羽後朝日岳と二ノ沢畚 奥深き和賀山塊の懐へ入る
- GPS
- 11:09
- 距離
- 18.9km
- 登り
- 1,518m
- 下り
- 1,510m
コースタイム
08:45 尾根取り付き
11:05 P1030
11:55 P1084
12:45 P1280ジャンクションピーク
13:30 羽後朝日岳
14:55 二ノ沢畚(にのさわもっこ)
16:05 P736
16:40 部名垂沢(へなたれさわ)へ降りる
雪の林道歩きを経て‥
18:25 駐車地
天候 | 曇のち晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2014年03月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
✿羽後朝日岳、ニノ沢畚ともに登山道のない山である。登頂するには雪がある時期に尾根をたどるか、無雪期であれば沢を詰めることになる。 ✿その年の積雪や気温にもよると思うが、今回の山行で最も悩まされたのは雪質である。ワカン装着でもズボズボ埋まる腐れ雪。最も苦戦したのはP1084から志度内畚分岐までの巨大雪庇地帯だった。まったく予想だにせず、首丈まで埋まることがあった。 ✿羽後朝日岳から二ノ沢畚にかけての稜線は東北でも屈指の美しさではないだろうか。少し歯ごたえのある登山をしたい方にはおすすめする。 ✿対照的にニノ沢畚以降、かなりの広尾根になる。自分の意図する尾根を下るには的確な判断力が求められる。部名垂沢はこの時期、上流部では楽に渡渉できるが、下流になればなるほど困難が予想された。地形図で部名垂沢が夏瀬ダムに合流する辺り、P472.5から北側の尾根を下りて橋を渡ることも考えたが、その橋があるかどうかが僕にはわからなかった。それでP736から部名垂沢上流部に降りるという変則的な方策を採用した。 |
ファイル |
(更新時刻:2014/03/28 23:16)
|
写真
感想
雪のある時期に秋田側から羽後朝日岳へ登るにはどうしたらよいのか。地形図を眺めてあれこれ考えたことがあった。雪に閉ざされた長い林道歩きがあるに違いないと思い込んだ僕は諦めていた。
そんな矢先、kamadamさんが羽後朝日と志度内畚に登頂した。その強い精神力と技術に裏打ちされたオリジナリティー溢れるレコに感化され、どうしても歩いてみたくなった。あのルートに僕のオリジナルを少しだけ加えたい。
蛇行する林道をショートカットして、八木沢に架かる橋を渡ったら左へ向かう。kamadamさんは100mほど歩いて尾根に取り付いたみたいだ。僕は八木沢をしばらく遡行して堰堤を二つ越えた先の尾根に取り付いた。植林された杉林には伐採予定の目印やピンクテープが至る所に括りつけられている。こんなところで仕事をしている人もいるもんだ。
地形図の等高線の混み具合を見ても分かるとおり、急な傾斜の尾根だ。シャープな形をしているから迷う心配は無い。両脇に斜面を意識しながら登ればいいのだ。もう雪が締まって歩きやすいだろうと楽観的に構えていたのだが、間違いだった。おそらくは積もった雪が溶けてから一度も氷点下を経験していないのだ。ワカンを履いているが、ずぶずぶとスネまで埋まる。しかも重い。時折踏み抜いて腰まで埋まった。さらにこの先の稜線雪庇地帯にさしかかると、首丈まで埋まることをこのときの僕はまだ知らない。
"この薄暗い北側の尾根め"
キツツキがドラミングする音がこだまする静寂の森を牛のごとくのしのし歩いた。
登ることに嫌気が差してきた頃、稜線に出た。眩しい光が射し込むP1030に乗ったのだ。高気圧が鉛色の雲を吹き飛ばしてくれた。この景色‥あの暗い森の中は何だったのか。しつこく付き纏っていた"陰鬱さ"はいつの間にか消え去っていた。
振り返ると、ひときわ白い姿の秋田駒ケ岳の巨躯が居座っている。
そうさ、あなたがマジョリティ。
目の前に続く稜線の先左にはピラミダルな志度内畚がいる。
北東峰に隠れた羽後朝日岳はごく控えめに鼻先がちょこんと見える。
稜線を見渡しても誰もいない。
春色の淡い空の下、白い和賀の山々がそこに在るだけだ。
純白の羽後朝日岳が嘲笑っていた。
「俺はいちばん遠いからね。たどり着けるかな」
それは幻で、呟いたのは僕自身だった。
コメント
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ビデオ映像も見ました。やせ尾根の山容がとても美しかったと思いました。稜線沿いに歩いたと思うのですが,天気もよく爽快だったでしょう。
首まで抜かった?落ちた?時は焦ったでしょうね。
ところで コースタイムの Pなんとか
や ファイルの .m4pって何のことですか?
