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更新日:2013年10月23日 訪問者数:49271
ジャンル共通 技術・知識
焚き火の指南
焚き火のエネルギーは強力です。お湯はすぐにカンカンに沸き、ずぶ濡れの服もぱりぱりです。そして橙色の火を見て語り、黙り、思索する時間の尊さよ。マッチ一本カンバの皮一枚で火をおこす身体能力の尊さよ。ぜひ焚き火をして山と融和して欲しいです。
イグルスキー米山
焚き火していいのか?とよく問われます
焚き火に限らず、山でそんなことをしてはいけないのでは?と思われている行為がいくつかありますが、そこには混乱があります。登山道や山頂や山小屋付近は、「山」ではなくて一般社会です。誰かが通る事を前提に誰かが整備しているところですから、一見「山」のようですが、たくさんの人が行き来する公園のようなものだと私は思います。公園利用者にふさわしいふるまいをするべきだと思います。そういう場所は、ここでいう「山」ではありません。焚き火は登山道ではなく山でしましょう。山火事にならぬよう、必ず水のあるところで。夏なら沢で。しかも流れ際の、焚き火跡の残らないところで。夏に数回ある大雨増水で、焚き火跡がすっかり消えてしまうような場所が好ましいと思います。冬ならば、雪の上で、「公園」からは離れた場所で。雪が溶けても跡の残らぬ場所で。
焚き火点火のメカニズム/細い木が燃え尽きる前に次の太い木につなぐ
火をつける仕組みです。
太ももの太さの薪、腕の太さの薪、指の太さの薪、鉛筆の芯の太さの薪の4種類を用意します。それから焚き付けにダケカンバの皮。最終的に太ももを燃やすために、カンバの皮から火をつけます。カンバの皮は雨の中だろうが30秒くらいよく燃えてくれます。それが消えるまでの間に「鉛筆の芯」太を赤く燃やします。そしてそれが燃え尽きる前に「指」太に・・・と、順番に火をつけて行きます。これが順序よく行くように初めに太さごとに分類し、組んでおきます。
そして大切な事。ピタゴラスイッチやドミノみたいに薪を組んで火をつけたら、触りたくても触らないこと。まして複数の人でいじり始めると、火はつきません。一人に任せて、「指」太の薪に火がついて赤いオキになるまでは触ってはいけません。風も当たらぬよう後述のお風呂マットで防風しましょう。途中で消えたら、また消えたところから始めます。「鉛筆芯」太に、「指」太にと、ひとつでも先に赤いオキがつけば進んでいます。
「指」太についた後は仰いだり風を送って火を広げても大丈夫です。
焚きつけ
初めにマッチで火をつける焚き付けとして、最も効果あるのはダケカンバの皮、ガンピです。これは欲しいときにあるとは限らないので、歩いている最中見つけたら、拾っておきます。生きている木の皮を剥ぐと木が痛がるので、倒木や、強風で飛んで落ちているやつを拾いましょう。残雪期なんかは雪の上にたくさん落ちていますし、倒れたてホヤホヤの倒木からは一年分の焚きつけがとれます。ナイフを出してイソイソ剥きましょう。
カンバの燃える匂いは焚き火儀式に欠かせない物です。メタやエスビットや文化焚き付け(ブンタキ)を使うと、焚き火の神聖さが多少落ちます。
とはいえ緊急時に焚き付けに使えるものとして、ガムテープ、お菓子の包装ポリ袋なども使えます。臭いですけど。
良く燃える木は
沢や海で水に浸ったのち河原に転がっている白やクリーム色になった流木が燃えます。根っこごと流木になったものは鉛筆の芯の太さの骨みたいになったのがくっついています。この細いものは、河原の岩の下の陰になっているところに挟まっていたり、岸辺の立木の下の、少し洞窟みたいになっているところにたまっていて(増水の時に集まって残される)、雨に濡れず乾いています。
冬なら立ち枯れの針葉樹の木、これを倒して薪とします。生きている針葉樹の枝の、下の方は枯れてぽきぽきになったやつがくっついています。これもよく燃えます。
