再発・転移後でも山に登れるのか?
これまで「乳がん術後と登山」について書いてきました。
最初は「乳がんになったら、もう山は無理なのか」という疑問から始まり、ザックの重さ、治療中の注意点、ストック、外傷対応、抗がん剤治療中の登山、温泉との付き合い方など、実際に登山を続けるうえで問題になりそうなことを考えてきました。
また第9回では、乳がんサバイバーにおける運動と予後についての論文を紹介しました。運動は単なる気分転換だけではなく、身体機能や予後にも関係する可能性があります。
一方で、第8回の最後にあえて触れなかったテーマがあります。
「再発・転移後の登山」です。
また私の日記で内容のアップをするつもりですが、2026年6月25日から3日間京都で日本乳癌学会学術総会が開催され参加しました。その時の一講演で、ステージ?すなわち乳がんで再発された方でフルマラソンを続けていらっしゃる方がいました。正直おどろきました。
ちょうどこのコラムをアップしようとしていたところでいいタイミングでの話でした。
さて、再発してからのマラソンではなく登山、
これは単純に「運動は体によい」「登山してもよい」という話だけでは整理できません。病気の状態、治療内容、今後の見通し、そして本人が何を優先するかという問題が関係してくるからです。
乳がんの診療をしていると、再発された患者さんから、
「旅行には行っても大丈夫ですか?」
「来年の予定を立ててもいいですか?」
と聞かれることがあります。
正直、答えるのは簡単ではありません。
私自身、再発治療を続けながら本格的な登山をされている患者さんを多く経験しているわけではありません。ただ、旅行や趣味、家族との時間をどう考えるかという相談は日常診療でよくあります。
登山もその延長として考えてみたいと思います。
まず重要なのは、「再発乳がん」「ステージ4」という言葉だけで判断しないことです。
同じステージ4でも、治療を続けながら長期間安定し、普段と大きく変わらない生活をされる方もいます。一方で、進行が速く、限られた時間を意識しなければならない場合もあります。
乳がんは一つの病気ではありません。
ホルモン治療がよく効くタイプ、分子標的薬が非常によく効くタイプがあります。一方で、現在の医学でも治療が難しいタイプもあります。
つまり、「ステージ4でも元気に長く生活している人がいる」というのは事実です。
その存在が希望になることもあります。
ただ、その人の経過が自分にも当てはまるとは限りません。
これは希望を否定するという意味ではありません。
自分の病気がどういう状態なのかを正しく知ることが大切だと思います。
診療の中で、
「子どもの節目の日を迎えられますか」
「来年予定している旅行には行けますか」
と聞かれることがあります。
未来を正確に予測することは誰にもできません。ただ、病気の性質や治療への反応から、可能性が高いこと、難しいと思われることがある程度分かる場合もあります。
それをどこまで伝えるべきなのかは難しい問題です。
ただ、個人的には現状を知ることは大切だと思っています。
なぜなら、時間の使い方が変わるからです。
もし残された時間が限られている可能性が高いなら、数年後に予定していたことを少し早めるという選択肢もあります。
これは諦めるためではありません。
後から「あの時しておけばよかった」と思うことを減らすためです。
医学は病気を抑え、時間を作る努力をします。しかし、その時間をどう使うかを決めるのは本人です。
再発したから山は無理、ではありません。
逆に、再発していても誰でも問題ない、でもありません。
重要なのは、今の病状、治療内容、体力に合わせて考えることです。
以前から書いているように、登れるか、登れないか、という二択ではなく、「今の自分ならどう登るか」という考え方になります。
そして、これは病気の方だけの話ではないと思っています。
医師として診療していると、普通に生活されていた方が、ある日突然病気を告げられ、人生が大きく変わる場面を何度も経験します。
それは患者さんだけの話ではなく、自分自身も例外ではないと常に思っています。明日どうなるかは誰にも分かりませんし、いつ自分がその立場になるかも分かりません。
なので私は、元気なうちにできること、やりたいことは、できるだけ先延ばしにしないようにしています。
これは悲観的に考えているわけではなく、限られた時間を意識して生活するということです。
死ぬ時に「あれをしておけばよかった」と思わないようにする。
それが自分の中では大事な考え方です。
山に登っている理由の一つも、そこにあるのかもしれません。
とりとめのない内容となりましたが、再発をしても決して希望をすてないで、できることは各個人の病状によりますよ、医療者はそのサポートをするのが仕事です。と言いたいわけです。
※最後に
もし読まれている方の中に再発乳がんで治療中の方がおられましたら、登山が可能かどうかは病状によって大きく異なります。
転移している場所、治療内容、副作用、現在の体力などによって判断は変わるため、この場のコメントだけで個別に判断することは困難です。
まずはご自身の状態を一番理解されている担当の先生に相談してください。
ただ、登山という少し特殊な趣味の場合、医療者側も具体的な山行内容まで判断するのが難しいことがあります。
「担当の先生には確認したけれど、登山としてどう考えればよいか分からない」という場合は、分かる範囲にはなりますが一緒に考えることはできますので、その際はメッセージなどでご相談ください。
最初は「乳がんになったら、もう山は無理なのか」という疑問から始まり、ザックの重さ、治療中の注意点、ストック、外傷対応、抗がん剤治療中の登山、温泉との付き合い方など、実際に登山を続けるうえで問題になりそうなことを考えてきました。
