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更新日:2026年05月13日 訪問者数:141
登山・ハイキング 技術・知識
登山での歩き方 その1
腹ぺこ丸
登山でよいとされる歩き方とは
 登山での歩き方は大切です。
 その大切さは、私が登山を始めた9年前の時点でネット上にも多く書かれていました。ヤマレコでも歩き方が話題になっていること、ご存知の通りです。
 ただ、もっと話題になっていい。何度繰り返されてもいいくらい、歩き方は大切だ。ずっとそう思ってきました。
 これからしようとするお話のほとんどは、きっとどこかで聞いたことがあるものになると思います。それはきっと、時代や道具が変わっても人体はさほど変わっていないことの示唆であって、これまでもこれからも変わることのない、歩くという行為の普遍性を証立てているからなのでしょう。
 よくご理解されている方には「そんなこともあったっけ」と、そして理解を試みている最中の方にはその一助となれば幸いです。
登山の歩きと日常生活の歩きは違うもの
 「蹴り出し歩き」、「蹴らない歩き方」という言い方を聞いたことがおありかと思います。日常での歩き方と登山でよいとされる歩き方を区別する呼び名になります。
 登山でよいとされる歩き方(以降、これを「山歩き」と呼び、区別します)と日常生活の歩き方(以降、「蹴り出し」と呼んで区別します)との違いは、まさに「蹴らない」ということ、また前足に体重を乗せないこと、この二点に集約されます。
 人間は地面を蹴って歩く生き物で、だから踵とアキレス腱が発達しています。なのに山歩きではそれをやらないことが肝要になる。

 山での「歩く」は、いつもの「歩く」とは違う動作。

 このことは強調する必要があります。
なぜ必要なのか
 日常で歩いている道は凹凸がありません。坂道も、特に私が住んでいる都市部では、ほぼないと言っても過言ではありません。そして山はそうではないことは既に皆様よくご存知の通りです。そこを歩くということは、常に転倒、疲労というリスクを抱え続けることでもあります。
 山歩きはこの2つへの備えとなります。

 転倒は怪我による行動不能と滑落に直結します。
 疲労は、判断能力を奪い、やがて痛みに変わっていきます。

 足攣り、足底筋膜炎、鵞足炎、腸脛靭帯炎、そしてオーバーユースによる痛み。私自身、過去にオーバーユースによる膝の痛みを経験しています。
 これらの予防に効果を期待できるのは、登山において大きな意義があることです。

 山歩きをすれば疲れません。
 山歩きをすれば転びません。

 これが山歩きが必要になる理由であり、同時に目指すべき所になります。
蹴り出しと山歩きの違い〜山歩きのリズムは「1、2、3」
 では、具体的にどう違うのか。写真を添えながら見ていきます。
 まず、蹴り出し歩きをしている写真になります。
写真1、直立
この時点では重心は踵の真上にあります。
写真2、後足の蹴り出し+重心移動
写真1との腰の位置=重心位置の差に注目。
初動と重心移動が同時に起こり、重心位置が動いています。
リズムは「1」
写真3、接地+蹴り出し
移動した重心位置が前足の上にあるため、接地で衝撃が発生します。
これを繰り返すのが蹴り出しの動作になります。
リズムは「2」
 次に山歩きの写真になります。
写真1、直立
写真2、右足の振り上げ
写真1との腰の位置=重心位置に注目。
山歩きは、この時点では重心を動かしません。
具体的な動作感としては「ちえっ」と舌打ちしながら小石を蹴飛ばす時と同じ動作です。
たぶん、全力で蹴飛ばす人はいないと思われます。

リズムは「1」
写真3、接地
重心はまだ動かしません。
そっと「足を置く」動作になります。
「足を置く」という、お馴染みの言葉通りの動作です。

リズムは「2」
写真4、右足に重心を移動
ここでようやく重心が動きます。
リズムは「3」
5枚目、左足の振り上げ
リズムは「1」に戻ります。
 蹴り出しが二拍子の動作だったのに対して山歩きでは三拍子の動作になります。
 では、この違いが具体的にどう作用するのでしょうか。
 まず、速さに差が出ます。蹴り出しが「1、2!3、4!」のリズムで歩くのに対して山歩きは「1、2、3。1、2、3」
 動作の数が増えるため、山歩きは蹴り出しよりも遅くなります。

