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更新日:2023年02月10日 訪問者数:1481
山スキー/ボード 技術・知識
白馬乗鞍岳バックカントリー雪崩事故の原因は❓気象予報士解説❣       気温上昇「雪崩」「雪崩」とTVが騒いだが、本当に怖いのは1〜2週間後❣
taityoooo
一、23年1月29日に白馬乗鞍岳、谷川岳、2月3日に武尊山などでバックカントリー雪崩事故が相次いだ。原因を気象庁のデータなどを基に分析します。
白馬乗鞍岳のタイプの雪崩は過去に大惨事になった立山真砂岳雪崩があります。
1、バックカントリー雪崩を理解するには積雪断面の観測情報と過去の気象情報の分析が必要だろう。
気象庁のHP → 各種データ・資料 → 過去の気象データ・ダウンロード
長野県白馬選択:白馬のアメダス地点標高は703m(カーソルを当てればわかります)
アメダス地点白馬
気温上昇「雪崩」「雪崩」とTVが騒いだのが1月12日
白馬の最高気温は12日が8.4度、13日が8.6度、14日が8.4度
12日南高北低の気圧配置
13日から14日にかけ低気圧前面の南西風による暖気流入が顕著になり降水が確認できます。
雪崩れたのは白馬乗鞍岳天狗原の東南東向き斜面
地形図(矢印は雪崩ヵ所)
日本雪崩ネットワークの情報により
発生は標高2110mから約300m流下。
地形図読み取りにより発生区の標高100mの落差で約40度の傾斜
この雪崩の原因の一つは気温上昇(暖気流入)により雪面が融解し、その後の気温低下で硬い層ができたからです。
硬い層ができるとスキーヤーの滑走衝撃〈二階から飛び降りたぐらい)を広く伝搬し、もろい層(弱層)を剥離させ雪崩れます。
サラサラパウダー新雪だけでは衝撃は伝搬しない、布団の上に物を落としても衝撃は吸収してしまうからです。

この硬い層が表層雪崩の滑り面となる可能性があります。
しかし、硬い層があってもその後の積雪と接着してしまえば雪崩のリスクは下がります。

硬い層の上にもろい層(弱層)ができると雪崩のリスクは上がります。
もろい層(弱層)を作る雪はザラメ砂糖のような氷の粒状の結晶で、結合しにくい雪です。
種類はありますがザラメ砂糖のようなザラメ雪は、湿った雪の層から供給された過冷却水(水蒸気)による霧氷(ソフトライムsoft rime=柔らかい霜)や融解凍結層の表面が風で飛ばされ堆積したものなどがあります。
地吹雪の稜線、氷の粒が顔に当たって痛いことは体験した人ならわかります。

さて硬い層の上にもろい層(弱層)ができた。
その上にサラサラパウダー新雪が乗った場合、40度を超えるような急斜面では点発生表層雪崩のリスクは高まります。
しかしサラサラパウダー新雪(湿った新雪はすぐ結合するので注意)は結合力が弱く横に広がる面発生表層雪崩にはもう一つ役者が必要なのです。
少し硬さのある締まった板状の層(新雪は時間が経つと締まっていく)は結合力があり横に広がります。
雪山を滑ってる人なら新雪が降って何日か経つと板が沈まなくなることはご存じでしょう。

被災する可能性が高い面発生表層雪崩(バックカントリー雪崩の代表)の役者は
1. 気温上昇などによる硬い層(滑り台)
2. ザラメ砂糖のような氷の粒状の結晶の(弱層)もろくて柔らかい層(ワックス)
3. 少し硬さのある締まった板状の層、新雪は時間が経つと締まっていく(ソリ)

