乳がん手術後、ザックは何kgまで?
乳がん手術後の患者さんは決して少なくありません。女性の9人に1人が乳がんになると言われています。がんと診断された方は「まさか自分が!?」といわれる方がほとんどです。その辺の話はまたの機会として・・・
登山が趣味の患者さんから、外来で「登山はできますか?ザックは何kgまで大丈夫ですか?」と聞かれたことがあり、これは登山好きな医者(私)や看護師でないと深くつめないところであり、ネットで検索してもなかなか情報が無いかと思います。とある病院では、乳がん術後は登山禁止!といわれてパニックになったという書き込みもみました。驚きです。
ということで、私は乳がんを専門にしている医師であり登山者でもありますが、経験と知識を元にまとめてみました。
しかし、以下はあくまで一般論です。患者さんによりされた治療は、乳がんになったかたならご存じですが千差万別です。原則、診察しないことにはそれぞれのご質問に完璧に答えられないと言うこともご承知おきください。
________________________________________
結論から
「何kgまで安全」という明確な医学的基準はありません。
重いものを持つ=リンパ浮腫が悪化する
と思われている患者さん、医療者もまだまだ多いですが、
現在の考え方は、
・重い物を一律に禁止することは推奨されていない
・急に負荷を上げない(漸増負荷)が原則(参考文献1)。
・違和感が出たら中止
です。
リンパ浮腫は乳癌術後に一定の頻度で発症し、多くは術後数年以内にみられるという報告があります。ただし長期経過後に発症する例もあり、生涯ゼロになるわけではありません(参考文献2-4)。
________________________________________
実践的な目安
あくまで一般論ですが、説明の際はこう伝えています。
・術後〜1年:原則慎重。軽装の里山から。
・1〜2年:日帰りで5kg前後から開始。
・2年以上無症状:5kg → 7〜8kgへ段階的に。
・10kgを超える縦走装備は慎重に検討
重要なのは「重さ」単独ではなく、重量 × 行動時間 × 圧迫の総負荷です。
________________________________________
ザックの工夫
・荷重は左右できるだけ均等に
・ウエストベルトで荷重を骨盤へ逃がす
・肩ベルトが強く食い込まないよう微調整
・重い物は背中中央に寄せる
ザックは肩だけで支えるのではなく、体幹と骨盤で分散させる意識が重要です。
________________________________________
行動中のセルフチェック
・定期的に腕を軽く挙上
・張り感、だるさ、指輪のきつさ
・下山後24時間の左右差
違和感があればその日は撤退。
無理をしないことが最大の予防です。
________________________________________
高山は危険?
高度そのものがリンパ浮腫を悪化させるという十分なエビデンスは現時点ではありません。
それよりも、長時間行動・脱水・疲労などの総負荷の方が重要と考えられます。
________________________________________
最後に
「もう山は無理ですか?」と聞かれることがあります。
私は、
「段階的に取り戻すことで、不可能ではありません。」
と答えています。
登山が、乳がん手術後や治療中の体に良い影響を与えることもあります。
「乳がんになった」それだけで、諦めず
できる/できないの二択ではなく、負荷を調整して“できる形”を探す。
その積み重ねが、再開への最短ルートです。
登山が趣味の患者さんから、外来で「登山はできますか?ザックは何kgまで大丈夫ですか?」と聞かれたことがあり、これは登山好きな医者(私)や看護師でないと深くつめないところであり、ネットで検索してもなかなか情報が無いかと思います。とある病院では、乳がん術後は登山禁止!といわれてパニックになったという書き込みもみました。驚きです。
ということで、私は乳がんを専門にしている医師であり登山者でもありますが、経験と知識を元にまとめてみました。
しかし、以下はあくまで一般論です。患者さんによりされた治療は、乳がんになったかたならご存じですが千差万別です。原則、診察しないことにはそれぞれのご質問に完璧に答えられないと言うこともご承知おきください。
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結論から
「何kgまで安全」という明確な医学的基準はありません。
重いものを持つ=リンパ浮腫が悪化する
と思われている患者さん、医療者もまだまだ多いですが、
現在の考え方は、
・重い物を一律に禁止することは推奨されていない
・急に負荷を上げない(漸増負荷)が原則(参考文献1)。
・違和感が出たら中止
です。
リンパ浮腫は乳癌術後に一定の頻度で発症し、多くは術後数年以内にみられるという報告があります。ただし長期経過後に発症する例もあり、生涯ゼロになるわけではありません(参考文献2-4)。
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実践的な目安
あくまで一般論ですが、説明の際はこう伝えています。
・術後〜1年:原則慎重。軽装の里山から。
・1〜2年:日帰りで5kg前後から開始。
・2年以上無症状:5kg → 7〜8kgへ段階的に。
・10kgを超える縦走装備は慎重に検討
重要なのは「重さ」単独ではなく、重量 × 行動時間 × 圧迫の総負荷です。
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ザックの工夫
・荷重は左右できるだけ均等に
・ウエストベルトで荷重を骨盤へ逃がす
・肩ベルトが強く食い込まないよう微調整
・重い物は背中中央に寄せる
ザックは肩だけで支えるのではなく、体幹と骨盤で分散させる意識が重要です。
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行動中のセルフチェック
