(はじめに)
この「日本の山々の地質」というヤマレコ(ヤマノート)内の長期連載では、最初に四国地方の山々の地質について説明したのち、中部地方(日本アルプスなど)、関東地方、東北地方、北海道地方と、東日本の山々の地質について順次説明してきました。
残るのは西日本の、近畿地方、中国地方、九州地方になります。
そこでこれ以降、西日本の山々の地質について、順次説明していきたいと思います。
まずこの第10部では、近畿地方の山々の地質について説明します。
なお、一般的に言う「近畿地方」とは、大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、滋賀県、和歌山県になりますが、山々の地形的、地質的な繋がりなどを考慮し、ここでは、上記の府県の山々に加え、東海地方(三重県、岐阜県)との境目にある鈴鹿山地、伊吹山周辺も対象とします。
逆に、兵庫県と中国地方との境目にある氷ノ山(ひょうのせん)などは、地形的、地質学的なつながりを考慮し、次の第11部「中国地方の山々」で説明しますので、この部では割愛します。
残るのは西日本の、近畿地方、中国地方、九州地方になります。
そこでこれ以降、西日本の山々の地質について、順次説明していきたいと思います。
まずこの第10部では、近畿地方の山々の地質について説明します。
なお、一般的に言う「近畿地方」とは、大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、滋賀県、和歌山県になりますが、山々の地形的、地質的な繋がりなどを考慮し、ここでは、上記の府県の山々に加え、東海地方(三重県、岐阜県)との境目にある鈴鹿山地、伊吹山周辺も対象とします。
逆に、兵庫県と中国地方との境目にある氷ノ山(ひょうのせん)などは、地形的、地質学的なつながりを考慮し、次の第11部「中国地方の山々」で説明しますので、この部では割愛します。
1)近畿地方の地質学的な特徴
近畿地方は、日本列島の地質学的な構造区分では、「西南日本」に属します。また「西南日本」は、地質境界としての「中央構造線」を境目として、太平洋側を「西南日本外帯」、日本海側を「西南日本内帯」と呼びます(文献1−a)。
近畿地方においては、中央構造線はおおよそ、和歌山市(和歌山県)―鳥羽市(三重県)を結ぶ、東西のラインとして延びています。
よって、京阪神地区を含む近畿中央部と近畿北部は、「西南日本内帯」に属し、紀伊山地を含む近畿南部は「西南日本外帯」に属します。
以下の節で、「内帯」、「外帯」それぞれの地質学的特徴を述べます。
近畿地方においては、中央構造線はおおよそ、和歌山市(和歌山県)―鳥羽市(三重県)を結ぶ、東西のラインとして延びています。
よって、京阪神地区を含む近畿中央部と近畿北部は、「西南日本内帯」に属し、紀伊山地を含む近畿南部は「西南日本外帯」に属します。
以下の節で、「内帯」、「外帯」それぞれの地質学的特徴を述べます。
1−1)近畿地方 「西南日本外帯」地域の地質概要
近畿地方における「西南日本外帯」は、上記のとおり、和歌山市 ― 鳥羽市を結ぶライン(「中央構造線」)の太平洋側になります。地理的には紀伊半島の大部分が「外帯」であり、県でいうと、和歌山県の大部分、奈良県の南半分、三重県の南半分が、この「西南日本外帯」に属します。
以下、(文献1−a)〜(文献1−e)、及び産総研「シームレス地質図v2」の記載内容をベースに説明します。(上に添付している「図1」もご参照ください)
第1部「四国地方」でも述べましたが、「西南日本外帯」は四国、近畿地方においては、東西に延びる数個の帯状の「地帯」(地体)で形成されています。
まず最も北側の地質帯は、「三波川帯」(さんばがわたい)と呼ばれ、結晶片岩を主とした高圧型変成岩で構成されています。
「三波川帯」の南側は、「秩父帯」(ちちぶたい)と呼ばれます。「秩父帯」はジュラ紀の付加体で構成されています。