やっぱりお天気を味方に付けないと、こういう山小屋も無い山域は歩けませんからね
雪庇の切れ目に薄く雪が積もっていてそこを踏み抜いたんだと思います。
ワカンを装着しているので、足が中々抜けなかったです
それで変なところに力が入って足を攣ってしまいました
その後は頻繁に痛くなって参りましたよ
コースタイムのPはピークのことです。
地形図で小さな輪っかになっているところです。(正確には輪っかにならないこともありますが‥)
その後に付いている数字は標高(m)です。
何も無い山域では通過点の記録として入れることにしています。
.m4aは音楽圧縮ファイルの拡張子ですね
森の中の音を拾ってみたのですが、ボリュームを高くしないとキツツキのドラミングが聞こえないかもしれません
そうでしたか。てっきりガーミンとかの表示するポイントでファイルがそのデータファイルかと思いました。
私も地図の必要性を感じてきました。
ピークの標高が記されている地図とは,どんな地図なのでしょうか。
縮尺は?冊子?折りたたみ?
たびたびで済みませんが,教えてください。
予め準備された登山コースをたどる夏山と違って、雪の上を歩く場合には地形図が要ると思います。
自分の位置が直ぐに分かるGPSがあればなおよろしですが。
雪山は藪こぎしないで歩ける場所の自由度が高い分、自分でコースを決めなきゃならないです。
逆に自分が歩くコースを自分で決められなければ、雪山を歩く意味そのものが薄い気がします。
僕は里山歩きから始めました。
幸運にも僕らの住む秋田はどんなに標高の低い山も雪たっぷりですから、(余談ですが僕の家の庭には未だ大きな雪山があります‥)雪山歩きの練習には困らないと思います。
地形図はこのヤマレコの記録の「地図/標高グラフ」のところに「地形図(国土地理院)」というのが在ると思います。そこをクリックしますと、地形図が見ることができます。印刷される場合は、「地図プリで印刷」をクリックすれば、1:25000っぽい(かな?詳しいことは僕もわかりませんが)地形図をプリントアウトすることができます。自分がほしい山域を何枚かプリントしてのりで貼り合わせるのが良いでしょうね。それとインクジェットプリンターだと水濡れに弱いので、レーザープリンターでプリントアウトするのが、より良いと思われますが、個人ではなかなかお持ちでないですよね。インクジェットでプリントアウトしたものをビニールで包んで持ち運ぶのが無理がないかもしれませんね。
それから地形図は買うこともできます。
大きな書店に行けば取り寄せてもらえるのではないでしょうか。
湯沢のトヨタの本屋に行かれてみてはいかがでしょう?
僕はこちらの本で地形図の読み方を勉強しました。
http://www.amazon.co.jp/入門講座-2万5000分の1地図の読み方-Be‐pal-books-平塚/dp/4093661111
どんな縮尺の地図がいいのかは1:25000が良い場合もあるだろうし、1:50000が良い場合もあるだろうと思います。どういう地図を使うかはそのときどきでconanさん次第だと思います。
それはそれはとても辿りつけない秘密の峰の物語…
動画を見ながらうっとりして涙も出てきそうになりました
あまりにも美しすぎてはるか遠い手の届かない場所
tooleさんならではのレコ
kamadamさんが新日本紀行ならばtooleさんはおとぎ話のような…
素晴らしい山と襞と沢と光と純白のストーリィ…ありがとうございます
(クマさんお目覚めなんですね )
羽後朝日岳はkiyoshiさんと体力めいっぱい使い切って岩手から登頂したことがありましたが、地元秋田からの道のりも長かったです〜
この山がマイナー12名山に選出されて、秘峰と呼ばれる所以ですね。
meikenさん、こんなにふざけてるレコに涙されたのですね 。恐縮です
(選んだ音楽が良かったかも!)
