閉山中の冬富士登山 事故多発
今年は 夏前からワイドショーで 富士山のことが たくさん取り上げられていました。
私は富士山には 過去 1月〜12月まで 全ての季節での登山をしたことがありますので 多少のことは 判ります。なので これからの冬場の富士登山を 初めてチャレンジしようとする方に お役に立てるかどうかわかりませんが まとめてみようと思います。
富士山は まだ閉山中ですが 登山禁止ということは 条例等で定められていませんので 登山は可能です。
※厳冬期や自然災害が顕著な場合は 法律で「登山禁止」になる山域もあります。
腰の手術を受けたとき 趣味が登山の執刀医のDoctorから 「厳冬期の冬富士だけは 避けてくださいね・・・」と 念を押されてから 厳冬期の富士山へは 年令のこともありますし 5年前に「引退」をしています。
その 腰が痛む中 手術前の2018年。年末厳冬期富士へのチャレンジでの 事を 少し振り返ってみます。
出発前の準備
アイゼン
厳冬期富士に登る 初めの第一歩!を 仕上げましょう。これをしないと、
だぁーるまさんが こぉーろんだっ! では現地ではシャレになりませんので・・・
まだまだかなぁ? ふぃー。しんど。 でも、これだけは、サボるわけにはいきません。命の作業です
つんつん。指先が痛くなるように尖らせます。富士山では、そないに出刃は積極的には使いませんが(角度が30°前後が多い)、長田尾根の一部や、大弛の急斜面やつづら折りの登山道を直登する場合等で、出番を迎えます。
ピッケル
コレは、ピッケルの一番下の部分(石突き)です。富士山の場合は、特にここを 尖らせておかないといけません。
つるんつるんの氷ですから、ここが滑るとバランスを崩してしまいます。
このように四方から削り込んで、先を尖らせます。
先端部分も(ピック)親指の肉に食い込んでピッケルをぶら下げるくらいに仕上げます。
テスト
こちらは、テクニカルピッケルです。主に北ア用です。雪壁にぶち込んでの「登攀」主体の場合は、こちらを「主」として使いますが、富士山の場合は、サブとして使います。一打ちで新聞紙を切り裂けないと不合格とします。
12本爪アイゼンです。こちらも重ねた新聞紙を通過しなければ 不合格ですっ。検査は厳重に?行います。
富士山は 斜めに傾いたスケートリンク?
アイゼンが丸まっていますと、つるぅーっと転んで、ボブスレー・・・・。少しでも加速がつきますと 猛烈な勢いで滑落してしまいます。
アイゼンの爪が 1mm刺されば 御の字です?
現地へ
標高1242m、ベースキャンプC1を設営。(極地法)かっ(笑) 太郎坊トンネル横のPは、狭くて常に満車状態ですので、こちらでまったりと前日を過ごします。
※現在では 太郎坊トンネル横Pは閉鎖されています。
出遅れました。太郎坊トンネル横にはもう、3台の車が止まっていました。 いってきまーす! 午前2時50スタートです。(できれば 午前2時にはスタートしたいものです) ※体力のある方は、もう少し遅くてもでも大丈夫かと思います。
キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!
初日の出じゃなく、ラスト日の出? とにもかくにも2018年最後の一日です。
うっすら紅富士(ピンク富士?)
そろそろ 気合を入れて
山中湖が見えています。しかし・・・雪がこの4合目当たりでもカチカチです。ここでも下手すりゃ、数百mも落ちてしまう・・・。すでにアイスバーンの世界です。
休憩です。もう、辺りはカリカリのアイスですから、落ちないように標柱を挟み込んで休みます。ここでも初期制動で失敗しますと、ボブスレーで止まらない状態の今日の富士山。
出ました。ガチンコアイスバーン
カリカリからコンクリートのような硬さのガチンコアイスバーンに変化しました。
アイゼンを見てください。蹴り込んでも1mmささるかどうかの世界。
コレは…6合目上部で、8合目以上の硬さの氷に仕上がってますよ・・・。本日は特に気が抜けません。
判断
この6合目大斜面は、斜度があります。ダブルアックスで(両腕にピッケル)で登れないこともないでしょうが・・・。標柱の30?上で、滑落実験をしました。すると、すぐに体が流れ出し、ピッケルを打ち付けて停止を試みましたが、ピッケルのピック(先端部分)がはじかれて、標識で股間を打ち付けて止まりました。
「やばいなぁ・・・コレ」
6合目大斜面でのこの硬さは、初めての経験です。まるで、9合目の大弛沢以上の硬さです。( ゜Д゜)
どうする?
ひょっとして、宝永沢は氷じゃなく「雪」じゃないのか?
それから、ブル道詰めの6合目斜度と宝永直登道では、角度が宝永の方がマシです。
「よしっ、宝永沢を大トラバースする!」
「おいっ、もしゴリゴリに凍っていたら、余計にやばいんじゃない?」
「しゃーない。これを直上するよかマシ!」
自問自答が続きます。
ううう。雪じゃありませんでした。思いっきり凍り付いたバーンです。ピッケルも思いっきりぶち込んでも2ミリくらいしか刺さりません。
こういう硬いアイスバーンのトラバースは、背面でピッケルをぶち込んでアイゼンの出刃をぶち込んで、カニサン歩きで行くか・・・
それとも正面向いて、思いっきりアイゼンを足の裏全体で蹴り込んで進んでいくかどうかです。
時間も体力もないので、正面向きで進む。
ひっかけたり、バランスを崩さないよう、慎重に進む。
どうしても硬くて歯が立たなくなれば、背面でカニサン歩きに変える。以上!
