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ハイキング
関東

江ノ島は竜穴かぐろい海神の宮【稲荷信者登拝記17】

2018年08月29日(水) [日帰り]
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GPS
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距離
3.1km
登り
192m
下り
192m

コースタイム

日帰り
山行
1:00
休憩
1:40
合計
2:40
16:50
10
中津宮
17:00
15
奥津宮/竜宮
17:15
18:30
5
稚児ヶ淵
18:35
19:00
20
江ノ島岩屋
19:20
辺津宮
江ノ島は周囲4km、標高60mほどの陸繋島。島は山になっており、急な石段を昇り降りして回ることになる。一巡りして観光する所要時間は1:30〜2:00ほど。毎年8月中は1000基の灯篭で島内を彩る「江ノ島灯篭」が開催されている。
天候 曇り
過去天気図(気象庁) 2018年08月の天気図
アクセス
利用交通機関:
電車 バス
■往復 JR湘南新宿ライン【鎌倉】〜江ノ島電鉄【江ノ島】(23分260円)
鎌倉から江ノ電で23分。江ノ島駅に到着。ローカル線ながら人気の路線なので1時間に5本の運行が21時台まである(終電は23:55)
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鎌倉から江ノ電で23分。江ノ島駅に到着。ローカル線ながら人気の路線なので1時間に5本の運行が21時台まである(終電は23:55)
弁天橋を渡って江ノ島へ。かつては干潮時にしか歩いて渡ることは出来なかったが、大正12年の関東地震で島が隆起して以降は地続きになったという。
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弁天橋を渡って江ノ島へ。かつては干潮時にしか歩いて渡ることは出来なかったが、大正12年の関東地震で島が隆起して以降は地続きになったという。
海なんて久しぶりに来たな。この何処までも続く大きな海と水の神を祀った聖地がここ江ノ島だ。
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海なんて久しぶりに来たな。この何処までも続く大きな海と水の神を祀った聖地がここ江ノ島だ。
参道入り口の青銅製の鳥居。元々は延享4年(1747)の建立だというが、現在のものは文政4年(1821)に再建されたものという。それでも200年を経ている。
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参道入り口の青銅製の鳥居。元々は延享4年(1747)の建立だというが、現在のものは文政4年(1821)に再建されたものという。それでも200年を経ている。
非常に特徴的な書体で「江島大明神」と記されている。無学なのでこの書体についてはわからない。扁額も実にすばらしいものだ。
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非常に特徴的な書体で「江島大明神」と記されている。無学なのでこの書体についてはわからない。扁額も実にすばらしいものだ。
門前町。朝から鎌倉を回ってきてすでに疲労しているので、焼きたての団子を腹に入れた。名物の蛸煎餅の店には行列が出来ている。
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門前町。朝から鎌倉を回ってきてすでに疲労しているので、焼きたての団子を腹に入れた。名物の蛸煎餅の店には行列が出来ている。
店の軒先に下がっている切絵の灯篭。天女のように舞う弁天様が上品に描き出されている。これはいいなあ。
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店の軒先に下がっている切絵の灯篭。天女のように舞う弁天様が上品に描き出されている。これはいいなあ。
ん?八岐大蛇?と一瞬思ったが、頭が五つしかない。これは江ノ島の伝説に出てくる五頭龍のようだ。天女=弁才天とは夫婦とのこと。
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ん?八岐大蛇?と一瞬思ったが、頭が五つしかない。これは江ノ島の伝説に出てくる五頭龍のようだ。天女=弁才天とは夫婦とのこと。
島内地図。ここでは夏の間、島内を灯篭で彩る「江ノ島灯篭」が開催されている。今回はそれを目当てに来た。点灯は18:00からなので、どこかで適当に時間を潰そう。
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島内地図。ここでは夏の間、島内を灯篭で彩る「江ノ島灯篭」が開催されている。今回はそれを目当てに来た。点灯は18:00からなので、どこかで適当に時間を潰そう。
江島神社前には有志により奉納された弁天様の石像がある。弁天様とは、インド神話の水・川の神であるサラスヴァティのことであり、日本でも水辺に祀られていることが多い。ここ江ノ島ではその性質の共通性から竜神・わだつみの神と習合して今に至る。
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江島神社前には有志により奉納された弁天様の石像がある。弁天様とは、インド神話の水・川の神であるサラスヴァティのことであり、日本でも水辺に祀られていることが多い。ここ江ノ島ではその性質の共通性から竜神・わだつみの神と習合して今に至る。
江島神社の下社といえる辺津宮。辺津とは近くという意味だろうか。御祭神は記紀神話の海の女神、宗像三女神の一柱タギツヒメ。とはいえ、それは神仏分離令以後のことだろう。
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江島神社の下社といえる辺津宮。辺津とは近くという意味だろうか。御祭神は記紀神話の海の女神、宗像三女神の一柱タギツヒメ。とはいえ、それは神仏分離令以後のことだろう。