「秩父帯」のさらに南側は「四万十帯」(しまんとたい)と呼ばれ、大部分は、白亜紀〜古第三紀の付加体で構成されています。
なお、四国地方とは若干異なり、近畿地方における外帯を構成する各地帯の分布状況は、部分的に三波川帯、秩父帯が欠損している地域があり、そこでは、四万十帯が中央構造線に直接、接しています。また、四万十帯の中に秩父帯の地質体が、浮島のように分布している(そのような地質体を「ナップ」と呼びます)場所もあります。このような帯状配列の乱れの理由は明確にはなっていません(文献1−b)(文献1−c)。
それ以外の近畿地方の「西南日本外帯」における地質的特徴としては、新第三紀 中新世の火成岩が分布しているのが目を引きます。
紀伊山地の中央部や南東部の熊野地域(三重県南部)には、火成岩(深成岩)の一種である花崗岩類が分布しています(文献1−e)。このうち熊野地区の火成岩はその名も「熊野酸性岩類」(くまのさんせいがんるい)注1)という固有名詞が付いています。他に大峰山脈の一部にも、花崗岩類が分布しています。
注1)「酸性岩」という岩石学の用語は、化学でいう酸性/塩基性とは定義が異なります。
酸性岩は、岩石中に占めるシリカ(SiO2)が多いもの、逆に「塩基性岩」は、岩石中に占めるシリカ(SiO2)が少ないものを意味します。
化学分野での定義と違うことで勘違いされやすいことから、近年では「酸性岩」のことを「珪長質岩(けいちょうしつがん)」、「塩基性岩」のことを「苦鉄質岩(くてつしつがん)」と呼ぶことが多くなっています。
なお、「熊野酸性岩類」は、固有名詞化しているので、この章ではそのまま使用しました。
以下、(文献1−a)〜(文献1−e)、及び産総研「シームレス地質図v2」の記載内容をベースに説明します。(上に添付している「図1」もご参照ください)
第1部「四国地方」でも述べましたが、「西南日本外帯」は四国、近畿地方においては、東西に延びる数個の帯状の「地帯」(地体)で形成されています。
まず最も北側の地質帯は、「三波川帯」(さんばがわたい)と呼ばれ、結晶片岩を主とした高圧型変成岩で構成されています。
「三波川帯」の南側は、「秩父帯」(ちちぶたい)と呼ばれます。「秩父帯」はジュラ紀の付加体で構成されています。
「秩父帯」のさらに南側は「四万十帯」(しまんとたい)と呼ばれ、大部分は、白亜紀〜古第三紀の付加体で構成されています。
なお、四国地方とは若干異なり、近畿地方における外帯を構成する各地帯の分布状況は、部分的に三波川帯、秩父帯が欠損している地域があり、そこでは、四万十帯が中央構造線に直接、接しています。また、四万十帯の中に秩父帯の地質体が、浮島のように分布している(そのような地質体を「ナップ」と呼びます)場所もあります。このような帯状配列の乱れの理由は明確にはなっていません(文献1−b)(文献1−c)。
それ以外の近畿地方の「西南日本外帯」における地質的特徴としては、新第三紀 中新世の火成岩が分布しているのが目を引きます。
紀伊山地の中央部や南東部の熊野地域(三重県南部)には、火成岩(深成岩)の一種である花崗岩類が分布しています(文献1−e)。このうち熊野地区の火成岩はその名も「熊野酸性岩類」(くまのさんせいがんるい)注1)という固有名詞が付いています。他に大峰山脈の一部にも、花崗岩類が分布しています。
注1)「酸性岩」という岩石学の用語は、化学でいう酸性/塩基性とは定義が異なります。
酸性岩は、岩石中に占めるシリカ(SiO2)が多いもの、逆に「塩基性岩」は、岩石中に占めるシリカ(SiO2)が少ないものを意味します。
化学分野での定義と違うことで勘違いされやすいことから、近年では「酸性岩」のことを「珪長質岩(けいちょうしつがん)」、「塩基性岩」のことを「苦鉄質岩(くてつしつがん)」と呼ぶことが多くなっています。
