山歩き、実例
最後に、山歩きが実際の登山中に機能した例、逆に失敗した例を挙げて終わりとします。
重心位置がよかったおかげで滑落を防いだ話
2025年の7月から9月にかけて滑落事故が連続した場所があります。東京は奥多摩、七ツ石小屋からブナダワにかけての巻き道です。事故が連続したため七ツ石小屋がXにて注意を呼びかけ、また山梨県警に対策を依頼することになった、異例の事態だったようです。
ご存知の方も多いと思います。現場は平易な巻き道です。ただ片側はキレており、落ちたら止まりません。そういう場所にこそ潜むリスクというものを身を以て経験した話になります。
私が通ったのは11月、既に滑落予防のロープが張られた後でした。事情を知っていましたから、事故にあわれた方々とご親族、対処にあたった小屋や県警のご心労に偲び、通過した後のことでした。
ご存知の方も多いと思います。現場は平易な巻き道です。ただ片側はキレており、落ちたら止まりません。そういう場所にこそ潜むリスクというものを身を以て経験した話になります。
私が通ったのは11月、既に滑落予防のロープが張られた後でした。事情を知っていましたから、事故にあわれた方々とご親族、対処にあたった小屋や県警のご心労に偲び、通過した後のことでした。
でも私は落ちなかった。
重心位置が悪かったせいで救助要請しかけた話
これは北岳を下山していた時の話になります。奈良田まで縦走する計画で肩の小屋に幕営した初日、翌日の天気の心配をしていました。
予報はギリギリ。前線の位置がずれて翌朝に西風が吹いたら、大門沢を下りる前に降られるから中止したほうがいい。そんな予報です。そして翌朝、その西風が霧雨を伴って吹いていました。
夜のうちに西風に変わっていたようです。草すべり分岐までの岩場が濡れていました。スリップを恐れて腰が引けていることを自覚しましたが、安定した姿勢が取れません。
前腿しか使えていない悪い姿勢。現に筋肉が張り始めましたが、長い岩場じゃないからと自分に言い聞かせ、悪いなりに岩場を抜けました。
草すべりを下り始めてしばらく、膝に痛みを感じました。膝のお皿に金属をこじいれられるような痛み方です。
ヤバい。私はこの痛みを知っている。
実は過去に膝を痛めたことがあります。その時は山はもちろん、自宅内の移動すらままならないほどに悪化させてしまいました。それと同じ痛み方をし始めたのです。このままでは歩けなくなる。そうなったら救助要請をするしかありません。
どうにか白根御池小屋にたどり着いたときは心底、安堵したものです。膝は、病院で教えてもらったマッサージで回復させることができましたが、それで治ったということは、当時と同じ原因で痛み始めたということになります。当時、診断されたのは、前腿の疲労の蓄積でした。
重心位置が悪いと、一時間足らずの岩場でも救助要請するまで疲労が悪化することがある。
それを思い知らされた出来事です。
予報はギリギリ。前線の位置がずれて翌朝に西風が吹いたら、大門沢を下りる前に降られるから中止したほうがいい。そんな予報です。そして翌朝、その西風が霧雨を伴って吹いていました。
夜のうちに西風に変わっていたようです。草すべり分岐までの岩場が濡れていました。スリップを恐れて腰が引けていることを自覚しましたが、安定した姿勢が取れません。
前腿しか使えていない悪い姿勢。現に筋肉が張り始めましたが、長い岩場じゃないからと自分に言い聞かせ、悪いなりに岩場を抜けました。
草すべりを下り始めてしばらく、膝に痛みを感じました。膝のお皿に金属をこじいれられるような痛み方です。
ヤバい。私はこの痛みを知っている。
実は過去に膝を痛めたことがあります。その時は山はもちろん、自宅内の移動すらままならないほどに悪化させてしまいました。それと同じ痛み方をし始めたのです。このままでは歩けなくなる。そうなったら救助要請をするしかありません。
どうにか白根御池小屋にたどり着いたときは心底、安堵したものです。膝は、病院で教えてもらったマッサージで回復させることができましたが、それで治ったということは、当時と同じ原因で痛み始めたということになります。当時、診断されたのは、前腿の疲労の蓄積でした。
重心位置が悪いと、一時間足らずの岩場でも救助要請するまで疲労が悪化することがある。
それを思い知らされた出来事です。
重心位置の恩恵はいつでもどこでも受け続けているという話
山では色々なものを蹴飛ばします。つい先週も段差を蹴飛ばしてちょっとのめり、俺もヘタクソだなあとがっかりしたばかりです。
事故の多くは平易な場所で起こるというのはよく聞く話です。のめったのが落ちる所でなくてよかったね、現に七ツ石で落ちかけたんだからと自分に言い聞かせてしまいました。
同時に、これまで無数に経験してきた、「あれ、なんか踏んだ」という出来事や、下山して伸びをしながら「思ったより疲れたな」と感じたこと。それらはどれも、一歩誤っていたら転倒滑落、或いは行動不能に繋がっていた可能性があったと思わざるを得ません。
それらが未然に防がれてきたのは、その時の重心位置に問題がなかったという表れなのだろうとも感じます。
適切な重心位置は常に恩恵を与えてくれます。
平易な場所での事故に関して、「気が緩んだ」「油断していた」というのもよく聞く話です。じゃあ、気を引き締めていたら事故は起きないのでしょうか?