薪切りノコギリで長さ1.5m以内にそろえて組みます。
焚き火最大のコツは、道具や技術ではなく、いかに点火初期に燃える細い薪を見つけるかです。どんなのが燃えて、どんなところに落ちているかを知り、天場に着く少し前からみつけて多少拾っておくのです。生木だけではなかなか火は着きません。
組み方
いろいろ流儀はあるでしょうが一例です。
太腿大は、最後まで火床として鍋の台になってもらいます。その上に腕の太さを並べここまでが火床です。その上にガンピを敷いて、その上に鉛筆の芯あるいは鉛筆太、そして指太を適当に空気の隙間をあけて並べます。ドミノみたいに仕掛けましょう。
雨の日は
雨で焚き火をあきらめるなんてもったいない。タープの下で焚き火をすればずぶ濡れの体がよく乾きます。タープは片側を上げ傾斜をつけて、火で燃えないように高い位置に張ります。
薪が濡れていると火を着けにくいけれど、乾いた鉛筆大の薪さえ見つければ大丈夫です。
一度天場を離れ、又帰る間に雨が降りそうなときは、焼け焦げた面を裏返しにしておいたり、フキの葉をかけておくと、留守中雨で濡れず再び火をつけ易い。
眠る時一度消して、翌朝点火するときも同じ。その際、焚き付けは夜の雨に濡れないようフキの葉をかけるか、タープの下に入れておく。朝の火はすぐに着きます。
鍋は飯盒 
太腿や腕太の薪を安定させ、その上に鍋を置いて料理します。片手鍋式のよくある鍋だと、取手の樹脂が融けてしまいますし、熱くなってしまって持てません。焚き火にはアルミ飯盒が一番です。熱くてもつり下げに後述のモテギを引っ掛けて簡単に火に載せたり下ろしたりできます。万が一土台が焼け落ちて、鍋がひっくり返っても、飯盒ならば蓋が開かず中身が出たりしません。
伝統的陸軍ソラマメ型の他に、丸形飯盒大中小三つセットなんかもあります。蓋が食器に使えて便利です。鍋は木のヤニが焦げ付いてギトギトになるので、スーパーのポリ袋かなにか用意しておいてしまいます。この匂いがいいのです。
モテギ
この飯盒をひょいひょいととれる棒を作りましょう。図のように長さ60センチ太さ2センチくらいの枝でひっかけ部を持った棒を作ります。熱い煙いの飯盒を、簡単にとって、茹で加減を見られます。モテギの先を鍋のふたに触れさせると沸いているか振動でわかります。
教えてくれたのが海外遡行同人代表の茂木完治さんなので、私は「モテギ」と呼んでいます。
道具はノコギリ、ナイフ、お風呂マット(ウチワ)
焚き火を仰ぐためにも、マットはお風呂マットをお勧めします。市販の物を半分に切ると60センチ×45センチくらいになり、寝るときのマットとしてもちろん、焚き火煽ぎに手頃で、焚き火の脇の座布団にも手頃、ザックの中にもタテに入るので、甲羅側にいれてパッキングするとザックがきれいに整います。エアマットじゃ煽げません。それよりもパチパチ火の粉が飛んで、上に落ちたら穴があいてお陀仏になります。
特にカラマツの木はよくはじけるのでご注意。火の粉で穴があいて泣くような立派な服は着ない方が無難です。
煽ぎ道具、もちろんウチワでもOKです。
焚き火食
簡単な物を紹介します。シャウエッセンをナイフで尖らせた枝に刺して遠火であぶって、皮がひび割れて油がじゅっと出たところでかじります。
同じようにベビーチーズを焼くと表面がカリッと焦げ、中はとろりん、ハイジのチーズです。
また、パンの生地を持って行って、細長く伸ばして棒の先にくるくる巻いた物を遠火であぶるとパンが焼けます。青森の小学生にはイベント等で大人気の棒パンと言います。
釣ったイワナをフライパンで照り焼き中です。
塩ホルモンを焼いてます。焼くだけです。
脇で眠る
焚き火の脇で酒飲んでシュラフカバーでゴロ寝。天の川や流れ星を見て眠ります。
