ポリウレタン等に反応して咳が出たり、喉がいたくなったり、喘息の発作を起こす人の山道具の工夫について、経験を元に記します。
衣服編その1
1.洗濯石けんについて:
洗濯洗剤の影響をなくすために、洗濯は、全て洗濯用石けん(液体石けんでよい)を使用します。何らかの化学物質に反応する人や、アレルギー(花粉症を含む)の有る方は、山用の衣服のみならず、全て衣服の洗濯に洗濯用石けんのみを使用し、家の中から香料の入った合成洗剤や柔軟剤を除去すると良いと考えられています。
また、石けんについても、ヤシを原料とする石けん成分に反応して咳がでる場合もあります。私も反応するので、現在、アボガドオイルを原料とする液体石けん(シャボン玉石けん、ベビースノール)を使用し、すすぎを多くしています。以前に使用できていたものが使用できなくなることがありますので、その時の自分の状態に合わせて選びます。(参考までに環境有用微生物:EMを使用して製造した石けん等は、酵母アレルギーや喘息を懸念する方は注意が必要です)。
2.反応する服を探る
室内干し法:洗濯後の濡れた山の服を室内(リビングなど)に干す。数時間、換気を一切しないでその部屋にいます。咳が出るなどの反応があるかどうかを見ます。
ジップロップ法:干した後の服をジップロックなどの密閉袋に個別に入れます。袋に反応しないことは先に確認しておきます。数日から数週間、そのまま放置します。その後、ジップロックの開封部に近づき袋の中の空気を吸います(要注意)。煙い臭いがしたり、咳などの反応があるかどうかを見ます。症状の強い方は、要注意ですが、自分にダメな部分がある服を見つけやすい方法。けっして、無理をしないで下さい。
3.反応する部分を探る
上記の2の方法で反応する服を見つけたら、次にその服のどのパーツに反応するかを探ります。
まずは、服の素材を見ます。ポリウレタンが素材に記載されていたら、それを疑います。自分がポリウレタンに反応する可能性が高い場合は、メイン素材にポリウレタンを含むものや、靴下のように切除処置ができないものは、着ないようにします(さようなら、しました)。
次に「表地:ポリエステル、リブ部:ポリウレタン」など部分的に使用が記載されているものについては、リブ部の切除処置(後述)を試みます。
さらに、「ポリエステル100%、飾り部分を除く」と記載があるものについては、やや面倒で、どこにポリウレタンが使用されているのかをつきとめます。ゴム部は、高い確立でウレタンです。また、首まわりの補強部分も反応します。反応する物質名がわからない場合でも、近づいて(近づける場合のみ)咳が出る部分は怪しいです。
また、製造メーカーに問い合わせて、個々の製品の素材について聞くと、丁寧に対応してくださいます(ただし、新素材や衣服の飾り部分の素材は複雑で、詳細な情報が得られていない場合もあるので、自分の反応を信じる)。Webサイトに「メリノウール100%」とあれば、主な生地は大丈夫ですが、弾力性ゴム部はメリノウール以外の素材が使用されています(ゴム部はウレタンである可能性が大きい)。また、「メリノウール」とだけ記載があり、100%の記載が無ければ他の素材が含まれています。別名の場合もあり、スパンテックはウレタンです。新素材は、特許名で記載があり複雑ですので、素材名で検索をかけます。
4.反応する部分の切除処置(マスク着用のこと)
Tシャツのリブ部分であれば、リブごと切り取ることも試みました。ポリエステル地のTシャツであれば、切り取った後でもそのまま着られる場合が多いと思います(写真1 参照)。
ベースレイヤーの首周りの補強生地は、裁縫はさみの先端を使用して、補強生地のみをはぎとります。その際、補強生地をひっぱって伸縮性があればウレタンの可能性が高いと思います(写真2 、写真3 参照)。
手首のゴムを切り取り際には、生地ごと切ってしまいます(写真4 参照)。
チャックなどの切除できない部分については、諦めるしかありません。その服は着れないかもしれませんし、次回は、チャックの無い服を選びましょう。
ウインドブレーカーの首周りに補強があり(モンベル)、フードごと切りとったことがあります。マフラーをしていても首が寒くて、結局は、廃棄しました。
切除処置の後、手洗いをして反応しなくなれば着ることができます。(ウレタンなどの反応する部分がある服や、切除したての服は、洗濯機で洗わずに手洗いすることをお勧めします。マスク、手袋をし、換気扇を回せる時間帯に実施します。)
