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更新日:2013年09月16日 訪問者数:7206
ジャンル共通 山道具・装備
帆布製のサブザックの加工日誌
2008年5月のヤマレコ日誌から。札幌・秀岳荘の帆布サブザック「オプタテ」は、主袋1つの姿のシンプルな外観。その良さを生かしつつ、雨ぶたポケットを着脱できるように、また背負いベルトを強化したり、手作りで改良しました。 布地は同じ帆布を秀岳荘さんから、分けてもらいました。
tanigawa
いま愛用しているサブザックは、帆布製で、札幌市の秀岳荘のオリジナルの商品です。(写真1枚目は、購入時の姿)
「オプタテ」という名前がついていますが、この山は、十勝と大雪の境界にある鋭鋒です。シンプルでしゃきっとしたザックの姿は、なるほどオプタテシケ山を思わせます。

 2年数ヶ月前に購入し、そのあと自分が使いやすいように補強と改造をおこないました。
 改造で一番のポイントにしたのは、用途に応じていろんな付属物を取り付けられるようにはしても、それらを着脱式にすることで、このザックのもともとのシンプルさを損なわないようにしたいということでした。
 二つめのポイントは、ハードな使用に耐えるよう、強度・耐久性のアップです。

 改造点は、こんなふうです。
 1)底皮を縫い当て、サイドに荷物やポケットを着脱するためのホルダーをつくりました。(写真2枚目)
 2)トップに、雨ブタ・ポケット(着脱式)を製作し、取り付けました。(写真3枚目のトップの部分)
 3)背負いベルトと本体の縫合部分がほころびないように、補強の背負いベルトを取り付け、また型くずれがしないようにその取り付け部の背側に、補強パッドを内蔵した厚皮を縫込みました。
サイド・ストラップ用のホルダーの取り付け
まず、ザックのサイドに、ストックや三脚を付けるサイド・ストラップ用のベルト留め(ホルダー)の工作です。

 地が帆布ですから、その風合いと合うよう、牛皮をホルダーの素材に決めました。15センチ×10センチの長方形の牛皮(オイル加工、210円)1枚を、4等分に切り出しました。この材料の両端近くに、それぞれベルトを通す穴を2個ずつ開け、ザックの両側に左右2個ずつ縫い付けました。
ホルダー用の牛皮を切り出し、加工。
色が薄い皮は、ザック内部の当て皮ですが、シロウトのためサイズを一回り大きくせず、ややミスしました


出来上がりは、1970年代の、アタックザックの走りのころに、ザックの左右にあったホルダーと同様です。

 ホルダーの牛皮の厚さは3ミリ。あらかじめ「菱目打ち」(鋼製、1つ800円くらい)という工具で、糸目の間隔に、針の目の穴を開けます。古いまな板の上に皮を置き、菱目打ちを当て、上から金槌でたたいて、穴をうがちます。一箇所で4目分が等間隔で開き、これを直線にそって繰り返して、きれいな糸目を作ります。
帆布に直に縫い付けては、帆布が裂けるため、ザックの内側には薄い牛皮を補強用に置き、これもろとも、糸で縫い付けます。この当て皮には、ホルダーの厚皮と2枚を重ねて、菱目打ちで、まったく同一の位置に、針目の穴を開けておきます。

 糸はナイロン製や麻糸があり、専用のワックス(小1個270円)でしごくと、皮の通り抜けがよくなります。針も、太い専用針(1本80円くらい)。ワックスを滲み込ませた糸は5メートル購入しました(550円くらい)。

 そのうえで、縫いつけの工程です。本返し縫いです。糸目の穴は開いており、また、内側の当て皮にも、同じ位置に穴があるため、1枚の牛皮のホルダーを縫い付けるのに、40分ほどで仕上がりました。

 指に2度、針を刺しました。針は太めで、けっこう出血。
 雨の日曜日、この作業に最初から没頭しました。
 とっても丈夫な、しかもいい風合いの皮のホルダーが出来上がりました。

