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更新日:2026年07月10日 訪問者数:258
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富士登頂に必要な急性高山病の知識
budget trekker
富士山に登るなら医療従事者でなくても急性高山病に関して一般常識以上の知識は必要と思います。急性高山病を予防し、発症したら登頂を断念し下山する・診療所で医師に診てもらう・救助を呼ぶべきか、といった目安があると望ましいです。
私からの提案
・パルスオキシメータを携行し口すぼめ呼吸に努めSpO2が90%以上を目標に下がり過ぎてないか注意し脈拍も上がりすぎてないかチェックしながら登山する。要するに高度が高くても身体を低酸素の状態にしないで登山する。

・レイクルイーズAMSスコアを理解し自分または同行者等について「これはまずいのでは」と気づけるまで良く理解。

私は素人ですので、こういった情報がありますとリストを先に紹介し、そこにこんな事が書かれていますからこうですといった構成でノートにしました。
参考になる資料・情報
●口すぼめ呼吸の実施例

以下の動画の6分10秒あたりからが肝要な内容となります。
【高山病リスクを減らすには…!?】低酸素の環境でどうやって呼吸する??プロに指導してもらいました! - YouTube
解説編
●「高山病と関連疾患の診療ガイドライン」は2010年にWilderness Medical Society がガイドラインを発表し、2013年に日本登山医学会で日本独自のガイドライン作成の機運が高まり、2017年に発行されました。このヤマノートで最重要の資料としています。これを幾度も読んで理解に努めるのが急性高山病を理解するカギとなります。逆に、これと相容れないノウハウを語る人はエビデンスに基づかない個人的な見解に過ぎない可能性があると考えてください。

●レイクルイーズAMSスコアは、1993年にカナダのルイーズ湖で開催された国際低酸素会議にて制定され2018年に改訂されました。『非専門家がAMSの診断や治療目的で使用することを意図したものではない』とありますが、山岳医をガイドに雇うのも現実的ではないので、これを良く理解して「危険かもしれない」と気づく、もし可能なら同行者も大まかに状況を把握できるようにして、危険を感じたら早期に登頂断念し下山または医療従事者に伝えるといった使い方ができると望ましいです。軽症:3〜5点、中等症:6〜9点、重症:10〜12点との事です。なお診療ガイドラインに載っているのは改訂前のスコア表です。変わった点は、頭痛を重視、眠れないかどうかは考慮しないようになりました。

●パルスオキシメーターに関しては、ガイドラインの p.4 に『動脈血酸素飽和度計(SpO2 モニター)が持参可能な場合は,SpO2や SpO2/ 脈拍比の変化も危険の予知に有用とされている』とある通りです。前述の「日本登山医学会 急性高山病」のHPにも『最近では小型軽量のパルスオキシメータが安価に利用可能になっていますのでトレッキングツアーにこれを携行するのはほぼ常識となっています』とあります。

コロナ禍後は安価に入手できるようになりましたが、粗悪品やら医療用には使えない"健康チェック用"では困るので厚生労働省のサイトで承認・認証された物から選ぶことをお勧めします。
しかし偽物がアマゾンで売られていた例もありますので
他店を検討するのも一案です。私はヨドバシの店頭受け取りを時々使うので、関連記事を紹介します。
●口すぼめ呼吸はガイドラインに記載がありませんが、前述の「高所での酸素飽和度の正常値は?」のHPには『「口すぼめ呼吸」をするとその間だけSpO2 90%程度まで回復しました』とあります。私も富士山でパルスオキシメータをつけて口すぼめ呼吸をしたらテキメンにSpO2が上がりました。サボるとすぐにSpO2が下がりました。

口すぼめ呼吸のやり方に関しては前述の動画をご覧ください。私は富士登山中にずっとやったら声がガラガラになりましたが、急性高山病にはなりませんでした。

動画にもありますが酸欠になると何とか酸素を体に送ろうと脈拍数が上がります。これだと疲れるので、口すぼめ呼吸に努めましょう。

動画では「キツくなくなったという感覚があったら普通の呼吸に戻す」とテロップが入っていますが、その前に聞き取り辛いですがスタッフの人は「数値が上がったまま」と言っているようです。よって

正解:SpO2の数値が上がり&キツくなくなったら普通の呼吸に戻すが様子、すなわちSpO2の数値は引き続きチェックする。数値が下がれば口すぼめ呼吸を再開

誤り:キツくなくなったら普通の呼吸に戻してしまう

です。後述しますがヒトの感覚はアテにならないのでSpO2が低かったらキツさを感じなくても口すぼめ呼吸をしてください。
薬を使った急性高山病予防の利点と欠点
ガイドライン p.5 にはアセタゾラミド(ダイアモックス)は有効とのエビデンスがあります。しかしながら『痺れなどの知覚異常や多尿が 5%以上に認められ,発疹,下痢・食欲不振などの消化器症状,頭痛・めまい・傾眠・見当識障害・麻痺などの精神神経症状,倦怠感などの副作用が認められること,重大なものとしては代謝性アシドーシス・電解質異常,そしてショックやアナフィラキシー様症状を起こすことがあるため,予防的投与についてはこれらの副作用について熟知し,入山前に飲用を試みるべきともいわれる』ともあります。

