乳がん治療中の登山 ― 治療別に気をつけたいこと ―
よく思われるのが、乳がん術後の患者さんは、何年たてば山に行っても大丈夫なのか?
いやいや、実際は、登山の可否は年数だけで決まるものではありません。それよりも現在どのような治療を受けているか、が大切なんですよ。
乳がん治療中でも登山そのものが禁止されるわけではありません。
ただし、治療ごとに注意したいポイントがあります。乳腺専門の医師の立場から登山者の目線で整理してみます。
________________________________________
■ アロマターゼ阻害薬(AI)内服中の方へ
(レトロゾール、アナストロゾールなど)
AIでは
・関節のこわばり
・関節痛
・骨密度低下
などがみられることがあります。
AIでは手指を中心とした関節痛がみられることがありますが、膝の違和感として感じる方もいます
登山ではもともと下山時に膝への負担が大きくなります。
そのため関節症状がある場合には、下りで痛みや違和感を感じやすいことがあります。
登りは問題なくても、長い下山で膝がじわじわ痛んでくる。
そんな経験をされる方もいます。
そこで、山で意識したいこととして・・・
・ストックを使う。
・急なガレ下りがあるルートは控える。
・縦走は体調と相談して計画する。
・下山時間を甘く見ないこと。
があげられます、
AI内服中の方で関節症状がある場合は、下山での負担を少し意識しておくと安心です。
なお運動は乳がん治療中にも有益とされており、アロマターゼ阻害薬による関節痛を改善することがランダム化試験でも示されています(参考文献1)。
________________________________________
■ タモキシフェン(TAM)内服中の方へ
AIのような強い関節痛は一般的ではありません。
ただし注意したいのは
・ホットフラッシュによる発汗
・体温調節のゆらぎ
です。
夏山では思った以上に消耗することがあります。
また遠征登山などで長距離移動がある場合には、血栓リスクも頭の片隅に置いておくとよいでしょう。
・水分補給をこまめに
・遠征時は適度に体を動かす
・体調が悪い日は無理をしない
というような、コンディション管理が大切です。
________________________________________
■ 抗がん剤治療後(特にタキサン系)
足裏のしびれや感覚低下が残ることがあります。
平地では問題なくても、岩場やガレ場では影響が出ることがあります。
「あれ?踏ん張りが弱い」
そんな感覚があれば無理をしないことが大切です。
・難易度を一段落とす
・鎖場や岩稜は慎重に
・下山路を事前に確認
体力が戻っていても、感覚障害は別の問題として残ることがあります。
________________________________________
■ ベージニオ(アベマシクリブ)内服中の方へ
山で困る副作用の一つは下痢です。
ベージニオでは比較的よくみられる副作用です。
トイレのない縦走路や、水場まで遠いコースは注意が必要でしょう。
平地とは事情が違います。
・内服開始直後は無理をしない
・症状が落ち着いてから山へいく
・トイレ事情のよい山を選ぶ
・水分は多めに持つ
「登れるかどうか」ではなく
「どの山なら安心か」を考えることが大切です。
________________________________________
■ 免疫療法歴・肺障害既往がある方
高山では息が上がるのは普通です。
だからこそ紛らわしいことがあります。
・高度の影響か
・後遺症の影響か
・肺の問題か
出発前に担当の先生に肺の状態が安定しているか確認しておくと安心です。
状態が安定していれば、山が直接の引き金となって急に悪化することは通常は考えにくいと思います。
________________________________________
■ 下山を支える筋力づくり
以前、脊椎管狭窄症の日記でも触れましたが、
(https://www.yamareco.com/modules/diary/71152-detail-361851)
登山では登りよりも、むしろ下りの方がポイントになることがあります。
特に太ももの前(大腿四頭筋)。階段を(可能なら)二段おきにゆっくり下りるだけでも、下山時に使用する筋肉のトレーニングになります。
下山で使用する筋力が弱いと
・膝が痛む
・転倒しやすい
・腰への負担が増える
ということが起こりえます、
そこで、自宅でできることは、
・ランジ
・スプリットスクワット
・段差をゆっくり降りる練習
でしょうか。ポイントは「ゆっくり下ろす」ことです。
運動は乳がんサバイバーにおいて安全で有益とされています(参考文献2)。
筋力を保つことが結果的に山の安全につながります。
________________________________________
まとめ
登山ができるかどうかは、術後何年という年数だけでは決まりません。
治療の特徴を知り、その日の体調を見ながら山を選ぶ。
それが一番現実的な安全策だと思います。
自分の体と相談しながら、少しずつ山に戻っていけばよいと思います。
いやいや、実際は、登山の可否は年数だけで決まるものではありません。それよりも現在どのような治療を受けているか、が大切なんですよ。
乳がん治療中でも登山そのものが禁止されるわけではありません。
ただし、治療ごとに注意したいポイントがあります。乳腺専門の医師の立場から登山者の目線で整理してみます。
________________________________________
■ アロマターゼ阻害薬(AI)内服中の方へ
(レトロゾール、アナストロゾールなど)
AIでは
・関節のこわばり
・関節痛
・骨密度低下
などがみられることがあります。
AIでは手指を中心とした関節痛がみられることがありますが、膝の違和感として感じる方もいます
登山ではもともと下山時に膝への負担が大きくなります。
