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更新日:2026年08月21日 訪問者数:112
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診察室から登山者へΑ〃鮨任匹Δ靴泙后:医者の私が受けている検査、受けていない検査
keenjii
健診どうします?:医者の私が受けている検査、受けていない検査
明日、胃カメラと大腸カメラを受けます。

別に何か症状があるわけではありません。数年に一度、自分なりに必要だと思って受けている検査です。
そういえば、医者である自分は普段どんな健診を受けているのだろう?
あらためて考えてみました。
患者さんと話していると、
「毎年、人間ドックを受けていますから大丈夫ですよね」
「腫瘍マーカーも全部調べてもらっています」
と言われることがあります。
でも私は、検査はたくさん受ければ受けるほど安心、とは考えていません。
そもそも私自身、医者だからといって毎年人間ドックのフルコースを受けているわけではありません。
普段受けているのは、職場で決められている定期健康診断です。
採血、胸部X線、心電図、検尿など。勤務の関係で半年ごとに受けています。
正直、面倒だなと思うこともあります(笑)。
ただ、いずれも比較的侵襲の少ない検査ですし、職場の健診ですから普通に受けています。
では、それ以外に何を受けるのか。
逆に、何を受けないのか。
今回は、医者である自分自身の健診を題材にして、「意味のある健診・検診とは何だろう?」ということを考えてみたいと思います。

<健診は癌を探すためだけではない>
健診というと、どうしても「癌を早く見つけるため」と考えがちですが、もちろん癌だけではありません。
むしろ日常的に私が気にしているのは、血圧、血糖、脂質などです。
高血圧、糖尿病、脂質異常症などは、それ自体ではほとんど症状がないこともあります。
しかし放置すれば、脳卒中や心筋梗塞、心不全、腎臓病などのリスクが高くなります。
特に高血圧は重要な心血管リスク因子であり、適切に治療することで心血管イベントを減らせることが分かっています[1]。私自身も高血圧の家族歴があります。それなりに運動はしていますし、体重にも気をつけているつもりですが、
それでも年齢とともに血圧が上がってきて、不本意ながら昨年末から降圧薬を飲み始めました。まあ、仕方がありません。高血圧は単純に「不摂生をしたからなる病気」ではないからです。多くを占める本態性高血圧は、遺伝的素因と、食塩摂取、肥満、運動、飲酒などの環境・生活習慣因子が複雑に関係して発症します。血圧という形質そのものにもかなりの遺伝性があり、最近のレビューでは遺伝率は30〜50%程度と推定されています[2]。もちろん、だから生活習慣に気をつけても無駄という話ではありません。減塩、適正体重、運動、節酒などは大切です。それでも血圧が高くなってくれば、私のように必要なら治療すればいいのです。
逆に、高い血圧を放置して、将来脳卒中や心筋梗塞を起こす方が困ります。(登山に支障をきたすかもしれません)
つまり健診には、病気そのものを早く見つけるだけではなく、将来大きな病気を起こすリスクを見つけ、まだ何も起こっていないうちに介入するという大切な役割があります。

<癌検診は「見つければよい」わけではない>
では、癌についてはどうでしょう。私は乳癌を専門に診ていますので、患者さんから健診や腫瘍マーカーについて聞かれることがよくあります。特によく言われるのが、「腫瘍マーカーも調べてもらっています」という言葉です。CEAやCA19-9などの腫瘍マーカーは、癌があっても正常なことがあります。逆に、癌がなくても上昇することがあります。例えばCEAは、喫煙だけでも高値になることがあります。癌と診断された人の治療効果をみたり、病状を評価したりする際には非常に有用な場合がありますが、健康な人が何種類も測って、「全部正常だから癌はありません」と安心するための検査ではありません。そもそも癌検診で大切なのは、「癌を見つけられるか」だけではないのです。 
厚生労働省も、がん検診の目的を、癌を早期に発見し適切な治療につなげることで、その癌による死亡を減らすこととしています[3]。しかも、どんな検査でもよいわけではありません。科学的に有効性が確認された方法を、適切な年齢、適切な間隔で受けることが重要です。また、がん検診には偽陽性、偽陰性、過剰診断、精密検査による偶発症などの不利益もあります[3]。
つまり、「癌をたくさん見つける検査=良い癌検診」ではありません。癌を早く見つける。早く治療することで予後が改善する。そして、その検診を受けた人たちで実際に癌による死亡が減る。さらに、検査による不利益まで考えても、利益の方が上回る。そこまで考えて初めて、「検診として意味がある」と言えるわけです。
参照:https://www.yamareco.com/modules/diary/71152-detail-400968
診療室から登山者へ3 女性の方 必見!! 乳癌検診のこと、本当に知っていますか? 

