キスリング・ザックは勧めない-ヤマレコ

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更新日：2021年12月16日　訪問者数：101340

キスリング・ザックは勧めない

古い登山の写真を見ると、今とは違うザックや服装が写ってますね、特にザックは申し合わせたように、左右にポケットの付いた形、あれはどのようなものなのでしょうか

キスリング・ザックとは

　　現在主流の縦長のザックが登場する以前、戦後の登山ブーム？から昭和の終わり頃
まで、広く愛用された、主荷室の両サイドに大きなポケットを備えた、横長のザックで
素材は綿帆布とベルト類が皮革で出来ていた。フレームやクッション等が一切なく、パッキングのみで形を整えるために、うまくパッキングするには慣れが必要だった。また、1960年代～1970年代にこのザックで登山や長期旅行する若者達をカニ族と呼んだ。このザックの横幅が広く、駅の改札を横向き(カニ歩き)にしか通れない為、あるいはザックを背負った後ろ姿がカニのように見えるところから、そう呼ばれたとも。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%8B%E6%97%8F

キスリング・ザックの歴史

片桐のHPによると

昭和4年（1929年）、2代目・片桐盛之助のもとに、槙有恒氏と松方三郎氏が、ス
イスのヨハネスヒュークキスリング氏の考案・製作したザックを持ち帰り、それをも
とに、盛之助は、日本で初めて、キスリング型リュックサックを製造した。

とある。

日本山岳会による、マナスル登頂後、登山ブームがあり、高校や大学の山岳部、ワンダーフォーゲル部などで多用される。

映画・TVに見るキスリング

　・主演：？、サントリーグルコサミンのCMで、ザックを背負った3人が富士山のような絵をバックに歩く映像が流れる。
　・主演：石原裕次郎の『富士山頂』
　・主演：高倉健の『南極物語』
　・主演：木村拓哉のTVドラマ『南極大陸』
　・主演：堤真一のTVドラマ『クライマーズ・ハイ』
　・主演：大原麗子のTVCM『サントリー・レッド』youtubeで検索！
　・日本山岳会：記録映画『マナスルに立つ』1956/5/9撮影
　　　　下記項目のページに一部画像を見ることができる

　　など(見つけ次第、追記します)

クライマーズ・ハイより

堤真一がキスリングザックを！

昔の雰囲気を出そうとしたものと思うが、80年代に岩登りで、キスリングを使っている人はいないと思う・・・

サントリー　グルコサミン - YouTube

2014年CM

エベレスト～植村直己 - YouTube

1970年のエベレスト登頂のドキュメント、NHKアーカイブで2010年に放送されたものの様です。

世界初　マナスル　ヒマラヤに立つ　～伝説のクライマー　今西壽雄オフィシャルサイト～

『世界初・ヒマラヤ（マナスル）に立つ』
～伝説のクライマー今西壽雄オフィシャルサイト～1956年、日本の登山隊が初め
て成功した、8163Mの高峰、ヒマラヤ・マナスル登頂体験ムービー

キスリングの長所

・サイドのポケットが大きいので、行動中に必要なものがほとんど入れられる(ただし
、サイズに依ります)
・縦型のザックに比べ重心が低くできるので、荷物が安定する。(ただしパッキングに
依る)
・防水加工された綿帆布は多少の雨なら、撥水性があり中まで濡れない(メーカーによ
り差がある)
・雨蓋が無いので、ザックの上にさらに荷物を乗せたり、本体の長さいっぱい荷物を入
れることができる(重さを考慮しなければ)
・昭和時代の登山を体感できます
・パッキングの練習ができます
・目立ちます
・年配の方に声を掛けられます

キスリングの短所

・横幅が広いので、狭いところや、駅の改札で引っかかることがある(カニ歩きすると
通れる)自動改札は背伸びすると通れる(身長に依ります)
・防水性が高くても、長時間、雨にさらされると、縫い目からの侵入は避けられない
・肩ベルトにクッション性が無く、肩が痛くなることがある
・素材の綿帆布、ベルト類の皮革の手入れが必要(防水処理や保革油を塗るなど)
・ウエストベルトが無いものが多く(ベルトを通すためのループが付いているものがあ
った)、肩に荷重が集中する
・最新型のザックに慣れている人には、肩が痛く、ウェストベルトが無いので不安に思
える
・背中にクッション等が無いので、背中が蒸れる
・汚れると汚れが取れないので、見た目が悪い
・新しくても見た目が古そうに見える
・綿素材、皮革は濡れたままにしておくとカビる