なお、「熊野酸性岩類」は、固有名詞化しているので、この章ではそのまま使用しました。
1−2)近畿地方 「西南日本内帯」の地質概要
ほぼ和歌山市―鳥羽市を結ぶ中央構造線のラインより北側は、「西南日本内帯」に属します。
この節も、(文献1−a)〜(文献1―e)、及び産総研「シームレス地質図v2」の記載内容をベースに説明します。(上に添付している「図2」もご参照ください。)
近畿地方における西南日本内帯の地質ですが、まず中央構造線より北側の、幅 40〜50km程度の範囲は「領家帯」(りょうけたい)に属し、高温型変成岩である領家変成岩類と、その変成作用に関連し、当時の地下に形成されていたマグマ溜り由来の、白亜紀〜古第三紀の花崗岩類が広く分布しています(文献1−b)、(文献1−d)。
神戸市―京都府南部―鈴鹿山地の鈴鹿峠―四日市市を結ぶラインのあたりに、また地質境界があり、その北側は、ジュラ紀付加体である「丹波・美濃帯」(たんば・みのたい)の地質が広く分布しています。この「丹波・美濃帯」のなかには、石灰岩体が点在しており、例えば伊吹山や鈴鹿山地の北部に石灰岩の地域や石灰岩でできている山々が分布しています(文献1−c)。
「丹波・美濃帯」の構造的上位には、新第三紀 中新世を中心として活動した火山岩類が、近畿地方中央部(奈良県中北部〜大阪府)に点在しています(文献1−e)。
また、中国地方に類似して、「丹波・美濃帯」の構造的下位にあたる、白亜紀〜古第三紀の花崗岩(深成岩の一種)が、鈴鹿山地、滋賀県南部、比良山地、六甲山地などに分布しています(文献1−d)。
なお、兵庫県内や京都府の北部は、中国地方との地質的な類似性が強く、地質構造が非常に複雑になっています。
具体的には、京都府北部の舞鶴市付近から始まり、南西方向へと兵庫県中部を通り、岡山県南部へと延びている、「舞鶴帯」(主にペルム紀、トリアス紀の非付加体型の堆積岩層からなる、複雑な構成を持つ地帯)や、「超丹波帯」(ちょうたんばたい;ペルム紀付加体)の地質体が基盤地質をなしています。
それらの古い地質体を覆うように、白亜紀の火山岩類(流紋岩質の、大規模火砕流噴出物)などが分布しており、複雑な構成となっています(文献1−c)、(文献1−d)、産総研「シームレス地質図v2」。
この節も、(文献1−a)〜(文献1―e)、及び産総研「シームレス地質図v2」の記載内容をベースに説明します。(上に添付している「図2」もご参照ください。)
近畿地方における西南日本内帯の地質ですが、まず中央構造線より北側の、幅 40〜50km程度の範囲は「領家帯」(りょうけたい)に属し、高温型変成岩である領家変成岩類と、その変成作用に関連し、当時の地下に形成されていたマグマ溜り由来の、白亜紀〜古第三紀の花崗岩類が広く分布しています(文献1−b)、(文献1−d)。
神戸市―京都府南部―鈴鹿山地の鈴鹿峠―四日市市を結ぶラインのあたりに、また地質境界があり、その北側は、ジュラ紀付加体である「丹波・美濃帯」(たんば・みのたい)の地質が広く分布しています。この「丹波・美濃帯」のなかには、石灰岩体が点在しており、例えば伊吹山や鈴鹿山地の北部に石灰岩の地域や石灰岩でできている山々が分布しています(文献1−c)。
「丹波・美濃帯」の構造的上位には、新第三紀 中新世を中心として活動した火山岩類が、近畿地方中央部(奈良県中北部〜大阪府)に点在しています(文献1−e)。
また、中国地方に類似して、「丹波・美濃帯」の構造的下位にあたる、白亜紀〜古第三紀の花崗岩(深成岩の一種)が、鈴鹿山地、滋賀県南部、比良山地、六甲山地などに分布しています(文献1−d)。
なお、兵庫県内や京都府の北部は、中国地方との地質的な類似性が強く、地質構造が非常に複雑になっています。
具体的には、京都府北部の舞鶴市付近から始まり、南西方向へと兵庫県中部を通り、岡山県南部へと延びている、「舞鶴帯」(主にペルム紀、トリアス紀の非付加体型の堆積岩層からなる、複雑な構成を持つ地帯)や、「超丹波帯」(ちょうたんばたい;ペルム紀付加体)の地質体が基盤地質をなしています。
