備忘録として日記にし、
https://www.yamareco.com/modules/diary/364177-detail-203814
山本先生ご本人に確認したところ、「私が啓発したいことになので、このまま広報して
下さい。正確に記録できましたね」と言っていただけたので、多くの方に読んでいただけるよう
ヤマノートにもアップします。(ご指摘があれば削除します。)
JMIA(日本登山インストラクターズ協会)主催「安心安全登山公開講座」
日時:2/14 (金) 19:00〜20:40
場所:日本勤労者山岳連盟事務所
テーマ:安心安全登山の為の体力トレーニングと登高ペース
講師:鹿屋体育大学教授 山本正嘉先生
山本先生は登山の世界の運動生理学、トレーニング学では知らぬ人がいない第一人者。
ご自身も登山歴40年で海外の6000〜8000m級登頂の経験を持つ。登山をデータで科学してわかりやすくされている。私も登山計画や振り返りに活用しているコース定数の提唱者でもある。
講習はクイズもまじえ、とてもわかりやすく興味を持って聴けるように配慮されていた。受講後には直接、コース定数の質問にもお答えいただきました。ありがとうございます。
◇ (クイズ)上りでのキツさを決めているのは?(答えは末尾)
→水平速度?、鉛直速度?、沿面速度?
◇ 過去50年間の年代別山岳遭難者推移(長野県)によると、、、
→昔(1980年代くらいまで)は30代以下の若い年齢層が多かった
→いまは各年代で万遍なく起き、しかも増加傾向
→中高年の事故が多いが、若い人の事故も増えている
→病気の増加(上りでの心臓突然死が増加)=心肺系の体力が足りてない!
→転ぶ事故が非常に多い(下りでのつまづき、踏み外し、スリップ、バランス失うなど)=脚力、柔軟性、バランス、敏捷性など、筋系や神経系の体力が足りてない
!対策 ?普段から登山に役立つトレーニングをし、?山では身体に優しい歩き方をする
◇ 長野県での心臓疾患による事故の特徴
→2013年に14人死亡(うち12人は男性)。日帰り登山の上りが多い、開始から3時間以内が多い
→心臓病の既往歴のある人は一人もいない=普段トレーニングしている「つもり」でも不十分
→無理なスピードで歩いてしまっている=ゆっくり歩き、トレーニングをしっかりするが正解
◇ 上りのハードさ(運動強度)を数値で認識しよう
→上りは平地でのウォーキングの倍以上の心拍数(ウォーキングしても不十分ということ)
→無雪期登山の運動強度(心肺への負担)はメッツ(運動強度指数)だとジョギングと同じ7メッツ
→でも何時間もジョギングし続けられない(心臓突然死発生率が急増する安全圏外の領域=危険)
◇ 軽装備で1時間あたりの上昇率が
→300m程度なら約6メッツの運動(ジョギング&歩行)で安全圏内
→400m程度なら約7メッツの運動(ジョギングなみ)で安全圏外
→500m程度なら約8メッツの運動(ランニングなみ)でさらに安全圏外
→動画でみると駅の階段は約1000m/h(約13メッツ)=短いから登れる
→300m/hだと、1段1段踏みしめながら登っている感じで遅い印象=これくらいで正解
◇ しかし実際は男性は9メッツ、女性も8〜7メッツで登っている人が多い(見た目40歳以上調査)
◇ 登高速度表示のある時計を確認しながら自分の体力に適した登高ペースで登ると心肺トラブルがなくなる
◇ (クイズ)1000m登って下りてくるのに要する「標準的」な所用時間は?
→全国の2000以上の日帰りコースを分析、累積1000m登り下りするのに必要な時間は「6.1時間」
→その場合、水平方向に14.2km移動、登山道の平均傾斜は14.1%
◇ 山と渓谷社の分県ガイドブックによる県別コースタイム設定には大きなばらつき(甘辛がかなりある)
→コースタイムの設定は県(=著者)によってかなり大きなばらつき!
→1000m往復時間は標準が6時間程度だが、神奈川(3.7)、島根(4.4)、東京・愛媛(4.8)は辛め
→長野は6.2で標準に近い。甘めは青森(8.7)、岐阜(8.4)、群馬(7.5)
【トレーニング編】
◇ 高い山にいくためにはある程度の体力が必要=7メッツ対応程度
→ウォーキング(5メッツ)は負荷が弱すぎる、階段昇降(8メッツ)は時間が短い
→一般人が「健康のため」やっているやり方では登山では通用しない。「登山仕様」の必要
◇ 佐賀県金立山(502m)の水曜登山会での調査によると、、、
→登山力は年齢や性別でなく、現在どれくらい山に行っているかで決まる
→月間の登下降距離合計で±2000mくらい実行すると効果大!
