたびたびある。

例えばパーティー溯行をしている際、一人だけ見えなくなるほど先に行ってしまう人がいたり、あるいは小用ができてパーティー隊列から離れる際も、何一つ声もかけずに勝手に小用を済ませに行く人もいる。また分岐で他のメンバーが地図を確認しているにもかかわらず、地図も出さずにボーッと立ってるだけの人。岩の乗越があっても、後続のことは一切構わずに先に行ってしまう人などなど、あげると切りがないほど「おかしい」と思うこといっぱいだ。

まず、パーティー行動とは何かということについて、多くのパーティーは勘違いをしている。パーティー行動とは、メンバー全員が互いに力を合わせて行動することであって、「一緒に歩く」という意味ではない。そして「力を合わせる」ということは、互いに協力し合うということであり、お互いに助け合わなければいけないのである。

もちろんリーダーのリーダーシップも重要な部分なのだが、メンバーにも同様の責務があるということを忘れてはならないだろう。これを怠ると遭難につながるばかりか、命を落とすような事態に陥ることにもなりかねない。沢登りをする者は、この部分を十分に肝に銘じておかなければならないと思う。
●バラバラになってはいけない
パーティーで行動する際は、何があってもバラバラになるようなことがあってはならない。リーダーは常に後続の動向に注意を払い、ペース配分や危険箇所の通過には、その都度配慮することが必要だ。

小用をする場合は必ず「パーティーに声をかける」のは鉄則。またリーダー、あるいはトップを歩くことを任された者は、必ずパーティーと団子になって歩かねばならない。

リーダーが後ろにいる場合は、ペース配分などについてその都度先頭に指示を出すといいだろう。互いが見えない状態になることは、沢登りではかなり危険なことなので注意したい。
●リーダーの指示を仰ぐ
どんな場合でも、まずはリーダーの判断が先にある。

滝の捲きなどがあった場合は、先ずはリーダーの判断を仰いでから行うことが鉄則である、そのためのパーティー行動であり、リーダーというものの存在がある。この図式が崩れるとパーティーそのものが崩壊することとなり、万が一の事態が起きたときに判断の収拾がつかなくなる。こうした意味からも、リーダーはリーダーシップが取れる者が行い、そして常にメンバーに対して納得のゆく安全な判断を促す必要がある。
●メンバーの役目
メンバーの役目は、リーダーの目が届かない部分の観察であり、助言をすることだ。

誰かが遅れていたりバテていたり、見逃した二又があった場合は必ずリーダーに報告するようにする。また先を歩くメンバーの動向、服装、装備に目を配り、おかしな部分を見つけたら助言したり、修正したりすることが必要だ。

例えばハーネスの装着ミスもよくある。シットベルトが捻(ねじ)れていたり、中心からズレていたりすると、登攀の際にテンションがかかった場合はその人は痛い思いをする。これも後ろを歩いている人なら気付くはずだ。またビナのゲートが装備にひっかかって開いていたり、ザックのバックルが外れていたりと、観察する部分はなかなか多い。

互いに観察することで安全度合いを高めておき、それと同時に互いに「仲間である」という意識を常に共有することにも役立つ。またそれは結果として互いの信頼にもつながるだろう。
さいごに
私がこれまで沢登りを行ってきた中で編み出した、いろいろな小技を書いてみました。

これはこうした方がいいのではないか、これはどうなっているの?など、文章だけではよくわからない部分も多々あると思います。下にコメント欄がありますので、ご意見ご感想など、どうぞお気軽にご記入ください。

また、上記以外の小技もこれまでのヤマノートに書いています。玄人向け?の小技ばかりですが、是非参考にしてみてください。

http://www.yamareco.com/modules/yamanote/usernotes.php?uid=27093

こちらも合わせてご笑覧いただければ幸いです。
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コメント

はじめまして。
アルパイン初心者のものです。
ナッツの回収方法を勉強しようと思い、いろいろなlinkを、探し回っている時に、こちらのlinkに出会いました♪

今夏より沢も始めるので、物凄く勉強になる、重要な知識ばかりで、大変有り難く拝読させて頂いております。

明日から奥穂南稜登攀に向かうのですが、早速幾つかの項目、実戦にて使えるよに、仕事帰りに山屋行って、必要なもの、探してきます!!

まだまだいろいろお勉強させて頂きたいので、これからもよろしくお願いいたします。

チロ
2015/6/12 16:29
ありがとうございます
チロさん、コメントありがとうございます。
基本的な部分はしっかり押さえるとして、自分で工夫をする事も大事だと思います。
頑張ってみてください。
2015/7/29 19:25
はじめまして
非常に勉強になりました。ありがとうございます。
2016/4/5 9:40
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