それらの古い地質体を覆うように、白亜紀の火山岩類(流紋岩質の、大規模火砕流噴出物)などが分布しており、複雑な構成となっています(文献1−c)、(文献1−d)、産総研「シームレス地質図v2」。
2)近畿地方の地形的な特徴
近畿地方は、東に隣接する東海、北陸地方とはかなり地形的な特徴は異なっている一方で、西側に隣接する、中国地方、四国地方とは、地形的な特徴が、比較的類似しています(文献2−a)。
また、本来は地質境界線である「中央構造線」は、近畿地方においては地形的な境界線としての役割りも持っており、中央構造線より南側では険しい山地地形となっている一方、中央構造線より北側では低い山並みと盆地がある、箱庭状の地域となっています。
(上の、図3,図4もご参照ください)
まず中央構造線より南側の「西南日本外帯」地域は、ほとんどが紀伊山地に含まれますが、この紀伊山地は、中央部の標高が1900mに達するとともに、谷も深く刻まれた比較的険しい山地であり、四国の四国山地と地形的特徴が類似しています(文献2−a)、(文献2―b)。
紀伊山地は全体として、中央部が最も高いドーム状の隆起(「曲隆運動)が起こっていると考えられています(文献2−a)、(文献2−b)。
紀伊山地の中には、いくつかの山脈、山地が認められます。南北走向に走る山列としては、大峰山脈(大峰山、八経ヶ岳、弥山、釈迦ヶ岳などを含む、いわゆる「大峯奥駆道」のある山脈)が代表的です。またその東側には、大台ケ原(山)から高見山まで続く、台高山脈があります。
一方、中央構造線より北側の、「西南日本内帯」地域は、地形的には大きく2区分に分けられます。
まず、兵庫県の北部、西部、および京都府の北部、中部は、中国地方の地形に類似しており、1000m弱の低い山並みが緩やかに続く高原状の地形を呈し、一般的には「丹波高原」(なお、文献2−c)では「丹波高地」と表記)と呼ばれています(文献2−a)、(文献2−c)。
一方、「西南日本内帯」に属する地域のうち、淡路島南西端付近、志摩半島付近、敦賀湾東端付近を結ぶ三角形の地域は、隣接する中国地方、東海・北陸地方とも異なる独特の地形構造をもっており、地形学的には、「近畿三角帯(きんきさんかくたい)」、あるいは、「近畿三角地帯」、「近畿トライアングル(地域)」とも呼ばれています(文献2−d)、(文献3)、(文献4)。
具体的には、標高が600―1200m程度、長さが20−50km程度の小型の山脈が、東西方向あるいは南北方向に複数並んでおり、それらの山脈の間には多数の盆地状地形が発達しています。
それら小型の山脈のうち、南北走向のものとしては、比良山地、生駒山地、鈴鹿山地が挙げられます。また東西走向のものとしては、和泉山地、六甲山地が挙げられます。
それらの山脈の間にある盆地状地形としては、京都盆地、奈良盆地、大阪平野・大阪湾(全体として盆地状地形で、その一部に海水が流入して大阪湾になっている)、近江盆地(盆地状地形の中に淡水が溜まって、琵琶湖となっている)が挙げられます。
この「近畿三角帯」は、活断層が密集している地域としても知られています。上記の小型の山脈の多くが、断層活動によって形成された山地です。
また1995年の「阪神―淡路大震災」(兵庫県南部地震)を引き起こした活断層も、この「近畿三角帯」の中にある活断層でした(文献2−d)、(文献4)。
この「近畿三角帯」での地殻変動は、代表地である六甲山地の名前を取って「六甲変動」とも呼ばれますが、現在進行形の地殻変動だと言えます(文献2−d)。
この、独特の地形的特徴と、多くの活断層が分布するという特徴は、この地域全体が、東西の強い圧縮応力場にあるため、と推定されています。(文献2―d)。
