___【 酷暑の夏山を空調服で乗り切ろう!? 】___
空調服とは、高温・酷暑の環境における作業での熱中症予防および作業効率の改善を意図した機能を備えた作業服のことです。服の脇腹やや後方に付いた小型ファンを携帯バッテリーで作動させます。服の中に外気を取り入れ体の表面に風を流すことにより、汗を気化させ涼しくさせてくれます(気化蒸発作用にともなう気化熱)。近年は毎年のように酷暑の夏が続いています。そこで今回、私は夏の登山に空調服を利用出来ないかを検討することにしました。併せて、熱中症予防にも使えそうなアイテムの幾つかを紹介します。
___【 空調服の紹介 】___
空調服(ベストタイプ)
ファン(2個)、バッテリー、充電器のセットで1万9千円ほどでした。購入時の注意点としては、自分のサイズよりも大きめの物を選ぶことです。少しぶかぶかでないと、送風した空気の回りが良くなりません(冷却効果が低下する)。バッテリーは内ポケットに収納する仕様になっています。また、下記に示した長袖タイプより腕回りが楽に動かせるのが特徴です。紫外線や蚊に見舞われることが心配なら長袖タイプがオススメです。
空調服(長袖タイプ)
換えシャツ(単品=ファン・バッテリーなし)として購入しました(価格:約5,000円)。ベストタイプの空調服とは、別メーカーでしたが、ベストタイプにセットされていたファンを装着出来ました。外ポケットの内側に電源コードを通す穴があり、バッテリーを外ポケットに入れておけるのが便利です(風力の調整がしやすい)。
専用バッテリー
このバッテリーの出力は、7.2-6.0-5.0-3.3Vの4段階になっています。予備のバッテリーを単品で買いましたが、7,800円でした。セットになっているファン(2個)は直径104mmの物でした。別に直径83mmの製品もあるようです。ちなみに、ファン(2個入)は、1,500円ほどで販売されています。
(注):バッテリーとファンは組合せの正しい物を選ぶ必要があります。
ファン保護ネット
ファン自体を保護する〜というよりも、空調服を着用している人間を蚊や蚋(ブヨ)から守るための物です。ファンにネットがかけられていないと、ブヨ(ブユ、ブト)がうじゃうじゃしている山間部で、空調服のファンを回すと、服の中にブヨを取り込んでしまいます。このファン保護ネットは、4枚入りで1,000円でした。
___【 スペーサーとは 】___
インナースペーサー
さて、空調服を着用し使用すると、服の中に送風されることによりエアドームよろしく膨らんだ状態となります。この状態で最大の冷却効果が得られます。ところが、背もたれのある椅子などによしかかるとその瞬間、背中側の膨らんだ空間が潰されてしまい、空気の流が停まってしまいます。同じ事が、ザックなどを背負った時に起こります。実感的には、背中に荷物を背負うと空調服の効果は半減以下になります。そこでこちらの『インナースペーサー』が登場してきます。この製品は、立体的なハニカム構造の素材が背負子型になった物です。荷物で背中側を押されても、ハニカム構造の中を空気が流れるので、冷却効果の毀損を減らしてくれます。こちらの製品は3,800円で購入しました。
腰スペーサー
上記の『インナースペサー』と同じハニカム構造をしていて、縦に長くなった物です。下3分の2位までズボンの中に入れて使います。空調服のファンが作動していると、ハニカム構造の隙間からズボンの中に送風されます。実感的には、ファンが止まっていてもパンツの中が汗ばんでいる時は、このスペーサが間にあるだけでも涼感が得られます。この商品は1,200円でした。
※:このスペーサーを私の空調服に固定しやすくするために改造して、サイドリリースバックルのコードを延長してあります。
____【 空調服・改造編 】___
『汗とおる君』です。