ここ江ノ島は古来より竜の棲む島として竜神(海の神・わだつみの神)が祀られてきた場所。鎌倉時代に弁才天が勧請されてからはそれと習合し、「江島大明神」として祀られてきた。神仏分離にあたって記紀の神様が必要になった都合で、宗像三女神が引っ張り出されて来たのでは…と想像する。この三つ鱗の神紋は竜か蛇を示している。
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ここ江ノ島は古来より竜の棲む島として竜神(海の神・わだつみの神)が祀られてきた場所。鎌倉時代に弁才天が勧請されてからはそれと習合し、「江島大明神」として祀られてきた。神仏分離にあたって記紀の神様が必要になった都合で、宗像三女神が引っ張り出されて来たのでは…と想像する。この三つ鱗の神紋は竜か蛇を示している。
境内社にお稲荷さまが。まだ明るいのに閉められているのが寂しい。
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境内社にお稲荷さまが。まだ明るいのに閉められているのが寂しい。
10分ほど石段を登って中津宮に。すでに疲労しているのでやけにキツイ。エスカレーターはあるものの、有料なので我慢。
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10分ほど石段を登って中津宮に。すでに疲労しているのでやけにキツイ。エスカレーターはあるものの、有料なので我慢。
ここにも龍。見事な彫刻だ。
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ここにも龍。見事な彫刻だ。
海蝕によって作られた険しい断崖に、打ちつける波の低い音がズズーンと響く。ここは日が暮れてからは怖かった。この断崖を境に東山、西山と呼ばれている。
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海蝕によって作られた険しい断崖に、打ちつける波の低い音がズズーンと響く。ここは日が暮れてからは怖かった。この断崖を境に東山、西山と呼ばれている。
中津宮から10分。島の頂上付近にある奥津宮と竜宮に到着。観光は日没後に灯篭に火が入ってからが本番のつもりなので、参拝だけしてそそくさと失礼。
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中津宮から10分。島の頂上付近にある奥津宮と竜宮に到着。観光は日没後に灯篭に火が入ってからが本番のつもりなので、参拝だけしてそそくさと失礼。
竜宮。読みは「わだつみのみや」。一抱えもある石を無数に積み上げて出来たような岩屋が社殿のようだ。これは自然のものなのか?
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竜宮。読みは「わだつみのみや」。一抱えもある石を無数に積み上げて出来たような岩屋が社殿のようだ。これは自然のものなのか?
山を登って下りて弁天橋から40分ほど。夕焼けの名所でもある稚児ヶ淵へ到着。海風が涼しいここで日没までのんびりしてみようか。
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山を登って下りて弁天橋から40分ほど。夕焼けの名所でもある稚児ヶ淵へ到着。海風が涼しいここで日没までのんびりしてみようか。
石の上に座り込んでひたすら海を眺める。個人的には、海は山よりも怖い。環境として山よりも生存が難しく、人間を拒む底知れない厳しさがある。そんな海への畏れの気持ちが神格化され、わだつみの神と崇められていったのだと思う。荒れ狂う水の神格化である竜神は、常に最も霊威があり恐しい神として語られてきた。
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石の上に座り込んでひたすら海を眺める。個人的には、海は山よりも怖い。環境として山よりも生存が難しく、人間を拒む底知れない厳しさがある。そんな海への畏れの気持ちが神格化され、わだつみの神と崇められていったのだと思う。荒れ狂う水の神格化である竜神は、常に最も霊威があり恐しい神として語られてきた。
曇っているので夕焼けは見られなかった。今の時期の日没は18:00頃のはずだが、遮るもののない海辺のせいか18:20でもまだ十分に明るい。ん?よく見ると、「落石注意」の文字が…。ここで1時間もゴロゴロしちゃったよ…。
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曇っているので夕焼けは見られなかった。今の時期の日没は18:00頃のはずだが、遮るもののない海辺のせいか18:20でもまだ十分に明るい。ん?よく見ると、「落石注意」の文字が…。ここで1時間もゴロゴロしちゃったよ…。
休憩にも飽きたので、いよいよ江ノ島の最奥「江ノ島岩屋」へ。ここを見ている間に外も暗くなるだろう。中はひんやりと湿気に満ちており、濡れた岩壁がテラテラと光を反射する。
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休憩にも飽きたので、いよいよ江ノ島の最奥「江ノ島岩屋」へ。ここを見ている間に外も暗くなるだろう。中はひんやりと湿気に満ちており、濡れた岩壁がテラテラと光を反射する。
江ノ島岩屋は波によって削られた約150mの深さを持つ海蝕洞。かつては竜の棲家、竜穴と呼ばれていたことが文献より伺える。内部はこのように広々としている場所もある。「江ノ島灯篭2018」の灯篭が美しい。
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江ノ島岩屋は波によって削られた約150mの深さを持つ海蝕洞。かつては竜の棲家、竜穴と呼ばれていたことが文献より伺える。内部はこのように広々としている場所もある。「江ノ島灯篭2018」の灯篭が美しい。
