登山か冒険か、冬富士に挑んだ三日間〜北口本宮富士浅間神社から〜

- GPS
- 56:00
- 距離
- 35.5km
- 登り
- 2,932m
- 下り
- 2,939m
コースタイム
12月13日 6:50佐藤小屋‐7:40六合目付近‐8:40七合目付近‐9:25八合目‐10:15九合目付近‐12:20吉田ルート頂上‐16:35佐藤小屋
12月14日 8:20佐藤小屋‐11:00馬返し‐14:20北口本宮
| 天候 | 三日間快晴、無風(山頂を除き)。 |
|---|---|
| 過去天気図(気象庁) | 2011年12月の天気図 |
| アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
復路:富士山駅から高速バスで新宿へ |
| コース状況/ 危険箇所等 |
北口本宮‐馬返し:舗装道路、中の茶屋から路面凍結個所あり。 馬返し‐5合目まで:一部登山道陥没しているが危険性はない。歩きやすい。 5合目‐8合目まで、夏道ルートで上がれる。鎖も一部見えている。ここまで、アイゼン、ストック使用。 8合目‐頂上:ここからピッケル使用。雪はクラストしている。先方に登山者が下山してくる際、落氷が雨のように降ってくる。ヘルメット必須。 9合目から岩伝いに上がり、最後の鳥居へトラバースしたが、滑落すれば数百メートルは落ちるだろう。雪はクラストしていてアイゼンはよく効く。トラバースせず、岩伝いに頂上直下まで上がる方法もあるかもしれない。両者とも危険には変わらない。 |
| 予約できる山小屋 |
佐藤小屋
江戸屋
胸突江戸屋
里見平★星観荘
日の出館
本七合目鳥居荘
白雲荘
|
写真
感想
そういえば、富士に登っていない。
5年以上登山をしているのに。理由はいくつかある。
_討琉貘膣儻地と化している現状。
∪澑弔基本的に禁止されている。(と、思っていた)
ごみだらけらしい。
ぅ屐璽爐世箸流行など大っきらい。
ゥ好丱襯薀ぅ鵑箸いζ始が5合目まで続いている。
Ε淵鵐弌璽錺鵑剖縮がない。
理由を挙げたら、ただわがままな自分に気がついた。
でも、日本の象徴、富士にいつか登りたい。そう思っていた。そんな頃、
1年くらい前だろうか、日テレの「行ってQ」という番組でウッチャンが冬季の富士に登っている様子をたまたま目にした。もちろんガイドやスタッフが何人もサポートしている。
番組の演出もあるだろう。でも、そのウッチャンの姿にちょっと感動をしてしまった。
冬季に単独で富士に登れないだろうか。
番組のことは実はよく覚えていない。しかし、自分の中で冬季の富士に登りたいという思いだけが消えることがなかった。
そして、そのチャンスが来た。3連休。富士、御坂方面の天気予報は晴れ。予報ではこれ以上ない条件を満たしている。あとは意思の問題。
「決めた。行く。」
やるんだったら、とことんわがままをやりたい。3日間ある。実は1年前から北口本宮を拠点に吉田口ルートを1合目から登ったら面白いと考えた。江戸時代から富士講の人たちが歩いた古の道だ。明治にこのルートが復元されている。
かつて富士に思いを馳せた人たちが何を祈り、歩いたのか。
ルートは決まった。あとは実行に移すだけだ。
当日、富士山駅(かつての富士吉田駅)から北口本宮裏に回り歩くと、5.6歳くらいの男の子が「どこに行くの?」と聞いてきた。
でかいザックに目を引かれたのだろう。
「富士山だよ」というと、「富士山かあ」とつまらなさそうな顔をした。
この子にとって富士は裏山だ。高尾山といった方が反応は良かったかもしれない。
と、くだらないことを考えると、馬返しに到着。この先が一合目だ。