<腫瘍マーカーの中でも、PSAは少し事情が違う>
健康な人がCEAやCA19-9などを何種類も測って癌を探すことには、あまり意味がないと書きましたが、前立腺がんの腫瘍マーカーのPSAは少し事情が違います。
50歳を過ぎた頃、同期の泌尿器科医から、「もう50過ぎてるんやから、PSAくらい測っとけ」と言われました。
そういえば自分では測ったことがなかったので、採血のついでに測りました。(正常値でした)
PSAを用いた前立腺癌スクリーニングについては、大規模な無作為化比較試験が行われています。
日本でも、日本泌尿器科学会から「前立腺がん検診ガイドライン2025年版」が発行されています[4]。
代表的な無作為化比較試験が、欧州で行われたERSPC(European Randomized Study of Screening for Prostate Cancer)です。2025年に報告された最終解析では、主な解析対象となった55〜69歳の男性約16万人を中央値23年間追跡した結果、PSAスクリーニング群では前立腺癌による死亡が13%少なくなっていましたが、前立腺癌そのものはスクリーニング群で約30%多く診断されています[5]。つまり、PSAを測れば前立腺癌はより多く見つかります。しかし、その中には見つけなくても生涯問題にならなかった可能性のある癌も含まれます。いわゆる過剰診断です。また、PSAが高くても癌ではないことがありますし、その結果としてMRIや生検などの精密検査に進むこともあります。ですからPSAも、「とりあえず測っておけば安心」という単純な検査ではありません。それでもPSAには、その検査を使ってスクリーニングすることで前立腺癌死亡が減るのかを実際に検証したランダム化比較試験がある。ここがCEAやCA19-9を健康な人に片っ端から測る話との大きな違いです。
つまり、「腫瘍マーカーだから良い」「腫瘍マーカーだからダメ」という話ではありません。見るべきなのは検査の名前ではなく、その検査を健康な人に行うことで、本当に将来の病気や死亡を減らせるのか。そして、その利益が不利益を上回るのかどうかということでしょう。

<では、自分では何を受けているのか>
今回受ける胃カメラと大腸カメラは3年ぶりです。以前の検査でピロリ菌は陰性でした。同様に大腸内視鏡ではポリープもありませんでした。一方、前回の上部内視鏡では食道が荒れていると言われました。当時は飲酒量も多かったので、その影響もあったのかもしれません。3年後くらいにもう一度診ておいた方がよいと言われたので、今回受けることにしました。ただし、これは、「皆さんも3年ごとに胃カメラと大腸カメラを受けましょう」
という話ではありません。特に、前回大腸内視鏡でポリープがなかった人に一律に「3年後の大腸内視鏡」が必要という意味でもありません。今回は自分のこれまでの検査結果や経緯を考えて、上下部を一緒に受けることにしただけです。
私が定期的に脳MRI/MRAを受ける理由
もう一つ、私が定期的に受けている検査があります。脳MRI/MRAです。私の兄は若くして、くも膜下出血で亡くなりました。その後、母も脳のスクリーニングを受けたところ未破裂脳動脈瘤が見つかり、手術を受けました。
つまり私の場合、第一度近親者である兄と母、二人に脳動脈瘤に関連する病歴があります。脳動脈瘤には家族集積性があることが知られています。アメリカの学会のガイドラインでは、第一度近親者に脳動脈瘤またはくも膜下出血の家族が2人以上いる場合、CTやMRIでのスクリーニングを提示すべきとされています[6]。また、家族歴を扱った系統的レビューでも、第一度近親者に脳動脈瘤または動脈瘤性くも膜下出血が2人以上いる人では、一般集団より未破裂脳動脈瘤の有病率が高く、スクリーニングの対象となることが支持されています[7]。
私は以前、この家族歴を脳神経外科医に相談し、定期的に調べておいた方がよいと言われました。そのため、だいたい5年ごとに脳MRI/MRAを受けています。ここでも、「皆さんも5年ごとに脳MRIを受けましょう」という話ではありません。私には、兄と母という二人の第一度近親者に脳動脈瘤関連の病歴がある。だから、そのリスクに応じた検査を受けているのです。