また、この強い東西圧縮応力場になって、独特の地形構造が発達し始めたのは、約40−50万年前からと考えられています。
ただし、この、「近畿三角帯」や、その東側にあたる中部日本(中部地方)に働いている東西圧縮応力場を作る元となっているものが、何に起因しているかについては、諸説あります。
例えば、
a)東北日本の太平洋側(日本海溝)から沈み込んでいる太平洋プレートの押す圧力という説
(文献2−a)、(文献5−a)、(文献6−a)
b)西南日本を含むアムールプレートが東へ進んでいる影響という説、
(文献5−a)、(文献6−b)
c)西南日本の太平洋側で、フィリピン海プレートが北西方向へと斜めに沈み込んでいる影響
という説(文献4)
などがあります。
また、本来は地質境界線である「中央構造線」は、近畿地方においては地形的な境界線としての役割りも持っており、中央構造線より南側では険しい山地地形となっている一方、中央構造線より北側では低い山並みと盆地がある、箱庭状の地域となっています。
(上の、図3,図4もご参照ください)
まず中央構造線より南側の「西南日本外帯」地域は、ほとんどが紀伊山地に含まれますが、この紀伊山地は、中央部の標高が1900mに達するとともに、谷も深く刻まれた比較的険しい山地であり、四国の四国山地と地形的特徴が類似しています(文献2−a)、(文献2―b)。
紀伊山地は全体として、中央部が最も高いドーム状の隆起(「曲隆運動)が起こっていると考えられています(文献2−a)、(文献2−b)。
紀伊山地の中には、いくつかの山脈、山地が認められます。南北走向に走る山列としては、大峰山脈(大峰山、八経ヶ岳、弥山、釈迦ヶ岳などを含む、いわゆる「大峯奥駆道」のある山脈)が代表的です。またその東側には、大台ケ原(山)から高見山まで続く、台高山脈があります。
一方、中央構造線より北側の、「西南日本内帯」地域は、地形的には大きく2区分に分けられます。
まず、兵庫県の北部、西部、および京都府の北部、中部は、中国地方の地形に類似しており、1000m弱の低い山並みが緩やかに続く高原状の地形を呈し、一般的には「丹波高原」(なお、文献2−c)では「丹波高地」と表記)と呼ばれています(文献2−a)、(文献2−c)。
一方、「西南日本内帯」に属する地域のうち、淡路島南西端付近、志摩半島付近、敦賀湾東端付近を結ぶ三角形の地域は、隣接する中国地方、東海・北陸地方とも異なる独特の地形構造をもっており、地形学的には、「近畿三角帯(きんきさんかくたい)」、あるいは、「近畿三角地帯」、「近畿トライアングル(地域)」とも呼ばれています(文献2−d)、(文献3)、(文献4)。
具体的には、標高が600―1200m程度、長さが20−50km程度の小型の山脈が、東西方向あるいは南北方向に複数並んでおり、それらの山脈の間には多数の盆地状地形が発達しています。
それら小型の山脈のうち、南北走向のものとしては、比良山地、生駒山地、鈴鹿山地が挙げられます。また東西走向のものとしては、和泉山地、六甲山地が挙げられます。
それらの山脈の間にある盆地状地形としては、京都盆地、奈良盆地、大阪平野・大阪湾(全体として盆地状地形で、その一部に海水が流入して大阪湾になっている)、近江盆地(盆地状地形の中に淡水が溜まって、琵琶湖となっている)が挙げられます。
この「近畿三角帯」は、活断層が密集している地域としても知られています。上記の小型の山脈の多くが、断層活動によって形成された山地です。
また1995年の「阪神―淡路大震災」(兵庫県南部地震)を引き起こした活断層も、この「近畿三角帯」の中にある活断層でした(文献2−d)、(文献4)。
この「近畿三角帯」での地殻変動は、代表地である六甲山地の名前を取って「六甲変動」とも呼ばれますが、現在進行形の地殻変動だと言えます(文献2−d)。
この、独特の地形的特徴と、多くの活断層が分布するという特徴は、この地域全体が、東西の強い圧縮応力場にあるため、と推定されています。(文献2―d)。