もうすでに2時間以上歩いている。
5合目までは歩きやすい良い道だ。ごみひとつ無い静かな道。実際、5合目まで誰にも会わなかった。
5合目の先で7.8名の登山者が降りてきた。冬季、1合目から登るこのルートは思ったよりも使われているようだ。
スバルラインにさしかかると佐藤小屋に着く。
テントを設営する。水は雪で作ろうと思ったため、スポーツドリンクしかない。
と、ちょうどよい雪の塊が置いてある。先ほどの人たちが使ったものだろうか。
とにかく、これがなければ、食事が作れなかったので助かった。
夜景を見ながら食事をし、寝袋に入るがやっぱり寒くて熟睡できず。3時間寝ればよい方だ。
翌日、4時には目が覚めていたが、明るくなってからのスタート。御来光には興味がない。天気は予報通り、快晴、無風。これ以上ない天気。
太陽が上がると、奥秩父方面、八ヶ岳、甲斐駒ケ岳、そして北アルプスが遠望できる。すんだ空気に浮かぶスカイラインが美しい。
8合目までピッケルを出さず、ダブルストックで上がった。夏道をそのまま上がれる。
8合目から先は、ピッケルとアイゼン絶対必須のゾーンに突入する。鎖はほとんど埋まっている。9合目から溶岩伝いに急斜面を直登する。
すると、5.6名のパーティが降りてくる。女性もいるようでアンザイレンで下降してくる。一歩降りるたびに岩と化した凍った雪が雨あられと頭上に降ってくる。
「ラク!」と聞こえてもよけることはできない。
ゴーグルはつけていたがヘルメットまでは用意していなかった(というか持っていない)。なるほど、昨日すれ違った人たちはヘルメットをみんな持っていた。
ゴルフボール大程の塊が頬を直撃する。
痛っ。痛いが、ここで燃えてきた。絶対、上がる。
楽石ならぬ、落氷をなんとかかわし、登山者たちとすれ違う。女性メンバーは「すみませんでした」と謝ってくれた。ただ、リーダー格の男は謝るそぶりなし。代わりに「上まで行くのか」と聞いてきた。
俺を無謀だと思ったのかもしれないが、礼節ない者に登山者たる資格なし。
さらに上がると、大柄な外国人2人組がなんとストックをついてなんでもないように降りてきた。
「ハロー」「ファイン」
と声をかけてきた。こっちの方たちの方が礼節があるようだ。
そして、見えた。あれより上がない。頂上だ。
100メートルほどの急斜面を横切ると最後の鳥居が見えた。ここをくぐり、すこし上がると、
「富士山頂上」と彫った石塔が立っている。
着いた。ここより上はない。大内院と呼ばれる噴火下降が見える。
猛烈な風が吹いていく。体が振り回される。小高い丘ようなところに木製の鳥居がある。そこまで吹き飛ばされないように歩く。鳥居にしがみつきながら、写真を必至で撮る。突風で体が下から浮き上がる。
剣が峰まで行けば、時間もない、命もない。
富士山最高地点はここで断念する。課題は残した方がよい。また挑戦する理由ができる。
セルフで一枚写真を撮り、速効で下山する。頂上には10分もいなかったかもしれない。
先ほどの急斜面を慎重に降りる。一歩踏み出すたび氷が石ころのように落ちていく。もし、誰かが下にいれば氷の雨を降らすことになった。
5合目までの帰路は本当に長くつらかった。体力はぎりぎりだった。余裕などなかった。途中、影富士や彩雲を見ながらも、早く降りたい、休みたい。それだけだった。
テントに転がり込むと、
疲れた。登頂の実感、喜びなどなかった。
その日の夜も寒く3時間も眠れなかった。北口本宮までの遊歩道で何度もザックを下して休んだ。浅間神社に到着するとたくさんの人がいた。
登山者でない普通の観光客を見るのがなんだか不思議な感じがした。
そのとき、初めて、あー終わったんだ!
