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更新日:2026年05月22日 訪問者数:286
登山・ハイキング 技術・知識
登山での歩き方〜TIPS
腹ぺこ丸
 登山の歩き方として、その1〜4をお話しました。以下は補足とオマケのTIPSになります。
倒れ込む推進の動作感〜骨盤を前に出す
 その1において、山歩きでは前への倒れ込みを推進力とする旨をお話しました。しかし公開後、説明不足に思い当たりました。そこで、実際の動作感を見てみます。
写真1、直立
写真2、足の振り上げ
写真3、接地
写真4、推進
写真3-1、骨盤の押し出し
 前への倒れ込みの際は上半身を動かしません。前足の骨盤を前に押し出す動作をします。
 写真に入れた赤線は上半身と左足の角度を示しますが、この時点では青印の部分が曲がっています。これを前へと押し出す気持ちで、骨盤だけを前に押し出します。
写真4-1、骨盤の押し出し完了
 写真の薄い赤線は、写真3時点での上半身と左足の角度を示します。青線は、動作完了時点での上半身と左足の角度を示します。
 骨盤を前に出した結果、上半身と左足の角度が直線に揃います。重心は左足だけに乗りました。左足で片足立ちをしているのに近い姿勢になります。

 なお写真3-1で折れ曲がっていた箇所が前に出ています。これが山歩きでの推進力の正体です。
 余談ですが、江戸時代の飛脚は「なんば歩き」という、現代の我々とは違う歩き方をしていたそうです。なんでも、手と足の踏み出しが揃う歩き方とのこと。写真4を見ると左足と左手が揃う瞬間があります。
 直接の関係はわかりませんが、登山での歩き方に関連して語られることもあるようです。重心位置を制御する歩き方をすると、必然的に似た形になる、ということかもしれません。
実はやりづらい山歩き〜平らなところではやりづらい
 山歩きは平地ではやりづらくなります。
 上記、山歩き時の写真1〜3を重ね、写真1での重心位置を基準に補助線を入れました。
 写真1、2では重心位置は動いていません。
 写真3、まだ重心移動をしていないのに前に動いてしまっているのがわかります。
 写真2での足の付け根の位置を中心として赤で補助円を書きました。左足の可動範囲を示します。
 青は床の面を示します。
 黄色は足の可動範囲と床の面との距離を示します。
 重心位置を本当に動かしてはいけないとなると、歩幅を小さくしても、人体の構造上、床まで足が届きません。もともと足があった同じ場所にしかおろすことができなくなります。
 前に進む場合、重心はどうしても前に動いてしまいます。
 登りでやる場合、黄色で示した高さの差が斜面の傾斜に吸収されるためやりづらく感じません。また下りの場合は黄色の差は、斜面が下がっている分、さらに大きくなります。そのため後足で下ろしていく動作に心理的な抵抗を感じなくなります。しかし平らな場合、わずかな差のために後足で下ろす動作は心理的にとてもやりづらいものになります。平らな場所では蹴り出し歩きの方が合理的と言えそうです。

 しかし蹴り出し歩きでは躓き、スリップのリスクを減らすことができません。

 昔から事故は平易な場所で起こることが指摘され続けてきています。油断の可能性がよく指摘されますが、平らな場所ほど転倒のリスクを減らす効果が弱まることも併せて考慮されてよいように思います。(平らな場所の方が転倒リスクが高いわけではない点には留意)
蹴りたくても蹴れない抜き足〜骨盤ごと引っこ抜く
 蹴らずに歩くといっても、実際には多少の蹴り出しはつきものです。山歩きは早くは歩けませんので、平易な場所ではどうしても蹴り出しを併用してしまうものです。大抵はそれが問題になることはありませんが、不意の躓きにはどうしても弱くなります。
 蹴り出しは前足の接地と重心移動の際に発生します。そこで、蹴りたくても絶対に蹴れなくなる重心移動をみてみます。
写真1、前足の接地
写真2、重心移動
写真2-1、重心移動と同時に後足を外す
 蹴り出しが発生する前に後足を外してしまえば蹴り出しが不可能になります。 
写真2.2
 後足を外すのは、写真2-2の赤丸部分を真上にあげる動作でやります。骨盤ごと真上に引っこ抜くイメージです。
 後足が宙に浮きますので、蹴りたくても蹴れなくなります。
写真3、足の振り上げ
 浮いた後足に力を入れる必要はありません。骨盤を上げ、後足を地面から外してしまえば、後は振り子のように勝手に前に振り出されます。足がブラブラするのと同じ動きを勝手にしてくれます。