★★3役者がそろったサンドイッチ構造(少し硬い板状層・柔らかい層・最も硬い層)が最も危険なバックカントリー雪崩を引き起こします。
2、どのような気象条件がサンドイッチ構造(積雪断面の観測情報)を作るか?
1月31日に日本雪崩ネットワーク出川さんが白馬乗鞍岳天狗原東斜面1月29日の雪崩の破断面付近の積層観測データ(SPIN)
https://snow.nadare.jp/news/snow_jan/img/230129_tenguhara_fracture%20data.PNG
表面から130cm下のサンドイッチ構造が今回の雪崩の原因です。
雪崩の破断面付近の積層断面観測データ(SPIN)日本雪崩ネットワークより
表面から130cm下のサンドイッチ構造(少し硬い層・柔らかい層・最も硬い層)が今回の雪崩の原因です。
青い棒グラフは左に行くほど硬いことを示します。
気温上昇「雪崩」「雪崩」とTVが騒いだ1月12日〜14日の白馬のアメダス地点の最高気温は三日間8度を超えていて暖気が流入した、13日未明から14日にかけて日本海を低気圧が通過し現地に雨が降ったと言われている。(白馬の降水量7mm)
この硬い層(融解凍結)が今回の雪崩の滑り台となった。(厚さ約20cmSPINより)
アメダス地点白馬の最高気温・日降水量
しかしサンドイッチ構造は上記の積層観測データではもう一つある(表面から80cm下SPINより)
TVが騒がなかったが1月19日〜20日に白馬のアメダス地点の最高気温は7度を超えていて、この時のものだろう。
低気圧が日本海北部を通過したため、白馬の降水量は2mmだった、この時の(融解凍結)硬い層(厚さ約5cmSPINより)が読み取れます。
https://www.data.jma.go.jp/gmd/risk/obsdl/index.php#!table
(画面表示をクリックしてくだい)
アメダス地点白馬の最高気温・日降水量
弱層テスト(ピットチェック)では表面から80cmのサンドイッチ構造(SPINより)で反応したと思うが、なぜ、表面から130cm下のサンドイッチ構造(SPINより)で雪崩れたのだろうか?
日本雪崩ネットワークの事故調査報告
https://snow.nadare.jp/news/2023/000071.html
によると尾根を滑って降りた7人目で雪崩が発生している。
硬くて丈夫な層は衝撃を横に伝えやすいからではないだろうか?
多くの人の滑走衝撃(二階から飛び降りだような衝撃が)で(弱層)もろくて柔らかい層が剥離して横に広がったと思われます。

★★弱層テスト(ピットチェック)をする際には硬くて丈夫な層に着目するべきだと思います。
★★スキーヤーのターンの荷重はいくら?(チョット寄り道)★★
「人間が1m自由落下したときの衝撃は1.5t」というHPを参照
  移動速度が速いほど衝撃は大きくなります。
  http://www.02320.net/free-fall_velocity-and-impact/
  移動速度と制動距離の設定値選定が難しくパスしましたが興味のある方はやってみて下さい。
ザラメ砂糖のような氷の粒状の結晶の(弱層)もろくて柔らかい層はどうしてできる?
雪国の人は寒い朝に霧氷(ソフトライムsoft rime=柔らかい霜)が川のそばで見られるが、離れると無くなるのをご存じでしょう。
過冷却された水(水蒸気)が木の枝にくっ付く氷の粒、木に触れるとパラパラと落ちて、もろい性質のものです。
暖気による湿った雪を掘ると断面は青い、しばらくは凍りつかず、ラッセルは辛いものになります。

積雪の温度勾配は基本的に表面が低く、底は高くなります、水分の多い積雪層から過冷却された水(水蒸気)が供給され上部に霧氷(ソフトライム)ができる可能性は十分あります。(凍結した雪から過冷却水蒸気に変わる)
寒冷地の人は気温がプラスにならないのに雪が減っていくことをご存じでしょう。
また積雪表面に霧氷(ソフトライム)が出来ることともあると思います。