→下界で短時間ででき、効果が高いのは、ジョギング+筋トレくらいしかない
→週に1回、低山登山をしている人は大きな山に登ってもトラブル発生率が著しく低い
→トレーニングに王道なし。楽な方法はないが、地道にやれば効果あり
◇ 月に±2000m登下降するには、月1回で2000m登り下りするのではなく、月4回に分ける
→前者は身体を壊す可能性。4回/月で50回/年を推奨
→はじめは無理をせず、体力がついてきたら荷物を多くしたり早く歩く、大きめの山にいく
◇ 男性は40代以降、女性はすべての年齢で、登山者は一般人より脚の筋力が強い
→しかし、安全な登山のために必要な水準には不十分な人が多い
→年齢が上がるほど、ただ山に行くだけではダメ。日常での筋力トレーニングの重要性大
◇ 励行したい3種類の筋力トレーニング
→スクワット(ふともも=大腿四頭筋)、状態起こし(腹筋の外側)、脚上げ(腸腰筋の深部)
→最初は10回×3セット、慣れてきたら15回×5セット、これを週3回程度行う
→これらのトレーニングは膝痛や腰痛防止効果もある
◇ 加齢により低下するのは筋力や持久力だけでなく、特にバランス能力の低下が顕著
→登山中の身のこなしをよくする「登山体操」を、ラジオ体操の登山版として制作
→国立登山研究所、日本山岳ガイド協会、NHKのHPで見られる(基本verとすこやかverあり)
https://youtu.be/IL8kmHo9t60
https://youtu.be/oLY1OE68bDA
◇ (最後のクイズ)?600人(100%) →?105人(18%) →?65人(11%)の値は何を意味する?
→?運動プログラムの参加数(学ぶ)、?実際にトレーニングを1回でした人(実行)、
?6か月後まで継続した人
→ただし?の65人のうち半数はプログラム受講前から当該プログラムをしていた人
→よって、受講したのをきっかけに継続した人は5%程度しかいない(意志=心の強さが大切)
【まとめ】
◇ 講習会で聴いた知識をもとに自分で実際に試しかつ試行錯誤を繰り返さなければ、自身の身体を上手に扱えるようにはならない!
(冒頭のクイズの答えは?鉛直速度でした)
https://www.yamareco.com/modules/diary/364177-detail-203814
山本先生ご本人に確認したところ、「私が啓発したいことになので、このまま広報して
下さい。正確に記録できましたね」と言っていただけたので、多くの方に読んでいただけるよう
ヤマノートにもアップします。(ご指摘があれば削除します。)
JMIA(日本登山インストラクターズ協会)主催「安心安全登山公開講座」
日時:2/14 (金) 19:00〜20:40
場所:日本勤労者山岳連盟事務所
テーマ:安心安全登山の為の体力トレーニングと登高ペース
講師:鹿屋体育大学教授 山本正嘉先生
山本先生は登山の世界の運動生理学、トレーニング学では知らぬ人がいない第一人者。
ご自身も登山歴40年で海外の6000〜8000m級登頂の経験を持つ。登山をデータで科学してわかりやすくされている。私も登山計画や振り返りに活用しているコース定数の提唱者でもある。
講習はクイズもまじえ、とてもわかりやすく興味を持って聴けるように配慮されていた。受講後には直接、コース定数の質問にもお答えいただきました。ありがとうございます。
◇ (クイズ)上りでのキツさを決めているのは?(答えは末尾)
→水平速度?、鉛直速度?、沿面速度?
◇ 過去50年間の年代別山岳遭難者推移(長野県)によると、、、
→昔(1980年代くらいまで)は30代以下の若い年齢層が多かった
→いまは各年代で万遍なく起き、しかも増加傾向
→中高年の事故が多いが、若い人の事故も増えている
→病気の増加(上りでの心臓突然死が増加)=心肺系の体力が足りてない!
→転ぶ事故が非常に多い(下りでのつまづき、踏み外し、スリップ、バランス失うなど)=脚力、柔軟性、バランス、敏捷性など、筋系や神経系の体力が足りてない
!対策 ?普段から登山に役立つトレーニングをし、?山では身体に優しい歩き方をする
◇ 長野県での心臓疾患による事故の特徴
→2013年に14人死亡(うち12人は男性)。日帰り登山の上りが多い、開始から3時間以内が多い
→心臓病の既往歴のある人は一人もいない=普段トレーニングしている「つもり」でも不十分
→無理なスピードで歩いてしまっている=ゆっくり歩き、トレーニングをしっかりするが正解
◇ 上りのハードさ(運動強度)を数値で認識しよう
→上りは平地でのウォーキングの倍以上の心拍数(ウォーキングしても不十分ということ)
→無雪期登山の運動強度(心肺への負担)はメッツ(運動強度指数)だとジョギングと同じ7メッツ
→でも何時間もジョギングし続けられない(心臓突然死発生率が急増する安全圏外の領域=危険)
◇ 軽装備で1時間あたりの上昇率が
→300m程度なら約6メッツの運動(ジョギング&歩行)で安全圏内
→400m程度なら約7メッツの運動(ジョギングなみ)で安全圏外
→500m程度なら約8メッツの運動(ランニングなみ)でさらに安全圏外
→動画でみると駅の階段は約1000m/h(約13メッツ)=短いから登れる
→300m/hだと、1段1段踏みしめながら登っている感じで遅い印象=これくらいで正解
◇ しかし実際は男性は9メッツ、女性も8〜7メッツで登っている人が多い(見た目40歳以上調査)
◇ 登高速度表示のある時計を確認しながら自分の体力に適した登高ペースで登ると心肺トラブルがなくなる
◇ (クイズ)1000m登って下りてくるのに要する「標準的」な所用時間は?
