八幡山縦走路、北部の樹林に包まれたピーク。
以前は分岐がありましたが今は通行不能な様です。
西側へ少し行くと木々を切り開かれた展望台があります。

この２７８ｍ峰は、国土地理院の地形図には、山名の記載がありませんが、明治期の地積図には岩崎山と記載されており、地元でもそのように呼びます。また、このピークの周囲には「岩崎」を冠する地名、橋名、旧バス停名（ヴォーリズ記念病院前バス停は、かつて岩崎口バス停でした）が多く存在します。
一方、ピークの名標や八幡山縦走路の案内版には「望西峰」の表記があります。この呼称は、八幡山の縦走路が開かれて以来、多くの登山者に親しまれている愛称ですが、地元の住民には馴染みのない新しい呼称です。２７８ｍ峰を町域に含む北部の北津田町、東部の円山町、南部の北之庄町では、古くから向山（むかいやま）と呼んでいます。また、ピーク北東中腹の配水池にある四等三角点名は「向山三角点145.6ｍ」です。

このピークの南にある２５４ｍ峰にある北之庄城跡を別名岩崎山城跡とも呼ぶことからの類推で、２５４ｍ峰を岩崎山とする誤解が生じていますが、２５４ｍ峰は岩崎山ではありません。北之庄山、または深谷山（ふかたにやま）と呼びます。江戸期の「淡海温故録」に「岩崎山・後口の城」との表記があることが「岩崎山城跡」の名の由来ですが、これは「岩崎山の南の口にあたる北之庄山の城」の意と解せます。（地元史家の広田平治氏が最初に唱えたこの考察が現在広く受け入れられています。）
近江八幡市教育委員会の詳細測量調査報告（2008年3月）でも、地域で岩崎山と呼ぶ山に城跡がないことが考察されており、上記と同じ考え方で北之庄山を岩崎山の山域に含めて考えることで、文献の「岩崎山の城」を北之庄城に同定しています。

八幡山縦走路上の目立つピークは、北から岩崎山２７８ｍ（向山、望西峰）→北之庄山２５４ｍ（深谷山）→八幡山271.8m（鶴翼山、トノ山、船木山）とつづきます。
歴史的な地名、地元で愛される地名を尊重いただきますよう、全国の山愛好家の皆様にお願いいたします。以下の参考資料も参照ください。

参考（P278の名称に関して）
・八幡山縦走路上の各ピークの呼名についての解説ページ
https://kitanoshojo/kitanoshojo5.html
・八幡山縦走路上の各ピークの呼名について(鶴翼山、北之庄山、岩崎山)ｐｄｆ
https://uenosato.net/kitanoshojo/pdf/hachimanyama_v3.pdf
（各ピークの名称についてまとめられています）
・北之庄城（岩崎山城）についてｐｄｆ
https://uenosato.net/kitanoshojo/pdf/kitanoshojo2403.pdf
（岩崎山P278と北之庄山P254,岩崎山城の関係について記載あり）

※P278の呼称
国土地理院地形図に名称のない２７８ｍ峰の呼称の候補としては、地元で使われる以下の通称が候補になります。→岩崎山、向山、ボンサン山
公的に使用された実績から岩崎山とすることを提案します。
・明治期の地積図には、岩崎山と表記されています。
・近江八幡市教委発行の北之庄城「詳細測量調査報告書」（２００８年３月）にも、P27８が岩崎山と呼ばれていることが記載されています。
・P２７８の麓周辺では、「岩崎」が町名、橋名、旧バス停名（現在は病院前に変更）などに使われています。
・ピークを囲む山域を町内にもつ３町（北津田町、円山町、北之庄町）では古くから向山（むかいやま）と呼んでいます。
・沖島の漁師は、湖上からの目印としてこのピークをボンサン山と呼んでいます。

※P254に関する誤解
北之庄城を岩崎山城とも呼ぶことの類推から、城跡の山を岩崎山とする記述がしばしば見られますが、これは誤りです。城跡がある現在の山の名前から「岩崎山城」と呼ぶわけではありません。江戸時代の文献に記載のある「岩崎山の城」がどこにあるかは、長らく確定していませんでした。研究者によっては八幡山とする考え方もありました（秀次の八幡山城の前に岩崎山城があったとする考え）。文献の「岩崎山城」が北之庄城跡を指すことが明らかになったのは平成になってからです。現在の岩崎山に城跡がないことが、長らく「岩崎山城」の所在が謎であった理由です。