※本来、霧氷の細分は樹氷(ソフトライム)・祖氷(ハードライム)・雨氷であるが、樹氷はスノーモンスターと誤解されるので霧氷(ソフトライム)という。

筆者が弱層テスト(ピットチェック)で積雪を観測し、どういう所に弱層ができ、
テストで落ちやすいか長年にわたり数百回テストの結果。
一定の結論を得ました。

★★弱層ができやすい場所は
1. 過冷却された水(水蒸気)が供給される状況
2. 日射の影響がある所
3. 風の影響がある所

●下記の幌平山のYouTubeは同じ場所で撮影しましたご覧ください。
最後にソリとなる締まった板状の少し硬い層はいつできる?
新雪はいつまでも新雪でいる訳ではありません。
時間の経過とともに沈降圧縮され締まり雪に変化していきます。
気温、日射、風などの変化が少ない場合は1週間以上かかることも、
サラサラパウダースノーじゃなく、その下の締まった板状の雪が最も危険な雪崩の原因の一つです。
雪が落ちたらすべて雪崩。レアケースは色々あります。(湿った新雪はすぐに結合して板状になるから注意)
二、過去にも起きているサンドイッチ構造雪崩。1か月以上持続する弱層。(今まで、この種の雪崩は判断が難しいといわれており、多くのベテランと言われる人が命を落としている)判断方法を考えてみたのでご覧ください。
1、立山真砂岳 2013年11月23日雪崩事故
2013年11月23日に立山真砂岳で7名が亡くなった雪崩もサンドイッチ構造
日本雪崩ネットワークより転写
立山真砂岳の破断面
富山県真砂岳大走沢なだれ調査(2013.11.24)【速報版】P1(防災科研)
雪崩の発生調査(積雪断面観測調査 ピット)は破断地点(発生区)で行うのが基本。
麓でやって正確な情報が得られるのか?
標高が違えば気温が違う
斜面の向きが違えば風の影響、日射量が異なる
いかがなものか。
こしもザラメの弱層がありましただけではおそまつ。
※批判は人類の進歩に繋がる
富山県真砂岳大走沢なだれ調査(2013.11.24)【速報版】P2(防災科研)
幸い積雪観測状況(ピット)写真より
硬い層の判別がつく(硬い層は黒く写る)
写真の底から45cm付近と32cm下は黒い。
32cm下は非常に硬い層、32cm〜45cmが弱層だと言っている。
黒い硬い層に挟まれた弱層、サンドイッチ構造の雪崩であります。
アメダス地点上市の最高気温(立山真砂岳雪崩事故分析1)
11月7日〜10日の気温上昇と
11月15日〜17日の気温上昇の時に硬い層ができ、
サンドイッチ構造になった。
11月11日〜15日の間に弱層ができた気象現象がある。
15日低気圧前面の暖気流入(立山真砂岳雪崩事故分析2)
15日に低気圧の通過前の暖気流入。富山はフェーン現象で気温上昇。
16日は小春日和。
15日気温上昇と低気圧による湿った新雪(立山真砂岳雪崩事故分析3)
15日気温上昇と低気圧による水分の多い湿った新雪が現地に降った。
16日、17日と日照時間が多く。16日夜には放射冷却があったと考えられる。
立山真砂岳 2013年11月23日雪崩事故分析解説
15日に降った水分の多い湿った新雪の表面は16日の晴天による気温上昇とその夜の放射冷却により融解凍結による硬い層がでた。
湿った新雪の層は上部にできた硬い層のため、湿った新雪の層の内部の過冷却水(水蒸気)が外部に出られず温存される事になる。
やがて気温の低下に伴いソフトライム(soft rime=柔らかい霜)(霧氷)に変わっていく。
上部に硬い層があるため、その後の雪の重みで圧着されることもなく。長期間存続する危険な弱層になります。
と考えられます。

反論があればコメントしてくださいね! 議論するのは楽しい!


※気温上昇すると雪の表面が溶けスキーに纏わりつき滑らなくなるストップ雪が出現し修行で、楽しく滑れる状況ではなくなるので行かない。バックカントリー対象外の急傾斜地では点発生湿雪表層雪崩のリスクが高まるが関係のない話である。
また、暖気が入った後の雪山はモナカ雪(表面が硬くて中が柔らかで沈む雪)になり楽しく滑れる状況ではなくなる。融解凍結が強いと沈まなくなりゲレンデと同じ状態になる。
いずれにせよ。現地の雪の状態も理解しないで、雪崩のリスクを語るのはいかがなものか。と思う。
2、玉川温泉雪崩事故(2012年2月1日)もサンドイッチ構造!誘発原因は強風
秋田県仙北市玉川温泉雪崩災害調査報告(速報)
独立行政法人土木研究所 雪崩・地すべり研究センター(著書)
https://www.pwri.go.jp/team/niigata/snowslide1.pdf
破断面での積雪断面調査図(SPIN)
秋田県仙北市玉川温泉雪崩災害調査報告(速報)より
青色棒グラフ左にいくほど硬い
表面から70cm下に柔らかい層
こしもザラメ雪とザラメ雪の混合もある弱層でサンドイッチ構造
地形図
雪崩発生区と強風の方向を図示しました。