一部、手燭を持って入る場所もあって雰囲気が出る。結構空気の流れがあることを火が教えてくれる。
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一部、手燭を持って入る場所もあって雰囲気が出る。結構空気の流れがあることを火が教えてくれる。
この奥は富士の氷穴に続いているという伝説があるらしい。
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この奥は富士の氷穴に続いているという伝説があるらしい。
奥は結構深く、1人で歩くのは怖いかも知れない。暗く、夏なお冷気を湛えた洞穴、遠く響く波の音は竜の寝息。
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奥は結構深く、1人で歩くのは怖いかも知れない。暗く、夏なお冷気を湛えた洞穴、遠く響く波の音は竜の寝息。
途中で外に出るところもある。夜の海は怖い…。
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途中で外に出るところもある。夜の海は怖い…。
天井が低い箇所もあり、腰を屈めて歩く。奈良時代、ここに竜神を祀るお宮を建てたのが江島神社の発祥であると社伝はいう。
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天井が低い箇所もあり、腰を屈めて歩く。奈良時代、ここに竜神を祀るお宮を建てたのが江島神社の発祥であると社伝はいう。
最奥には五頭龍の見事な彫像があった。拝観料500円は高いかなあと思ったが、そんなことはなかった。江ノ島信仰の根源となる場所に立ち、かつての人々が感じたであろう畏れの気持ちを共有することが出来たように思う。
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最奥には五頭龍の見事な彫像があった。拝観料500円は高いかなあと思ったが、そんなことはなかった。江ノ島信仰の根源となる場所に立ち、かつての人々が感じたであろう畏れの気持ちを共有することが出来たように思う。
奥津宮に戻ってきた。訳知りに「夜の神社に参拝するのはよくない」と言う人が結構いるが、根拠はない。神道というのは統一された教義があるものではなく、神職さん含む個々人の解釈が林立している曖昧な宗教だから、別に行きたい人は行けばよい。
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奥津宮に戻ってきた。訳知りに「夜の神社に参拝するのはよくない」と言う人が結構いるが、根拠はない。神道というのは統一された教義があるものではなく、神職さん含む個々人の解釈が林立している曖昧な宗教だから、別に行きたい人は行けばよい。
闇に浮かび上がる竜神さま。
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闇に浮かび上がる竜神さま。
あの灯台兼展望台が建っているのはサムエル・コッキング園という植物園の中。今回は拝観料貧乏なのでスルー。
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あの灯台兼展望台が建っているのはサムエル・コッキング園という植物園の中。今回は拝観料貧乏なのでスルー。
灯篭のデザインが本当に秀逸だ。安っぽくなく伝統を感じさせていながら、モダンでもある。カップルは多いが、デートスポット然とした軽薄さはなく、あくまでも神域としての威を保っているのが好印象。
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灯篭のデザインが本当に秀逸だ。安っぽくなく伝統を感じさせていながら、モダンでもある。カップルは多いが、デートスポット然とした軽薄さはなく、あくまでも神域としての威を保っているのが好印象。
夜に浮かび上がる紅の社殿がなんとも雅やかな中津宮。
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夜に浮かび上がる紅の社殿がなんとも雅やかな中津宮。
中津宮の前からは鎌倉方面の夜景も楽しめる。
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中津宮の前からは鎌倉方面の夜景も楽しめる。
島をひと巡りして辺津宮に戻ってきた。浴衣姿の人が目立つが、この時間では門前の店も全て閉まっているのでお祭りの賑やかな雰囲気はあまりない。人は多いがどことなくひっそりとした印象だ。
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島をひと巡りして辺津宮に戻ってきた。浴衣姿の人が目立つが、この時間では門前の店も全て閉まっているのでお祭りの賑やかな雰囲気はあまりない。人は多いがどことなくひっそりとした印象だ。
竜宮をイメージしたという瑞心門が雰囲気を高めてくれる。要するに江ノ島はわだつみの宮なんだね。竜宮が中国の建築様式で描かれることが多いのは、中国の伝説の海中の都「蓬莱」がその原型だからと思われる。
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竜宮をイメージしたという瑞心門が雰囲気を高めてくれる。要するに江ノ島はわだつみの宮なんだね。竜宮が中国の建築様式で描かれることが多いのは、中国の伝説の海中の都「蓬莱」がその原型だからと思われる。
弁天橋を渡る途中に島を振り返ると、都会暮らしでは触れることのない圧倒的な闇が海上にわだかまっていて怖気を奮った。
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弁天橋を渡る途中に島を振り返ると、都会暮らしでは触れることのない圧倒的な闇が海上にわだかまっていて怖気を奮った。
江ノ電に乗って鎌倉へ。お疲れさまでした。
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江ノ電に乗って鎌倉へ。お疲れさまでした。