 遅くなる動きをわざわざする理由はなんでしょうか。
 先述の通り疲労と転倒の予防がその理由になりますが、分けて見てみましょう。
疲労の予防となる理由、それは推進力が違うから
 蹴り出しの動きは名前の通り、後足の蹴り出しで推進力を得る動きです。連続写真で見てみます。
写真1、直立
写真2、蹴り出し+重心移動
後足の踵が浮いています。
爪先で蹴って推進力を得ているためです。
写真3、接地
後足の踵の浮き方が蹴り出す力の大きさを示しています。
写りはブレてしまっていますが、アキレス腱とふくらはぎの筋肉の緊張がわかりますでしょうか?
登山ではこれが疲労の原因になることはよく指摘されます。
 山歩きをする際も前への推進力が必要になりますが、それは体の倒れ込みで行います。
 例えば立った姿勢から前に倒れようとしてみます。すると転ばないように足が出ますが、これでは前足がドスンと接地してしまいます。この動きを写真で見てみます。
写真1、直立
写真2、倒れ込み
写真3、勝手に足が出る
写真4、ただしドスンといく
 そこで足を接地させておき、次に前に倒れ込みます。
写真1、振り上げ
写真2、接地
写真3、倒れ込み
後足の踵に注目すると浮いていません。
蹴っていないことがわかります。

昔から言われることの一つに「靴底を見せないようにして歩く」ということがあります。疲労の防止において合理的です。
 これが山歩きでの動きになります。即ち、重力を使う動きになります。推進力を筋力に頼らないので疲労が少なくなります。今回は割愛しますが、足の振り出しも振り子の原理に頼って筋力の使用を抑えることができます。
 筋力には個人差があります。蹴り出す筋力により推進する場合、速さには個人差が生じます。しかし重力には個人差がありません。
 山歩きをしている場合、所要時間に個人差が少なくなることは特筆に値します。コースタイムというのは本当によくできています。
転倒の予防となる理由、それは重心が動いていないから
 山歩きが実際に転倒を防ぐ構造を見てみましょう。まずは躓き転倒について、蹴り出し時の動きを連続写真で見てみます。
写真1、直立
写真2、蹴り出し+重心移動
写真3、接地+重心移動
写真4、蹴り出し+重心移動中に躓き発生
写真5、重心の不意の移動を止められない
完全にバランス崩しが発生しています。
後足、踵の位置と重心位置の差に注目すると、重心位置が前に出てしまっているのにそれをささえる足が前に出ていないことが躓きの原因であることがわかります。
写真6、転倒
重心位置をコントロールできません。
足を送るのが間に合えば倒れませんが、もし送る足がまた躓いたら……

なおこの時、足の指をぶつけて少々痛い思いをしました。重心位置を制御できなかったことの順当な帰結です。
 次に、山歩きをしていた場合を見てみます。
写真1、直立
写真2、振り上げ
写真3、接地
写真4、重心移動
重心は既に前足に乗っています。これから振り上げる後足に重心は乗りません。
写真5、躓き発生
写真4から重心位置が動いていないため、踏み出す足が止まってもバランスが崩れません。蹴飛ばすだけで済んでいます。
写真6、転倒防止
足の振り上げ→接地の動作間で重心が動かなければバランスは崩れません。
 スリップ転倒の場合を見てみます。テニスボール2個をテーピングで固めたものを踏んでみました。
 蹴り出しの場合、
写真1、蹴り出し+重心移動
この時点で前足に重心が移っています。
写真2、接地+重心移動
接地足には重心が乗っているためスリップを止められません。
写真3、バランス崩し
 山歩きの場合を見てみます。
写真1、振り上げ
写真2、接地時にスリップ
写真3、バランス崩しなし
前足に重心が乗っていないためバランスは崩れません。
 足を振り上げてから接地するまでの間に重心が動いていなければバランスは崩れないことがおわかりいただけたでしょうか。
 前足に体重を乗せないことが肝要となります。
 「ドスドス歩かない」と昔から戒められる理由がここにあります。
歩幅が大きいとバランスは崩れる〜靴1足分
 歩幅が大きい場合と小さい場合の重心位置について見てみます。
写真1、歩幅が大きい
日常生活で歩く歩幅です。
写真2、接地後
写真1、2を重ねたもの
緑、赤の丸印は腰の位置=重心位置を示します。
足の振り上げ〜接地の間に重心が動いてしまっているため、躓き、スリップを防ぎづらくなります。
 歩幅を小さくしてみます。
写真1
写真2
写真1、2を重ねたもの
腰の位置=重心位置の移動が少なくなりました。
バランス崩しを防ぎやすい姿勢といえます。
 重心を動かさずに足の振り上げ〜接地ができる歩幅は思ったより小さいものです。写真から見ると靴1足分くらいといえます。
 「靴1足分の歩幅で歩く」ということは昔からよく言われます。とても合理的で、その合理は疲労と転倒を防ぐことに向けられているように思えます。

 以前、日記のカテゴリに、歩き方のTIPSとして記事を書きました。
https://www.yamareco.com/modules/diary/325441-detail-394885

 「練習しなくてもできる」として書きましたが、これらは重心位置の制御を行なった結果として表れるものをまとめた、という側面があります。そしてTIPSの内容の多くは昔から教えられることと重なります。
 重心位置の制御に注目した結果、古来の教えに立ち戻る。

 登山の教えというものは本当によくできています。

 これまでの話は平らな場所での歩行に注目してきました。
 次回は登り下りでの動作を見てみます。
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