風が吹き抜ける平坦地形の縁辺の崖(急傾斜地)が危険。
3、八甲田モッコ沢 2021年2月21日雪崩事故
これもサンドイッチ構造
4、札幌阿部山 2015年2月20日弱層調査
お〜分厚い層が落ちた!スノーシュールッチブロックテスト。表層雪崩の弱層は何時できたか気象予報士1435号解説。 (札幌 阿部山) 2015.2.20 - YouTube
誰でもできる!スノーシュー表層雪崩安全対策弱層テスト。TVの気象予報士さん、雪崩を語る前にやってみたら!やり方は「雪崩予防弱層テスト雪崩安全対策はこれだ!」で見てね!スノーシューの場合、幅は1mでやってます。気象予報士1435号解説。1月18日の手稲ネオパラ山のずれた上層、2月5日および2月11日の小樽塩谷丸谷の落ちた上層の弱層は今回と弱層は同一だと考える。
1月14日の弱層テストでは全く問題なかった。持続性が長いことから「こしもざらめ」だと考えられる、1月14日を中心とした数日の好天による放射冷却により形成されたと考えるのが妥当だろう。
今後も持続するので、札幌周辺の標高500m〜700mを中心とした山の木の無い35°以上の急斜面でのバックカントリーは特に注意を要するだろう。
これもサンドイッチ構造。弱層は1か月以上持続しています。
三、バックカントリー雪崩の約9割は誘発、積雪断面観測(ピット・弱層テスト)で気温上昇でできた硬い層に着目するべき
1、過去の気象データ・ダウンロードの活用方法(暖気の流入時期を把握)と積雪観測(弱層テスト)の仕方『安全対策』
1.行く山の近くのアメダス地点の気温上昇(暖気流入)の時期を確認し把握しておくことです。(サンドイッチ構造内の弱層は1か月以上持続します)

2.その後の積雪量はアメダス項目の積雪量の変化と日降雪量などで把握しておくこと、山はアメダス地点より多く降る事が多いのでその分考えておくことです。(「1m下に硬い層があるだろう」など掘る深さを考えることです)

3.ピットを掘る時には、まず気温上昇(暖気流入)でできた硬い層を確認すること、シアーテスト(シャベルを差し込む、幌平山の最初の動画)が把握しやすいです。(過去に暖気が流入しており予定した深さまで掘っても硬い層が確認できない場合は誰かがピットを掘った跡かもしれません、別の場所でしましょう)掘った跡は埋めましょう。

4.ピットを掘る位置はドロップポイントの下10〜20mの枝尾根上が最適。ずぼ足でアクセス、登山者が雪崩を誘発することはまずない、滑走の雪面加重は徒歩と比べ物にならないほど大きい。
怖くて10〜20m下で積雪観測(弱層テスト)できないと思う、斜面は滑らないことです。

5.滑るルートを積雪観測(弱層テスト)しながら登っていくのがリスクは小さい。
スキーの裏にシールを張って斜面を鉛直に登れる限度の傾斜は30度。(30度以下はまず雪崩れない)
斜面が急になりジグザグに登る所で積雪観測(弱層テスト)して不安定なら、そこから滑りましょう。
オープンバーンに出たら風や日射の影響が強い場所で積雪観測(弱層テスト)しましょう。
登るのが怖いと思う、ルートを滑らないことだと思います。
2、弱層には、ばらつきがありますので1か所、一つのテスト方法で判断することは危険です。「幌平山弱層テスト」
★★弱層ができやすい場所は
1. 過冷却された水(水蒸気)が供給される状況
2. 日射の影響がある所
3. 風の影響がある所

●下記の幌平山のYouTubeは同じ場所で撮影。

場所は支笏湖の外輪山で主稜線から南に延びる枝尾根の主稜線直下。
斜面の向きは南向きで日射の影響を受ける。恵庭岳を回り込む風当たりの強い尾根上。
不凍湖である支笏湖(日本で2番目の貯水量)から厳寒期も過冷却された水(水蒸気)の供給がある所。
周辺の山では霧氷(ソフトライム)がよく見られる。