ドキュメンタリーには違いありませんが、かなり脚色してますからね
ときどき出てくるクマの奴には騙されぬよう‥
* ̄(エ) ̄)ノmeikenさんも娘さんと今年も和賀山塊歩いてくださいね
tooleさんが登るとすれば、二の沢畚を経由する周回になると思ってました
でも連日の暖気 、この沈み込むくされ雪をものともせずに歩き通す体力・精神力、驚きを通り越して、呆れてしまいます 私の場合は精神力や技術じゃなく、ただ単に運が良かっただけですからね
私の場合、昨年秋に下見した時は、右岸側から一つ目の堰堤を過ぎたあたりで左岸に移り、尾根に取り付きました。すぐに林道に上がったのですが。tooleさんがキツツキのドラミングを聞いた地点の写真は、枝尾根の合流点でしょうか。私の場合、そこでスキーのトレースとまた合流しました。
部名垂沢の最下流は融雪期には渡れない可能性があると思います。水量が多ければ渡れないような橋だったかと思います。上流側に下りて正解だったのではないでしょうか。尾根の下りはきつかったのではと拝察しますが。
東北でも屈指の美しい稜線・・・二の沢畚からの真白い羽後朝日を見せてくれて、ありがとう
kamadamさんには僕の行動がお見通しだったわけですね
ついこの間まで雪が降っていたのに急に気温が上がりましたよね
こういう雪の条件だとスキーで登るのがいいのかなと思いました。
ただ、僕にはスキーを担ぐ体力はありませんけどね
キツツキのドラミングを聴いた辺りは確かに枝尾根が合流して少し広くなった場所でしたね
僕が歩いた尾根にはスノーシューみたいな跡とピッケルを刺した穴がところどころに観察出来ました。おそらくはkamadamさんがレコに書かれていた達人のものでしょうね。
あの尾根をスキー担いで歩くと考えると、かなりの猛者だと思います。
並外れた体力の持ち主に違いありませんね
下山後の渡渉についてはその昔、ダイグラ尾根終点で命を縮めましたからね 用心の上に用心を重ねますよ
kamadamさんのレコが無ければ、このレコも有りません。
感謝申し上げるのは僕の方です
こういう景色がちょっとでも見える場所まででいいから、行ってみたいですねぇ…!!
そして、こういう景色を見ながら、何も考えずに滑り降りられたら…
…遭難必至ですが
彼(彼女でしたっけ?)はもう起きちゃったんですね。
ブブゼラ持って行かなくちゃ…。
カーブミラーと同年代って親近感覚えるところ、ウケました
Springさん的には和賀山塊ゴンドラがあって、それに乗って羽後朝日の山頂からバフバフの新雪にシュプールを描きたいと、そういうことでよろしゅうございますでしょうか?