ザックを背負った時の蒸れを防ぐアイテムとして「エアメッシュパネル」なるものが流通しています。しかし、こちらの『汗とおる君』は[メッシュ]でもなく[ハニカム]でもありません。1.5cmの隙間(スペース)を作る構造で、薄っぺらな背当て2枚が重なった『風のとおるスペーサー』です。「エアメッシュパネル」の場合は、ある程度の圧力(ザックの重み)が加わると立体構造のメッシュが押され空気の通る隙間が潰れてしまいます。この『汗とおる君』なら、重いザックでも空気が『とおる』みたいです。『汗とおる君』は2,300円で購入しました。
[汗とおる君]をザックにセット
〜してみました。コードストッパー付きの紐が四隅に付いています。ザックはミリタリータイプの物です(karrimor SF Sabre 30)。「汗とおる君」の上の紐は、ショルダーハーネス上部でモールウェブを通して固定します。下の紐は、ヒップベルトの下側からショルダーストラップの付け根に固定しました。勿論これは一例です。取付の方法は、ザック毎に工夫してください。
[汗とおる君]を空調服に内装
〜することにしました。空調服の改造になります。ワンタッチタイを7cmの長さにして背中の4ヶ所に縫い付けます。セロハンテープもしくは接着剤で仮止めしてから20号の糸で縫い付けました(注:接着剤で仮止めすると硬くなって針が通りにくくなります)。ワンタッチタイを縫い付けた後は、目止め(糸のほつれ止め)に接着剤を塗りました。
[汗とおる君]と[空調服]
[汗とおる君]の四隅の紐を取外し、縫い付けたワンタッチタイで固定しました。やや雑な出来映えになりましたが、特に違和感なく着こなせました。ザックを背負ってみても「風のとおり」は良好です。前出の[インナースペーサー]を使った場合よりも、背中の風通しは良いと判断しました。
※:ザックを背負った時は、チェストハーネスは緩めに固定します。きっくすると、胸元に吹き出す空気が遮断されてしまいます。
山仕様の?『改造空調ベスト』
〜の完成です。『腰スペーサー』は、電源コードを止めるゴムフックにサイドリリースバックルのコードを通して固定しました。
※:ベストの内側が見えるように裾を洗濯バサミで押さえてあります。
___【 ハイパークール編 】___
最強の?「クールベスト」
『HyperKewl 』という製品です。タンクトップ型の冷却服になります。 米国陸軍で採用されているといいます。価格は13,000円でした。タンクトップ(ほとんどベスト?)の中に特殊ポリマーが縫い込められています。水を吸い込ませると長時間にわたって、気化蒸発作用により体(特に腹と背中)を冷却してくれます。「空調服」の下にこの「クールベスト」を着用すると、冷却効果絶大です。涼しい部屋で併用すると体が凍えてしまう程にもなります。
クールビット『冷タスキ』
クールビット(coolbit)はメーカー名です。帽子タイプ、ネッククーラータイプなど様々な製品がラインナップされています。この『冷タスキ』は以外に高価で5,500円しました(専用保冷剤付き)。本体自身に保水&気化蒸発作用がありますが、冷却効果を高めるため、専用の保冷剤を入れるアイスポケットが3つ付いています。背中(大きいサイズ)と、左右の腋下に位置する部分2ヶ所(小)にあります。実は、上記「クールベスト」の機能を補完するアイテムとして私は使っています。「クールベスト」は体を良く冷やしてくれるのですが、頚の後ろ側と両脇の下の辺りの冷却が弱いです。そこを『冷タスキ』の保冷剤がカバーしてくれます。特に腋下部分を気持ちく冷やしてくれます。
coolbit 専用保冷剤
専用保冷剤は、単品で購入できます。大小2種類ありますが、いずれも1個100円程度です。乾燥シート状タイプになっていて、水に浸け吸水させてから冷凍させ使用します。保冷剤の内容物は[ポリアクリル酸ナトリウム塩架橋品]〜と表示されています。この物質は、高吸水性高分子の一種で、保冷剤の他、紙おむつなどにも利用されています。この専用保冷剤を吸水凍結させ、coolbit『冷タスキ』などのポケットに入れて使用することにより冷却効果を高めてくれます。しかも他の保冷剤にはないアドバンテージがあります。この保冷剤の場合、氷が溶けてぬるくなっても効果を発揮してくれます。保水されているポリマーから気化熱を放出(気化蒸発作用)してくれるからです。実際、気化が進むにしたがい保冷剤は縮んでいきますし、乾燥させると元の顆粒状の素材に戻ります。