5.ポリウレタン部分が少なく切除処置を施すことで着れそうな服
個人差がありますが、現時点で、私の着れている、あるいは着ようと試みている服のリストです。
ベースレイヤーとアンダーウエア
モンベル:スーパーメリノウールM.W.タイツ、スペリオルシルク、メリノウールL.W.ソフトブラ (ゴム部は切除できないので諦める。手洗いする)
パタゴニア:ライトウエイト・キャプリーンベースレイヤー(手首のゴムと首回りの補強生地の切除処置が必要。リサイクルポリエステルへの反応は除外できないかもしれません。対処中です。)
ズボン(ナイロン製)
ラフマ:モスキートパンツ
パタゴニア:ウイメンズRPSロックパンツ
アウター
パタゴニア:ナノパフ(手首の補強生地の切除処置が必要)
パタゴニア:フーデイニ(ウインドブレーカー)首周りに補強生地を使用していない。
靴下
千代治:靴下。ポリウレタンを含まない、貴重な山用靴下。
日本野鳥の会:靴下。ポリウレタンを含まない、貴重なアウトドア用靴下。やや薄いが山でも他と重ねれば使えます。
バラクラバ
ファイントラック:メリノスピンバラクラバ。鼻上のパッドで目への空気の逆流を防ぎ、かつ、息を下に逃がすブレスルーターがついた優れもの。冬山の必需品。
帽子
モンベル:メリノウールジャカードインナーキャップ、ワッチキャップ
ネックウオーマ
モンベル:メリノウールジャカードネックゲーター
手袋
モンベル:クリマバリア
ブラックダイヤモンド:ガイド(山羊皮とナイロンを使用しています。かなり臭いますが冬山用手袋は必須なので。検討中)
人工皮革、合成皮革は、ウレタン加工が施されているので、使用しない方がよいでしょう。
マスク(他の登山者の使用されている柔軟剤、香料、制汗剤等からの保護)
メデイコム:プロレーンマスク(ノーズパットがアルミです。ノーズパットに使用されているポリエステルやポリウレタンスポンジに反応する方でも使用可能です。耳ひもはポリエステルですので、耳ひものポリウレタンに反応する方でも使用可能です。)
ポリウレタン部分がまったくなくなれば、手洗い(マスク、手袋、換気扇Onの状態で行う)を含めて数回洗った後で使用しています。何回洗っても煙いような臭いがする場合や反応する場合は、反応する部分が残っている場合が多いので再検討します。場合によってはポリウレタン以外のメイン素材に反応するので着用を諦めています。ここに載せた物は、私が現時点で使用できそうなもであり、全ての方が使用できるというものではありません。
ポリウレタン等は、登山用品のかなりの衣服に使用されていますので、突然、それらが使えなくなることは、大層、辛いことです。ただ、化学物質への反応が軽度であれば、それを理由に登山を諦める必要は無いです。とはいえ、かなりの労力と少しの工夫が必要なため、拙い経験をお伝えしました。
そもそも、山に行くことは人工物から遠く離れることです(樹木が出すピネンやフィットンチットは別問題として)。それなのに、着ていく衣服やギアが人工物だらけで、それに反応して咳発作を起こすというのは矛盾です。昔の人の知恵である蓑をかぶって山に入るのが良いのかもしませんが、それは急にはできません。
補足・接触性皮膚炎について:
最後に、私が上記のポリウレタンに反応する咳反応や喘息を発症したのは数年前ですが、もともと、ある種の化繊に対して接触性皮膚炎を起こします。着用後30時間後あたりから、接触した部分のみが真っ赤に腫れ上がります。接触性皮膚炎を起こした服や素材は、二度と着てはいけません。モンベルのジオライン、ICIスポーツの速乾性靴下は私にとってそのような素材ですが、個人差がありますので、一般化はできません。
ここに記したポリウレタンについては、イソシアネートに反応する方もおられること(症例報告の論文も公表されている)から、一般的な事象としてノートにて情報提供いたします。
日焼け止めも要注意で、塗った上にマスクをしていると終日、吸い込むことになります。現在、使用できる日焼け止めは見つけていませんが、経験を積んだらまたの機会にお伝えします。
ギア編も経験を積んだらお伝えしたいと考えています。
何かの参考になりましたら幸いです。
衣服編その1
1.洗濯石けんについて:
洗濯洗剤の影響をなくすために、洗濯は、全て洗濯用石けん(液体石けんでよい)を使用します。何らかの化学物質に反応する人や、アレルギー(花粉症を含む)の有る方は、山用の衣服のみならず、全て衣服の洗濯に洗濯用石けんのみを使用し、家の中から香料の入った合成洗剤や柔軟剤を除去すると良いと考えられています。
また、石けんについても、ヤシを原料とする石けん成分に反応して咳がでる場合もあります。私も反応するので、現在、アボガドオイルを原料とする液体石けん(シャボン玉石けん、ベビースノール)を使用し、すすぎを多くしています。以前に使用できていたものが使用できなくなることがありますので、その時の自分の状態に合わせて選びます。(参考までに環境有用微生物:EMを使用して製造した石けん等は、酵母アレルギーや喘息を懸念する方は注意が必要です)。
2.反応する服を探る
室内干し法:洗濯後の濡れた山の服を室内(リビングなど)に干す。数時間、換気を一切しないでその部屋にいます。咳が出るなどの反応があるかどうかを見ます。
ジップロップ法:干した後の服をジップロックなどの密閉袋に個別に入れます。袋に反応しないことは先に確認しておきます。数日から数週間、そのまま放置します。その後、ジップロックの開封部に近づき袋の中の空気を吸います(要注意)。煙い臭いがしたり、咳などの反応があるかどうかを見ます。症状の強い方は、要注意ですが、自分にダメな部分がある服を見つけやすい方法。けっして、無理をしないで下さい。
3.反応する部分を探る
上記の2の方法で反応する服を見つけたら、次にその服のどのパーツに反応するかを探ります。
まずは、服の素材を見ます。ポリウレタンが素材に記載されていたら、それを疑います。自分がポリウレタンに反応する可能性が高い場合は、メイン素材にポリウレタンを含むものや、靴下のように切除処置ができないものは、着ないようにします(さようなら、しました)。
次に「表地:ポリエステル、リブ部:ポリウレタン」など部分的に使用が記載されているものについては、リブ部の切除処置(後述)を試みます。
さらに、「ポリエステル100%、飾り部分を除く」と記載があるものについては、やや面倒で、どこにポリウレタンが使用されているのかをつきとめます。ゴム部は、高い確立でウレタンです。また、首まわりの補強部分も反応します。反応する物質名がわからない場合でも、近づいて(近づける場合のみ)咳が出る部分は怪しいです。
また、製造メーカーに問い合わせて、個々の製品の素材について聞くと、丁寧に対応してくださいます(ただし、新素材や衣服の飾り部分の素材は複雑で、詳細な情報が得られていない場合もあるので、自分の反応を信じる)。Webサイトに「メリノウール100%」とあれば、主な生地は大丈夫ですが、弾力性ゴム部はメリノウール以外の素材が使用されています(ゴム部はウレタンである可能性が大きい)。また、「メリノウール」とだけ記載があり、100%の記載が無ければ他の素材が含まれています。別名の場合もあり、スパンテックはウレタンです。新素材は、特許名で記載があり複雑ですので、素材名で検索をかけます。
4.反応する部分の切除処置(マスク着用のこと)
Tシャツのリブ部分であれば、リブごと切り取ることも試みました。ポリエステル地のTシャツであれば、切り取った後でもそのまま着られる場合が多いと思います(写真1 参照)。
ベースレイヤーの首周りの補強生地は、裁縫はさみの先端を使用して、補強生地のみをはぎとります。その際、補強生地をひっぱって伸縮性があればウレタンの可能性が高いと思います(写真2 、写真3 参照)。
手首のゴムを切り取り際には、生地ごと切ってしまいます(写真4 参照)。
チャックなどの切除できない部分については、諦めるしかありません。その服は着れないかもしれませんし、次回は、チャックの無い服を選びましょう。
ウインドブレーカーの首周りに補強があり(モンベル)、フードごと切りとったことがあります。マフラーをしていても首が寒くて、結局は、廃棄しました。
切除処置の後、手洗いをして反応しなくなれば着ることができます。(ウレタンなどの反応する部分がある服や、切除したての服は、洗濯機で洗わずに手洗いすることをお勧めします。マスク、手袋をし、換気扇を回せる時間帯に実施します。)
5.ポリウレタン部分が少なく切除処置を施すことで着れそうな服
個人差がありますが、現時点で、私の着れている、あるいは着ようと試みている服のリストです。