 ここに、ロックバックル付きのナイロンベルト(1本260円)をそれぞれ装着。ザックの両脇にいろんな荷物をくくりつけられるし、ホルダーにはほかの装備品やペットボトルのホルダーなども、取り付けられます。
 ベルトを使わなければ、ごくシンプルな帆布ザックにもどります。さて、次の加工は・・・。
ウェスト・ベルトを取り付けるD環の取り付け
帆布のサブザックの加工その2は、ウェスト・ベルトを取り付けるD環の取り付けです。
この「オプタテ」というザックは、シンプルな袋というのが売りなだけに、ウェスト・ベルトも付いていません。
 ただ、ふだん、軽い荷物と気楽なルートでサブザックを背負うときには、ウェスト・ベルトはかえってじゃまになる場合もあります。このベルトが欲しいのは、荷がある程度、重く、長い時間を歩くときや、体がふられるといやな難所の通過などだけ。
 そのために、ザックには小さめのD環だけを、止め具用に付けることにしました。

 ウェスト・ベルトそのものは、ふだんははずしておいて、必要なときに、取り付ける方式です。「使わないときは、外せば、シンプルなサブザックにもどる」というのが、今度の加工の趣旨ですが、それにも反しません。

D環は、2個120円で、金属製のものを購入してきました。くすんだ真鍮の色をしていますが、鉄に着色をしたもののようです。
 D環を固定する細いベルトは、牛皮を切り出して使いました。幅24ミリ、長さ12センチ。折り返してD環を通すので、2枚重ねの長さは、半分の6センチ。

 2枚重ねにした状態で、また「菱目打ち」でひし形の糸目の穴を開けました。
 皮が薄いので、菱目は「2・5ミリ」。前回のベルト止めの皮の縫い付けでは、3ミリの菱目打ちを使いました。
 今度は、細めの麻糸を使用。皮やザックと同じ濃い茶色に染めてあり、縫い目は目立ちません。
 このD環ストラップを左右計2個つくりました。

 次は、ザックへの固定です。
 帆布が、キスリングのような厚地ではないので、そのまま縫い付けたり、固定したのでは、布地がすぐ傷みます。ウェスト・ベルトは、転んだりしたときなど、かなりの力が瞬間的にベルト部にかかるので、「カシメ」(金属のリベット)を打って、ザックに止めるのがベストです。

 帆布の裏側に、また当て皮をしてしのぐことも考えました。 しかし、ここで、新しい加工を、また思い立ちました。というよりも、すでにその材料は手元に入手ずみです。
 ウェスト・ベルト用のD環ストラップの取り付けは、その加工をしてから、おこなうことにしました。

・・・・・以上の作業と、次の工程は、郷里の福島の温泉の宿で、台風22号の雨に降り込まれたなかで、黙々とおこないました。部屋のすぐ8メートルほど脇には、林道をはさんで山間の沢が流れていました。窓から見ると、沢は茶色に増水し、迫力があります。宿の窓からその水面までは、6メートルほどの高度差があります。

 「ここまで、水を被ったことはない」と、宿の人にいちおう言われたものの、山の沢の6メートルの高度差なんて、あっと言う間です。おまけに、この沢(荒川上流、水源は東吾妻山、高山、安達太良連峰北部)は、宿の直前で細くすぼまり、右に大きく屈曲して、流心の延長線は宿に向いています。そこらへんは、よく考えられているのか、カーブする流れをさえぎるように、林道が伸び、その土台は土手状の高い石積みとなっています。
 「関東に上陸した史上最強の台風」の今後の進路によっては、夜逃げの用意もいります。
 雨具、ヘッドランプなども部屋に持ち込み、窓外で強く降る雨や沢の濁流を眺めつつ、皮を切り出したり、糸をしごいたりして、すごしました。

 雨がさらに強くなったり、沢を岩がゴンゴンと流れ出すようなら、背後の傾斜のごく緩い森に逃げ込むしかありません。
底皮を当てる
帆布のサブザックの加工、その3は、ザックの底を保護する当て皮(底皮)の製作です。
 台風22号は、どうも茨城県沖に抜ける気配があり、これなら台風の西側で雨が弱まると安心して、作業を本格化させました。
 サブザック「オプタテ」は、底の仕様もシンプルです。普通のザックなら、サブザックといえども、合成繊維や樹脂素材で底を保護しています。「オプタテ」には、これがありません。底も、両サイドも前後も、みな同じ帆布製。そのシンプルさが、美しいのです。