また、この強い東西圧縮応力場になって、独特の地形構造が発達し始めたのは、約40−50万年前からと考えられています。
ただし、この、「近畿三角帯」や、その東側にあたる中部日本(中部地方)に働いている東西圧縮応力場を作る元となっているものが、何に起因しているかについては、諸説あります。
例えば、
a)東北日本の太平洋側(日本海溝)から沈み込んでいる太平洋プレートの押す圧力という説
(文献2−a)、(文献5−a)、(文献6−a)
b)西南日本を含むアムールプレートが東へ進んでいる影響という説、
(文献5−a)、(文献6−b)
c)西南日本の太平洋側で、フィリピン海プレートが北西方向へと斜めに沈み込んでいる影響
という説(文献4)
などがあります。
(参考文献)
文献1)日本地質学会 編
「日本地方地質誌 第5巻 近畿地方」 朝倉書店 刊 (2009)
文献1−a) 文献1)のうち、
1−1章 「(近畿地方の)古生代―古第三紀の基盤地質体」の項。
文献1−b) 文献1)のうち、
3−1章 「(近畿地方の中・古生界)概説」の項。
文献1−c) 文献1)のうち、
3−2章 「(近畿地方の)各地体の中・古生界」の項。
文献1−d) 文献1)のうちの、
3−4章 「(近畿地方の)白亜紀〜古第三紀火成岩類」の項
文献1−e) 文献1)のうちの、
4−3章 「(近畿地方の)新生代 火成活動」の項
文献2)太田、成瀬、田中、岡田 編
「日本の地形 第6巻 近畿・中国・四国」東京大学出版会 刊 (2004)
文献2−a) 文献2)のうち、1−1章「近畿・中国・四国の大地形」の項
文献2−b) 文献2)のうちの、7−2章「紀伊山地」の項
文献2−c) 文献2)のうち、3−1章「丹波高原」の項
文献2−d) 文献2)のうち、第2部「近畿三角帯」の項の各章、及び、
第1部「総説」のうち、1−1−(3)節 「近畿三角帯」の項
文献2−d) 文献2)のうち、9−3章
「鮮新世以降における堆積・隆起域の変遷と、山地と盆地・平野の形成時期」の項。
(文献3)藤田(和)
「近畿地方の第四紀地殻変動と地震活動」
産総研 地質ニュース (※ リリース年月日など、不明)
https://www.gsj.jp/data/chishitsunews/76_11_02.pdf
(文献4) 山崎、久保 共著
「日本列島 100万年史」 講談社(ブルーバックス版)刊 (2017)
のうち、6−1章「近畿三角帯」の項。
(文献5)町田、松田、海津、小泉 編
「日本の地形 第5巻 中部地方」 東京大学出版会 刊 (2006)
文献5−a) 文献5)のうち、
「1−3章 中部地方の地形形成環境とその変遷、および編年」の
(1)―2)節「東西に圧縮されている中部地方」の項
(文献6)米倉、貝塚、野上、鎮西 編
「日本の地形 第1巻 総説」 東京大学出版会 刊 (2001)
文献6−a) 文献6)のうち、第4部「日本列島における地形形成環境」の、
4−4章「地殻変動の役割」の項。
文献6−b) 文献6)のうち、1−1章「日本列島とその周辺の大地形」の項
「日本地方地質誌 第5巻 近畿地方」 朝倉書店 刊 (2009)
文献1−a) 文献1)のうち、
1−1章 「(近畿地方の)古生代―古第三紀の基盤地質体」の項。
文献1−b) 文献1)のうち、
3−1章 「(近畿地方の中・古生界)概説」の項。
文献1−c) 文献1)のうち、
3−2章 「(近畿地方の)各地体の中・古生界」の項。
文献1−d) 文献1)のうちの、
3−4章 「(近畿地方の)白亜紀〜古第三紀火成岩類」の項
文献1−e) 文献1)のうちの、
4−3章 「(近畿地方の)新生代 火成活動」の項
文献2)太田、成瀬、田中、岡田 編
「日本の地形 第6巻 近畿・中国・四国」東京大学出版会 刊 (2004)
文献2−a) 文献2)のうち、1−1章「近畿・中国・四国の大地形」の項