喜びと成功の実感が急に湧いてきた。
いくつか友人にお守りを買った。
登山のついでであるけど、なんだか、もしかしたらこのために来たのかもしれないと、すこしだけ思った。
コメント
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はじめまして、拝見させていただきました。
いやぁ、感動です。
ありがとうございました。
はじめまして、yamaheroと申します。
厳冬期の富士山に駅からというのは粋な登り方ですね。
冒険的な雰囲気もプラスされて… いいですね。
私も残雪期に駅からチャレンジしましたが体力不足で駄目でした。
もう、年齢的にも積雪期は厳しいようです。
こういう記録を見ると羨ましい限りです。
ところで、途中で山岳会のリーダーらしき人の礼節無い態度に気分を損なわれたようですね。
おそらく、makasioさんがノーヘルで単独だったので、素人だと思われたのでしょう。
私としては、リーダーさんは器の大きさを見せて
「厳冬期はヘルメットかぶった方がいいよ」ぐらいの言葉をかけてくれれば良かったかなぁ、と思います。
(まぁ、厳冬期の富士山でそんな優しい人いないか)
せっかく高い技術と意欲をお持ちでも、ちょっとしたことで軽く見られてしまいます。
それより何より、安全のためにも、次回の富士山の時はヘルメットかぶって、挑戦がんばって下さい。
コメント、ありがとうございます。
3日間、天気にも恵まれ、人生最高の体験ができました。山って、本当にいいですね。
塔ノ岳の御来光、拝見させてもらいました。
御来光って・・・・いいですね
富士登山のときは明るくなるのを待ち、安全策をとりました。なんせ、初めて富士山に登ったのです。しかも冬季だし。
塔ノ岳だったら何度もいっているので、御来光、見てみたくなりました
yamaheroさん、はじめまして。
山岳会の方、そうですね。
僕も逆の立場だったら、
「おい、おい・・・大丈夫か、冬富士をなめるなよ」
と、思ったに違いありません。反省です。
自由な単独行が好きですが、山岳会に入って基礎から学んでみようかなと実は最近思っています。
yamaheroさんの甲州街道を経て高尾山へ、拝見しました。
僕、こういうのすごく好きです。
目的地へ結ぶその過程が長く、険しいほど、達成したときの充実感や喜びが大きいものです。
yamaheroさんしかできない山行、次も楽しみです。
makasioさん こんばんは。
三つ峠のレコで富士山に触れていましたが、
まさかその後すぐに冬富士を一合目から登るとは。。。
有言実行ですね。
ちょっぴり命がけですね。ご無事で良かったです。
余談ですがnoborundaさんとオベリスクに登ったんですね!
凄いです。私は下から見上げるだけで足が震えましたよ。
当日私も鳳凰でスライドしてますね。
あの日は稜線の風が強かったですね。
遅い返信でごめんなさい。
富士をどうのぼるか。ずっと、考えていました。
たまたま、条件がそろったので。いざ、という形になりました。
本当に天候に恵まれ、無事に生還しました
チャレンジということが、ひとつのモチベーションになっています。まったりも、大すきですが
オベリスク、登りましたよ。
←この写真、noborundaさんにオベリスクのてっぺんで撮ってもらった写真です。
自慢の写真ですよ。
鳳凰、スライドしているんですね!綾線、風、強かったですね。
でも、冬山の練習になると思って、あえて、ピストンすることしたんです。帽子を飛ばされた方もいました。
makasioさん、おはようございます。
お話のレコ、拝見しました。
とっても素敵で厳しいレコですね。
僕の周りにも、さすがに積雪期に下から登った知人はいませんよ〜。
さすがだなぁ〜って感心しました。
落氷もこわいですね。しかも命中とは・・・。
ただ、これも怪我をしなかったところを考慮すると、貴重な経験かもしれませんね。
レコを見て、makasioくんのニュートラルなお気持ちと負けず嫌いさ、課題に挑戦する男らしさ、精一杯さ等々、いろんなことに感銘を受けました。
これからもいろんなことに挑戦なさってくださいね。
おじさんも応援していますよ〜。
見てくれたんですね。
もう、懐かしい思いでですね。
makasio史上最大の挑戦でした。
ただ、あまりほめられたものではありません。
この時、冬山の経験は僅か一年。
ヘルメットすら持っていなかった。
知識も経験も乏しかったのです。
無謀でした。
無事に帰ってこれたのは、快晴無風の強運だから。
この日の前後にも遭難者は出ていました。
これは自分の中の思い出です。
しかし、最高の思い出ですけど。
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