★弱層には、ばらつきがありますので1か所、一つのテスト方法で判断することは危険です。
不安定度NO1 今日も危険!シアーテスト・スリーサイドルッチブロックテスト 支笏湖幌平山2019. 2.15 - YouTube
雪崩講習会に最適な幌平山。いつもミルフィーユ。三年連続同じ場所で実施、標高700m南面。
雪庇に乗ったら雪崩た! 雪崩弱層テストの結果は ? - YouTube
字幕見てください。雪庇テストは昔から行われている方法、滑る斜面に雪庇を落とし雪崩るか確認、但し安全への配慮が必要 。60〜70cmの弱層の反応が凄い、雪庇テスト・亀裂が走り雪崩た? 1月31日に落ちた弱層は顕在!エクステンデッドカラムテスト(ショートサイズ)で弱層の剥離伝播についてのテスト、作業時間短縮のためショートサイズ。
軽いジャンプで落ちた危険!コンプレッションテストは弱層を押し潰し反応が悪く安全と出るから注意。2017. 2 .10 幌平山・弱層テスト。 - YouTube
氷板の下の弱層は持続する!1月25日乗ったら落ちた弱層は元気か見に行ったが、相変わらず危険状態!傾斜30度でスノーシュージャンプテスト(Rutschblock Test)・コンプレッションテスト・ハンドテストをした。コンプレッションテストは反応が悪く安全と見誤る。
危険状態?すごい乗ったら落ちた!コンプレッションテストは弱層を押潰し反応が悪い安定と出るから注意! - YouTube
乗ったら落ちた。いつ雪崩てもおかしくない! 2回目の50cmの反応がすごいΣ(・□・;) コンプレッションテストは弱層を押し潰して反応は悪い安定と出るから注意!弱層テストは平らな所でやらないように。滑る斜面で最大傾斜がベスト。欧米じゃ平手タップが主流。弱層テストは、2種類3ヶ所でしました。ショベルコンプレッションテスト。
四、沢型地形は危険で尾根は安全て本当か?
北海道尻別岳南斜面で2019年2月3日発生した雪崩映像
先行グループ2名が沢型地形を滑った後、先行者が滑り、下から撮った映像(一つ目の動画)
https://youtu.be/JWw23a4pdmE
撮影者(4人目)はスキーヤーズライトの尾根からドロップ雪崩を誘発した
スキーヤーズレフトの沢型地形に逃げこむ(二つ目の動画)
https://youtu.be/8EqS558yhdQ
2019.2尻別岳 間一髪で雪崩から逃れる - YouTube
前日は荒天。数人滑ったあとに起こる。
初速が200キロ新幹線並み、なんてことはない。
ミスリードだ。
筆者は雪崩を誘発したことは、何度かあります。
小尾根を小回りで滑りおりた時、誘発し亀甲もよの亀裂の上を二回ターンして直滑降から右に逃げ込み、
難を逃れました。雪崩は200m落ちて行きましたが点発生だったので逃げれました。
常に逃げる方向を意識しておくことも必要だと思います。
現場を知らない人がコピペで雪崩のリスクを語るのは、いかがなものか。
2019年2月3日尻別岳雪崩発生映像 - YouTube
前日は荒天、暴風。先行者グループ2名滑走。同行者1名滑走後の2番滑走時に雪崩発生。怪我人無し。
23年1月29日に白馬乗鞍岳の今回の雪崩でも誘発したのは7人目で尾根を滑っている。

ボウルを伏せたような凸型の頂点の下は物が落ちやすい。
尾根は凸型、しかも尾根は風当たりが強く、雪の層が不安定になり易い(前記)
沢の凹型は底に向かって雪が持たれ合っているので落ちにくい。
尾根も傾斜がなく広いのであれば問題ないと思いますが、凸型地形や尾根の縁辺は風当りが強く要注意です。
ドロップポイントは風当りの弱い凹型地形の方が安全かも?
但し、沢型地形は自然発生雪崩の走路となるので、この事は頭に入れておいて欲しいです。
五、残り1割の事故、自然発生雪崩の地形的危険個所と強風の向き
雪が落ちればすべて雪崩。ほとんど事故がない全層雪崩がどうだこうだと騒いでも意味がない。
自然発生雪崩の地形的危険個所
乗鞍岳位ヶ原の雪崩事故(2021年3月14日)
風が吹き抜ける平坦地形の縁辺の崖(急傾斜地)が危険。

大雪強風の時に雪山に登った経験がある人ならホワイトアウトして、どこが斜面か空か分からない。
修行以外なにものでもない。楽しくないので、する人もいない。レアケースを騒いでも意味がない。

しかし、春先になると日本海の海水温が下がり水(水蒸気)の供給が減ると晴天強風という気象が現れる(特に積雪の少ない地域)北西の風で寒気が流入し地吹雪となり平坦地形の雪を吹き飛ばして縁辺の崖に吹き溜まる。
重量バランスが崩れ自然発生雪崩が発生する。