<眼底検査は……これは私も反省>
眼科については、眼科医から年に一度くらい眼底検査を受けた方がよいと言われています。……が、これはちゃんと実践できていません。1年ほど前、かすみ目が気になったときに眼科を受診して、眼底を診てもらったくらいです。自分では普段から、「視野がおかしくないかな?」とは気にしています。もし何かおかしいと思えば、すぐ眼科に行くつもりです。ただ、これについて調べてみると、それだけでは不十分なようです。日本眼科医会によると、40歳以上では緑内障は約20人に1人にみられ、しかも初期から中期には視野障害を自覚することがほとんどありません[8]。つまり、「視野がおかしくなったら受診しよう」では、早期発見という意味では遅い可能性があります。日本眼科医会は40歳以降の定期的な眼のチェックを勧めています[8]。ここについては患者さんに偉そうなことは言えません。眼科医から年1回と言われているので、私もちゃんと受けた方がよさそうです(笑)。

<新しい検査なら、より良い検診なのか?>
最近は、「尿だけでいろいろな癌のリスクを調べられる」という検査もあります。患者さんから、「先生、あれどうなんですか?」と聞かれることがあります。N-NOSEなど、線虫 Caenorhabditis elegans の嗅覚行動を利用した検査がその一例です。正直に言うと、私は受けていません。ただ、「そんなものは全部インチキだ」と言うつもりもありません。実際、癌患者と健常者の尿に対する線虫の反応の違いを利用して癌を識別しようとする研究は行われています[9]。問題は、その先です。癌患者と健常者をある程度区別できることと、健康な人にその検査を行うことで癌死亡を減らせることは、別の話です。先ほどの癌検診の話と同じです。現時点で、このような線虫検査を一般集団のスクリーニングとして行うことで癌死亡が減少することを示したエビデンスは確立していません。ですから、「新しい技術として面白そう」ということと、「自分も健診として受けるべき」ということは分けて考えています。

<膵癌が怖ければ、毎年CTを撮ればいい?>
膵癌についても患者さんと話すことがあります。もちろん、膵癌も早期に発見できれば治癒を目指せる可能性は高くなります。ですから、「膵癌は早く見つけても意味がない」という話ではありません。問題は、症状がなく、膵癌の特別な高リスク因子もない一般の人から膵癌を効率よく早期発見し、その結果として膵癌死亡を減らせることが証明された一般向けのスクリーニング法がないことです。
米国予防医療専門委員会という機関も、膵癌の高リスク因子を持たない無症状成人に対して、膵癌スクリーニングを行わないことを推奨しています[10]。だから私は、「膵癌が怖いから毎年CTを撮っておこう」「CA19-9を毎年測っておこう」とは考えていません。患者さんにも時々、「もし自分が膵癌になったら、そのときは仕方がないと思っています」と言います。少し乱暴な言い方に聞こえるかもしれません。でもこれは、「膵癌になったら治療を諦める」という意味ではありません。そうではなく、有効性が証明されていない検査まで使って、健康なうちから何とかしてすべての癌を探し続けようとは思わないという意味です。