先行していた方が降りてきました。聞くと「7合目で撤退。風が出てきたのと、アイスが硬すぎる・・・」でした。
荷物が軽そうでした。
私のザックは13kgを超えています。予備のミトン 予備のダウン2着 予備のフリース 予備のオーバーミトン&テムレス ツエルト 予備ピッケル 水類 ミカン ぜリー二袋 羊羹・飴・パン・マット・・・
万が一のために ビバークできる装備です。
5年前は、軽装でした。
でも失敗を回を重ねるごとに、万が一・・・で 装備が重くなり今回は35Lザックですから、余計に入る入る・・・。やっぱりもう少し小さいザックで来るべきでした。
決断
やっとこさ、平場の岩場でザックを下ろし、「ジャムパンの気持ち」
3000mを超える草鞋館にその左のベンチがある砂走館・・・もう目の前ですがっ…
蹴り込んでも食い込んでくれない、ツルツル&ゴリゴリのアイスバーンの帰り下山は大丈夫なのか? を考えました。
風が出始めました。音も大きくなってきました。
下からの吹き上げが猛烈に始まりました。
しかし、3000m超えは狙いたいです。せめて3050mの草鞋館へ・・・・。
下を見ると宝永乗越の爆風が吹き荒れてきています。
・・・後、33mだけ上がると、標高3000mなのですが・・・実は、ここで2回、行ったり来たりを繰り返し、自分の中で闘いがありました。
これぐらいの風は何回も経験していますし・・・この時期、山頂で15:00というのも経験しています。
しかし、下りが2.8合目までずっと硬いアイスバーンで、一蹴り一蹴りして降りなければならないのは、初めてです。よほど体力を温存していないとできません。
それと、ガスの宝永を降りる時は…必ずと言ってよいほどホワイトアウトに遭遇します。GPSがない自分は、ここでよく道を外してしまいます・・・。
撤退 下山
下山を決意したものの 本日のアイスバーンは、表面だけがテカテカと光っているモノでなく、暑さ10cm以上のゴリゴリの氷です。本当に気が抜けません。
写真では 穏やかな雪の斜面に見えますが、がっちごちアイスで 滑落し初期制動に失敗しますと ボブスレーで 何百メートルも落ちて行きます。 冷や冷やものでした。
でー・・・やっぱりホワイトアウト中・・・・暫く様子を見ます。GPS スマホ等をもっていない身ですので 下手に動けません。
すると、ガスの水分が自分に当たり、自分がどんどん霧氷や樹氷の対象物に変わっていくのがわかります。過冷却された水分(霧)は、何かに付着した衝撃や振動により、一瞬に液体から個体に変わります。これが霧氷や樹氷のできる仕組みです。風が強くて極低温のときは、一瞬に出来上がっていきますねー。
このまま一晩ここで立ちっぱなしでいたら、明日の朝には芸術作品(人間樹氷)と化してしまいそうです。
ガスを抜け出し やっと安全地帯まで降りることができました。 振り返ると富士山は とても美しく見えました。
何度も富士山を振り返ってしまう自分・・・次回はサミットに立とう・・
雑感
獣道で、ザックを下ろし まったりと休憩。
「あっ。みかん二つ担ぎ上げていたんや。食べるチャンスがなかったなぁ・・・」
袋から取り出しますと、見事に凍っていました。
じゃりっ…そんな音をたてながらも 口の中で甘さが広がりました。
はい、たっち。黄昏までに帰ってきました。
しかし、太郎坊トンネル横の駐車場は、車が出せないほど「超満員」
明日の初日の出を山頂?で見ようとする人たちでごった返しています。
「山頂まで行かれました?」
と、聞かれました。 おそらく私より年配で、親子で登る感じでした。
「いいえ、7合目下で撤退です。アイスバーンが今年は発達し、4合目からでも蹴り込んでも1〜2mm程度しか アイゼンもピッケルも食い込んでくれません。大弛は、無理でしょうし、長田尾根を上ることになりますね。風がなければ 大砂走を直登した方がブル道よりは安全です。がんばってくださいね・・・」
そう言いますと
「そ・そうですか・・・」と顔が曇り、息子さんの方を見て、「ヤバいか?」と言う視線を送っていました。
今年は、正月に誰も登頂できていないかもですね。(ネットで調べる限り)
でも、ネットなど上げずに、単独猛者さんが 登ったのかもしれませんが・・・。
ただ、滑落のニュースがありませんので、それだけは よかったです。
三重県の長島スパーランド辺りでは、カウントダウンショーがあるためにSAも大混雑で、路側帯には何?に続いてコーンが置かれ、駐停車できないようにしてありました。
きっと 花火でも派手に打ち上げるのでしょうね。
紅白の松任谷由実 松田聖子 そして サザンを聞きながら 新年を迎えたのは、滋賀県に突入した時でした。
この 歌詞の意味・・・若いころは判りませんでしたが、今はよーくわかります(笑)
午前3:30 神戸着。
午前4時までだと、高速料金がかなりお安くなります(^^♪
なんだろう。
これでいいのかなぁ? 充実感はない・・・
やはり 登頂できなかったら しんどさが倍増しますね。
やはり、ゴリゴリの厳冬期富士に上がるのなら トレーニングしなくちゃダメですね。
仕事に追われ、疲れ果てた体で 急いでやっつけ仕事みたいに簡単に登れる山じゃありません。
今は、土の山か ふかふかの雪の山に行きたいですっ(^_-)-☆
どうか お気をつけて 閉鎖中の富士登山を 事故の無いように 楽しんでくださいね(*^-^*)
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