 その1では割愛しましたが、振り子の原理で足を出すのがこの動きです。これも疲労の予防に貢献します。
写真3-1
 振り子になった後足が振り切られた姿勢です。写真は説明のために大袈裟な位置になりましたが、実際にはここまで振る必要はありません。
写真4、接地
 古来、後足は抜くイメージと教えられてきました。抜き足とか抜重とか聞きます。登山の教えというのは本当によくできています。
 また、どうしても発生してしまう蹴り出しが靴の問題を引き起こすことがあります。爪先が痛む場合、この僅かな蹴り出しが影響している可能性があります。
 その場合、この骨盤ごと引っこ抜く動きで改善する可能性があります。

 個人的な話ですが、私も冬靴で、これによる小指の外側の痛みに悩まされました。アイゼン引っ掛けを避けるために、これまで以上に抜き足を気をつけたところ痛みがなくなることに気づきました。試しに大袈裟に蹴り出したところ、たったの2歩で痛みが出たため、絶対にこれだと感じたことをよく覚えています。
靴と抜き足〜爪先が痛い原因
 蹴り出しと山歩きとで、靴の屈曲部分を見てみます。爪先から母指球にかけての辺りです。
写真1、蹴り出しでの屈曲
 写真はLOWAのティカムEVO、ライトアルパイン寄りのトレッキング靴というか、トレッキング寄りのライトアルパイン靴というか……硬い靴の中では柔らかい方です。
 屈曲部はあまり曲がらない方です。
写真1-1
 爪先で蹴り出す際、どんな靴でも必ず赤丸部が曲がることになります。硬い冬靴でも、ほんのちょっぴり曲がります。
 この屈曲部が爪先に当たり、最初は違和感がないのに歩いていると痛くなるという現象を引き起こします。
 小指が当たるケースが私も含めて多いように思いますが、当たる可能性は爪先部のすべてにあります。
写真2、山歩きをした際の屈曲
 先述の、蹴りたくても蹴れない抜き足をしている写真です。
写真3、比較
 写真1と2を重ねました、赤が蹴り出し、青が山歩きです。
 蹴り出しではそれなりに曲がりますが、山歩きではほとんど曲がらないことがわかります。
 爪先部への当たりもなくなります。
  靴が屈曲すること自体は悪いことではありません。発生してしまう蹴り出しの程度と頻度、足の形との相性、靴の硬さなどが悪く影響した場合、爪先の痛みや踵の靴ずれなどの問題が出てしまうことがあります。蹴り出しで靴が屈曲する際、踵が浮くのはよくあるようです。

 骨盤ごと引っこ抜く抜き足がこれらを解決するかもしれません。
屈曲と爪先当たり、蹴り出しと靴擦れの図解
 靴の屈曲による爪先部の当たり、踵が上がる距離と靴の追従性の差による靴擦れと足首への当たりを示しました。
 余談ですが、冬靴の場合、僅かな蹴り出しによる屈曲がアイゼン外れのリスクを伴うため、アイゼン装着時は蹴らないで歩くことがよりシビアに求められます。
 歩行に限らず、冬は3季で求められることをより厳密に求められるものです。雪山初心者=3季の中上級者という説明を聞いたことがありますが、頷ける話です。