※緑○が雪崩発生。赤矢印が強風の向き。
那須の雪崩事故(2017年3月27日)
緩やかな平坦な尾根の縁辺の崖(急傾斜地)が危険。

この舌のような尾根は溶岩が冷え固まったもの。
縁辺の崖(急傾斜地)は風が収束し雪面に変化を与える(磨く・削る・移動する)

南岸低気圧の接近により南東風が吹く。
風は尾根に当たって上や右に向きを変え収束による強風となって斜面を磨く、雪崩発生区ではアイスバーンになってたかもしれない。

南岸低気圧が通過後、北西の強風により尾根の平坦地の雪は地吹雪となり雪崩発生区に吹き溜まる。
重量バランスが崩れ自然発生雪崩が発生の条件は整う。

※矢印は強風の向き。赤〇が雪崩発生。
六、まとめ      (23年1月29日の白馬乗鞍岳雪崩事故の弱層はこうしてできた)2月22日追加
1、日射の疑問?
雪崩の破断面付近の積層断面写真 日本雪崩ネットワークより
「融解凍結層 1/16の日射」と記載がある。
アメダス地点白馬の日照時間
1月16日、17日の日照時間。
16日は日照時間0
日本雪崩ネットワークの雪崩の破断面付近の積層断面写真によると「融解凍結層 1/16の日射」と記載がある。
しかし、1月16日の気象庁のアメダス地点白馬の日照時間は0だ。
この矛盾に疑問が残った。
1月16日12時の天気図
白馬付近の等圧線は横に寝ていて間隔も広い、気圧の尾根で晴れていたかも?
疑問は解けた?
https://yamap.com/activities/22024414
1月17日の「霧の中を、八方山へ すると、徐々に霧が晴れて完璧な青空」ヤマップの山行記録によると八方山では快晴、白馬乗鞍岳、天狗原も見えてる。(写真から)
アメダス地点白馬の日照時間1.1時間で晴れてない。
盆地霧で晴れなかった、雲海の下、だったのだ。
1月16日も風の弱い気圧配置で盆地霧だっただろう。
日本雪崩ネットワークさんの「融解凍結層 1/16の日射」は信用できます。
1月17日15時の天気図
天狗原では快晴
その日の夜は放射冷却があっただろう。
2、弱層はこうしてできた
1,気温上昇暖気流入(アメダス地点白馬の最高気温は12日が8.4度、13日が8.6度、14日が8.4度)により雪の表面に硬い層ができた。

2,13日から14日にかけて暖気を伴った低気圧により水分の多い湿った雪が硬い層の上に降った。

3,16日から17日にかけ晴れて日射により湿った雪の表面に硬い層(サンクラスト、融解凍結したザラメ雪)ができた。

4,湿った新雪の層は上部にできた硬い層のため、湿った新雪の層の内部の過冷却水(水蒸気)が外部に出られず温存され、その後の気温の低下(17日夜の放射冷却など)に伴いソフトライム(soft rime=柔らかい霜)(霧氷)に変わっていく。

5,上部に硬い層があるため、その後の雪の重みで圧着されることもなく。長期間存続するサンドイッチ構造の危険な霜系弱層になったと考えられます。

※雪の分類で言うと、こしもザラメ雪の結晶が溶けてくっついたのが、ザラメ雪、しかし自然界は言葉でスパット分類できるほど規則正しくはなく中間的な雪は存在します。
ザラメ雪の表面の一部がこしもザラメ雪ぽくなっていることは良くあり、下がメーンでサブ的に剥離することはよくあります。(弱層テストで二段落ち)
https://www.youtube.com/watch?v=OutnXB1PPlo

※自然はアバウト、言葉で覚えるのではなく。現場で覚える。
雪崩弱層テスト危険サインはこれだ!テストのやり方(字幕)バックカントリー雪崩対策エクステンデッドカラムテスト  Extended Column Test - YouTube
初めて雪崩弱層テストをやってみようと思われるかたにも分かり易くメカニズムを説明します。解説見てください。