それだけに、皮を当てて補強するのは、悩みました。元のシンプルな良さが、失われるのは確かだからです。

 でも、初使用で武尊山の沢に入ったときに、底も帆布のこのザックは、湿った場所に置くのにも、気を使いました。パラフィンを滲み込ませて防水加工はしてありますけれど。
 それと、ザックがどこから傷むかといえば、ご存知のように底の周囲からです。底と壁の接合部分に、まず損耗と破れがきます。しばしばヤブの中を動くので、形のシンプルさは利点です。が、強度の点でも、私の使い方に合わせて、補強を行なうことにしました。

 その際、派手な皮を使うのではなく、布地の色とほとんど同じの目立たないこげ茶色を使うことにし、糸も、同じ色で目立たせないようにすることにしました。

 もう1つ、皮の素材は、D環やサイドのベルト・ホルダーを製作したのと同じで、オイルを滲み込ませて防水性を高めたものを、選びました。厚みは2ミリ少しと、かなりあります。この種の牛皮は、チロリアン・シューズなどによく使われているものです。私も1足使っていますが、こすれて傷が付いても、オイルを使って磨くと、傷は見えにくくなります。1足目は、はきつぶすまでに15年も使えました。「このサブザックが、自分の山登りで最後まで使う小型のザックになるかもしれない」という気持ちでとりくんでいるので、材料としては好適です。(そうはいても、たくさん、傷をつけるでしょうけれど)

 「東急ハンズ」では、業務用に使われた皮素材の断片・はんぱ物を売っています。おそらく、カバンか靴の皮を切り出した残りのオイル・レザーが、不定形ながら60センチ四方くらいの大きさで、売られていました。4600円。なんと、当のサブザックとほぼ同じ値段です。底皮だけでなく、これから使う部分にも、残りを利用できそうだったので、これを購入しました。

 しかし、ザックに底皮を当てる、というのは、いままでの工作とは違って、かなり難しいことです。
 まっ平らでコシのある厚皮を、ザックの底と、壁の立ち上がり部分とに、ほとんど継ぎ目なく当てるというのは、どうすればいいのか?
継ぎ目を背中側の両サイドに2ヶ所、あらかじめ設けました。これで、背中に当たる側の外壁は、皮がうまく直角に立ち上がりました。

 問題は、横から後方へ、パンが膨らんだような曲線を描く部分です。
 型紙をとって、大体の形に皮を整形してみました。皮が立ち上がった部分では、余分の皮がだぶつきます。それは、縫いつけ方で、一目ずつ皮をわずかにだぶつかせて整形すればいいと、やってみました。
 失敗でした。
 皮は波打ち始め、これでは一体感がなく、目立ちすぎです。
結局、ザックを後ろから見た両端の下はじに、左右1ヶ所ずつ小さな切れ込みをいれて、ここで余分な皮を合わせて、きっちり縫いつけ、ザックの形状に合わせて皮を立ち上げました。まるで、最初からこういう縫い合わせを予定したかのように、仕上がりました。
 でも、1枚皮で立ち上がるのに比べると、素人の手作り感は否めません。
 1枚皮で、すっぽり底部を包み込む、というのが、防水対策上も、美しさからみても、ベストだ
ったのですが、そういう皮の整形をする道具も技術もないので、仕方ありません。 こういうときは、要は実用と耐久性だと、納得することですね。