___【 クールグッズ編 】___
携帯ミストスプレー(ポンプ式)
商品名と購入価格は忘れていまいました。ボトルの中に水を入れ(注:ボトル内の空気を4分の1程度残しておきます)、お尻の部分のピストンを操作してボトル内の空気圧を高めておきます。ノズル直下のボタンを押している時だけ、ミストが噴出されます。そよ風があたっている時に、顔や首筋にスプレーすると涼風感が得られます。また空調服を使用している時、襟もとから抜け出てくる送風にあわせてミストスプレーするのも効果的です。
3つのアイテム(左-中-右の順に説明)
【 左 】 『Mini Rechargeble Fan』
首下げタイプの携帯扇風機です。取り外し可能の18650タイプのリチウムイオンバッテリー(3.7V)が附属しています。USBから充電可能ですが、予備のバッテリーがあれば、外出時も長時間使用出来ます。首にぶら下げて使うのですが、体を動かしていると揺れてしまい、うまく顔や首筋に風が当たらなくなってしまうことが欠点です。
【 中 】 『ズボンクーラー』
これは珍品でした。電源は適当なモバイルバッテリーを自分で選んで使用します。ファンから伸びているのは、潰れにくい構造になった送風チューブです。パンツの中にチューブをさし込んだ状態で使用します。スカートの履けない男性にとっては魔法のようなアイテムです? 別名は『たまくーらー』と言うらしい?
【 右 】 USBウェストファン(充電池内臓)
サイドのフックをズボンのベルトに引っかけて使用します。上を向いているファンが位置しているところで、シャツを外に出しておくと、あら不思議、自分が着ているシャツが即席の空調服に早変わりです。風速は3段階になっていて結構な強風が出せますが、如何せんファンのサイズが大きくないので、本格的な空調服とまでにはならないようです。
___【 おしまいに 】___
私は、この夏から(2019年6月から)ウォーキングするときに「空調服」を利用しています。送風され膨れ上がったように見える服がかっこ悪いとか、ファンから出る音が耳障りになる〜などの欠点がありますが、暑い日も気持ちよく外を歩けることが気に入っていました。ところが、ザックを背負った途端、涼風効果がなくなってしまうような体験をして、今回のアイデアを考えました。やった事は本来、ザックに取り付けるべきパネル(スペーサー)を「空調服」の内側に取り付け、独自の改造服としたことです。まだ低山でしか試していませんが、今回の改造版空調服は夏山でも役立ちました。また、バッテリー1つあればまる1日利用出来ます(※)。ただし、泊まりがけの登山や高山のピークハントでは、空調服は邪魔になるかもしれません。登山での空調服の使用には功罪あるやもしれませんので、自己責任でお願いします。以上でお終いにします。
※:バッテリーの仕様書には、2/4(5.0V)の出力で18時間の持続〜と記載されています。私はまだ、使い切った事はありませんが、少なくとも10時間以上もつものと考えております。
___【 追記 】___
こんにちは。
私も先日から空調服を試しています。朝日岳と薬師岳で使ってみました。ザックを背負うと空気の流れが半減してしまいますが、スペーサーなるものを使う手があったのですね。さっそく試してみたいと思います。とにかく汗かきなので夏は大変です。
akenakanoさんこんにちは
是非、アイテムを幾つか併用してみてください。[ クールベスト−クールビット−インナースペーサー−空調服 ]〜の順に重ね着すると、最強の「クール・ビズ」ならぬ『クール・サンギョウ(山行)』になるかもしれません?
では、なにか気がつきましたら教えてくださいませ。
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