アセタゾラミドは呼吸中枢を刺激して換気量を増大させ睡眠中の呼吸状態を改善し、また脳血管を拡張させて脳血流を増加させる等の効能で睡眠時無呼吸症候群の治療に使われる薬で、これを保険適用外で医師に処方してもらい急性高山病の予防に流用するべきか。

薬については以下のサイトから調べられますので、服用を検討なさっている人は御覧下さい。
副作用が多岐にわたる薬で、急激な利尿も高齢者には注意ともあり、私は飲むのが怖いのと、意識呼吸(口すぼめ呼吸)で換気量を増大させる事ができると知っているので薬を飲んで無意識における換気量を増大させる必要は無いと考えています。しかし私は「薬を使うな」と指図する立場ではないので、副作用を理解した上で服用すると判断するなら尊重します。

※大半の人は「飲めば高山病が予防できる」とだけ考え副作用がある事など知らずに欲しがるのが実情だと思いますが

薦めているわけではありませんが、ノートを書くために検索していたら以下のHPが見つかりました。オンライン診療で送ってくれて安いとの事です。
ちなみにこのクリニックはダイエット目的で糖尿病の治療薬のマンジャロをオンライン診療で送る事もしています。ニュースで問題だと報道されたり、このような通知が出されているようですが
とあるクリニックはこのような解説をしています。
ダイアモックスを急性高山病の予防に処方してもらうのは、マンジャロをダイエット目的で処方してもらうのと似た様な事なのか、山岳医が処方する事もあるからそこまで深刻に考えなくていいのか…素人なので判断がつきかねますが、口すぼめ呼吸を知っていれば対処できるため服用によるメリットがデメリットを上回るとは考え難いです。

ガイドラインには『予防的投与についてはこれらの副作用について熟知し,入山前に飲用を試みるべきともいわれる』ともあります。』および『予防薬としての積極的使用は,?高山病の複数回の既往がある人,?山岳救助のように急激に高度を上げる必要のある人に対して推奨できる.投与の推奨量は,1 日 2 回,1 回量125mg である(推奨 1B).小児への推奨投与量は 2.5mg/kg(最大 125mg)・12 時間毎投与である(推奨 1C)』と書かれていますとしか言えないです。ですから、前回は急性高山病で登頂断念してリベンジを期したい人なら積極的使用を考えても、となりますか。いっぽう県警の山岳救助隊が服用しているという話は存じておりません。

なお南米で Sorojchi Pills というブランド名で売られている高山病の薬の成分は、アスピリン+解熱鎮痛薬+カフェインだそうです。
飲酒
ガイドラインには『睡眠時に呼吸抑制をきたすアルコール摂取や睡眠薬の使用も誘因となり得る』とあり NG です。山小屋の人は標高に慣れてて平気なせいか登山者にも大丈夫ですなどと言ってビールを勧めてきますが「もう山酔い(急性高山病)しているので結構です」と断りましょう。
持病のある人
主治医に相談してください。ガイドラインでは、PDF で無償では読めない箇所ですが、p.30 からは循環器疾患、p.47 からは呼吸器疾患に関する指針が書かれています。

少し情報が古いですが、ガイドライン以外で関係する資料を紹介します。
ガイドラインには書かれていませんが、新型コロナの後遺症で安静時でもSpO2が低めとか運動すると息切れしやすい人も主治医に富士登山について相談してください。
頻繁に目にする誤った主張
●気軽に高度順応と言う

富士登山では、高度順応などはしていません。ガイドラインによればヒトが順応できるのは1日に300mなので、1日目は2800mの所で寝て、2日目は3100mの所で寝て、3日目は3400mの所で寝て、満を持して登頂して下山、というなら高度順応しながら登山した事になりますが、3泊4日以上かけて富士山に登頂する人は稀なので、登山者は高度順応する前に登頂&下山しています。

高度順応に関しては以下を参照願います。
●水を飲めば高山病が予防できると言う

ガイドラインにエビデンスがありません。脱水症の症状は、急性高山病の症状と重なる部分が多いため、混同されているのだと思われます。もちろん脱水症は防がなければいけませんが、水をガブ飲みすれば急性高山病の予防に有益と考えるべきではなく、あくまで急性高山病と脱水症は別の病気です。
といった情報もありますが、どのみち運動したり気温が高ければ発汗で失われる水分も増えるので、富士登山で肺から失われる水分だけを特別視しなくても良いかと思います。
●富士登山前に他の高山で高度順応して体を慣らすべきと主張する