・定期的に腕を軽く挙上
・張り感、だるさ、指輪のきつさ
・下山後24時間の左右差
違和感があればその日は撤退。
無理をしないことが最大の予防です。
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高山は危険?
高度そのものがリンパ浮腫を悪化させるという十分なエビデンスは現時点ではありません。
それよりも、長時間行動・脱水・疲労などの総負荷の方が重要と考えられます。
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最後に
「もう山は無理ですか?」と聞かれることがあります。
私は、
「段階的に取り戻すことで、不可能ではありません。」
と答えています。
登山が、乳がん手術後や治療中の体に良い影響を与えることもあります。
「乳がんになった」それだけで、諦めず
できる/できないの二択ではなく、負荷を調整して“できる形”を探す。
その積み重ねが、再開への最短ルートです。
参考文献
1.Schmitz KH, et al. Weight lifting in women with breast-cancer?related lymphedema. N Engl J Med. 2009;361:664?673. doi:10.1056/NEJMoa0810118 / PMID: 19675330
→ https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19675330/
→ NEJMページ: https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa0810118
2.DiSipio T, et al. Incidence of unilateral arm lymphoedema after breast cancer: a systematic review and meta-analysis. Lancet Oncol. 2013;14(6):500?515. PMID: 23540561 / doi:10.1016/S1470-2045(13)70076-7
→ https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23540561/
3.Norman SA, et al. Lymphedema in breast cancer survivors: incidence, degree, time course, treatment, and symptoms. J Clin Oncol. 2009;27:390?397. PMID: 19064976
→ https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19064976/
4.McDuff SGR, et al. Timing of lymphedema after treatment for breast cancer: when are patients most at risk? Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2019;103(1):62?70. PMID: 30165125 / doi:10.1016/j.ijrobp.2018.08.036
→ https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30165125/
→ https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19675330/
→ NEJMページ: https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa0810118
2.DiSipio T, et al. Incidence of unilateral arm lymphoedema after breast cancer: a systematic review and meta-analysis. Lancet Oncol. 2013;14(6):500?515. PMID: 23540561 / doi:10.1016/S1470-2045(13)70076-7
→ https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23540561/
3.Norman SA, et al. Lymphedema in breast cancer survivors: incidence, degree, time course, treatment, and symptoms. J Clin Oncol. 2009;27:390?397. PMID: 19064976
→ https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19064976/
4.McDuff SGR, et al. Timing of lymphedema after treatment for breast cancer: when are patients most at risk? Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2019;103(1):62?70. PMID: 30165125 / doi:10.1016/j.ijrobp.2018.08.036
→ https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30165125/
著者のヤマレコページでのこの日記に、もともと記載していた内容をヤマノートに転記しております。
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