おそらくそうではないでしょう。人間の集中力など、もって精々2時間程度。落ちる難所を通過するような登山が2時間で終わるというケースはきっと少ないと思います。
では事故を防ぐことはできないのでしょうか?
私はそうではないと思っています。
すべての転倒、滑落はバランス崩しから始まります。そしてバランス崩しを防ぐことは、歩き方で不可能ではないことを示してきました。
疲労についても同様に思います。私自身、中年と呼ばれる年齢の終わりをそろそろ迎える運動不足の喫煙者(恥ずかしながら!)が1000mの登降を無理なく終えられるのは、歩き方以外の何かに恩恵を受けているわけでは、きっとないでしょうから。
その歩き方を維持するには人間の集中力は貧弱です。難しいことなのかもしれません。
であれば、いちいち集中せずとも登山に適した歩行、これまで「山歩き」と称してきた歩き方ができるまで習熟すればよい。そしてそれこそが「技量」ということの一つの側面でもあるようにも思うのです。
こう言うと、先ほど「私は落ちなかった」と言ったことが不遜にあたるかもしれません。9年前には山など富士山と高尾山しか知らず、ネット片手の見様見真似しかできなかった私が言ったらそれにあたるのかもしれない。
しかしその一端に、確かに私の手は届いた。ならば、ここまで読んで下さった皆様が、既に掴んでいること、これから手が届くこと、どちらも何の不思議もありません。
歩き方は大切です。
何度話題となっても十分にはならないくらいに。
このノートが、歩き方が話題にされるその一助になること。
それが山での事故を減らす一助となることを切に祈ります。
事故の多くは平易な場所で起こるというのはよく聞く話です。のめったのが落ちる所でなくてよかったね、現に七ツ石で落ちかけたんだからと自分に言い聞かせてしまいました。
同時に、これまで無数に経験してきた、「あれ、なんか踏んだ」という出来事や、下山して伸びをしながら「思ったより疲れたな」と感じたこと。それらはどれも、一歩誤っていたら転倒滑落、或いは行動不能に繋がっていた可能性があったと思わざるを得ません。
それらが未然に防がれてきたのは、その時の重心位置に問題がなかったという表れなのだろうとも感じます。
適切な重心位置は常に恩恵を与えてくれます。
平易な場所での事故に関して、「気が緩んだ」「油断していた」というのもよく聞く話です。じゃあ、気を引き締めていたら事故は起きないのでしょうか?
おそらくそうではないでしょう。人間の集中力など、もって精々2時間程度。落ちる難所を通過するような登山が2時間で終わるというケースはきっと少ないと思います。
では事故を防ぐことはできないのでしょうか?
私はそうではないと思っています。
すべての転倒、滑落はバランス崩しから始まります。そしてバランス崩しを防ぐことは、歩き方で不可能ではないことを示してきました。
疲労についても同様に思います。私自身、中年と呼ばれる年齢の終わりをそろそろ迎える運動不足の喫煙者(恥ずかしながら!)が1000mの登降を無理なく終えられるのは、歩き方以外の何かに恩恵を受けているわけでは、きっとないでしょうから。
その歩き方を維持するには人間の集中力は貧弱です。難しいことなのかもしれません。
であれば、いちいち集中せずとも登山に適した歩行、これまで「山歩き」と称してきた歩き方ができるまで習熟すればよい。そしてそれこそが「技量」ということの一つの側面でもあるようにも思うのです。
こう言うと、先ほど「私は落ちなかった」と言ったことが不遜にあたるかもしれません。9年前には山など富士山と高尾山しか知らず、ネット片手の見様見真似しかできなかった私が言ったらそれにあたるのかもしれない。
しかしその一端に、確かに私の手は届いた。ならば、ここまで読んで下さった皆様が、既に掴んでいること、これから手が届くこと、どちらも何の不思議もありません。
歩き方は大切です。
何度話題となっても十分にはならないくらいに。
このノートが、歩き方が話題にされるその一助になること。
それが山での事故を減らす一助となることを切に祈ります。
お気に入りした人
人
拍手で応援
拍手した人
拍手
腹ぺこ丸さんの記事一覧
-
登山での歩き方 その3
1
更新日:2026年05月13日
-
登山での歩き方 その2
2
更新日:2026年05月13日
-
登山での歩き方 その1
9
更新日:2026年05月13日
※この記事はヤマレコの「ヤマノート」機能を利用して作られています。
どなたでも、山に関する知識や技術などのノウハウを簡単に残して共有できます。
ぜひご協力ください!










コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する