練習登山自体は大賛成ですが、そもそも短時間標高の高い所に居た位では高度順応などできていませんし、すぐに効果消失するので意味が無いと考えています。もし3000m位の山小屋で夏の間に働いていた人なら、下山して速攻で富士山に登れば効果が消失する前に登れるのでご利益があるかもしれませんが。詳しくは以下をご覧ください。
●経験者は急性高山病にも強いと考える

ガイドラインに『性差や登山経験,荷物の重さとの関連は認められていない』とあります。
●山小屋到着後はすぐに休憩するのではなく、しばらく小屋の周りなどで運動する方が良い

完全に間違いとは言えませんが、山小屋に到着してすぐに平地と同じように無意識に任せて呼吸するのが不味いので、身体は休めつつもパルスオキシメーターを見ながら口すぼめ呼吸をしばらく続けSpO2の数値が上がって安定したら普通の呼吸にして様子を見る方が勝っています。つまり、山小屋到着後も意識的に呼吸を続けるのが必要なのであり、そのために運動する必要は無い、という事です。
私の独断と偏見
●SpO2で急性高山病になったと判るのか?

ガイドラインによれば、急性高山病は医師がレイクルイーズAMSスコアで判断するものなのでパルスオキシメータで判断はできない、が正解です。しかしガイドラインのに『SpO2 や SpO2/ 脈拍比の変化も危険の予知に有用とされている』ともあります。

皆さんも、安静時に比べ走っている時は、脈や呼吸数も増大しているのは自覚なさっていると思いますが、富士山を登っていて、練習登山の時の数値と比べ脈が速すぎるとかSpO2が下がりすぎているなら休憩して口すぼめ呼吸に努め、それでも数値が回復しないなら、このまま登山をするのは危険ではと気づくのに有用と思います。

※パルスオキシメーターを買ったら練習登山でも使用し自分の数値はどれ位か把握してください。

●スキンダイビングをやっている/いた人はご存じかと思いますが、ヒトが息苦しさを感じる第一の要因は二酸化炭素の増加です。この事は大抵のスキンダイビングの本に書いてありますが、例えば『スキンダイビング・セーフティ』の3訂版p.88やp.92に書かれています。ガイドラインにも『二酸化炭素分圧の低下は呼吸中枢を抑制し,これは睡眠時においては呼吸抑制(無呼吸)を起こさせる』とあります。

さて、富士山頂の酸素分圧は平地の約60%ですが、二酸化炭素の分圧も平地の約60%なので体は酸欠なのに息苦しさをあまり感じません。そのため平地を登山するのと変わらないような無意識による呼吸をしていると体は酸欠の状態が続き急性高山病になります。パルスオキシメータでSpO2を測るのは酸欠の状態であると数値で認識するためです。そして口すぼめ呼吸に努め、頑張ってSpO2を上げ続けます。

個人の経験ですが、富士山初挑戦の際に千鳥足で八合目の小屋に到着しSpO2を測ったら72%まで下がっていましたが息苦しさは感じなかったです。感覚は当てにせずパルスオキシメーターで測りましょう。

●ハイパーベンチレーションは意味がない

これもスキンダイビング由来のネタになりますが、精いっぱい深呼吸を繰り返す事で体内の二酸化炭素濃度を下げる方法です。これをしても体内の酸素濃度は上がらず息苦しさを感じなくなるだけで、水中で気絶を招き死亡事故につながるので「禁じ手」ですが。

私は試しに富士山でSpO2を測りながら深呼吸を繰り返してみました。SpO2は上昇しませんでした。口すぼめ呼吸なら上昇しました。

●急性高山病を避ける富士登山の作戦

ガイドラインを読み込めば

・症状を訴える人が出始めるのは標高2500mから
・順応できるのは1日に300m

となるので、急性高山病のことだけを考えると、小屋泊したければ

・2800mの山小屋で一泊
・起きて頑張って登頂して下山

となります。小屋を発ってから登る距離が増えてしまいますが、2800m近辺がベストチョイスです。山小屋の前でご来光が見れれば良いとか、登頂までは目指さないという選択肢もあろうかと思います。

個人的には、これからは日帰りしかしないだろうと思います。山小屋は、あの値段で避難所みたいなのは勘弁とか、悪天候でもキャンセル代がとか、キャンセル代がかかるから悪天候だが行くかとか、どれも嫌だなと。「目指せ富士山!」とトレーニングし、早朝に登山開始できれば健脚ではない私でも日帰り登頂できました。