そういう山域は蔵王がありますからね。
登山道がなくて、豪雪で誰も立ち入れない山域があってもいいのではないでしょうか。
本当はSpringさんみたいなカメラマンを連れて行きたいのですがね
僕が重たいカメラ道具一式持たなくて良くなるし
彼女はこう言っております。
* ̄(エ) ̄)ノ背中に乗りなさい。
カーブミラーに製造年がデーンと書いてあるのって珍しいなぁ、と思いまして
tooleさま
少しでも山を歩くものにとって、本当にあこがれの世界ですね
でもこの光景を実際に見れるのは、やはりそれだけの実力を蓄えた人だけでしょう
それでもこの風景をレコで見ることだけでも、ありがとうと言いたいです
yonejiyさんも舟形山の青と白の世界を満喫されてましたね
ガソリンの値段も高どまりですし、近場の山を歩くのがいちばんですね。
雪の舟形山には僕も憧れますよ。
山頂の小屋に泊まってみたいといつも思います
それと、栗駒山。
秋田県人の僕は冬の栗駒は行きたくても行けない山域です
(国道が冬期通行止めになりますから)
宮城の方が雪の栗駒のレコをアップされると羨ましくてしょうがないのです
何と無くなんですが、tooleさんらしい渋いコース!って思ったら、kamadamさんんレコもあるですね。
皆さんすごすぎ<(_ _)>
とても素敵な山並み。
そして、小説家を彷彿させる感想(^-^)
何もかもたのしませていただきました。
ありがとうございます
いぶし銀で渋いのはkamadamさんです
僕はクマを引き連れて ?
ひとりブツブツ言いながら山を歩いているだけです
kimberliteさんの日記を見ていてなるほどな、と関心したのですが、和賀岳も真昼岳も標高をサバ読んでいたってことですね
いや、ほんとうに縮んだのかな。
東北の多くの山が標高低くなってたような気がしましたね
東北の山は高くなるどころか低く改定されているところ多々(u_u)
サバ読んでいるわけではないと思います(^_^;)
活発な造山運動や溶岩流出がなかったら山なんて低くなるのが当たり前でしょって印象です。
それにしても1mは大きいですもんね。東北日本は沈み込んでいる最中なんでしょうかね。。。
ちゃんと調べもせずに憶測と印象でモノ言うと、理研がどうのなんて話題もできないですねえ(^_^;)
そうですよね。
山がサバ読んだら怖いですよね
素人コメント失礼しました
やはり東北は地震による地殻変動の影響が大きいのでしょうかね。
動かざること山のごとし、とか言いますが山は(というか地球は)生きていますね
個人的にその他としては「翁峠」→「翁山」の名称変更が気になりました
いつも素晴らしい記録です。
標高が低いため、注目はされませんが、ヤマレコではトップレベルのものと拝察いたします。もっと多くの人に読んでいただきたいですね。マイナー12名山、私もここしか歩いたことがありません。近場の化穴も丸山やはり泊まりの山行になりますね。
先日秋田駒に登ったのは、お二人の軌跡を上から眺めてみたいという気持もありました。美しい道でした。秋田側からの和賀山塊は土地勘がなく、帰路県道50号からさらに何とかロードに入り、白岩岳、薬師岳、真昼岳の登山口を確認しながら帰途につきました。
ソロでの冬山歩き、歳をとると段々怖くなってきています。
コメント有難うございます。
秋田側から登る羽後朝日岳は今後も注目されることは全くと言って無いと思います。それは雪に閉ざされた長い林道歩きがあるし、北側の尾根は薄暗くて多くの人が好むとは思えないからです。歩いた僕が言うのもなんですが、ここを歩く人は少し変わり者とおもいます。
この記録がヤマレコトップレベルとは少しいい過ぎかと思いますが、体力がものをいうコースであることは間違いないです。僕は稜線の巨大雪庇地帯で何度も埋まってはkamadamさんに一杯食わされたと思いました。それは夏に小杉山から白岩岳にかけての稜線にある錫杖の森を通過した時も同じことを感じていました。
世の中にはひっそりと誰にも知られず、一人で深山の稜線歩きを楽しんでいる人がいらっしゃるものです。kamadamさん以外の足跡と分かったときは、同じ嗜好者の存在に笑みが浮かびました。
和賀山塊麓の秋田側には仙北市と横手市をつなぐ農道、みずほの里ロードがあります。あまりくわしい案内図がないので、土地勘の無い方には登山口がわかりづらいかもしれませんね。いずれにしても岩手側とはまた違った和賀山塊、真昼山地を楽しめると思います。遠いところ、秋田までいらしゃってくださってありがとうございます
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