→全国の2000以上の日帰りコースを分析、累積1000m登り下りするのに必要な時間は「6.1時間」
→その場合、水平方向に14.2km移動、登山道の平均傾斜は14.1%
◇ 山と渓谷社の分県ガイドブックによる県別コースタイム設定には大きなばらつき(甘辛がかなりある)
→コースタイムの設定は県(=著者)によってかなり大きなばらつき!
→1000m往復時間は標準が6時間程度だが、神奈川(3.7)、島根(4.4)、東京・愛媛(4.8)は辛め
→長野は6.2で標準に近い。甘めは青森(8.7)、岐阜(8.4)、群馬(7.5)
【トレーニング編】
◇ 高い山にいくためにはある程度の体力が必要=7メッツ対応程度
→ウォーキング(5メッツ)は負荷が弱すぎる、階段昇降(8メッツ)は時間が短い
→一般人が「健康のため」やっているやり方では登山では通用しない。「登山仕様」の必要
◇ 佐賀県金立山(502m)の水曜登山会での調査によると、、、
→登山力は年齢や性別でなく、現在どれくらい山に行っているかで決まる
→月間の登下降距離合計で±2000mくらい実行すると効果大!
→下界で短時間ででき、効果が高いのは、ジョギング+筋トレくらいしかない
→週に1回、低山登山をしている人は大きな山に登ってもトラブル発生率が著しく低い
→トレーニングに王道なし。楽な方法はないが、地道にやれば効果あり
◇ 月に±2000m登下降するには、月1回で2000m登り下りするのではなく、月4回に分ける
→前者は身体を壊す可能性。4回/月で50回/年を推奨
→はじめは無理をせず、体力がついてきたら荷物を多くしたり早く歩く、大きめの山にいく
◇ 男性は40代以降、女性はすべての年齢で、登山者は一般人より脚の筋力が強い
→しかし、安全な登山のために必要な水準には不十分な人が多い
→年齢が上がるほど、ただ山に行くだけではダメ。日常での筋力トレーニングの重要性大
◇ 励行したい3種類の筋力トレーニング
→スクワット(ふともも=大腿四頭筋)、状態起こし(腹筋の外側)、脚上げ(腸腰筋の深部)
→最初は10回×3セット、慣れてきたら15回×5セット、これを週3回程度行う
→これらのトレーニングは膝痛や腰痛防止効果もある
◇ 加齢により低下するのは筋力や持久力だけでなく、特にバランス能力の低下が顕著
→登山中の身のこなしをよくする「登山体操」を、ラジオ体操の登山版として制作
→国立登山研究所、日本山岳ガイド協会、NHKのHPで見られる(基本verとすこやかverあり)
https://youtu.be/IL8kmHo9t60
https://youtu.be/oLY1OE68bDA
◇ (最後のクイズ)?600人(100%) →?105人(18%) →?65人(11%)の値は何を意味する?
→?運動プログラムの参加数(学ぶ)、?実際にトレーニングを1回でした人(実行)、
?6か月後まで継続した人
→ただし?の65人のうち半数はプログラム受講前から当該プログラムをしていた人
→よって、受講したのをきっかけに継続した人は5%程度しかいない(意志=心の強さが大切)
【まとめ】
◇ 講習会で聴いた知識をもとに自分で実際に試しかつ試行錯誤を繰り返さなければ、自身の身体を上手に扱えるようにはならない!
(冒頭のクイズの答えは?鉛直速度でした)
お気に入りした人
人
拍手で応援
拍手した人
拍手
kopalchanさんの記事一覧
- 泉ヶ岳や船形山でもコース定数がわかるように! 24 更新日:2022年08月29日
- Garmin GPSMAP 66iの使用感 40 更新日:2023年01月12日
- 登山靴のひもの末端処理 34 更新日:2021年08月27日
※この記事はヤマレコの「ヤマノート」機能を利用して作られています。
どなたでも、山に関する知識や技術などのノウハウを簡単に残して共有できます。
ぜひご協力ください!
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する