日帰りは山頂への到達速度が速いので急性高山病のリスクが高いのでは、という意見もあろうかと思いますが、ガイドライン p.2 には『急性高山病の症状は,新しい高度に達した後,6 〜 12 時間で出現する』ともあるので、症状が出る前に登頂して下山してしまおう、寝ると呼吸抑制されるので発症しやすくなるが日帰りなら関係無い、という考えです。

●登山開始前に登山口で休憩すべき時間

・吉田口の場合は標高約2300mでガイドライン的には高山病を発症する標高ではないのと、五合目から六合目までは、むしろ緩やかな下りなので、登山口の休憩場所ではせいぜい30分とか、なんならすぐに登山開始しても大丈夫でしょう。六合目まで歩いて準備運動を兼ねられます。

・富士宮口は標高約2400mです。JR三島駅の標高は42mなので、登山口で既に標高「差」が大きいのと、いきなり傾斜が急で六合目は2490mとガイドライン的には高山病になり始める人が出てもおかしくない標高なので、登山口の休憩場所で1時間くらい休憩した方が良いかもしれません。

・ここから登った事はありませんが、須走は標高1970m、御殿場は標高1440mなので急性高山病を懸念しての休息は不要と考えます。
●富士山では宿泊しない方が良いか?

私は以下を正しく理解できるだけの知識は無いのですが、『安静呼吸では内肋間筋が収縮せずに、外肋間筋や横隔膜が弛緩するだけで呼気が行える』とあります。
確かに、寝てると一生懸命に呼吸とかしないですね。私は「宿泊するな」と指図する立場ではないので各人でご判断ください。

宿泊するなら、特に仮眠ではなく朝まで寝るならアセタゾラミドの事前服用も選択肢かなと思ったりもしますが、これに関しても「服用するなら医師に相談してください」としか言えません。なお私は3100mの山小屋に到着したときはフラフラでしたが、薬は無しで寝て、翌朝は全く平気になりました。
●吹き矢呼吸

私の造語です。口すぼめ呼吸はロウソクを吹き消すようにと言われますが、私はイメージが湧かないので吹き矢を吹く姿をイメージして呼吸します。呼気筋を使い肺の圧力を高める目的です。

このような調査もあるようですが、効能に関してはよく分かりません。。
●子どもは高山病になりやすいか

ガイドラインには『発症頻度は比較的若年者に高く,小児にも認められるが,一度発症すると繰り返して発症する例が多い.性差や登山経験,荷物の重さとの関連は認められていないが,重症度については,若年ほど,到達高度が高いほど,到達速度が速いほど重症の傾向にある』とあり、リスクは高いと言えます。このような新聞記事もありました。
山小屋泊が安全を増すかは、2800m以下ならそうかもしれない、と思いますが。
●低酸素室に関して

紹介しておいて何だとおっしゃられるかもしれませんが、使用料が高額になるという欠点に加え、死亡事故が複数起きているので「どうかな」という気もします。
いずれも装置の製造業者は「ウチは悪くない使い方の問題だ」的な弁明をしているようですが、設置して、施設の人間が使い方をミスれば死亡事故につながるというのは、いかがなものかなと。

前述の動画に登場するのはこちらのようですが
こちらなら信頼できそうですが、料金を見ると富士山テストが70〜80分で6600円ですか。テストした結果ハイリスクと考えられ提携医療機関の受診をお勧めする事も中高年のお客様だと珍しくないとの事です。ガイドライン p.5 には『低酸素室 (中略) 比較試験から得られた成績ではないが,急性高山病の予防に有効な可能性がある』とあるので、有効な可能性はありますね。ですから心配な人はどうぞ。普通の人にはオーバースペックな気もします。

いっぽう、低酸素室を備えてはいるもののトレーニングジムのオマケみたいな店もあります。

個人的には、効果消失の速さも考えると、3770mぐらいなら低酸素室は不要と考えます。
Wilderness Medical Society のガイドラインの改定
2024年に Wilderness Medical Society からガイドラインの改定版が出ています。これをどう扱うかですが、新しいガイドラインで改善されている部分もあるでしょうが、日本人の身体能力や体質,薬剤の用法・用量など,海外と異なる部分も多いため,WMSのガイドラインをそのまま日本人に応用するのは困難に思われたから日本独自のガイドラインが作成された経緯もあるためこちらを主、WMSの改定版は従、とします。知ったのが最近なのでまだ読めていないためです。
変わった点は以下との事です。
・高所の定義を改定
・アセタゾラミドを前より奨励
・COVID-19に罹患した人への記述が追加
以上ですが間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。とはいえガイドラインを読んでないとか、AIに聞いたら違うと回答したぞ、というのはご容赦願います。
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