いつ頃まで売っていたのか？

漠然と80年代の終わり頃までは売っていたのだろうと思っていたのですが、1993年6月の山と渓谷のさかいやの広告のページに、キスリングの広告が出ているのを見つけました。

なんと、1996年5月の山と渓谷のさかいやの広告ページにも、広告が出ているのを発見しました。(笑)

それでも、使ってみたい物好きな方には、今でも手に入るキスリング

片桐

昔から片桐といえばキスリングで有名、登山黎明期よりザックを作っている老舗

秀岳荘

北海道地方では有名な店、今作っているのは、復刻版の日帰り用の小型のみ(※ただいま、リンク切れ、在庫なしの模様)

スポーツのマンゾク

ネットを検索中に見つけた、富山県のお店では、なぜか山菜取り用に？推奨しているキスリングを販売している！

カタログ of 公益財団法人ボーイスカウト日本連盟

公益財団法人ボーイスカウト日本連盟のホームページです。 Scout Association of Japan
2014年12月11日、追記、このページのカタログにキスリングが売っているのを発見しました。
最近改めて見てみると、リンク切れてましたカタログからキスリングは無くなってしまったようです。以前の画像を探しましたら、小川テントで作っていたもののようで、偶にヤフオクで出品されることがあるので、欲しい方は気にして見ていてください。上の写真の物です。

Amazon.co.jp: キスリングプロ仕様登山用ザック帆布のリュックサック (1個): シューズ＆バッグ:通販

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何気に、一澤帆布のHPを見たら、小さいキスリングが復刻していた・・・2021年

311 | 製品詳細 | 一澤信三郎帆布

「キスリング」と言われる昔ながらのリュック。ナイロンなどの化学繊維が主流となる前に登山用として1950年頃から製作しています。元は登山用として作られていましたが、日常でもご使用いただけます。口元はひもで絞るデザインで、たくさんの荷物を入れることができます。

オークションでもたまに、見かけることがあります。その場合は、新品であってもある程度、経年劣化していることもありますので、写真を良く見て判断しましょう。サイズも良く確認しましょう。

キスリングのサイズ

キスリングのサイズは、主荷室の口幅(入口を平置きにした横幅)と深さ(高さ)で表示することが多いです。ポケットのサイズは、主荷室の1/3程度の幅の物が多いようです、（時代により異なります。)また、戦前の頃から、戦後しばらくは尺貫法で表示されていることがあります。

キスリングの故郷を訪ねる(松方三郎、槇有恒のエッセイより)

松方三郎　エッセイ集、山で会った人より抜粋
山の周辺ー欧米のところどころ　グリンデルワルト
驚いたのはルックサック屋のキスリングだった。昔からあんまり水々しい方でもなかったが、まずそのままで少し年をとったくらい。オットセイのような風貌は昔と変わらず、二十五年前にもそうだったが、鞄屋の店は別段大いに繁昌しているようでもなく、かといって落ちぶれてもいず、暫く会わなかったが、どこに行っていたいったような話。冗談じゃない、二十五年振りだよ、第一あの大戦争じゃ来れるわけがないじゃないかというと、ああそうかと、別段大して驚いたり感動したりするようすでもない。1951年(昭和26年)10月(原典：山岳46・47年度号)

槇有恒　わたしの山旅
? アルプス山靴とルックサックのこと
またルックサックは、運動具店などには、いくらでもあったし、また都会人の日常の買い物にも使われているので珍しいものでもなかったが、これも品質や形などいろいろあった。このルックサック作りの名人がグリンデルヴァルトにいた。キスリングといって馬具とか牛の頸輪などを作っているが、この人の作るルックサックは、当時スイス第一の評があった。このルックサックは材料のキャンバスが丈夫で、背負皮も上質であり、特色は背によく付いて背負い易いことであった。
　日本でキスリング型といっているルックサックは、私が持って帰ったものを見本にして作り出したものである。三十年後に再びキスリングを訪ねたが八十二歳の老齢でも、昔と変わりなく、キャンバスの前掛を着けて仕事をしていた。君の名のルックサックが日本で使われているといったら、別段感動するでもなく、微笑していた。キスリングのルックサックの勝れているのは、ガイドたちの経験の結果を取り入れたものなので、市販のものと違うのは当然であった。1968年2月(昭和43年)岩波新書

松方三郎エッセイ集、山で会った人　より抜粋　
グリンデルワルト晩夏
この前は行ってみなかったので、今度はキスリングの店を訪ねてみたが、
キスリングの名前は消えていて、電気器具を売る店になっていた。彼の名は日本にだけ残ることになるだろう。1970年10月(昭和45年)(日本山岳会報304)

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