文献2−b) 文献2)のうちの、7−2章「紀伊山地」の項
文献2−c) 文献2)のうち、3−1章「丹波高原」の項
文献2−d) 文献2)のうち、第2部「近畿三角帯」の項の各章、及び、
第1部「総説」のうち、1−1−(3)節 「近畿三角帯」の項
文献2−d) 文献2)のうち、9−3章
「鮮新世以降における堆積・隆起域の変遷と、山地と盆地・平野の形成時期」の項。
(文献3)藤田(和)
「近畿地方の第四紀地殻変動と地震活動」
産総研 地質ニュース (※ リリース年月日など、不明)
https://www.gsj.jp/data/chishitsunews/76_11_02.pdf
(文献4) 山崎、久保 共著
「日本列島 100万年史」 講談社(ブルーバックス版)刊 (2017)
のうち、6−1章「近畿三角帯」の項。
(文献5)町田、松田、海津、小泉 編
「日本の地形 第5巻 中部地方」 東京大学出版会 刊 (2006)
文献5−a) 文献5)のうち、
「1−3章 中部地方の地形形成環境とその変遷、および編年」の
(1)―2)節「東西に圧縮されている中部地方」の項
(文献6)米倉、貝塚、野上、鎮西 編
「日本の地形 第1巻 総説」 東京大学出版会 刊 (2001)
文献6−a) 文献6)のうち、第4部「日本列島における地形形成環境」の、
4−4章「地殻変動の役割」の項。
文献6−b) 文献6)のうち、1−1章「日本列島とその周辺の大地形」の項
【以下は、第10部「近畿地方の山々の地質」の各章へのリンクです】
説明にでてくる主な山;山上ヶ岳、大普賢岳、稲村ヶ岳、弥山、八経ヶ岳、釈迦ヶ岳、地蔵岳、大日岳
説明に出てくる主な山など;大台ヶ原、大杉渓谷、高見山
説明に出てくる主な山;六甲山、甲山、(能勢)妙見山、ポンポン山、生駒山、(大和)葛城山、金剛山、(和泉)葛城山
(山地名);六甲山地、生駒山地、金剛山地、和泉山脈、北摂の山々
(山地名);六甲山地、生駒山地、金剛山地、和泉山脈、北摂の山々
説明に出てくる主な山;比叡山、武奈ヶ岳、打見山、蓬莱山、鞍馬山、愛宕山
その他説明している項目:「花折断層帯」、「琵琶湖西岸断層帯」、大原の地形
その他説明している項目:「花折断層帯」、「琵琶湖西岸断層帯」、大原の地形
説明に出てくる主な山;くろそ山、兜岳、鎧岳、二上山、畝傍山、耳成山、天乃香久山
説明に出てくる主な山;伊吹山、霊仙山、御池岳、藤原岳、御在所岳、鎌ヶ岳、雨乞岳、
、養老山地(養老山)
、養老山地(養老山)
このリンク先の「序章ー1」は「総目次」を兼ねており、「日本の山々の地質」の各部へのリンクを付けています。
さらに各部の一番最初の章には、部の中の各章へのリンクが付いています。
「日本の山々の地質」の各部、各章をご覧になりたい方は、ご利用ください。
さらに各部の一番最初の章には、部の中の各章へのリンクが付いています。
「日本の山々の地質」の各部、各章をご覧になりたい方は、ご利用ください。
【書記事項】
初版リリース;2022年1月15日
△改訂1;2022年1−2月、第10部各章へのリンクを順次追加
△最新改訂年月日;2022年2月12日
△改訂1;2022年1−2月、第10部各章へのリンクを順次追加
△最新改訂年月日;2022年2月12日
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- 日本の山々の地質;第7部 東北地方の山々の地質、7−8章 奥羽山脈(2) 奥羽山脈南半分の火山群 11 更新日:2024年01月15日
- 日本の山々の地質 第1部 四国地方の山々の地質、 1−10章 香川県の山々;讃岐山地、香川県の山々の地質と地形 20 更新日:2023年03月18日
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