<「人間ドック異常なし」は、健康証明書ではない>
人間の身体には、いろいろな病気が起こります。癌だけを考えても、胃癌、大腸癌、肺癌、乳癌、前立腺癌など頻度の高い癌だけではありません。非常にまれな部位に、非常にまれな癌ができる可能性だってあります。
では、それを全部調べるのか。毎年CTを撮って、MRIを撮って、PETを受けて、内視鏡をして、超音波をして、腫瘍マーカーを何種類も測って……。そこまでやっても、「今、自分の身体のどこにも病気はありません」
と完全に証明することなどできません。きりがないのです。そして、もう一つ大切なのは、「健診で異常なし」=「病気がない」ではないということです。胸部X線が正常でも、肺癌が絶対にないという意味ではありません。採血が正常でも、癌がないという意味ではありません。腫瘍マーカーを追加して全部正常だったとしても同じです。ですから、何か症状が出たときに、「半年前の人間ドックで異常なしだったから大丈夫」と思い込むのも違います。

<私が考える「意味のある健診」>
こうして自分自身が受けている検査を並べてみると、考え方は意外と単純でした。
科学的に有効性が確認されている健診や検診は、適切な年齢、適切な間隔で受ける。
血圧、血糖、脂質など、見つけて介入することで将来の重大な病気を減らせるリスクにはきちんと対応する。
自分に特有の家族歴や過去の所見があれば、それに応じて必要な検査を追加する。
症状が出たら、過去の健診結果に安心せず受診する。
その一方で、非常に低いリスクまで際限なく追いかけない。
私はそれくらいでいいと思っています。

健診の目的は、「自分には病気がない」という安心を買うことではありません。
将来の病気や死亡を減らせるものを、適切な人に、適切な方法で見つけ、必要なら介入する。
そして、どんな検査にも限界があることを知っておく。
医者である私自身が受けている健診も、結局そんなものです。
さて、そんなことを書きながら、明日は胃カメラと大腸カメラです。理屈では必要だと思って受ける検査でも――やっぱり受ける側になると、嫌なものは嫌なんですけどね(笑)。
______________________
参考文献
[1]McEvoy JW, McCarthy CP, Bruno RM, et al. 2024 ESC Guidelines for the management of elevated blood pressure and hypertension. Eur Heart J. 2024;45:3912-4018.
[2]Stölting G, Tran Vo KN, Haus J, Scholl UI. The genetics of hypertension. Nat Rev Nephrol. 2026;22:137-151.
[3]厚生労働省.がん検診の目的と効果.がん検診では死亡率減少効果が確認された方法を適切な対象・間隔で実施し、偽陽性、偽陰性、過剰診断、偶発症などの不利益も考慮する.
[4]日本泌尿器科学会編.前立腺がん検診ガイドライン 2025年版.東京:医学図書出版;2025.
[5]Roobol MJ, de Vos II, Månsson M, et al; ERSPC Investigators. European Study of Prostate Cancer Screening ? 23-Year Follow-up. N Engl J Med. 2025;393:1669-1680.
[6]Thompson BG, Brown RD Jr, Amin-Hanjani S, et al. Guidelines for the Management of Patients With Unruptured Intracranial Aneurysms: A Guideline for Healthcare Professionals From the American Heart Association/American Stroke Association. Stroke. 2015;46:2368-2400.
[7]Van Hoe W, van Loon J, Demeestere J, et al. Screening for Intracranial Aneurysms in Individuals with a Positive First-Degree Family History: A Systematic Review. World Neurosurg. 2021;151:235-248.e5.
[8]日本眼科医会.よくわかる緑内障―診断と治療―/40歳を過ぎたら受けよう!!眼底検査―目の健康を守るために.
[9]Inaba S, Shimozono N, Yabuki H, et al. Accuracy evaluation of the C. elegans cancer test (N-NOSE) using a new combined method. Cancer Treat Res Commun. 2021;27:100370.
[10]US Preventive Services Task Force. Screening for Pancreatic Cancer: US Preventive Services Task Force Reaffirmation Recommendation Statement. JAMA. 2019;322:438-444.
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