ベースレイヤーとアンダーウエア
モンベル:スーパーメリノウールM.W.タイツ、スペリオルシルク、メリノウールL.W.ソフトブラ (ゴム部は切除できないので諦める。手洗いする)
パタゴニア:ライトウエイト・キャプリーンベースレイヤー(手首のゴムと首回りの補強生地の切除処置が必要。リサイクルポリエステルへの反応は除外できないかもしれません。対処中です。)
ズボン(ナイロン製)
ラフマ:モスキートパンツ
パタゴニア:ウイメンズRPSロックパンツ
アウター
パタゴニア:ナノパフ(手首の補強生地の切除処置が必要)
パタゴニア:フーデイニ(ウインドブレーカー)首周りに補強生地を使用していない。
靴下
千代治:靴下。ポリウレタンを含まない、貴重な山用靴下。
日本野鳥の会:靴下。ポリウレタンを含まない、貴重なアウトドア用靴下。やや薄いが山でも他と重ねれば使えます。
バラクラバ
ファイントラック:メリノスピンバラクラバ。鼻上のパッドで目への空気の逆流を防ぎ、かつ、息を下に逃がすブレスルーターがついた優れもの。冬山の必需品。
帽子
モンベル:メリノウールジャカードインナーキャップ、ワッチキャップ
ネックウオーマ
モンベル:メリノウールジャカードネックゲーター
手袋
モンベル:クリマバリア
ブラックダイヤモンド:ガイド(山羊皮とナイロンを使用しています。かなり臭いますが冬山用手袋は必須なので。検討中)
人工皮革、合成皮革は、ウレタン加工が施されているので、使用しない方がよいでしょう。
マスク(他の登山者の使用されている柔軟剤、香料、制汗剤等からの保護)
メデイコム:プロレーンマスク(ノーズパットがアルミです。ノーズパットに使用されているポリエステルやポリウレタンスポンジに反応する方でも使用可能です。耳ひもはポリエステルですので、耳ひものポリウレタンに反応する方でも使用可能です。)
ポリウレタン部分がまったくなくなれば、手洗い(マスク、手袋、換気扇Onの状態で行う)を含めて数回洗った後で使用しています。何回洗っても煙いような臭いがする場合や反応する場合は、反応する部分が残っている場合が多いので再検討します。場合によってはポリウレタン以外のメイン素材に反応するので着用を諦めています。ここに載せた物は、私が現時点で使用できそうなもであり、全ての方が使用できるというものではありません。
ポリウレタン等は、登山用品のかなりの衣服に使用されていますので、突然、それらが使えなくなることは、大層、辛いことです。ただ、化学物質への反応が軽度であれば、それを理由に登山を諦める必要は無いです。とはいえ、かなりの労力と少しの工夫が必要なため、拙い経験をお伝えしました。
そもそも、山に行くことは人工物から遠く離れることです(樹木が出すピネンやフィットンチットは別問題として)。それなのに、着ていく衣服やギアが人工物だらけで、それに反応して咳発作を起こすというのは矛盾です。昔の人の知恵である蓑をかぶって山に入るのが良いのかもしませんが、それは急にはできません。
補足・接触性皮膚炎について:
最後に、私が上記のポリウレタンに反応する咳反応や喘息を発症したのは数年前ですが、もともと、ある種の化繊に対して接触性皮膚炎を起こします。着用後30時間後あたりから、接触した部分のみが真っ赤に腫れ上がります。接触性皮膚炎を起こした服や素材は、二度と着てはいけません。モンベルのジオライン、ICIスポーツの速乾性靴下は私にとってそのような素材ですが、個人差がありますので、一般化はできません。
ここに記したポリウレタンについては、イソシアネートに反応する方もおられること(症例報告の論文も公表されている)から、一般的な事象としてノートにて情報提供いたします。
日焼け止めも要注意で、塗った上にマスクをしていると終日、吸い込むことになります。現在、使用できる日焼け止めは見つけていませんが、経験を積んだらまたの機会にお伝えします。
ギア編も経験を積んだらお伝えしたいと考えています。
何かの参考になりましたら幸いです。
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※この記事はヤマレコの「ヤマノート」機能を利用して作られています。
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