 
 これで、保革油を適量ずつ塗りこめて、保守しておけば、十分な防水性と耐久力が保てるでしょう。シンプルだった「オプタテ」は、底部を皮で補強されて、色合いは地味ながら、ぐんとたくましい外観に変貌しました。
 (もともとの、ごくシンプルな「オプタテ」で良かったという気持ちが、若干ですが、沈殿していますけれど。)
事前に製作しておいた、D環式のウェスト・ベルト止めは、この底皮にしっかり縫いつけ、さらにカシメを打って、がっちり固定しました。
◆雨ブタポケットの製作
先に、最終工程まで完成した、改造オプタテの写真をお見せします。
第1ステップ 型紙をつくる → 帆布を切り出す
 雨ブタポケットは、ザックの上部にすっぽり被るものですから、雨ブタの底の形がかなり独特な立体形状になります。上面のポケット部分の上面(天井部分の布地)は水平でもかまわないのですが、底はザックを横からみて、U字を逆さにしたように湾曲します。
 手間と苦労がかかったのは、この形状のためです。

 どういう寸法やカーブになるか、予想がつかないために、まず雨ブタポケットの実物大模型を製作しました。帆布サブザック「オプタテ」に仮の荷物を積め、その上にうまく乗るように、茶色のやや厚地の包装紙を切りぬいて、ガムテームでとめて、模型を仕上げました。
 そして、この紙製の模型を、切り開き、展開して、型紙を作りました。
 さらに縫い代分を見込んで、型紙をもとに、材料の帆布から、雨ブタポケット用の布を切り出しました。

 写真が、型紙をもとに切り出した、布です。湾曲した立体形状をもつために、布地の縁がカーブしています。雨ブタの底布になるフタの部分も、中央部が盛り上がる形状になるように、あとで両端をつめて、縫いました。
 この帆布は、札幌の秀岳荘から、「オプタテ」の材料と同じ素材・色のものを1平方メートル2100円で取り寄せたものです。ワックスを滲み込ませて撥水加工がしてあります。
切り出した帆布のうち、ポケット部分にはファスナーをつけます。背負ったときに頭の真後ろになるあたりです。ファスナーで接合する部分はカット・分離しました。これで、カットは終了です。
第2ステップ ほつれ止め、縫製部のライン引き
 次は、縫製する前の、準備工程です。
まず、切り出した帆布の周辺・縁の部分がほつれないように、ミシンと手で、ほつれ止めの下縫いをしました。糸は、皮の加工用の丈夫な細い茶色のナイロン糸です。これが、前処理その1。

 実は、私はミシンが使えないので、ほつれ止めのこの縫いつけは、カミさんに頼んで一気にやってもらいました。ファスナーを縫い付ける部分も、あとでカミさんがミシンかけをしてくれました。

 下準備の2つめは、縫いつけ箇所に、色鉛筆でラインを引いておく作業です。縫いつけ部は縫い代の「遊び」(余分な幅)があり、作業もポケットを裏返しておこなったり、湾曲した立体の形の状態で縫うため、おおよその線がないと、相当に位置がずれかねません。
 実際にも、カット段階から位置が少しずれて、ポケットの前部分の高さが、左右で寸法がちがいました。まあ、登山装備は丈夫さ第一、見映えよりは実用的であればいいですから、少々のシワやゆがみは無視することにしました。

 
第3ステップ ファスナーの縫いつけ、ポケットの形に仕上げる
雨ブタポケットを設置した様子。
ファスナーをつけました。(完成後の写真)
こうして準備をすすめたあと、まず、ファスナーの縫いつけです。ミシンであっという間に装着しました。ファスナーは、「ゆざわや」で23センチの長さのオーダー品を購入してきました。プラスチック製で、250円くらい。
 次いで、ポケット部分を裏返しにして、箱状の形を手縫いで作り上げました。(小学校のころの雑巾縫いを思い出しました。皮を縫うときは、高校時代、野球部ころ、いつもほつれた硬球の皮を修理していたころを思い出しました。)
 ポケットの外形ができたところで、ポケットの後部の「壁」のすそを、雨ブタの底布の所定の位置に、これもミシンで一気に縫いつけました。
 さらに、左右の壁を、底布に手縫いで縫いつけ。ここが一番、湾曲して、曲がりやすいところ。ここまでは、袋を裏返ししての作業です。
 最後に袋を表に返して、ファスナーを付けた前部の壁を、底布に手縫いしました。
本来は本返し縫いなど、より強い縫いつけにする必要がありますが、手縫いは慣れておらず、袋に手を入れて縫うような場所も多く、とりあえず形に仕上げることを優先して、つくりあげてしまいました。糸は、皮の縫製に使う丈夫なナイロン糸です。おいおい、力がかかるところは補強をしていきます。