また第9回では、乳がんサバイバーにおける運動と予後についての論文を紹介しました。運動は単なる気分転換だけではなく、身体機能や予後にも関係する可能性があります。
一方で、第8回の最後にあえて触れなかったテーマがあります。
「再発・転移後の登山」です。
また私の日記で内容のアップをするつもりですが、2026年6月25日から3日間京都で日本乳癌学会学術総会が開催され参加しました。その時の一講演で、ステージ?すなわち乳がんで再発された方でフルマラソンを続けていらっしゃる方がいました。正直おどろきました。
ちょうどこのコラムをアップしようとしていたところでいいタイミングでの話でした。
さて、再発してからのマラソンではなく登山、
これは単純に「運動は体によい」「登山してもよい」という話だけでは整理できません。病気の状態、治療内容、今後の見通し、そして本人が何を優先するかという問題が関係してくるからです。
乳がんの診療をしていると、再発された患者さんから、
「旅行には行っても大丈夫ですか?」
「来年の予定を立ててもいいですか?」
と聞かれることがあります。
正直、答えるのは簡単ではありません。
私自身、再発治療を続けながら本格的な登山をされている患者さんを多く経験しているわけではありません。ただ、旅行や趣味、家族との時間をどう考えるかという相談は日常診療でよくあります。
登山もその延長として考えてみたいと思います。
まず重要なのは、「再発乳がん」「ステージ4」という言葉だけで判断しないことです。
同じステージ4でも、治療を続けながら長期間安定し、普段と大きく変わらない生活をされる方もいます。一方で、進行が速く、限られた時間を意識しなければならない場合もあります。
乳がんは一つの病気ではありません。
ホルモン治療がよく効くタイプ、分子標的薬が非常によく効くタイプがあります。一方で、現在の医学でも治療が難しいタイプもあります。
つまり、「ステージ4でも元気に長く生活している人がいる」というのは事実です。
その存在が希望になることもあります。
ただ、その人の経過が自分にも当てはまるとは限りません。
これは希望を否定するという意味ではありません。
自分の病気がどういう状態なのかを正しく知ることが大切だと思います。
診療の中で、
「子どもの節目の日を迎えられますか」
「来年予定している旅行には行けますか」
と聞かれることがあります。
未来を正確に予測することは誰にもできません。ただ、病気の性質や治療への反応から、可能性が高いこと、難しいと思われることがある程度分かる場合もあります。
それをどこまで伝えるべきなのかは難しい問題です。
ただ、個人的には現状を知ることは大切だと思っています。
なぜなら、時間の使い方が変わるからです。
もし残された時間が限られている可能性が高いなら、数年後に予定していたことを少し早めるという選択肢もあります。
これは諦めるためではありません。
後から「あの時しておけばよかった」と思うことを減らすためです。
医学は病気を抑え、時間を作る努力をします。しかし、その時間をどう使うかを決めるのは本人です。
再発したから山は無理、ではありません。
逆に、再発していても誰でも問題ない、でもありません。
重要なのは、今の病状、治療内容、体力に合わせて考えることです。
以前から書いているように、登れるか、登れないか、という二択ではなく、「今の自分ならどう登るか」という考え方になります。
そして、これは病気の方だけの話ではないと思っています。
医師として診療していると、普通に生活されていた方が、ある日突然病気を告げられ、人生が大きく変わる場面を何度も経験します。
それは患者さんだけの話ではなく、自分自身も例外ではないと常に思っています。明日どうなるかは誰にも分かりませんし、いつ自分がその立場になるかも分かりません。
なので私は、元気なうちにできること、やりたいことは、できるだけ先延ばしにしないようにしています。
これは悲観的に考えているわけではなく、限られた時間を意識して生活するということです。
死ぬ時に「あれをしておけばよかった」と思わないようにする。
それが自分の中では大事な考え方です。
山に登っている理由の一つも、そこにあるのかもしれません。
とりとめのない内容となりましたが、再発をしても決して希望をすてないで、できることは各個人の病状によりますよ、医療者はそのサポートをするのが仕事です。と言いたいわけです。
※最後に
もし読まれている方の中に再発乳がんで治療中の方がおられましたら、登山が可能かどうかは病状によって大きく異なります。
転移している場所、治療内容、副作用、現在の体力などによって判断は変わるため、この場のコメントだけで個別に判断することは困難です。
まずはご自身の状態を一番理解されている担当の先生に相談してください。
ただ、登山という少し特殊な趣味の場合、医療者側も具体的な山行内容まで判断するのが難しいことがあります。
「担当の先生には確認したけれど、登山としてどう考えればよいか分からない」という場合は、分かる範囲にはなりますが一緒に考えることはできますので、その際はメッセージなどでご相談ください。
【乳がん術後と登山】9 論文紹介 乳がん生存者における、個々の患者に合わせた運動戦略と死亡率。 はこちら。
著者のヤマレコページでのこの日記に、もともと記載していた内容をヤマノートに転記しております。
この記事に対するご意見、コメントは小生のヤマレコページでの日記にてお願いいたします。
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