装備

MYアイテム
inaritozan
重量:-kg

感想

17回目の登拝?は山を一休みし、かねてから関心のあった関東の聖地、江ノ島へ。

江ノ島はその地形上の特色から、古くからわだつみの神(海神・竜神)が祀られた場所。鎌倉時代に源頼朝の肝入りで弁才天を勧請してからは代々の将軍や御家人の信仰も集めるようになり、江戸時代に起こった旅行ブーム以後は一大観光地としても栄える。

ここ最近は神仏分離令により宗像三女神、弁財天、竜神をそれぞれ別個に祀る形式を取っているようだが、かつては全てが習合した海と水の神「江島大明神」として鎮座していたようだ。

不気味な圧迫感があり、あの暗い波の下にも何が潜んでいるかわからないので、子供の頃から海は苦手だった。幼い頃に家族と行った海で離岸流にさらわれ、1人ポツンと浮き輪で沖まで流されたこともあった。大人になった今でも海はやはり空恐しい思いがする。山も十分に恐ろしく、人間の命を軽々と奪うが、海はもっともっと恐ろしい。

しかし、この底知れない海、時に荒れ狂う水の暴威に対する畏怖の気持ちに形を与えたものが竜神であると思うと、非常に納得いくものがある。神とはそもそも恐ろしいから祀るのであり、仏と違って人間を救ったり助けたりする性質を持つものではない。人の力では抗えない大いなる定めに対して寛恕を請い願う気持ちが、神への祈りだ。

今なお信仰の生々しい息吹が息づく江ノ島で、信仰の生まれる原初的でリアルな土壌に触れる貴重な経験ができたと思う。同日に巡った鎌倉よりもずっと感銘を受けた。竜神様を信仰してしまいそう。

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