雪崩にはいろんな種類がありますが、一般的なバックカントリーフィールドで最も被災する確率が高い、大きな表層雪崩(面発生表層雪崩)を対象としたテストを行いました。

一般的なバックカントリーフィールドは傾斜40度ぐらいまでですので、降雪中、直後に特に急斜面で砂が崩れ落ちるようなタイプの雪崩(スラフ雪崩)は横へあまり広がらずリスクは少ないです、雪崩注意報の対象はこのタイプの雪崩です。

大きな表層雪崩(面発生表層雪崩)は滑り台となる弱層(滑り面)とソリとなるスラブ(板状雪塊)がなければ発生しませんが、晴れていても、気温が低くても起こります。

風と日射の影響を受けやすい。支笏湖幌平山南斜面は雪層が不安定になり易い。

まず風で運ばれた雪は硬くなりスラブ(板状雪塊)となります。
歩道用のロータリー除雪車が置いていった新雪の塊、翌朝、プラスチックの雪ハネでは歯が立たない事はご存じでしょう。新雪は転がすと硬くなるのです。

支笏湖周辺は冬でも晴れる確率が高い。
春先、北斜面では重い新雪なのに南斜面は滑り易いサラサラのザラメになることはご存じでしょう。冬でも太陽光が直角に近い角度で当たる南斜面では表面がザラメになり、これが弱層(滑り面)となるのです。

滑り台となる弱層の脆さとソリとなるスラブの硬さをテストで調べるのです。
特に硬い層の上の弱層は危険です。

雪の層が下に行くほど徐々に硬くなっていく場合は安定していて、硬い層の下に柔らかく脆い層がある場合は不安定と言えるでしょう。

Extended Column Test(エクステンデッドカラムテスト)手軽にでき、スラブが柔らかいと落ちにくく、弱層の剥離破断の伝わり方(横への広がり)が把握し易いが、タップによる荷重に限界があり、シャベルが沈まなくなる深さの反応まででしょう。
深いところの判断はRutschblock Test(ルッチブロックテスト)に依るべきだと思う。

危険サイン(弱層テスト評価)は傾斜30度以上で実施して(急斜面の方が敏感に反応。平な所でやらないように。)

Extended Column Test(エクステンデッドカラムテスト)はブロックの端に乗せたシャベルの上を平手手首10回、平手肘10回、拳肩10回まで落ちれば危険。(横への広がりを見るため)

Rutschblock Test(ルッチブロックテスト)は乗ったら落ちた、軽いジャンプ1回で落ちたら危険。

底があるパウダーの場合、スラブが潜んでいる可能性があります、ストックのリングを差し込んで止まるところがあればテストをするべきです。

点発生表層雪崩を誘発した経験があります。雪崩の上で2回ターンして横に逃げました。点発生は横へあまり広がらないので転倒しなければ埋まりません。

面発生表層雪崩は横へ素早く広がり、逃げれません。ビーコン過信は危険です。完全に埋没すればまず助かりません。
雪崩後、破断面が現れるのが特長です。


まずは傾斜に意識して掘ってみる事です、いろんな斜面でピットチェックテストすると自ずと危険な斜面は見えてきます。


二週間後、雪庇崩落雪崩発生ご覧ください。
https://youtu.be/nDbKknOt2PM

支笏湖幌平山2018.01.31
七、おわりに
読んでいただきありがとうございます。

TVの気象予報士さん憲法13条の個人の尊重、マイノリティーの価値観尊重してくださいね。
輸血拒否事件最高裁判決(輸血を拒否する患者の自由意思は医師の救命のためとの理由も否認。医師に民法710条の不法行為による損害賠償を命じる)
バックカントリーは危険な所に入る「個人の自由意思」は裁判所も認めていると言えます。
※最高裁判決は既存の法律を変える力があります。

自然はアバウト、言葉で覚えるのではなく、現場で覚えてくださいね。
TVの気象予報士さん日本の最高峰のルール憲法を守って、偏見・差別を招かない報道してくださいね。

バックカントリーは憲法が保障する意思の自由の決定に伴う自己責任で行えます。(救助は憲法13条、警察法2条の公務、救助される権利を有します)情報収集も自己責任です。

新しい着目は違和感を感じるものですが技術の進歩は新しい発見が必要です。
自己の利益に拘らずバックカントリー愛好家、全体の利益を考えてください。
事故のないことを願っています。
宜しくお願い致します。