火が消えると寒くなって目が覚めますから、枕元には薪を用意しておきます。3時間に一度くらいは薪を足します。山ではどっちみちそんな感じで起きると思うのでそういうものだと思えば苦になりません。背中を火に向けて眠ると、全身が暖まります。マタギの人が言っていました。夏でも毛糸の帽子をかぶって眠ると安眠します。
寝相の悪い人は火傷しないように注意です。
また、夜半雨が降った時寝ぼけても避難できるよう、増水の心配の無いところにタープは張っておきます。勿論雨が降り出したら河原は危険なので寝ていては行けません。沢登りの天場は、上流部の急な降雨による突然の増水、鉄砲水が及ばない場所、そしてより高いところに登れるところを選びます。
後片付け
天場を去るときは水をかけ消火し、燃えかすを川に投げ込んで去ります。いずれ豪雨増水があれば、河原の焚き火跡は、きれいさっぱり消えてなくなります。
雪山なら大きく陥没した焚き火跡に雪をかけ、埋め込んでおきます。
燃え残りのアルミ泊などは持ち帰りましょう。
救助を待つのろし
もし怪我で動けず、ヘリの捜索を待つような場合、焚き火の煙は空からよく見えるのではないでしょうか。上から見ると、手振ったくらいじゃ全然わかりません。その場合針葉樹の生の枝を炎に入れると、葉がばちばち燃えて、すごく豪快に煙が出ます。どんど焼きです。
手ぶらで行く山の喜び/火をつける事の意味
90年代以降、家の庭で焚き火するとダイオキシンがどうのと、近所に煙たがられるようになりました。田畑で野焼きも迷惑扱いです。しかし火の扱いを忘れ、安全安心便利な社会で野生を忘れては、どこか平衡がとれないのではないでしょうか。適切に火を扱い、刃物を使う機会は、数百万年続けて来た、人にとって欠いてはならない行いではないでしょうか。
江戸時代の紀行家、橘南谿の「東西遊記」のなかで、暗い山道を歩くはめになった旅人が、心細かったところ一休みして焚き火すると、その陽気が体に充ち、小躍りまでして「小唄など歌ひつつ」元気を取り戻して山を下りていく一文などがありました(「江戸の紀行文」板坂耀子)。
デルスウ・ウザーラは焚き火をするとき死んだ妻や子供たちに語りかけていました。漆黒の中で火を見ると、死んだ友達と語らうこともできます(「デルスウ・ウザーラ」アルセーニェフ)。
誰かが作ってくれた便利な道具を山に持って行って炊事するより、現地にあるものを活かして身体とほんの少しの道具(マッチ)だけで火を起こすことで、天然世界とより深く調和することができるのではないでしょうか。
追記 国立公園と自然公園法と焚き火のこと
国立公園内での焚き火は法的にどうか?
山の国立公園は自然公園法で4つの区域に分けられます。
特別保護地区と三つの特別地域(第一種特別地域、第二種特別地域、第三種特別地域)で、焚き火が禁じられている(許可が必要な)ところはこのうち最も保護の必要の高い「特別保護地区」だけです。
この四つの色分けは具体的には環境省の各地の自然保護事務所や環境省関連のビジターセンターなどにある地図を見せてもらわないとわかりません。ただし山梨県域に関しては、下記、県のHPから見ることができます。たまたま見つけました。
これを見ればわかりますが、特別保護地区は、ほとんどが森林限界に近い場所以上であり、通常の沢登りでは泊まることの無いような、また焚き火なんかしたら回復が難しそうなことが一目でわかりそうな箇所ばかりです。増水で頻繁に岸辺が流され流木がごろごろしているような焚き火適地は、含まれていないと考えてよいと思います。
ただし、規制区域外とはいえ、人の多い場所でやれば、「国立公園内での焚き火はすべて禁止」と思い込んでいる人に不愉快な思いをさせますから、やめたほうがいいと思います。焚き火は「公園」ではなく、「山」でやりましょう。
また、焚火を禁じる法令は自然保護法の他にもいくつかあるようです。世界遺産地域にはまた別のルールがあります。
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