 さて、山靴も安いものではありません。お悩みの方はぜひ、骨盤ごと引っこ抜く抜き足をお試し下さい。
 無事に解決しますように。
それでも硬い靴を使う理由〜疲労から守ってくれるから
 靴の足への追従性が問題となり、足が痛むケースを見てきました。柔らかい靴であればよく追従するため、当たりは発生しづらくなります。
 それなのに硬い靴を履く理由はなんでしょうか。

 ソール硬さによる不整地への適応、立ちこみ時の安定性などは一般的に指摘されています。ここでは足の形の変化に注目してみます。

 人間の足は常に同じ形をしているわけではありません。まずは動画と画像でそれを見てみます。
 動画では、足に荷重と未荷重を繰り返した様子を撮影しました。
 荷重時に足が広がる様子が見られます。私の足は横アーチが特に弱いため、踏み込みに合わせてグニグニと変形してしまいます。
 荷重時と未荷重時の形の差を画像にしました。新聞紙の上に足を置き、それぞれサインペンで形取りした画像です。
緑は未荷重時の足の輪郭を示します。
赤は荷重時の足の輪郭をしまします。
 おかしな姿勢で書いたため作図の精度に問題がありますが、荷重時は特に横に大きく広がっていることがわかります。山では、一歩ごとに足がこのような変形を繰り返すことになります。
 画像は輪郭しか表現できませんが、実際には複雑な立体の変形をします。そして変形した足は形を維持するためにその都度、足部にたくさんある小さな筋肉を使うことになります。これが足部の疲労に繋がります。

 次に山靴を履いて同じ動作をしてみます。靴はLOWAのカミーノになります。トレッキング靴に分類される、平均的に硬い靴です。山道具屋さんでは小屋泊〜テント泊向けなどと紹介されます。
未荷重時の写真です。
片足立ちをして荷重しました。
 二つの写真を重ねたものになります。
 裸足に比べて変形は少なくなりました。
 山靴の硬さは足の変形を抑える効果があります。一般的には「靴が支えてくれる」と表現されていることが示していることだと思います。
 靴底の硬さについてはよく聞きます。反面、アッパー硬さ(足の甲を覆う部分をアッパーと呼びます)についてはあまり耳にしない気がします。靴の硬さを言う時は、底の硬さとアッパー硬さの両方を考えるとよいと思います。アッパー硬さがない靴の場合、この効果を期待しづらくなります。

 さて。硬い靴を履く理由について、足部の疲労を抑える効果に注目しました。山靴は足を疲労から守る道具と言えそうです。もちろん、足首を支える効果で別種の疲労を抑える効果もあります。ひとくちに疲労といっても色々な疲労があります。
 しかるに、そもそも疲労しないのであればわざわざ守る理由というのはなくなります。それは靴を使う人の体力による場合もあり、ルートの体力的負荷による場合もあります。また、疲労を押してでもスピードを維持しないと成立しない山行に挑むような場合もあることでしょう。
 いずれにせよ硬い靴というものを「疲労から守る道具」と捉えてみることは、靴選びの際に役立つ視点となるかもしれません。
靴に関するTIPS
 ハイカットの足首をしっかり固めたい時は、履く際に足首を伸ばして履くとよく固まります。
足首をこう伸ばして履きます。
足首を伸ばさないで履いている写真です。
スネと足首が直角です。
足首を伸ばさないで履いた写真です。
左が緩くなっています。
足首を伸ばして履いた写真です。
緩かった左が締まりました。
足首が固定されすぎる感じはありません。
写真のように前後によく曲がります。
靴はLOWAの冬靴、アルパインエクスパートです。冬靴だけにガチガチですが、不自由なく動かせます。
 完全なオマケと妄想、一人Q&A

Q 硬い靴が疲れないというなら鉄で作っちゃえばまったく疲れなくなるのでは?
A モノには限度というヤツがあります。一般的に「サポート性」という言葉が使われるのを見かけますが、実に上手な言い方だと思います。

Q 足を固めれば疲れないというならテーピングでガチガチに固めて柔らかい靴履くとよいのでは?
A 私は柔らかい靴を持っていないので試せません。しかし実に興味があります。どなたか教えてください。
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