日本雪崩ネットワーク出川さん、今回の調査報告は素晴らしいです。
TVの気象予報士が気温上昇「雪崩」「雪崩」大雪「雪崩」「雪崩」とまるで鸚鵡のように
ミスリードな報道をしていますが、これを覆す素晴らしい報告です。
有難う御座いました。
記念すべきSPINをタイトル画像に張らせていただきます。

※表現の自由は憲法が保障。憲法21条2項「検閲は、これをしてはならない。」
自由の侵害は民法710条の損害賠償の対象になりますので、ご注意ください。
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コメント

taityooooさん はじめまして
分かりやすく府に落ちる解説、ありがとうございます。
今まで、わざと理解できないように書いてる?と思うような本ばかりでした。
報道は詳しくないけれど、あの雪崩は別のスキーヤーかボーダーが原因で発生したのでしょうか?
2023/2/13 1:12
tuubuu1957さん
分かりやすかったですか。有難うございます。
日本雪崩ネットワーク出川さんの聞き取り調査報告
「第1グループ(A, B, C)は山頂付近で積雪観察を行い、安全策を取り、地形内の尾根上(図1内P)を滑走。その後、Aは先に下山した。残ったBとCは、同じラインを滑るため、山頂へ再び登ったが、途中、第2グループ(D, E, F)と一緒になった。BとCは、前回と同じラインを滑走。続いてDも尾根上を滑走し、BとCの近くで停止。3人は登り返しのため、シールの装着に取り掛かる。そして、Eが同じ尾根に滑り込むが、雪塊があったため、それを避け、スピードをコントロールしたところ、雪崩を誘発。Eは、すぐにエアバッグを展開し、ほぼ完全埋没の状態で発生区下部にて停止。この雪崩によりCとDが完全埋没、Bが危機的な部分埋没(頭部が積雪内)となった。」によると
A,B,C,B, C,Dと尾根を滑りEが尾根を滑ったところ雪崩を誘発した。
7人目でした(汗)
深くにある弱層は多くの滑走により弱層の剥離が拡がって限界に達すると考えられます。

https://youtu.be/5kSYj1eD2F4
この時の深い弱層は1か月存続したと考えられます。
この時は約1m下でしたが、深くなりすぎると反応しなくなると思われます。

このグループは山頂で積雪観測をしたようですが、
ドロップポイントから10m〜20mほど、ずぼ足で下った所でするべきだったと悔やまれます。
観測は積雪の薄い枝尾根上で
滑走は積雪が深く反応が悪い、凹型をドロップの方がリスクは低いと思われます。
2023/2/13 7:39
taityooooさん
またまた詳細な状況をありがとうございます。
10年近く前、残雪の4月に栂池ロープウェイから、天狗原の中程で、10〜15cmくらいの木が折れていました。巾は狭いけど見える範囲で10本くらい有り、小規模な表層雪崩と思われたが、そのパワーにビビリました。安全そうな樹林だったので、人がきっかけになったか?と。
降雪直後の人気エリアで、多数のパーティが集中するところは、恐ろしくて入れなくなりました。
この先も情報に期待します。
2023/2/13 8:43
taityooooさん
とても分かりやすい説明と動画、テストなどありがとうございました。
大変勉強になりました。
この日記を読み返し、今後の事故回避につなげたいと思います。
2023/2/13 12:32
greenriverさん
評価しただき有難うございます。
今後も精進してまいります。
2023/2/13 17:13
KuonSakatuさん
コメント有難うございます。
温暖化の影響で寒暖の差が大きくなりリスクが増えます。
山に入るときは注意、注意ですよね。
2023/2/13 17:15
久遠 紗克さん
コメント有難うございます。
評価いただき嬉しいです。

過冷却水(水蒸気)
強風による上昇気流に持ち上げられた水滴がこの枝などに当たると枝に氷の膜ができます。
過冷却水か過冷却水蒸気かは微妙な問題です。
氷点下20度の寒い朝、川面に煙(湯気)が立ちます。これは過冷却水蒸気で木にくっ付くと霧氷(ソフトライム)になります。
上下硬い層に閉じ込められた水分の多い雪の層から過冷却水(水蒸気)が供給され、もろい霜の結晶となり弱層と呼ばる崩れやすい層になるというのが、着目した説です。

国から交付金を貰ってる訳でも研究施設がある訳でもなく、ボランティア活動で雪崩研究をしている個人です。
着目した説を評価いただいた方が裏付けを研究され雪崩事故防止に繋げていただければ幸いです。
2023/3/3 11:48
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