 ということで、相当な苦労をして、かなり時間をかけて、雨ブタポケットの形が出来上がりました。ただの箱型ならば、ミシンで一気なんでしょうけれど。
 第4ステップ フタの縁を皮で補強する
雨ブタポケットの縁を補強の皮で縁取り。完成後の写真
ピッケル石突きホルダーも設置した完成状態を、先にお見せします。
 次は、雨ブタの縁の部分が帆布にほつれ止めの縫いつけをして、そのままなので、ここに補強の皮を取り付けました。
幅20ミリにやや薄手の皮を切り出し、2・5ミリ間隔の「菱目打ち」であらかじめ縫い目の穴をあけました。細いナイロン糸で縫いつけ。皮の長さが30センチずつしかなくて、途中の間の悪いところに継ぎ目が出てしまいました。縫っているうちに皮が伸びて、左右の継ぎ目の位置に違いもでて「非対称」に。
 これも、手作りの味です。使い込めば、皮が磨り減りだして、こんなものは目立たなくなります。
 この補強を加えると、雨ブタポケットは、ちょっと重厚なイメージに変わってきました。
第5ステップ 1本締めのベルトを設置
 雨ブタポケットの仕上げは、ザックを締めて、背負うための1本締めのベルトの取り付けです。
 サブザック「オプタテ」は、シンプルな一本締めのベルトのザックです。この良さは残したい。サブザックですから、見かけは単純なものがいいし、1本締めは簡便です。
 ただ、雨ブタポケットは、30リットルのこのザックにかなり荷を詰め込んだ場合も、楽にザックを開け閉めでき、かつザックそのものの強度も保つように使うことを想定しています。
 荷物がある程度あっても、強度を保つには、両肩の背負いベルトにベルトを固定でき、そのベルトでザックを締めて、ザックの後側で1本締めのアジャスターにつながる必要があります。つまりY字型のベルトの配置です。
 これは、両肩にベルト止めをそれぞれ設置し、2本のベルトを雨ブタのところで1本に絞ればOK。両肩の背負いベルトには、ロの字型の金属環を、皮ベルトで縫い付け、固定。また、ベルト用のプラスチックの締め具を使い、Y字型のベルトを構成しました。ベルトは荷物の増減に応じて、伸縮できます。
ザックを背負い、また締める強い力がかかるベルトを、直接、雨ブタに縫いつけて固定すると、その上にのっているポケット部分にも力がかかり、ファスナーな開きにくくなったり、容量が十分に活用できません。これは、市販のザックでも、体験することです。
 そのために、背負いベルトに連結したY字型のベルトは、雨ブタポケットの下を前後に楽に可動できるようにしました。雨ブタの底に、大小の皮の帯を縫いつけ、この帯を通してY字型のベルトを設置、締める方式です。
 雨ブタポケットはベルトが伸縮しても、自由に動きます。
第6ステップ 雨ブタにピッケル(石突き)・ホルダーの取り付け
 これは、多くのザックにあるもので、ほんとに「ピッケル(石突き)・ホルダー」として使っている場面には、ほとんど出会いません。多くは、アルミカップなどの取り付け場所に使われていますね。ホルダーの材質も、樹脂製が大半になってきました。
 でも、私のような年代の者には、皮のこのホルダーは、抜きがたいものです。

 つくりは、単純。ほぼ正方形に厚めの皮を切り出し、これを菱型において、中心から左右に15ミリくらいの位置に計2ヶ所、ベルト通しの穴をあけるだけです。これを、雨ブタポケットの後ろ側の、雨ブタの下部に縫い付けます。
 皮を縫いつけた布地には、必ず「当て皮」が必要です。しかし、こんどの場合は、雨ブタの裏にベルト通しの皮の帯を設置しているため、これに当て皮役になってもらいました。縫いつけも同時におこなえ、合理的。しかも、強く張られたベルトで支えられる場所に、ピッケル(石突)ホルダーが設置されているので、ホルダーもしっかり支えられています。
 このホルダーには、皮ベルト(締め金具つき)も製作して取り付けました。 金具は1個80円で購入してきました。