そのため関節症状がある場合には、下りで痛みや違和感を感じやすいことがあります。
登りは問題なくても、長い下山で膝がじわじわ痛んでくる。
そんな経験をされる方もいます。
そこで、山で意識したいこととして・・・
・ストックを使う。
・急なガレ下りがあるルートは控える。
・縦走は体調と相談して計画する。
・下山時間を甘く見ないこと。
があげられます、
AI内服中の方で関節症状がある場合は、下山での負担を少し意識しておくと安心です。
なお運動は乳がん治療中にも有益とされており、アロマターゼ阻害薬による関節痛を改善することがランダム化試験でも示されています(参考文献1)。
________________________________________
■ タモキシフェン(TAM)内服中の方へ
AIのような強い関節痛は一般的ではありません。
ただし注意したいのは
・ホットフラッシュによる発汗
・体温調節のゆらぎ
です。
夏山では思った以上に消耗することがあります。
また遠征登山などで長距離移動がある場合には、血栓リスクも頭の片隅に置いておくとよいでしょう。
・水分補給をこまめに
・遠征時は適度に体を動かす
・体調が悪い日は無理をしない
というような、コンディション管理が大切です。
________________________________________
■ 抗がん剤治療後(特にタキサン系)
足裏のしびれや感覚低下が残ることがあります。
平地では問題なくても、岩場やガレ場では影響が出ることがあります。
「あれ?踏ん張りが弱い」
そんな感覚があれば無理をしないことが大切です。
・難易度を一段落とす
・鎖場や岩稜は慎重に
・下山路を事前に確認
体力が戻っていても、感覚障害は別の問題として残ることがあります。
________________________________________
■ ベージニオ(アベマシクリブ)内服中の方へ
山で困る副作用の一つは下痢です。
ベージニオでは比較的よくみられる副作用です。
トイレのない縦走路や、水場まで遠いコースは注意が必要でしょう。
平地とは事情が違います。
・内服開始直後は無理をしない
・症状が落ち着いてから山へいく
・トイレ事情のよい山を選ぶ
・水分は多めに持つ
「登れるかどうか」ではなく
「どの山なら安心か」を考えることが大切です。
________________________________________
■ 免疫療法歴・肺障害既往がある方
高山では息が上がるのは普通です。
だからこそ紛らわしいことがあります。
・高度の影響か
・後遺症の影響か
・肺の問題か
出発前に担当の先生に肺の状態が安定しているか確認しておくと安心です。
状態が安定していれば、山が直接の引き金となって急に悪化することは通常は考えにくいと思います。
________________________________________
■ 下山を支える筋力づくり
以前、脊椎管狭窄症の日記でも触れましたが、
(https://www.yamareco.com/modules/diary/71152-detail-361851)
登山では登りよりも、むしろ下りの方がポイントになることがあります。
特に太ももの前(大腿四頭筋)。階段を(可能なら)二段おきにゆっくり下りるだけでも、下山時に使用する筋肉のトレーニングになります。
下山で使用する筋力が弱いと
・膝が痛む
・転倒しやすい
・腰への負担が増える
ということが起こりえます、
そこで、自宅でできることは、
・ランジ
・スプリットスクワット
・段差をゆっくり降りる練習
でしょうか。ポイントは「ゆっくり下ろす」ことです。
運動は乳がんサバイバーにおいて安全で有益とされています(参考文献2)。
筋力を保つことが結果的に山の安全につながります。
________________________________________
まとめ
登山ができるかどうかは、術後何年という年数だけでは決まりません。
治療の特徴を知り、その日の体調を見ながら山を選ぶ。
それが一番現実的な安全策だと思います。
自分の体と相談しながら、少しずつ山に戻っていけばよいと思います。
参考文献
1.Irwin ML et al. Exercise improves aromatase inhibitor?induced arthralgia. J Clin Oncol. 2015.
2.Schmitz KH et al. Exercise Guidelines for Cancer Survivors. Med Sci Sports Exerc. 2019.
2.Schmitz KH et al. Exercise Guidelines for Cancer Survivors. Med Sci Sports Exerc. 2019.
その1 乳がん手術後、ザックは何kgまで? はこちら
著者のヤマレコページでのこの日記に、もともと記載していた内容をヤマノートに転記しております。
この記事に対するご意見、コメントは小生のヤマレコページでの日記にてお願いいたします。
この記事に対するご意見、コメントは小生のヤマレコページでの日記にてお願いいたします。
お気に入りした人
人
拍手で応援
拍手した人
拍手
keenjiiさんの記事一覧
-
診察室から登山者へ�� 「主治医」って誰?――介護保険の主治医意見書と障害年金
3
更新日:2026年09月13日
-
【乳がん術後と登山11】 乳がん術後は「患側の腕を使ってはいけない」? ― リンパ浮腫をめぐる昔の常識と今
3
更新日:2026年09月03日
-
診察室から登山者へ�Α〃鮨任匹Δ靴泙后�:医者の私が受けている検査、受けていない検査
9
更新日:2026年08月21日
※この記事はヤマレコの「ヤマノート」機能を利用して作られています。
どなたでも、山に関する知識や技術などのノウハウを簡単に残して共有できます。
ぜひご協力ください!
コメント
このヤマノートはコメントを受け付けていません。


