記録ID: 21286
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アルパインクライミング
谷川・武尊
一ノ倉岳・一ノ倉尾根
1998年03月25日(水) ~
1998年03月26日(木)


- GPS
- 32:00
- 距離
- 6.7km
- 登り
- 1,175m
- 下り
- 1,243m
コースタイム
3月25日登山センター(9:00)→一ノ倉尾根末端(10:30)→標高1600mC1(15:30)→イグルー完成(16:30)
3月26日標高1600mC1(6:30)→トップが懸垂岩核心部を抜ける(8:30)→一の倉岳(15:30)→谷川岳トマの耳(16:50)→登山指導センター(18:30)
3月26日標高1600mC1(6:30)→トップが懸垂岩核心部を抜ける(8:30)→一の倉岳(15:30)→谷川岳トマの耳(16:50)→登山指導センター(18:30)
天候 | 両日晴れ、26日は朝だけガス |
---|---|
アクセス | |
コース状況/ 危険箇所等 |
「ホルマリン漬けの臓器の断面を思わせ、ぞっとさせる」と何かに書いてあった一ノ倉谷。右の縁、一の倉尾根を登る。この冬は名取さんと八ヶ岳で雪稜登攀の稽古を続けてきたが、一の倉尾根でひとまずのまとめにしたい。二日間の天気はおおむね保証済み。最近大規模な降雪もなく、雪の状態も安定している。来週からはこの危険地帯の入山禁止期間に入るという。この限られた3月下旬だけに、都合を会わせてやってきた。 いつもながら、取り付きの尾根末端から見上げる尾根上部は凄い傾斜に見える。しかしこういうルートは取り付いて見ないと判らない。第一岩峰で緩やかな尾根は突き当たり、壁に吸収されてしまう。細い急なルンゼをノーザイルで登っていく。ヤブの生えた細い稜線を縫う、迷路の様なルンゼを、アックスを多用しながら、すかすか登っていく。ザイルを出さずに済む雪の状態なので快調にスピードが出たが、こういう所で事故は起きる。名取さんがそんな小さなルンゼの一カ所で5mほど落ちた。運良くブッシュをつかんで止まった。しかしルンゼの行く先は落差数百メートルの幽の沢で肝を冷やした。 7mほどのアプザイレン、急な雪壁で1ピッチザイルを出して、懸垂岩の直下に出る。レベルA1の10mほどの壁を見上げる急斜面に畳一畳分ほどの岬状のテラスがあり、そこにきっちり一畳分のイグルーを作る。両はじは百メートルの絶壁なのでアンザイレンしたまま場所を踏み固める。崖の横でも壁が出来てしまうと安心するもの。立派な御殿が一時間で完成した。 イグルーのおかげで安眠した。翌朝は、ねちょねちょのガスの中、イグルーを出てすぐ壁に取り付く。名取さんは果敢にA1に取り組むが慣れない人工登攀に腕力を奪われ、すぐに筋肉のパワーを使い果たす。この数メートルの壁を抜けるのに2時間を費やしてしまった。そのうちに一ノ倉谷を覆っていたガスが流れ去り、岩の殿堂が現れる。僕らの作ったイグルーは、空に浮いた枝先の鷲の巣の様だった。トップが抜けるころ後続パーティーが登ってきた。トレースがあるとはいえ朝一番でここまで登ってきた。速いパーティーだと思っていたら、なんだ沼田の中島兄弟じゃないか!あまりにも世界は狭いが、まあそんなものでしょう。僕の番、なるべく腕力を使い果たさぬよう工夫して、何とか抜ける。 壁の後はルンゼ、そして急な雪の斜面、と二人で変わりばんこに上へのばして行く。中島兄弟はあっと言う間に懸垂岩のA1ルートを登ってきてしまった。サスガだ。岩峰帯を抜け、トラバースして、ザイルピッチ9ピッチ目で幽の沢上部のダイレクトルンゼに出る。そこから延々6ピッチ、急だがステップの決まるルンゼを登り、5ルンゼ(一ノ倉)の頭に出て、ようやくザイルをほどく。一ノ倉を見おろすこの見張り台からは、高度感ある滝沢スラブはじめ、身に憶えのある滝を掲げる第3ルンゼなど、引きずり込まれそうな美しい眺め。 一ノ倉への雪の斜面を登って平らな山頂で反対側の山を見る。遠く苗場山まで視界のある良い天気だ。ぎらぎらの太陽に顔を焼きながら、谷川岳へ、紅くなった太陽にお別れをして日陰の西黒尾根を降りていく。この時期の雪は下りに良い。わずか一時間半で尾根を降りきる。後半の樹林帯は滑り台で、日没前までに滑り込みで降りた。 |
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このサイトを見つけてから、懐かしいルートの写真を拝見するのが楽しみになっております。この一ノ倉尾根登攀もyoneyamaさんの記録なのですね。
私は 1987年3月連休、就職して1年目、後輩に誘われて何とか休暇をもらって出かけました。もっと雪があったような気がします。登攀自体はあまり記憶が無かったのですが、写真を拝見して、1年半ぶりのアブミ登攀が疲れた事と、15時間行動でヘトヘトになり、暗くなった西黒尾根をヘッドランプをつけて降りた事を思い出しました。
自然の息吹を感じる事が出来る春山登攀はいいですね。
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