 ここまで出来上がったサブザックを、11月上旬の赤城山の登山で使ってみました。 サブザックにもともとついていた雨ブタは、一枚の帆布で、小さくたためます。ザックの袋のなかに丸めて押し込んでしまい、ワンタッチ締めひもで口を閉じます。その上に、製作した雨ブタポケットをベルトでのせました。
 地図やGPS、ちょっとした行動食なども入れることができ、コンパクト・デジカメも収容できるほどの小さめの雨ブタポケットです。布地の材料も、皮の色もいっしょ。素材が全体に調和して、最初からついてきたような外観になりました。皮の縁取り、ピッケル(石突)ホルダー、背負いベルトの固定環などが効いて、少しずつヘビーな感じが出てきました。でも、風合いや色、素材からは、素朴な感じが出ていると思います。
 この雨ブタポケットも、着脱式で、外してしまえば、元のサブザック「オプタテ」にもどります。
 まだ、今回の改造のコンセプトである、「オプタテ」のシンプルさ、簡便さを失わず、柔軟に使用できるという方向には、沿っていると思います。
◆背負いベルトの接合部を強化、D環を装着
次の改造は、ザックそのものの強度のアップです。
 これは、赤城山の登山で使用して、けっこうこのザックが収容力があることから、考えたことです。サブザックとはいえ、30リットルまで拡張でき、荷物によってはかなりの力が各ベルトにかかります。
 強度アップと、いろんな荷造りに対応できるように、とくに背負いベルトと本体の接合部分を、強化することにしました。

 D環を設置することと、背負いベルトの縫いつけ部分の強化のために、幅7センチほどの皮を、ザックの背あての上部に縫い付けました。
 縫い付けるときに、背負いベルトを横切るように、丈夫なナイロン糸でがっちり縫製。
 D環は、この背あての皮にとりつけるしくみそのものは、これまたクラシックなザックの方式と同じです。昔は、キスリングなど多くのザックがこの方式でした。
 荷物が重いときに雨ブタをのせる前に、紐やベルトでがっちり荷造りするため、D環には一番大きな力がかかる可能性があります。そのために、厚さ3ミリ弱の皮だけでは不安があるため、まず薄いナイロンベルトでD環を背あての皮に縫い付け、その上から皮をかぶせて巻き、他のストラップ同様の縫い付けをしました。 完成した状態の写真を、見ていただければ、外観の様子がわかります
背あての上部に、皮を横に縫い付け、D環を設置(完成後に撮影)
この背あての上部の皮には、見えない部分が、もう一つあります。
 皮の内部に、ABS樹脂のプレートを挿しこんであることです。
 写真が、そのプレートです。
これを挿入することで、皮部分の一体性が増し、力を分散できて、強度が上がります。
 また、背負ったときに型崩れしにくく、パッキングもしやすくなります。
 5枚の薄いプレートの合計の厚さは、3ミリ。

 厚いものは折り曲げにたいする剛性は高まりますが、限度を超えると一気に割れ、行動中には困ってしまいます。
 薄手は1枚ずつの剛性は弱いですが、それぞれが滑りながら接して、柔軟に湾曲するために、ショックにたいする割れにくさが高まります。この種のショックは行動中にそう何回もあるわけではなく、ごく稀れ。その場合、もし1、2枚が割れても、全体の役割は損なわれません。
 このように想定して、あえて高価な厚板を避け、1枚250円のプレートを求めて、切り出しました。5枚は接着はせずに、背中の真ん中あたりでビニルテープを巻いて束ねただけです。よく曲がりますし、鉛直方向の力には良い剛性を発揮します。
この取り付け、縫製作業と、荷物が多いときのいくつかの荷締め用のD環のとりつけで、ついにサブザック、「オプタテ」の加工・改造が完成しました。
 改造中に4回、このザックは使用しました。
 4度目は、強い木枯らしが吹き、あられ、小雪が舞い中の、武尊山のブナ林逍遥でした。
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